11月
今週(26日 - )開花の13種
フィリピン生息のBulb. aeolium、Den. modestumは久々の開花です。Bulb. bandicshiiはリンク先のページに見られるように縦幅20㎝を超えるサイズになっています。
Bulbophyllum quadricaudatum
ニューギニア低地生息のBulb. quadricaudatumが開花しています。本種の開花期は11-12月で、当サイトでは全て炭化コルクへの植付けです。
今回本種を取り上げるのは、国内外でのネット検索で見られる画像は子株が殆どで、花数は多くても8輪程であることから、当サイトでの現在の開花風景を紹介するためです。下画像は2018年のマレーシアPutrajaya花展にて入手した株で現在8株栽培しており、いずれもこれまでの5年間で5倍以上の葉付き50バルブ程の株サイズになっています。その内の2株を選び、中央17輪、右21輪咲きの姿を撮影(27‐28日)しました。写真では分かり難いですが、1輪が6㎝幅のサイズであるためこれだけの花数となると壮観です。画像に見られような大株にするには本種の自然な成長形態に合わせた取付材と、根周りを乾燥させない栽培が必要です。画像下の青色種名のクリックで入荷時の株サイズを含め詳細情報が見られます。
現在(26日)開花中の多輪花2種:Dendrobium sanguinolentum と Bulbophyllum geniculiferum
Den. sanguinolentumは秋 - 冬期が開花期で、下画像左は先月の歳月記に掲載したプラスチック鉢から木製バスケットに植替えを行った株で、植替えから2か月しか経過していませんが37輪の同時開花となりました。またBulb. geniculiferumも初冬が開花期となり現在多数の株で開花が始まっています。下画像右はその内の一株で60輪以上が同時開花しています。撮影はそれぞれ25日と26日です。
Coelogyne palawanensis
Coel. palawanensisが現在(21日)開花中です。今回本種を取り上げたのは、これまでで最も多い12輪の同時開花となったためです。当サイトが本種を入手したのは2017年末で、初花は2021年でした。開花が遅れたのは、入手後の2年間ほどは栽培要件が不明であったためです。その後は毎年複数回の開花があり開花数も花茎当たり5輪から今年6月には7輪、今月の開花では12輪となりました。2-3日後には、残っている蕾の開花で13輪の同時開花となると思います。本種に限らずPalawan生息のランを入手することは非常に難しく、ネットで本種を検索すると、画像は当サイト以外にはIOSPE、OrchidRoot他、1件のfacebookに見られるくらいです。また国内外の現在の具体的なマーケット状況もネットからは分かりません。下画像は20日の撮影です。
本種の生息域は標高1,000m周辺とされていますが、当サイトでは1昨年から高温室での栽培となっています。しかし、さすがに今年の夏季の猛暑にはリスクを感じたため、60株程ある本種の場所取りと移動には苦労しましたが、7月から10月初めまで数株を残して中温室としました。この数株は温室内の夜間平均温度が30℃を超える環境での生態を調べるためです。夏季に移動させた株は現在高温室に戻っており、今回開花した株も高温室にて花芽を発生しています。下画像はCoel. palawanensisの類似種とされるCoel. hirtella及びCoel. swanianaそれぞれの相違点を比較したものです。
Bulbophyllum kubahense III
昨年10月30日に60株からなるBulb. kubahenseの大株を5分割して植替えを行いました。それから1年が経過した現在の分け株の状態を報告します。下画像上段中央は70㎝長のヘゴ板に植替えた直後の5株の内の3株です。それぞれの株の葉付きバルブ数は左から15,13,14個でした。一方、右画像は本日(18日)の撮影で、葉付きバルブはそれぞれが25、23、22個へと増えています。下段は上段右画像の3株それぞれを拡大した画像です。
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25bulbs |
23bulbs |
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2023年11月18日撮影 |
上段中央画像の植替え時のヘゴ板上部は伸びしろスペースとして余裕を感じますが、右画像では株先端部の葉はヘゴ板の上端に達しつつあることが分かります。この1年の伸長を考えると今後1年程で株の先端バルブはヘゴ板を超えるのではと思います。
本種の葉サイズは葉長25㎝、葉幅は10㎝と、これまで現地でのBulb. kubahenseを含め数百株見てきましたが、それらに比べほぼ倍近い大きさで、この葉サイズが当株固有の特性か、成長度や栽培環境に依るものかは今後の調査となります。当サイトでの栽培では高温・低輝度環境で、四季を問わず根を乾燥させないよう注意しています。
今週開花の15種
今週(12日 - 18日)開花した15種を選んで撮影しました。Den. ramosiiはこれまでルソン島のみの生息とされてきましたが、画像は2017年パラワン島からの入荷株です。Den.chameleon albaは昨年11月の歳月記で取り上げた花とは別株での開花となります。
Bulbophyllum sanguineomaculatum、Bulbophyllum membranifolium及びBulbophyllum glebulosum
現在(17日)、Bulb. sanguineomaculatumが開花中です。当サイトでは本種名を3年前までBulb. maculosumとしてきましたが、現在の種名がより一般的であるため改名しました。両種名はシノニムの関係とされます。この種とBulb. membranifolium及び先月開花したBulb. glebulosumそれぞれの花は互いによく似ており、同時に並べて比較すればその違いが判りますが、個体差を考えると花姿だけでは判り難いこともあり、リップやバルブ形状も種別判断に必要な場合があります。ネット画像にもBulb. sanguineomaculatumとmembranifoliumとの種名ミスが幾つか見られます。これら3種のマーケットでの入手難易度は分かりませんが、いずれも栽培は容易です。
Dendrobium platycaulonとDendrobium lamellatum
この時期は毎年、Den. platycaulonやDen. lamellatumが開花します。今年は同時開花数が両種に多く見られたため12日と16日に撮影しました。やや遅れてDen. treubiiも開花しますが現在は蕾の段階です。これらPlatycaulon節種の特徴は茎(疑似バルブ)の形状が幅広の扁平で、2021年10月の歳月記に取り上げましたが根はザラメ状の凹凸があることです。Den. platycaulonは現在12株程を栽培していますが、前回の植替えから丁度2 -3年経ち、いずれの株も同時開花数は下画像に見られるように多輪花となっています。画像下の青色種名のクリックで詳細情報にリンクします。
Dendrobium cuneilabrum
本種は100年以上も前の1909年発表されたcrumenata節デンドロビウムです。本種名でネット検索すると多数のサイトがリストアップされるものの、それらの殆どのページには花や株画像がなく、花画像は当サイト以外にはIOSPEとOrchidRootのみで、しかもそれぞれ1枚の写真しかありません。国内外でのマーケット情報も見られません。当サイトは2015年に種名不詳のDen. spとしてマレーシア経由で入手しました。マーケットでは希少種という言葉が安易に使用されている昨今、こうした背景からDen. cuneilabrumは正真正銘の希少種と言えるのではないかと今回取り上げました。
8年間に及ぶ本種の栽培で、入荷時の10株から株分けや今回の高芽取り株を加えて現在70株以上保有しており、今週これらの中から50株程の植替えと植付けを行いました。画像上段は本種の花と株で6年前の撮影です。株や花形状はDen. butchcamposiiに似ていますがリップ及びSpur形状が異なります。この比較画像は画像下の青色種名のクリックで見られます。本種の茎(疑似バルブ)は50㎝を超える長さになります。下段画像左は上段の株を親株とする高芽からの成長株の一部で、撮影は今月15日です。一方、右画像に見られるように今月複数株から採取した高芽が45株あり、これらを木製バスケット4個に分けて植付けました。これら高芽株も2年後には左画像のように1株毎に分けた植替えとなります。
本種はBulb. butchcamposiiと同じ標高1,000m以上の生息種のため低 - 中温環境での栽培となります。栽培実態からは高輝度環境が適し、低輝度下での成長と比較して明確な違いが見られます。また当サイトの株はサプライヤーによるとスマトラ島生息とのことでしたが、IOSPEではスラウェシ島生息との記載があり、このように情報が少ないことから、当サイトのページでは現在本種をcuneilabrum affとしています。
Bulbophyllum gracillimum 多様な色合いをもつバルボフィラム
タイからマレーシア、インドネシア、ニューギニア、オーストラリアに至る広い範囲に分布するBulb. gracillimumは、もしセパル・ペタルが前項のDen. flos-wanuaのような花形状であれば、別種とされるであろう程の多様な色合いを持ち、また人工交配種のようなカラフルな色感があります。しかしその形状は特異で個性があり、下画像の株は全て野生栽培株です。画像中央のダークレッド及び右のセミアルバが現在開花しており7日に撮影しました。本種は高温タイプの丈夫な種で環境が合えば、画像下の青色種名のリンク先に見られるようにクラスター株へと成長します。
現在(6日)開花中のデンドロビウム及びシンビジウム
開花中のデンドロビウム7種とシンビジウム1種を選び撮影しました。Cymbidium aliciaeはスラウェシ島及びフィリピンの標高300m‐2750m生息種とされる地生ランです。当サイトでは他のシンビジウムと同じクリプトモスでの植付けで現在は高温室にて栽培しており毎年開花が見られます。ネット上では多数の花画像が見られますが何故か、本種のマーケット情報は殆どありません。需要性が低いのか入手が難しいのかどうかは不明です。
Bulbophyllum echinochilumとBulbophyllum echinolabiumの植替え
種名の似たバルボフィラム2種の植替えを先月末から行っています。Bulb. echinochilumはJ. Cootes著Philippine Native Orchid Species 2011によれば、ルソン島Nueva Vizcaya標高900 - 1,000mのコケ林に生息し、フィリピンの固有種とされます。当サイトが本種を最初に入手したのは2010年頃のFlora Filipina Expo にての1株でした。現在20株程を栽培していますが、これらは全て2016年にBulb. ecornutoidesの発注で入荷したミスラベル株です。一方、IOSPEには、本種は1910 - 1916年代に採取されて以来、近年スラウェシ島での生息画像が発表されるまで100年近く絶滅したと思われていたとの記載があります。本種についてのマーケット検索では国内外共に当サイト以外殆ど取扱いが見られず、現在はドイツの1ラン園のみのようで、国内では本種名とyahooの2文字で検索すると2021年に本種名の入札があるものの、添付されている株画像はBulb. echinolabiumで本種ではありません。ネットには‥chilumと‥labiumの誤りがしばしば見られます。現在ネットでの本種に関する情報の多くはJ. Cootes著書が参考にされていますが、当サイトや趣味家の栽培実態からは、いくつかの相違点が確認され、その主な点は栽培適正温度や花茎のサイズが挙げられます。相違点は画像下の青色種名のリンク先で確認できます。
下画像中央は30㎝長の炭化コルクで5年近く植替えが無かった株で、株の2/3以上の部分が支持材をはみ出しています。右画像は60㎝長の炭化コルクとヤシ繊維マットを組合わせた支持材への今回の植替えです。右画像は3株の植替え例ですが、こうした作業待ちの株が他に20株程あります。現在本種の栽培は全て高温室内で、2か月以上夜間平均温度が30℃を超えた今年の猛暑の中でも、ほぼ全ての株で新芽の発生・伸長が見られました。
一方、下画像は今回植替えを終えたBulb. echinolabiumです。本種はバルボフィラムの中で大型の花を付ける種の一つで、下画像の株は縦幅40㎝を超えるサイズを記録しています。これまで中型木製バスケットでの栽培でしたが、歳月記9月のBulb. lobbi giantの植替えと同じように4年間程でバスケット内がバルブ同士が重なり合う状態になっていたため、今回の植替えとなりました。画像左から2つ目がバスケットから取出した本種で、葉付きバルブは20個でした。その右隣は根を洗浄し、トレーに並べた状態です。右画像手前2株は60㎝長炭化コルクとヤシ繊維マットを重ねた支持材2枚に株分けして植付けた様子です。開花直前の花芽が付いた株の植替えは未開花となる可能性が高く通常は避けますが、幸い今回は植替え後に開花を得ることができました。
上記2種の植替えに伴い、それぞれのページを改版しましたので、画像下の青色種名のリンク先に新しい画像が見られます。