|
2月
Bulbophyllum habrotinum
Bulb. habrotinumが開花中です。本種はIOSPEによれば、ボルネオ標高1,500m以下に生息するバルボフィラムで、通称優美な(Delicate)バルボフィラムと形容されるそうで、発表は1994年です。当サイトでは2015年ボルネオ生息種として入手し、栽培を初めて7年程経ちますが、成長や開花様態から現在は中温室にての栽培を行っています。しかし、”優美”とされる花姿にも拘わらずマーケット情報が余り見られません。一方、形状の似た種にBulb. plumatumがあり、こちらは多数のマーケット情報が見られ、Bulb. plumatumの通称は羽毛のような(Feathery)バルボフィラムとあります。DelicateとFeatheryとは大きな違いです。確かに両者の花姿を見ればその違いは明らかです。一方、IOSPEのページに記載の本種の花サイズは0.2”(5mm)とあり、Bulb. plumatumのサイズは9cmとあります。すなわち本種では花の横幅に対し、Bulb. pulmatumは垂直方向の長さで記載されています。バルボフィラムに於いては花サイズを記載する場合、例えばCirrhopetalum節のように多数の花が寄り集まって花全体を形作っている種では、その中の一つの小さな花の横幅寸法を記載しても花全体の大きさが分かりません。こうした種は縦と横幅及びNS(自然体)としての全体サイズも必要です。あるいはメジャーを入れた花全体の寸法写真を表記することが必要と考えます。下左画像は24日撮影の本種です。詳細は青色種名のクリックで見られます。
現在(23日)開花中のBulbophyllum 3種
下画像左は8輪同時開化のBulb. trigonosepalum近縁種です。リップ中央弁の表皮は滑らかなことからBulb. trigonosepalaumの変種の可能性があります。フィリピン南部(LeyteあるいはMindanao)の生息種とのことです。中央は、類似種のBulb. championii(当サイトのsp17 )ではありません。Bulb. championiiと比較し、ラテラルセパル先端の線状部分の長さがやや短く、ペタル形状も異なります。ラテラルセパルのサイズはsp17に比較画像が、またペタル形状の相違は下画像の青色種のクリックで見られます。花色を除けばBulb nasicaと形状・サイズ共に酷似することから nasica yellowとしています。右画像はBulbophyllum magnumで、前に植替え報告で取り上げた画像の中の2つの花茎の蕾が開花したので撮影しました。
現在(23日)開花中のVanda foetidaとDendrobium deleonii
北スマトラ島生息のVanda foetidaが開花中です。当サイトでは2016年8月に入手、2018年2月に初花を得ました。IOSPEでは本種について生息域情報がなく、花の香りが悪臭(bad smelling vanda)と記載されています。まず標高では、Vanda sanderiana、luzonica、deareiなどと同居の高温環境で栽培しており、これまでの6年間、毎年開花していることと、入手時の1m前後から現在は2m近くに成長していることから、生息域は1,000m以下と推定します。一方、本種の花の香りは本日(24日13:00)、再確認しましたが、スパイシーな微香で悪臭ではありません。当サイトのVanda foetidaは実生ではなく野生栽培株であり、香りについての記載は不可解です。
Dendrobium deleoniiは2018年発表の新種です。当サイトでは現在、スリット入りプラスチックポットとトリカルネット筒の2種類の支持材で30株ほどを中温室にて栽培をし、こちらも2018年7月入手以来12月から3月にかけて毎年開花しています。本種についての解説は2018年12月の歳月記に、またそれぞれの詳細画像は青色種名のクリックで見られます。
Bulbophyllum scotinochiton
本種は2005年に発表されたスマトラ島北部生息のバルボフィラムで、当サイトでは2015年末に入手、初花を2016年1月に得ました。今回、販売予定のバルボフィラムの一つとして植替えを行いました。下画像上段左がBulb. scotinochitonの花でラテラルセパルは6㎝長、また右が炭化コルクとヤシ繊維マットを支持材とした植替え終了の10株です。1株は全て5葉以上となります。IOSPEには本種について花茎当たり1輪花とされていますが、時折2輪の開花も見られ、下段左がその様態を撮影した画像です。一方、本種は他種では殆ど見られない、同一バルブから花茎が多数発生する特徴を持っており、右画像は開花終了後に花茎を切断したバルブ基部を拡大したもので、一つのバルブ基部の同じ位置から花茎が5本、他から1本発生しています。この花茎は同時に発生するのではなく、数か月間隔に1本づつ発生伸長し、それぞれに花を付けます。よって2-3年間、同じバルブの基部からの開花が見られます。こうした特性故か、新しい成長芽(バルブ)の発生は遅く、精々1年で1バルブとなっており、下写真に見られるような葉付10バルブの本種を得るにはそれ相当の年月を要します。
本種は中温タイプで、生息域は雲霧林帯とされます。当サイトでは中温室の高温寄りの場所で栽培しており、通年で開花が見られます。この環境は昼間は一時的に30℃を超えても良いものの、夜間平均温度は20℃前後の環境となります。これは類似種のBulb. mirumも同じです。
本種の価格はコロナ前には3-4葉株を4,000円で販売してきましたが、5葉から10葉バルブを5,000円 - 20,000円で再販する予定です。
Dendrobium (Diplocaulobium) tentaculatumとその近縁種
Diplocaulobiumは現在、属名として扱われたり、Dendrobium属の一つの節に統合されたりしていますが、当サイトでは後者で種名を表現しています。Diplocaulobium節はIOSPEで現在65種がリストアップされている一方で、それぞれの種毎のページには花写真が無くスケッチ図での記載が多数見られ、また種名不詳種が1割程含まれます。本節の多くは花サイズが大きく個性ある形状にも拘わらず、あまりマーケットで取り上げられていない背景は、短命花が多いことと多くが比較的輸入難のニューギニア(パプアニューギニアを含む)の生息種であるからではないかと思います。当サイトでは現在、diplocaulobium節を3種栽培しており、その内2種は種名が分かりません。下画像はDen. tentaculatumで左が開化初日の白い花で、2株合わせて11輪見られます。右が翌日のピンク色に変化した花です。さらに翌日には落花します。すなわち本種は2日花となります。
|
|
Dendrobium tentaculatum (開化初日) |
Dendrobium tentaculatum (開化翌日) |
下画像は現在栽培中の3種の形状を比較したもので、左は前記のDen. tentaculatum、中央はリップを拡大するとIOSPEでspとされる花に似ています。右は疑似バルブ基部の膨らみが細く葉は線形で株形状は他の2種とは異なり種名不詳種です。生息地はいずれもニューギニアと思われますが、右の株はCameron Highlandsで2018年に入手したことから中温室での栽培です。他は高温室です。面白いことに右の種は5日花です。落花前にセパル・ペタルがピンク色に変化する様態は他種と同じです。今月16日の撮影です。
現在(19日)開花中のデンドロビウム3種
現在開花中のデンドロビウム3種を選び撮影しました。Den. anosmum semi-albaは標準サイズに比べやや小型ですが、画像種は生息地がモルッカ諸島と珍しいので取り上げました。中央のDen. bandiiは直近に発表された新種で、入手の経緯は2020年9月の歳月記に記載しています。浜松では夏期の猛暑期間のみ中温室に、11月から5月の間は高温室にて栽培をしており現在開花中です。Den. nudumは株毎に花色が多様で、こちらも中温室栽培をしており丈夫な種です。青色種名のクリックで詳細画像が見られます。
Bulbophyllum incisilabrum
スラウェシ島生息のBulb. incisilabrumは2003年に発表された新種のバルボフィラムで、当サイトでは2016年と2018年にインドネシアからマレーシア経由で入手しました。本種は下画像上段左に見られるように、光沢のある黄色をベースに赤褐色の斑点がセパル・ペタルに散りばめられ、一輪が4.5㎝ x 5cm程のサイズのため、多数が同時開花すると見応えがあります。本種もマーケット情報が国内外共に殆ど無く、特に2018年以降入荷が難しくなっているようです。
上段左画像は10輪同時開花の様子で、葉付バルブ7個からなる株です。こうした多輪花の景色を得るには1株に10葉以上が必要であり、今回は新種バルボフィラムの販売の一環として、そうしたサイズの株だけを新たに植替えました。右写真は植替えが完了した4株で、葉付バルブ数は左株からそれぞれ新芽を含め12,12,11,19バルブとなります。植付けは左から3枚は45㎝x13㎝、右端は60㎝x18㎝長の、炭化コルクとヤシ繊維マットが支持材となります。下段は上段右のそれぞれの株を側面から撮影した画像です。19葉(新芽を含む)の株は希少で2年程栽培を続ければ、orchidroots.comに見られる様な多数の同時開花が得られる可能性もあり、香りも良く展示用として期待されます。本種の詳細情報は青色種名のクリックで見られます。
|
|
|
|
葉付11バルブ+新芽1 |
葉付12バルブ |
葉付10バルブ+新芽1 |
葉付15バルブ+4新芽 |
価格は11バルブが15,000円で19バルブは50,000円を予定しています。小型株(3-4バルブ)の販売は夏以降に計画しており4,000円程となります。
Bulbophyllumに見る繁殖
下画像は17日撮影の、4-5年間放っておいたバルボフィラム3種です。画像左はBulb. ovalifoliumで、炭化コルクの上に不織布、ヤシ繊維マット及びミズゴケを重ね合わせ横置きにした支持材での成長です。おそらく自然界でもこの姿のように木の幹等に群生しているものと思います。中央及び右はそれぞれBulb. carunculatumとBulb. pardalotumで、支持材はトリカルネット筒です。Bulb. pardalotumは昨年秋から固形肥料を筒の上に置きましたが、他の2種は肥料を全く与えておらず、成り行き任せです。しかしこうした種は環境が気に入れば、画像に見られるように留まることなく繁殖することが分かります。これら気根植物の最も重要な栽培要件は、施肥よりも根周りの湿度にあるようで、濡れ過ぎず且つ乾燥させないことだと思います。
|
|
|
Bulb. ovalifolium |
Bulb. carunculatum |
Bulb. pardalotum |
Coelogyne palawanensis
Coel. palawanensisが現在(16日)開花しています。本種はパラワン島に生息するフィリピン固有種で、当サイトでは2017年11月にパラワンから入手しました。なぜかJ. Cootes著 Philippine Native Orchid Species, 2011には本種の記載が無く、またIOSPEでは花サイズが2.5㎝の小さな花とされ、実体(6㎝ x 5.7cm )とは甚だしく異なります。さらにグーグルでマーケット情報を検索しても、花画像はOrchidroots.comを始め、幾つかのfacebookに見られる一方で、販売情報は国内外を含め当サイト以外には無いようです。すなわち本種は純白で気品のあるセパル・ペタルが際立った幻の如き存在です。
下画像は本日(16日)の撮影です。上記のような状況から希少性も高いと考えられ今回の販売予定リストに加えることにしました。本種の詳細は青色種名のクリックで得られます。また入荷から販売までの経緯については2021年7月の歳月記に記載していますのでそちらを参考下さい。
Bulbophyllum scaphioglossum
ニューギニア生息の本種は2014年のOrchideeジャーナルで発表された新種のバルボフィラムです。当サイトでは2016年10月にマレーシア経由で入手し、同年翌月の歳月記に浜松での初開花を報告しました。これまでに杉皮板や炭化コルクなど3回程の植替えを行い今日に至ります。下画像左は2016年末の入荷直後の杉皮板への植付けで、おそらく現地から日本に持ち帰るまでの2週間程はベアールートに近い出荷管理が行われる結果、落葉したと思われるバルブが多く見られます。杉皮板の栽培は2年で、3年目からは炭化コルクに変えました。炭化コルクでの栽培は3年間で、画像中央の株はその結果となります。すなわち入荷時から5年で、画像左の株が中央画像のサイズまで成長したことになります。続く新たな植え替えには、炭化コルクとヤシ繊維マットを組み合わせた支持材となりました。中央画像がその植付けです。右画像はその植え替え時期に開花していた本種の花です。花が7輪咲いており葉付バルブ数は12個です。
|
|
|
2016年11月撮影 |
2021年7月撮影 |
2021年7月撮影 |
下画像左は
2022年9月撮影の本種で、上中央の株が1年程の間に急速に成長したことが分かります。入荷時から2021年までの5年間の成長と、2021年から今日に至る成長度合はかなり異なり、この背景に適温下で根を常に湿った(濡れとは異なる)状態と、比較的高輝度下での栽培に依ることが大きいと考えられる一方で、一度根の傷んだ2-3葉バルブ株を回復させ成長軌道に乗せることの難しさ(長い年月を要す)も見て取れます。右は今回の販売に向けて、左写真の株の一部を1株15葉以上のバルブ数に株分けし、炭化コルク+ヤシ繊維マットに植付けたものです。右写真手前の株は17葉です。
|
|
1株15葉から25葉バルブ 2022年9月撮影 |
販売予定株の一部 2023年2月撮影 |
1株が10葉を超える株であればその後の成長は早いと思われ、大株にする期待もできます。今回の販売株は全て1株が15葉バルブ以上とし、価格は10,000円(15~17葉)から20,000円(20~25葉)とする予定です。
Dendrobium cymbulipes
これまでデンドロビウム一覧サムネールページに表記した種名不詳種sp05を、Dendrobium sp aff. cymbulipesと改名し、それまでのaff. cymbulipesをsp05に変更(入替え)しました。理由は、Den. cymbulipes名の画像検索において、これまでのsp05と同種と思われる画像が1点あり、その種はMalesian Orchid Journal Vol. 10 2012., p115, Fig22に、ボルネオ島Tambuyukon山生息種でDen. cymbulipesのカラー・バリエーションの一つとされているからです。本種の同定問題は2019年11月の当歳月記にても取り上げており、昨年来からの種名の見直しをしている中での検討種の一つとなっていました。しかし今だに当サイトでは、これまでのsp05はDen. cymblipesとは同種であるとの結論ができません。それはDen. cymbulipesとの形状の相違点が多数見られるためです。下画像に比較画像を示します。
上画像で両種はいずれもボルネオ島の生息ですが、それぞれの画像に見られるように色だけでなく、リップ中央弁とペタルおよびスパー形状、また葉形状にも相違が見られ、これらを単に地域差とすることには疑問が残ります。そこで取り敢えず本種をsp05からaff. cymbulipes(cymbulipes類似種)とし、同定は目視ではなく分子系統解析によるDNA比較が必要と思われ、そうした結果が得られるまでは類似種とすることにしました。一方、現在進めているバルボフィラムの出荷準備が終われば、次はデンドロビウムとなり、本種もまた2012年の新種として販売対象種にする予定です。
現在(11日)開花中の20種
現在開花中の花を撮影しました。最上段左のBulb. trigonosepalumは、Bulb. nymphopolitanum complex (類似種 )の中で最も美景で、ミンダナオ島からの入荷種です。グーグル検索では現在この花色のフォームは当サイト以外には見られず、希少性がかなり高いと思います。またBulb. brevibrachiatumの画像には2つの花が撮影されていますが、それぞれ同一株での同時開花です。放射線状に多数の花を付ける Cirrhopetalum節の本種は通常12-15輪ですが、画像下側の花は20輪となり整然と円形の輪の中に収まることが出来ず、2輪程が花の下に押し出されています。本種の20輪咲きは一過性のものと思いますが、珍しい光景です。
一方、Bulb. orthoglossumは、通常ラテラルセパルは無地か、赤色のラインが薄く入りますが、今回の開花種には明瞭なラインが見られたので撮影しました。Den. miyasakiiはデンドロビウムとしては稀な、木には着性せず生息様態は岩性および地生とされます。当サイトでも本種にはミズゴケではなくパフィオペディラムと同じコンポストで植付けています。それぞれの詳細情報は画像下の青色種名のクリックで見られます。
Bulbophyllum magnum
Bulbophyllum magnumは2013年に発表されたフィリピン生息のバルボフィラムです。当サイトでは現地にて2014年10月に入手し、2015年6月の歳月記に初開花を報告しました。現在の国内マーケット情報では当サイト以外に2例があるのみで取扱いが殆ど無い新種の一つであり、間もなく販売予定のバルボフィラムにもなるため取り上げました。本種はリゾーム(バブル間を結ぶ根茎)がBulb. virescensに似て長く、充実した株では7-10㎝ほどになります。このためポット植付けでは2年程で新芽がポットからはみ出てしまい、無理やりポットの内側に新芽を曲げた栽培が見られます。この方法では、3-4バルブ以上の株になると新芽のコンポストへの根つきが悪くなり、葉サイズの縮小、落葉あるいは葉先枯病などを誘発します。本サイトでは入荷時からの2年間、ポットに植付けていましたが、上記の理由から炭化コルクに移し替え、現在に至ります。これまでに2回の炭化コルクでの植替えを行っており、直近では2020年3月の歳月記に報告しました。当初開花条件が分からず苦労しましたが、開花は全て高温室での栽培株であることと、比較的輝度の高い環境が良いこと等が分かり、現在では毎年開花が見られるようになりました。この栽培環境はISOPEに記載された情報(温度:クール、輝度:低輝度)とは異なっています。
今回、販売向けとして本種も植替えを行うことにしました。支持材は25mm厚の炭化コルクがペース(30mmは現在入手不可)となっています。一方、吊り下げ栽培において25mm厚の炭化コルクでは長さ50㎝を超えると、耐久力は2年が限度(自重による崩れ)となり、また反りも生じることから、これらを防ぐ金具を支持材の長さに応じて取付け、さらにコルク上下部の乾湿差を抑えるために保水性のあるヤシ繊維マットとの組み合わせとしています。
下画像は、昨年6月撮影の本種の花、中央は本日(8日)撮影の蕾と、右は今回の植替え後の一部です。中央画像には花茎が2本発生しており、通常は5 -6月が最花期ですが、この時期としては早咲きとなります。右写真はそれぞれ葉付5 - 8バルブからなる株で、いずれも葉に傷や病痕等はありません。コルクの長さは40cm(左から5つ目)、90㎝(同6つ目)、他は60㎝です。伸びしろ分を全長の1/3設けていますが2 - 3年で埋まると思われます。
下画像は植替えの様子です。上段左は60㎝炭化コルクでの3年弱の栽培株で、植え替え前の画像です。中央は左写真の株で、株を留めていた1mm径アルミ線を外した後、強いシャワーで表面のミズゴケを洗い流した状態、右はその側面画像です。これら画像から多数の根が支持材を覆っており、本種と炭化コルクとの相性が良いことが分かります。また中央の写真からは殆どの根が支持材の上部よりも下部に向かっていること、すなわち湿度に対する高い正屈性が見て取れます。植替え時に、こうした栽培結果から種の特性や様態を知ることは今後の栽培のための重要な情報となります。下段の左および中央画像は炭化コルクの下半分が欠けていますが、コルクの下部から崩して根をコルクから剥がしている作業途中の状態、右は全ての根をコルクから取り外しトレーに置いた株です。洗浄から取外しまで、この株は根が多いことから1時間近くかかりました。この後、根を中心に病害防除処理を行います。
|
|
|
植付け前のBulbophyllum magnum |
左株のミズゴケを洗い流した様態 |
左株の側面 |
|
|
|
コルク半分を崩し下部の根を取り外した様態 |
左株の拡大画像 |
コルクから全ての根を取外した株 |
下画像は新たな支持材への取付けを撮影したものです。左画像には、長さ90㎝の炭化コルクと同サイズに切り取ったヤシ繊維マットの一部に3Aレベルのミズゴケを乗せ重ねています。このミズゴケの上に前記の取外した株を乗せ、根が互いに接触や交差しないように1本づつ根の間にミズゴケを挟みながら立体的に重ね合わせ、1mm径の盆栽用アルミ線で固定していきます。これだけ多数の根がある株の取付は、かなり繊細・緻密な作業となり2-3時間を要します。仕上げにはマット全体にミズゴケを敷きます。中央は植付けが終了した状態です。上部30㎝程は伸びしろ分となります。こうした炭化コルクとヤシ繊維マットとの組み合わせにより、当サイトの実験では、ヘゴ板並の保水力が得られています。一方、本種の葉形状については卵形と云われていますが、しばしば長楕円形も見られ、一例として今回植え替えした株の葉の1枚を右画像に表示しました。葉身(blade)は21㎝で葉柄(petiole)まで含めると24㎝となり、葉幅は最大で9.5㎝です。平均的なサイズは上記青色の本種名をクリックしたページ内で寸法画像が見られます。
|
|
|
炭化コルク、ヤシ繊維マット支持材、 |
90㎝支持材への植付け完了 |
左写真株の葉サイズ |
さて本種の販売ですが、全ての葉が病痕や一部の切断等の無い状態の1株5枚葉以上の株のみを販売する予定で、価格は8,000円からとなりますが、前項のBulb. inacootesiaeとは異なり、本種の価格は葉数以上に葉サイズにより変動します。
Bulbophyllum inacootesiae
間もなく、2000年以降に発見あるいは専門誌などに発表された新種の内、バルボフィラムから販売を再開する予定で、その一つにBulb. inacootesiae(2016年)が含まれます。販売は全てFS(開花経験済み)サイズの葉付5バルブ以上の株とし、予定価格は7,000円(5バルブ)から45,000円(10バルブ)の範囲となります。当サイトの栽培経験では葉付5バルブが10バルブまでに成長するには3 - 4年を要することと、その過程において8割以上の株は新芽が出る一方で、古いバルブの一部は落葉していくことが多く、全ての葉が健全な状態で葉付10バルブから成る株に成長することは極めて難しく、こうした大株は希少で高額となっています。下写真は6日撮影の本種です。右は7枚の葉付バルブ株で、5本の花茎が伸長しておりそれぞれに蕾が見られます。
下写真は株サイズの異なるBulb. inacootesiaeを撮影したものです。こうした株がそれぞれ販売の対象となります。
注)当サイトでは本種名を、これまでの現地での売買名Bulbphyllum inacootesiiとしてきましたが、登録名inacootesiaeに修正しました。
Vanda jennae
現在(5日)スラウエシ島生息のVanda jennaeが開花中です。本種は2005年登録の新種で、ISOPEによると生息標高域は1,200m周辺とされます。こうした情報から本サイトでは2014年の入手からDen. papilio等と同じ中温室にての栽培としました。しかし2014年7月の初花以来、開花は1-2度で株の成長も遅く、1昨年に1株を高温室に移動したところ、先月末に開花となりました。高温室での成長・開花が見られたことから入荷株は1,000m以下での生息と思われます。またこの時期の開花は1日の昼夜の温度差が10℃以上となることから、当サイトのページは生息域を600m - 1,200mと推定し、今後は夏期の猛暑期には中温室に移動させ、他期は高温室にて栽培にすることにしました。今回の開花は2輪ですが、本種の花軸当たりの輪花数は5-8輪とされており、下画像よりも大きな株が2株あることから次期開花期にはそれなりの輪花数が得られると思います。画像下の青色種名のクリックで詳細情報が得られます。
ところで、クリック先の詳細画像の中で
リップを中心に拡大した画像があり、どうも中心の黄色の蕊柱が鼻で、その上左右の赤い斑点が目、リップ中央弁の基部が口を開けてワ~イ咲いたよ!と笑っている顔のように見えて、Dracula属の猿顔とは異なるものの、面白い形相になっています。それが下画像です。
|
no |