7月
一般的でない開花フォームの3種(26-28日撮影)
下画像左はBulb. scotinochiton、中央はBulb. fascinator greenです。 通常これらの開花は1本の花茎に1輪ですが、画像では2輪咲きとなっています。Bulb. fascinatorの2輪咲きはネットでも数点見られますが、Bulb. scotinochitonは当サイトとOrchidRootsの1点のみのようです。IOSPEでは常に1輪咲き(scotinochiton always has a single flowered inflorescence with....)と記載されています。画像右は花や株形状はDen. flos-wanuaと同じですが、セパル・ペタル共に棒状斑点がありません。ドーサルセパルとペタルに棒状斑点のあるDen. flos-wanua、ペタルのみに斑点のあるDen. sp aff. flos-wauna、そして無斑点の本種を比較すると、これらは全てが同種で、棒状斑点の有無は個体差あるいは地域差のようにも見えます。
ところでBulb. fascinator greenですが、ネットでは本種はセミアルバと名付けられています。本種の花は開花時には緑色で、やがて薄黄色に変化していきます。このような色合いや変化を持つ種をセミアルバとすることには違和感があります。セミアルバが公的に登録された名称であれば兎も角、むしろflavaフォームの方が良いのではと思っています。それそれの詳細は青色種名をクリック下さい。
Bulbophyllum cleistogamumの不可思議な生態
Bulb. cleistogamumはボルネオ島、マレー半島、フィリピンの標高500m以下に生息するバルボフィラムです。本種は花の構成要素であるラン属特有の蕊柱や花粉魂を備えつつも、他のバルボフィラムとは異なり、自家受精(自分の花粉を受精して種子を得る)を行う生態を持ちます。風や花粉媒介者に依存すること無く自身で受精ができるのであれば何故に、いつ飛来するか分からない花粉媒介者を利用して、わざわざ別の花に花粉を運ばせ受粉(他家受粉)させる巧妙な進化を遂げる必要があったのかと思います。現在本種を30株程栽培していますが、花粉媒介者が居ない温室内であっても開花後に落花することなくその多くにさく果の発生が見られます。一般に自家受精は遺伝子の劣化をもたらし、これを繰り返せば、やがて生存適応度が低下してその種は死滅します。このため同種であっても異なる個体間での受精が必要とされます。結果、ランは自身の体力の消耗を極力抑えると共に、別個体の花まで特定の昆虫に花粉魂を運ばせ受粉効率を高める高度な受精システムを創り上げました。しかしなぜBulb. cleistogamumはバルボフィラム属の中で、他のランと同じ方法で他家交配も行う余地を残しながらも同時に自家交配を可能とする尋常ではない生態に至ったのか、考えられるのは本種の生息域での花粉媒介者の存在です。すなわちその数が僅かであったため他家受精のみに依存することが出来なかったようです。ではどのような仕組みで花粉魂を自力で蕊柱の窪みに移動させるのか、花粉が粉末状であれば風を利用して受粉ができそうですが、硬く大きな花粉魂では無理です。花粉魂の移動ができなければ当然受精は起こりません。下画像中央の示すリップを見ると、左右に分かれた短い線状突起のある蕊柱先端部が花粉魂を覆うような形で前方に突き出ていることが分かります。開花時は画像に見られるように花粉魂は開放されていますが、開花終了時には蕊柱左右の先端部が内側に曲がって花粉魂を抱え込み、さらに
花全体が縮れ圧迫されることで花粉魂を蕊柱の窪みに押しやり、受精が行われると考えられます。次回の開花でこの様態を撮影する予定です。自家受精の仕組みは分かったとしても、近交弱勢の問題は残ります。栽培実態からは、本種はバルボフラムの中でも強靭で栽培が容易な種であり、生命力や環境適応能力の弱さは感じられません。自家と他家交配を繰り返し供用しながら、自身の置かれた環境の中で、他者にのみ依存することのない繁殖への進化の道を歩んできたランとも云えます。しかし近年、生物多様性という言葉をしばしば耳にしますが、このような同属種間の中のミクロな世界に於いても、驚異の多様性を見ることが出来ます。
Bulb. cleistogamumの栽培に戻りますが、たまたま温室を整理していた時、トレーに廃棄同然の状態に置かれた30株ほどの本種が目に入り、廃棄する前にと、本種とそのマーケット情報を調べました。その結果、上記の本種の生態を知り、また国内のマーケットでは当サイト(当サイトでのコロナ前の価格は2,500円)以外に、1ラン園が10,000円で販売していることが分かりました。改めて世界のマーケット状況についてもネット検索しましたが、具体的な販売や価格を示す情報が見つからず、販売実績はほとんどない種のようで早速植替えることにしました。下画像左が散在していた本種を集めた株です。葉無しバルブや古い葉を整理した株数は、3-4個の葉付バルブを一株として、30株程あり、今回はこれらを一株づつ吊下げ板に植付けるのも手間がかかるため、複数株を60cm x 14㎝サイズの炭化コルク+ヤシ繊維マットへ寄植えることにしました。中央画像は植付け後の一部で、右株はフィリピンpolilio島、中央はキャメロンハイランド、左はボルネオ島からの株で、生息地詳細が分かっている株はフィリピンです。画像右は植付け後のバルブの一部を拡大したものです。
Coelogyne exalataの植替え
マスカットグリーンの鮮やかな花色をもつボルネオ島標高500-1,200mに生息のCoel. exalataの植替えを行いました。本種の浜松温室での開花は例年9月でもあり、7月末までにはと考えていましたが、今回はこれまでポット植えされていた7株を植替え対象としました。一方、植替えの際にはいつもマーケット情報をチェックしており、本種については最近のオークションで、葉付3バルブ(疑似バルブ)の株が9,000円を超える価格で落札されており、当サイトではコロナ前のサンシャインや東京ドームラン展で3,000円で出品してきたことから凡そその3倍の価格には驚きました。
下画像は花を除き23日撮影のCoel. exalataです。ポット植えから取り出した1株の葉付バルブは新芽を含め、5個から15個でした。今回の植替えで葉の無いバルブは全て整理し、葉無しバルブの削除で複数に分割された株は植替え時に寄植えで1株として戻しました。よって今回の植替えは剪定後も1株が葉付5バルブから15バルブとなります。下画像上段中央はポットから取り出した1株で、多数の根からその成長が伺えます。これまでの植込み材はミズゴケ/クリプトモス・ミックスです。画像に見られるように本種はリゾームが短くバルブ同士が接触し合うほど密集しており、こうした生態からは垂直板への取付けよりは、むしろポットやバスケットの方が、根を長く湿らせることが容易な点で栽培上適していることが分かります。右画像は葉無しバルブを取り除き、根や葉を洗浄し病害防除処理を終えた植え替え前の状態です。今回は全株、中 - 大サイズの木製バスケットへの植付けとしました。下段左は15葉からなる株の植え替え後の様子で、右は植付けを終えた7個のバスケットです。ちなみに右画像の左下に2枚の葉の先端が写っていますが、これはPaph. sanderianumの葉先です。すなわちCoel. exalataは当サイトでは高温室での栽培となっています。これらの内、5株程を販売予定です。
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Coelogyne exalata Borneo |
本種の生息標高域情報は諸説あり、当サイトでは500-1,200m、IOSPEでは600-2,700mとされます。初めての入手時、IOSPEの情報を基に中・低温室で栽培を始めたのですが、現状維持はするもののBS株にも拘らず2年間成長や開花が見られず、ボルネオ島キナバル山の気候も調べ、試しに2株ほどを高温室に移したところ、成長や1年後には開花も見られたことから、当サイトが入手したロット株は低地生息株と見做して他株も栽培場所を変えました。2回目のロットも同様な様態であったため2018年以降、全て高温室での栽培となっています。IOSPEに依れば本種の生息標高域は広く、栽培される方は入手時には販売元からその株の生息域情報を得ることが必要と思います。低温域株を高温室で栽培した場合、枯れる危険性が高く、一方その逆は、枯れることは無いものの成長や開花が望めません。標高域が不明な場合はそれまでの栽培環境と、その結果を聞かれることが入手後の栽培に有効です。ネット販売の中に、栽培はネット情報で調べて下さいと書かれた説明も見られますが、生息標高域の広い種については、販売される株がどの域からかは販売元以外分かりません。標高域が広いことは一般論として、その種は暑さ寒さに強いと云えますが、数千年に渡り特定の標高域環境で生存を続けてきたそれぞれの株にとっては、同一種であってもそれぞれに適した環境があります。開花を得るために低温と高温室の間を行ったり来たりして、こうした種の性質がこの20年近い栽培で、やっと分かってきたことの一つです。繰り返しになりますが、属種それぞれの性質を知り、それらに適した栽培を行うためには、国内には多数のラン愛好会があり、豊富な経験を持つ栽培の達人が多くいます。ラン栽培を本格的に始めたい人は、まず愛好会に入り、そうしたベテランから知恵を頂くことをお薦めします。
現在(18日)開花中の15種
この一両日の浜松では、70%遮光の寒冷紗下の温室であっても、午前10時頃には40℃を超える程の猛暑となっています。当サイトでは4棟の温室で原種を栽培しており、4棟全てにエアコンを設置しているものの、このご時世もあって、エアコンの使用は低温室の1棟のみとし高温室3棟は7年以上稼働を止めたままとなっています。このため、この一両日、高温室では午前10時と午後3時の2回、16℃の地下水を散水して温度上昇を37℃以下に押さえています。
そうした栽培状況の中で、8割以上の属種に新芽や根の発生と伸長が見られることから、昨年から始めた固形肥料による施肥を続けています。通常施肥は、夏期と冬期は控えるべきとされます。しかし季節と植物とが係る営みは自然界における事柄であって、温室と云う温度、湿度、輝度、通風などが人工的に制御された空間内では、季節とは関わりがなく、当サイトでは属種が持つそれぞれの生息範囲内を前提とした栽培環境にある限り、施肥の有無は、季節ではなく、それぞれの種が持つ特性、特に発芽や新根の発生・伸長などの様態(動き)を要因として行うべきものと考えています。
下画像で2段中央のセロジネはセパル・ペタルが鮮やかな緑色で、Coelogyne spとして2018年に入手した株です。リップのフォームはCoel. asperataに似ていますが花色はかなり異なります。セロジネの一部の種には開花始めから落花間近までの間に花色の変化が見られます。Coel. asperataでは薄黄緑からクリーム色への変化などです。本種も落花間近には若干、黄緑色へと変化しますがかなり緑色は残ります。花サイズはCoel. asperataに比べ一回り小型の5㎝で、微香ですが甘い香りがします。一方、緑系のCoel. pandurataやverrucosaとはリップやバルブ形状が異なります。手元の情報を調べると、Coelogyne mayerianaに似ているものの同定には更なる調査が必要と思います。
下画像のDen. ovipostriferumは現在20株程を栽培しており、その中のいずれかの株が開花し通年で花が見られますが、現在が最花期となります。リップ中央弁が黄色(左)とオレンジ色(右)を並べ比較してみました。それぞれ画像下の青色種名のクリックで詳細画像が得られます。
直近での植替えバルボフィラム3種 Bulbophyllum maxillare alba, refractilingue, gjellerupii
先週末(14-15日)にBulb. maxillare fm. alba、Bulb. refractiligueおよびBulb. gjellerupiiそれぞれの植替えを行いました。Bulb. maxillare fm albaは2019年フィリピンにて入手した株で、現在ネット上で本種のアルバタイプは当サイト以外見られず、現存する唯一の株かも知れません。増殖が必要と考え、毎年自家交配を試みているのですがいずれも胚の無いシイナとなっています。一方で株分けによる増殖を図るため栽培には細心の注意を払っており、この4年間で入荷時の葉付3バルブから20バルブ以上と驚異的な成長が続き、今回下画像左に示す5株に株分けしました。
Bulb. gjellerupiiはこれまで2株を栽培しており4月の歳月記でも取り上げましたが、その後も2-3輪の開花が先々週末まで続きました。現在新芽の発生が見られることと、先端のリゾームがすでに支持材を越えていたため4株に株分けし植替えをしました。画像に見られるようにいずれの種も支持材上での伸びしろ面積を1/3から1/2設けています。この空間も3年程で新芽で覆われると思います。左画像奥の2株を除き支持材は全て長さ40㎝サイズです。
当サイトでの垂直吊り下げ支持材は、伸びしろ面積を大きく取り、その面積にはミズゴケをほぼ全面に敷いています。この目的は3年間ほどは植替えを避けたいこともありますが、むしろ次のかん水時までミズゴケの保水力を利用して常に株の根周りを湿らせておくことにあります。ミズゴケが乾いた状態にある時は、シャワー等で与えた当初の水はミズゴケに浸みることなく表面をそのままの勢いで、あるいは表面張力で転がるように流れ落ち、その後ミズゴケに浸みていく様子が見られます。このような状態はすでに根周りが乾燥していたことになり、かん水のタイミングが遅すぎます。日常的にこれが繰り返されると株は成長しません。ミズゴケが湿っていれば、与えた水はそのままミズゴケに浸み込んでいき、濡れた状態(ミズゴケの色変化で分かります)が支持材の下部へと広がり、やがて支持材下部のミズゴケから垂れ落ちていきます。こうした状態を得るための環境を栽培者の日常生活のリズムの中で無理なく、どのようにして得るかが課題となります。一方で、自然界で木に根を張る着性植物にとっても雨の降らない日もあり、木肌は常に湿った状態を保っているとは限らず、それでも成長しているのであれば、栽培に於いても根周りは常に湿っている必要が無いのではと思われるかも知れません。着性植物と我々が住む環境が基本的に異なるのは、生息域での圧倒的な高湿度環境にあります。気根植物が長い根を空中に垂らしたままでも枯れることなく成長できるのは高湿度故です。同じような環境を栽培者が作ろうとすればエアコンも扇風機も錆びて、1年程で故障してしまうことを覚悟しなければなりません。
しかし株や花茎まで支持棒で固定されたポット植付けではなく、着性植物の自然界での成長や開花と同じような姿を鑑賞したく、吊下げ栽培を望まれる方は、上記のような視点で栽培を捉えてはと思います。栽培技術は多様であり、自分に適した技法を見つけ出すことも栽培の楽しみとなります。
Coelogyne dayana (Syn: Coelogyne pulverula)の植替え
Coelogyne dayanaはボルネオ、北スマトラなどの標高1,500m以下に生息するセロジネで、下垂する1m程の花軸に5-6㎝サイズの花を30-50輪同時開花することから多数の花茎で開花した景色は壮観です。当サイトでは2015年の最初の入手以降、8個の大型木製バスケットで栽培をしてきました。一方、大型セロジネの共通の問題として、植替えから2年間程は多数の花が得られるものの、やがて花茎の発生率が低下し始めます。その原因の多くが、本種は長く太い多数の根を活発に張り、限られたスペースの植込み容器ではやがて根詰りが発生し、根が枯れて葉無し疑似バルブが増えることと、新芽の成長も遅くなる結果、花芽が減少するためと思われます。こうした状況から多輪花を得るには、3-4年毎に葉無しバルブを整理した新たな植え替えが必要となります。
本種の開花は当サイトでは例年5月頃ですが、今年はバスケット当たり精々1-2本の花茎であったため、新芽が成長している今を見計らい、早速植替えを行いました。植替えは全て、新芽を含む葉付3バルブを1株として切り取り、葉無しバルブを全て整理しました。この結果、8個のバスケットから、26株を得ました。下右隣のトレーに並んだ多数の株がそれらです。これまでのバスケットからの取外しは、根がバスケットや根同士で互いに絡み合っており、これを力づくで引き千切り、根は根元から1/3程(15-20㎝)を残す選定となりました。こうした思い切った根やリゾームの切断はセロジネ故にできる処理で、他属でこのような手荒い処理をすれば作落ちが生じるか、順化期間が相当長くなります。これらをそれぞれ5-6株毎に束ね(葉付バルブ15-18個)、大型木製バスケットに新たに植付けます。右画像が植替え後の一つです。来年春には一つのバスケットから5-6本の花芽を得て、200輪以上の開花風景を期待しています。
さらに今回は、根詰まりによる根腐れを抑えて株を元気にする(花茎の発生を促す)手段として、1か月後の順化後には上画像右に見られるバスケットの下にミズゴケ・クリプトモスミックスを詰めた同サイズのバスケットを一個追加して取付け、バスケットを2段構成にして根張り空間を広げる予定です。手間は掛りますが、それにも増して本種の数百輪に及ぶ同時開花の壮観さを眺められることは代え難く苦にはなりません。ところで、今回の植替えで上画像右と同等の株サイズ・バスケットを4つ得たことから価格は未定ですが、その内2つを販売用とする予定です。下画像は4つのバスケット植付け株です。
Bulbophyllum catenulatumに見る個体差
Bulb. catenulatumは花サイズが1.5㎝ほどの小型のバルボフィラムです。IOSPEでは本種の生息標高域は1,000 - 1,800mとされる一方、J.Cootes著Philline Native Orchid Speciesでは1,500m以下とのことです。10年以上の栽培経験からは、ランの中でも珍しく同一株であっても、低温から高温までの広い温度範囲で栽培が可能です。この栽培可能とは、枯れないと云うのではなく開花も成長も得られるとの意味です。他属種で、こうした生息範囲を持つ種は、当サイトでの栽培種の中ではDen. trichostomumのみで、例えばBulb. kubahenseなど高温種からDracula属の低温種と同じ環境に置いても開花が見られます。当サイトでは現在トリカルネット植付けで多数のクラスター株を栽培しており、10バルブを1株として換算すると100株程となります。
一般趣味家にとって同一種を多数栽培することは、入手費用や栽培スペース等で難しいことと思いますが、現地でのラン園、特に2次業者においては本種のような小型種の販売は、束あるいはクラスター株での販売も多く、数バルブを1株換算にすると極めて安価です。こうした背景もあり、当サイトでは同種を多数株栽培していることも多く、この結果、同一種間での花フォームの違いを観察することができ、これも楽しみの一つです。下画像はBulb. catenulatumの4つの花フォームを先月末から今月にかけて撮影したものです。
Dendrobium reypimentelii; この不可解な花フォームを持つデンドロビウム
Den. reyimenteliiは2017年OrchiddeenJournal Vol5.1(1月)に発表されたミンダナオ島Bukidnon州標高1,600mの生息とされるデンドロビウムです。当サイトでは本種を80株程、2018年7月に現地から入手し、植付け後の株を2018年9月の歳月記にて報告しました。下画像上段が本種の開花風景で、右画像は今月1日撮影の株です。本種が不可解と云うのは、この5年間の栽培で同一入荷ロット内であるにも拘らず、視覚的に似て非なる多様な花フォームが出現することです。下段はいずれもこの1週間内での撮影で、左は一般フォームとされる本種ですが、中央の花ではリップ中央弁に淡い赤紫色の葉脈状の模様が見られます。この模様をもつ種は、標高1,400m生息とされる別種Den. jimcootesiiとしてDie Orchidee 2(10), 2016に発表されています。右の花は.葉脈模様がさらに明瞭であることに加え、セパル・ペタルのベース色と、リップ中央弁の形状が左2種の楕円形に対して円形です。左と右画像の花フォームだけで比較すれば両者は別種のように思われますが、ここで問題なのは、これら3つのフォームのそれぞれの間に位置する(特徴をもつ)フォームが80株程ある同一ロット内に多数存在することです。一方で全てのこれら株の開花期、花サイズ、Spurおよび株(疑似バルブや葉)形状に相違点は.見られません。
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Dendrobium reypimentalii (common form) |
Dendrobium sp aff. reypimentalii (Den. jimcootesii ??) |
こうした背景から、セパル・ペタルのベース色、リップ中央弁(Midlobe)形状および葉脈模様の濃淡についての多様性は、Dendrobium chameleonに見られるような種の特性であって、個体差の範囲内ではないかと考えています。一方で上記の本種青色の種名をクリックしリンクされるページには、上記とはさらに異なる花フォーム画像を掲載しており、このページではaff reypimentalii(類似種)としています。繰り返しになりますが、こうした一見似て非なる種には視覚による分類ではなく、DNA解析を用いた分子系統分類が必要と思います。
現在(4日)開花中の21種
7月に入って昼間の気温が32℃前後の日が続き、高温室内の温度は40℃近くに上昇し、まるでマニラやクアラルンプールの国際空港ビルを出たときの気温並みとなっています。このため連日、昼頃になると地下100m近くからの地下水(16℃)を散水(葉水)しています。
下画像で上段左のBulb. sibuyanenseは2015年頃から栽培をしていますが、バルボフィラムインデックス・サムネールには無記載でした。間もなく本種のページも追加する予定です。Bulb. mirumはBorneo、スマトラ、Java、マレー半島などの広域生息種です。しかし2019年に当サイトがフィリピンからルソン島生息種として入手し、2022年6月の歳月記にて報告するまで、フィリピン生息種としての記録はありませんでした。
Den. ovipostriferumは20株程を現在栽培しており、通年で開花が見られます。下画像の花はペタルの幅がこれまで見てきたどの花よりも幅広で、一般種に比べ1.5倍ほどあることから今回撮影をしました。またDen. uniforum albaは当サイトではリップ側弁の形状の違いからform1とform2とし区別しています。一方、Den. stratiotesは5月5日が初花で1週間程で全開し、現在まで2ヶ月間に渡って開花を続けています。デンドロビウムの中で、1輪も枯れることなく2ヶ月間咲き続けられる大輪で多花性、且つ高温タイプ種は極めて稀です。それぞれ青色種名のリンク先に詳細画像があります。