栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2022年度

 2023年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月

4月

現在(27日)開花中の12種

 現在開花中の12種を選んで撮影しました。下画像のBubl. sp aff. uniflorumBulb. virescensに似ているものの、別種のようで現時点では同定が出来ていません。現在15株ほどを栽培しています。Bulb. sp31は、IOSPEに掲載のBulb. recurvilabreに似た形状ですがBulb. recurvilabreとは花、株および香り共に異なっており、未登録種ではないかと思われます。下画像の種名sp31をクリックするとその比較画像が見られます。6株を栽培中です。Den. atjehenseは成熟した疑似バルブ形状以外、花形状からはDen. spathilingueとの明確な違いを見出すことが困難で、間もなくDen. spathilingueの開花期となるため相違点を詳細に調べる予定です。一方、Den. amboinenseが一斉に開花中です。AOS(American Orchid Society)によると、本種は極めて稀な種(extreme rarity)とされ、そのページには米国における過去の栽培事例が見られます。当サイトでは現在野生栽培株を15株ほど栽培中で、コロナ前は3,500円で販売していましたが、花は大きく独特の個性のある形状である反面、長く下垂する蕾は3日、開花は2日(全開1日)の短命花故か、ほとんど購入者のいない種の一つです。現在は販売していませんが、海外マーケットでは野生株は入手難なようで実生化を検討中です。各種画像下の青色種名のクリックで詳細情報にリンクします。

Bulbophyllum sp aff. uniflorum Sulawesi Bulbophyllum translucidum Leyte Bulbophyllum sp31 Mindanao
Bulbophyllum siamense Sumatra Coelogyne usitana Mindanao Coelogyne celebensis Sulawesi
Dendrobium yeageri coerulea Luzon Dendrobium uniflorum Borneo Dendrobium atjehense Sumatra
Dendrobium amboinense Ambon Isd. Dendrobium anthrene Borneo Vanda limbata Indonesia

Palawan生息のCirrhopetalum節バルボフィラム(sp27)について

 下画像はフィリピンPalawan生息の種名不詳種として、2017年5月に入手したバルボフィラムです。当サイトでは2018年2月に本種の初開花を報告しました。現在sp27としてバルボフィラム・サムネールに掲載しています。本種の花フォームは、一般に開花当初は透明感のある淡い黄緑色で、次第にやや黄味が増していきます。リップ中央弁は黄色の単色でalbaフォームとも思われます。現在30株ほど栽培しており毎年3-4月の開花で、花全体の大きさは下写真上段中央に示す5.5㎝程が一般サイズとなります。しかし今月、これまでトレーにヤシ繊維マットとミズゴケを敷き、その上に5年ほど置いたままの株の中から、8㎝を超える大きなサイズの花が2株見つかり、この機にと全株の中から1株が7葉以上の株を選び植替えをしました。上段左右の写真は植替え後の開花株の一部です。一方、下段は上段の1.5倍(8㎝)サイズの花です。このサイズは希少と見做し、その2株を開花終了後(21日)に右写真の40㎝杉板へ別途取付けました。

Bulbophyllum sp27 type1(Common size)
Bulbophyllum sp27 type2(large size)

 本種は花の色合いが多様で、開花当初からセパルが淡い黄色や白色に近いフォーム、また写真上段のように当初は淡い黄緑色で、やがてやや黄味が増すフォーム、また下段に見られる淡い黄緑が落花までほぼ同色のフォームがそれぞれ見られます。これらの色合いの違いは、トレーや、炭化コルク植付けいずれも同一栽培環境内にあるにも拘らず毎年再現しており、この個体差は元株の生息域に依存しているのではと思われます。sp27の詳細はこちらです。

現在(15日)開花中の21種

 桜の開花も終わり、晴天日の温室内では昼間、寒冷紗を降ろすことが必要になってきました。下画像は現在開花中の21種です。青色種名のクリックで詳細情報へリンクします。

Aerides odorata alba Pen Malaysia Bulbophyllum japrii NG Bulbophyllum sp27 Palawan
Bulbophyllum whitfordii Palawan Bulbophyllum sp20 Cameron Highlands Dendrobium bullenianum Luzon
Dendrobium ellipsophyllum orange Palawan Dendrobium erosum Sumatra Dendrobium sp aff. punbatuense Borneo
Dendrobium rindjaniense Lombok Isd. Dendrobium crocatum Pen Malaysia Dendrobium roslii Pen Malaysia
Dendrobium cinereum Borneo Dendrobium insigne NG Phalaenospsi lueddemanniana Mindanao
Phalenopsis corningiana Borneo Phalaenopsis modesta Borneo Phalenopsis inscriptiosinensis Sumatra
Vanda javierae Luzon Vanda sp aff. tricolor Indonesia Cryptostylis arachinites Cameron Highlands

Bulbophyllum gjellerupii

 2016年末に入手したバルボフィラムgjellerupii(この文字gjeの発音が分からない)が現在開花中です。下写真に示すように左右のラテラスセパルは上を向き、その間からリップ先端部が飛び出しています。こうした倒立花はBulb. macranthumpatensなど数種のバルボフィラムで見られます。しかし本種は他の類似種と異なり花は終始、半開きの状態で1日も全開する様子が見られません。柑橘系の香りがあり、これでポリネータを誘っていると思われます。今回は1株に5輪の同時開花が見られたので撮影しました。右2枚の画像は、本種のリップを示すために片側のラテラルセパルとペタルを取外し撮影したもので、先月の歳月記で取り上げたBulb. fraudulentumのリップ構造と似ています。画像下の青色種名のクリックで詳細情報が見られます。

Bulbophyllum gjellerupii Papua Newguinea リップ先端 通常状態 リップ先端 反転状態

1-5日撮影の6種

 下写真は1-5日に撮影した花です。Den. balzerianumはフィリピン・レイテ島生息の、開花は僅か1日で全開状態は午前中の半日しかない短命花種です。しかし多くの販売や紹介ページには本種が短命花である説明が見当たりません。1日花と書けば売れなくなるからでしょうか?IOSPEにもその性質の記載が無く、一方でAndy's Orchidsでは花画像が本種ではなくDen. decoratumが掲載されています。比較的新しい種のため情報が少ないようです。今回開花したDen. ovipostoriferumはリップのオレンジ色が一般種と比べ濃色であったため撮影しました。Den. annaeは浜松温室では1年で2-3回開花しています。下画像の花フォームはペタルやセパル先端部に赤い斑点の無い全面白色のフォームで、このフォームは当サイトにこれまで入荷した30株程の内でもごく僅かでした。赤い斑点は株により濃淡があることから、当初は無斑点タイプも環境の変化で赤色が現れるのかと思いましたが、入手してから9年間、そうした変化は無く、このフォームは固有(変種)と考えています。Den. hymenophyllum flavaは、花被片のベース色が黄緑色で、当サイトのDen. hymenophyllum spot(punctata)種に見られるような細かな赤褐色斑点が無いことからflavaとしました。一方、斑点の無い緑色系のDen. hymenophyllumがネット上に1点見られますが画像を拡大すると、リップ中央弁形状が本種とは異なっているように見えます。Vanda helvola albaは、今年は7輪の同時開花でした。

Dendrobium balzerianum Leyte Dendrobium ovipostoriferum Borneo Dendrobium annae Sumatra
Den. hymenophyllum fm. flava Sumatra Vanda helvola fm. alba Sumatra Paraphalaenopsis labukensis Borneo


Bulbophyllum championii

 Bulb.championiiは2019年6月Orchid Reviewで発表されたニューギニア生息の新種です。当サイトでは2017年3月の歳月記に、インドネシア・サプライヤ-から送られた画像を掲載し、2019年5月には1株が5-10バルブサイズの本種を20株程、マレーシア経由で入手、この際の株と植付けを同月の歳月記で取り上げました。しかし、この時点では種名が不明でBulb. longicaudatumのyellowフォームに似たsp(その後sp17)とし、2019年のサンシャインラン展にも出品しました。今回改めて本種をBulbophyllum championiiとしてページの更新となりました。2023年まで種名不詳とした背景は、本種のラテラルセパル先端の線状突起の長さが様々で、2017年の画像では、この突起は非常に長く、また同じサプライヤーからの2019年の画像は短く、この形状が個体差と云うよりは別種の如き相違点が見られ、同一種との判断が難しいことにありました。下画像はこうした背景となったそれぞれの花形状です。

2017年3月 Photo from Indonesian supplier 2019年5月 Photo from Indonesian supplier 2020年10月撮影。当サイトでの栽培種 

 上の写真左と中央はインドネシアサプライヤーからの2017年と19年の写真。また右写真は中央写真の株をマレーシア経由で当サイトが入手し、浜松温室にて得た開花画像です。右写真では、左右のそれぞれの花のラテラルセパル線状突起の長さが異なって見えますが同一株での(同時開花)花です。同じサプライヤーにも拘らず2017年と19年の花形状は同一種とは思えない程の相違が見られます。また現在ネットで多く見られる花形状は2019年写真のフォームが殆どで、左2017年の線状突起の長いフォームは写真の出所が2-3種しかなくマーケットでの実態は殆ど無いと思われます。 一方、IOSPEの本種名のページでは線状突起の長いフォームと見られます。IOSPEのページでの問題点は本種の生息温度帯をクールとしていることです。当サイトの実栽培では高温室にて成長と開花が見られることから本種は低地生息種と考えられ、開花期は春(3-4月)と秋(10月)の2回となっています。一般的にクールタイプの種をPhal. schillerianaVanda sanderianaあるいはBulb. kubahenseのような高温タイプ種と同居(当サイトでは同じ環境)させれば、日本の夏は越えられません。逆に高温タイプをクール室に置いた場合は、暫くは現状維持が出来ても開花は極めて困難です。

 このように本種については栽培実態に基づく確定的な情報が少なく、これまで当サイトでは2017年と2019年のフォームとは異なる種である可能性を考え、種名不詳としてきましました。しかし、最近の本種名でのネット検索では2019年フォームがBulb. championiiとして多数占めるようになったことから、当サイトの栽培株もsp17からBulb. championiiに改名することとしました。下右写真は昨日(1日)の撮影です。蕾を含めると11輪となります。2019年の本種の入手時の株が当歳月記2019年5月で見られますが入荷時での葉やバルブは痩せて少なく1株当たり5個程度でしたが、現在はバブル・葉数ともに高温室での4年間の栽培で4倍程に成長していることが分かります。更新した本種の詳細は青色種名のクリックで見られます。

Bulbophyllum championii NG (New Guinea)

前月へ