5月
Dendrobium aurantiflammeumの植替え
当サイトでは現在、45株のDendrobium aurantiflammeumを栽培しており、晩春から初夏は新芽の発生や、成長が活発になる時期でもあり。今回全ての株を新しい木製バスケットに植替えしました。植替えでミズゴケを交換する際、バルボフィラムと同じように古いミズゴケを強いシャワーで一気に洗い流すことが出来れば、作業時間が大幅に減るのですが、本種の新根は折れや引っ張りに弱く、水圧で多くの根が千切れてしまいます。そのためピンセットを用いて根周りの古いミズゴケを少しづつ剥がしながらの気を遣う作業となり、全株の植替えに3日を要しました。下写真の中央及び右は本日(31日)撮影の、植替え後の様態で、45株の7割程の株が背丈1m長前後のサイズです。これから1か月間程が順化期間となります。
Bulbophyllum recurvilabreの開花
2021年5月の歳月記にてBulbophyllum recurvilabreの、炭化コルクから50cm長のブロックバークへの植替えを取り上げました。植替え時は中央写真に示す葉付バルブが10個の株でしたが、2年間で左写真に見られるように21個に成長し、現在7本の花茎を発生し開花しています。今期は現時点で開花待ちの蕾を含め植え替え時の期待通り、20輪程となりました。一方、右写真は3ヶ月前に83㎝長のブロックバークに新たに植付けたBulb. recurvilabreで、新芽を含め葉付バルブが30個あり、こちらも2年後を目途に50輪程の同時開花を目指しているところです。本種の花はNS(自然体)で縦幅が10㎝あり、黄色をベースにリップの赤とセパルの赤褐色の斑点が良く目立ち、数十輪の同時開花ともなれば可なりの見応えになると思います。
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右株の本日撮影(2023年5月29日) |
植替え時: 葉付き10バルブ(2021年4月27日) |
新植付株(葉+新芽付30バルブ、83㎝バーク) |
Dendrobium intricatumに見る花色の個体差
タイからベトナムにかけて低地に生息するDendrobium intricatumが、現在複数の株で開花しています。デンドロビウムには開花時から落花するまでに、花色の濃淡や黄緑系の色変化が一部の種で見られます。こうした変化は輝度や温度に影響を受けることもあります。本種も開花期間中には僅かな濃淡の変化があるものの、同一栽培環境下にて明瞭な個体差が観察されることから、それぞれの花色を撮影しました。更なる色変化も青色種名のクリックで見られます。
現在開花中の27種
このところの気温の上昇で当サイトの高温室では昼間37℃、夜間20℃前後になっており、多くの原種に新芽の伸長や開花が見られます。現在開花中の27種を選び撮影しました。初段のAeride quinquevulneraとinflexaはいずれも一般種のカラーフォームと異なり、赤紫(purpurata)色の変種で、両者の違いは前方に伸びた黄緑色の突起(Spur:距)が前者は先端が上向きにカーブしているのに対し、後者はやや下方に真直ぐ伸びていることとされます。Paph. lowii albaは当サイトでは初登場ですが、ネットで見る本種のアルバの中では最も美形なフォームの一つと思います。最下段のPassiflora(トケイソウ)とAdenium (砂漠のバラ)はランではありませんが、ランとの同居温室にて現在開花中です。画像下の青色種名のクリックで詳細画像がそれぞれ見られます。
現在開花中のバルボフィラム3種
当サイトにて現在開花中で、これまでで1株当たりの開花数が最も多いバルボフィラム3種を選び撮影しました。Bulb. bandischiiは1株当たりの同時開花数は2-3輪ですが、今期の開花では下画像に見られるように左株が5輪で、右株は4輪となっています。これらは1週間程前にそれぞれの株で4輪程が開花しており、それらが終わると共に始まる新しい花茎での開花となっています。中央は1株に同時開花数が10輪のBulb. siamenseです。右のBulb. lasioglossumは通常、花茎は2-3本ですが右画像では5本で、最も多い花茎当たりの花数は50輪程です。Bulb. bandischiiは高温室、他の2種は中温室での炭化コルク付けの栽培です。花数は株サイズに比例しますが、株サイズが大きくなると植え替え時に、そのままの大株にするか、株分けするか迷うところです。
Bulbophyllum magnumの開花
本種は2013年発表された新種のバルボフィラムで、今年2月の当歳月記にて植替えの詳細なプロセスを取り上げました。本種はマーケット情報が少なく、このためか花画像も同様で、栽培情報もほとんど見当たりません。IOSPEは本種の生息域を1,200mのクールタイプとしていますが、40株ほどの当サイトでの栽培実態からはクール環境下では開花がなく、高温環境にて成長や開花が盛んに見られることから、生息域は低地と結論付けています。また本種の花茎当たりの花数は2-3輪ですが、ネット画像検索での開花写真を見る限り、殆どが2輪咲きで、3輪開花の画像は当サイトのみのようです。それもあって今回1株に2つの花茎が発生し、それぞれに3輪の同時開花が見られたため、こうした様態は稀と思い、12日に撮影しました。
上画像は2020年に60㎝炭化コルクに植付けた株で、今年2月の植替え株ではありません。画像に見られるように先端のバルブはコルクからはみ出しています。また植替えから3年間でコルク表面にはコケが覆っており、根は常に湿った状態を保持した栽培法であることが分かります。この株も落花後には植替えとなります。本株もPaphiopedilum sanderianumやrothchildianumなどと同居した高温・高輝度での栽培環境としています。
フィリピン生息のPaphiopedilum sp alba
フィリピン生息でBarbata節であろうパフィオペディラムのアルバフォームが現在開花しています。下写真がその画像です。同国の生息種であるPaph. hennisianum fma. christianseniiと類似するものの、ペタルの先端部の後方への反りがないことや、蕊柱(column)の形状などが異なることから別種と思われます。また形状が類似するPaph. wardii var. album等とは生息国が異なり、現在同定の確定的な情報を調査中です。
Bulbophyllum sp aff. uniflorumの植替え
現在開花中の種として先月、Bulb. uniflorum, Bulb. virescence あるいはBulb. binnendijkiiに似て非なるSulawesi島低地生息の本種を掲載しました。花姿は下写真に見られるように同時開花性で、5輪程が全開した時の花の全体サイズは15㎝程となり、色合いや花姿はダイナミックで良く目立ちます。入手時は5株でそれぞれ葉付バルブ数が4-5個の株サイズでしたが、7年間の栽培と2回の植替えで3倍ほどになりました。今回、1株当たり葉付バルブ数を7-12個として60㎝炭化コルク+ヤシ繊維マット支持材に植付けました。写真右が植替え後の様子です。伸びしろ面積を多く取っていますが2-3年で超えると思います。
本種の栽培で問題なのは、その花の匂いです。Beccariana節はいずれも好まざる匂いがありますがその程度は種によって様々です。しかし本種は元気な株であればある程、バルボフィラム属で数本の指に入る程の強い悪臭を放ちます。このためワーディアンケースのような限られた空間で栽培するには相当の覚悟が必要です。まして室内での栽培ともなれば家族全員から大目玉を食らうこと必定です。観葉植物の花の中には、この世のものとは思えない悪臭を放つコンニャク系芋類がありますが、ラン展でこれらを嬉しそうに買われる人もいることを考えると、その匂いも魅力の一つだという風変わりな人も世の中には少なからずいるかも知れません。しかし販売者が臭い々と云っていては売れなくなるのではと思われるかも知れませんが、短命花もそうですが、そうした種の個性を予め説明しておかないと、それを知らずに買われた方から後で叱られるよりはマシであろうかと。一方で虫媒花としてハエやアブを呼び寄せ、子孫を何としても残したい故の進化の結果として生み出された匂いであれば、花を眺めながらこの匂いも奥深いと、妙に納得してしまいます。
Bulbophyllum kubahenseのその後III
昨年10月末に60葉から成るBulb. kubahenseを5株に株分けし、その後の成長の様子を2ヶ月前に取り上げました。再び現在(6日)の様子を報告します。下画像は左が先の’現在開花中の21種’に掲載したBulb. kubahenseで、株分けした5株の左から4番目の株の花です。また中央は今回取り上げる3番目の株で、この株には、これまでに見たことが無い様態で、新芽が同時発生しています。それが右写真で、中央を覆っている葉を避けて斜めから撮影しました。この株は3本の長い茎(リゾーム)が平行に植付けられており、中央列の葉が比較的小さい茎のほぼ全てのバルブ基から新芽が同時発生し、右画像に見られるように1列に並んで4芽が同じ長さ、ペースで伸長しています。左側に伸びた2本の小さな芽は、別の茎から発生した新芽です。
他の4株を含め、何がこうした異様な新芽発生のトリガーになっているのか分かりませんが、60葉の大株であった環境と比べて、温度、湿度、輝度、通風およびかん水頻度の5つの基本要件は変わっておらず、唯一異なるのは新たに植え替え時から固形肥料を与えていることくらいです。しかし規定量の施肥だけで、これまでの栽培と比較し、これ程の違いが生じるとも思えません。さらに成長の推移を観察してゆく予定です。
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Bulbophyllum kubahense |
2022年10月植替え株 |
2023年5月6日撮影 |
現在(5日)開花中のデンドロビウム9種
画像下の青色種名のクリックで詳細情報が得られます。Den. carinatum(後記:種名をjunceumに変更しました)は一般フォームはセパル及びペタルに濃淡はあるものの赤色のラインが入りますが、今回開花した花のセパル・ペタルは、くすんだ黄色の完全な無地でネットで調べる限りではこの色合いは見当たりません。セパル・ペタルが白色の無地は1点、OrchidRootsで見られます。いずれも稀なフォームと思われます。
当サイトのDen. stratiotesの株は2m程になり、現在多数の蕾を付けています。下画像はその中で最初に開いた花です。全開は3 - 4日後になります。Den. olivaceum flavaは2016年マレーシアの原種趣味家から現地で入手した株です。現時点のネット検索からは他に該当種が見当たりません。本種のグリーン系フォームはmarni turkelのページに掲載されてはいるものの茶系色が残っていることが分かります。ネット情報以外でのflavaフォームの存在は不明ですが、すでに2016年末の入手から7回となる毎年の開花において色変化はなく、このカラーフォームの遺伝子を持つ変種と考えられ極めて希少価値が高く、入手を希望される方は自家交配によるフラスコ培養の実生を待つことになると思います。
現在(3日)開花中の21種
現在開花中の21種を撮影しました。下画像でBulb. fascinator crazonaeはドーサルセパルからラテラルセパル先端までの長さは25㎝(本種ページを更新しました)です。通常花サイズは15㎝から20㎝程とされ、当サイトでの25㎝はこれまでの最長となりました。またカラーフォームが、あずき色のセパル・ペタルに、白色のリップのBulb. gracillimum dark redは30株ほどを栽培している中で画像の1株のみです。
当サイト掲載のDen. wattiiはDen. infundibulumとの情報があり、本種の種名については2017年2月の歳月記で取り上げています。一方、先月の歳月記でDen. atjehenseについて、Den. spathilingueにもセパル・ペタルに斑点の無い白色フォームがあり、両者の識別が困難と記載しましたが、リップに形状の相違点を確認し、比較画像をDen. atjehenseのページに追加しました。
昨年末に長期間植替えの無かった多花系パフィオペディラムの植付けを取り上げました。その際、根をかなり整理したため多少の作落ちを覚悟したものの、45株程のPaph. rothchildianumの内22株が、また15株のPaph. gigantifloiumでは8株が現在開花中です。当サイトでのパフィオは春と秋が開花期のため、この期に開花の無い株は秋に開花が見られると思います。
Bulbophyllum prasinoglossum
Bulb. prasinoglossumは2018年のOrchideenJournal Vol. 6.2に初記載された、フィリピン・ミンダナオ島Bukidnon標高1,200mに生息する新種のバルボフィラムです。当サイトでは2018年6月に入手し、同年9月の歳月記にBulb. inacootesiae、marknaiveiと共に、炭化コルク取付後の株を紹介しました。しかし、前記2種は入荷後1年以内に開花が得られたものの、本種には開花が見られず、中温室にて凡そ5年が過ぎました。そうした中、先月2株に蕾が確認でき、先週開花が始まったため撮影をしました。それが下写真です。そこで本種について改めて前記Journalを始め、ネット情報を検索したところ、最初の発表から5年も経過しているにも拘らず画像はJournal掲載の花と株の2枚とOrchidroots(寄稿者2名)、他に一サイトしかなく、栽培情報は見当たりません。おそらく入手や開花共に極めて難しい種と思われます。不思議なことはOrchiddeenJournalの花画像ですが、なぜか現地サプライヤーから、当方が発表前に得たものと同じです。さらに、Journalに記載されている寸法等のデータと現在開花中の実体(花や株)とは、多数の異なる点があり、そこで今回、バルボフィラム・サムネールへの本種の追加と、下画像の青色種名のリンク先にメジャーを入れた詳細画像を掲載することにしました。
まずOrchideenJournalでは本種の葉形状はへら型(spathulate)で、その先端は凹型(emarginate)。また葉は長さ1.5㎝、幅2mm (記載ミス?)とあります。さらに花軸(rachis: 最初の花から先端までの軸の長さ)は1.9㎝
。花は無臭とのことです。IOSPEにも本種ページがありますが画像を含めJourrnalの内容を引用しており、執筆者自身の実体観察を基にした記載ではないと思われます。いずれにしても花画像が少ないことから開花の難しい種と考えられます。当方から本種を購入された方も数人おり、またサンシャインラン展に出品もしたことから開花後には栽培方法を取り上げる予定です。