栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

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9月

Dendrobium tobaense var giganteum?という品種名の謎

 マーケットにはDen. tobaense var. giganteumと称される株があり、当サイトでこのような変種は確認されていないことを再三取り上げてきました。giganteumと云う名称を耳にしてから数年経ちますが、未だにマーケットにこの名称が残っていることで、今回整理するために再度取り上げてみました。いろいろなネットの記述の中には以下のようなvar. giganteumについての言葉が見られます。
  1. NS(自然状態での花サイズ)は12㎝位
  2. 新たに発見されたのは低地で標高500m-1,000mに生息。比較的高温栽培でも問題はないようで育てやすい
  3. 通常一般種は40㎝程の疑似バルブ(茎)長であるが1m近くになるものがある
  4. 根元は以外とドライな環境が良い
  5. 暑さに強く寒さに弱い、山上げをして寒さで枯らした人がいた
  6. 1993年トバ湖北東部の湖岸でtobaenseが発見された。その中で特に大きなサイズ(OrchidWeb)
 まず1項について、左右のペタルあるいはラテラルセパル間の幅が12㎝位といった数値は、一般種であっても疑似バルブが太く充実すれば、花サイズは10㎝-12㎝長となり、NS12㎝の株を変種var.とする分類学的根拠が不明です。またgiganteumとされる花を定規と共にそのサイズを示す画像がネット上には見られず、さらにそれらの画像の花の多くは葉長と比較してNS12㎝に満たないと思われる株が多数です。giganteumはgigantic巨大との意味で、であれば一般サイズの1.5倍以上が想定され、一般種で12㎝あることを考えると18㎝以上となります。しかしサイズを定義した情報は見当たりません。

 2項について、OrchidWebには6項の記載があり、この場所は最初にDen. tobaenseが発見された生息地で、その中の特に大きな花フォームがgiganteumとの解説があります。しかしサイズの定量的記載は無く、また低地生息種とは記載されていません。トバ湖水面は標高905mであり、一般種が生息する標高は750m -1,500mとされます。この標高は年間平均気温が25℃で、OrchidWebでは栽培温度はintermediate-warm (AOSによるとこの表記の夜間平均温度は12-21℃)としており、当サイトで云う中温から低温です。一方、マーケットにあるgiganteumとされる株は全て実生と思いますが、国内説に見られる低地生息とするのであれば、実生の親の生息地はどこか、具体的地名はどこにも明記されていません。。

 3項について、当サイトでは200株ほどをこれまでの7年間で扱ってきましたが、スマトラ島のサプライヤーも疑似バルブが1m近くになる株はこれまで見たことはないそうです。もしそれほどの背丈があり、且つ花を付けた画像(花が無ければ株の同定ができない)が存在すれば見てみたいものですが。

 4項と5項は低地生息種を前提とした推測と思われます。Den. tobaenseの一般栽培条件とは全く異なる環境としています(一般種であれば枯れる危険性が高い)。果たしてこのような環境にてgiganteumとされる株が元気に成長し、毎年花を咲かせているのが事実とすれば驚きです。その実態を示す情報を得たいのですが海外サイトを含め高温で上手く育っている情報は何処にも見当たりません。寒さに弱い??Den. tobaenseを山上げした結果、寒さで枯らしたとなれば昼夜を問わず10℃以下に長期間置かれたものと思います。しかし夏の山上げでのこれ程の低温環境は聞いたことがありません。原因は温度ではなく、かん水不足では。Den.. tobaenseは根の乾燥を最も嫌います。伝聞とは云え、このような栽培に係る事柄が伝えられると、それを真似て枯らす栽培者が現れるかも知れず、確固とした実体験を経ての情報であるべきと思われます。

 前記1-5項は全て伝聞とされており、ではそれを最初に語った人は誰か、あるいはサイト名は?それが分かれば、実体験を通しての話なのかどうかを直接伺うのですが。またこのvar. giganteumと名称した最初の人は誰なのかも現時点では分かりません。var.と称する以上、自然界において一般種とは排他的(異なる)地域での生息群がある筈ですがこれも分かりません。’誰かが言っていた’状態です。また商品名として誰が最初にこのvarの付いた名称をカタログに記載したかも不明です。一般種と比べて2-3倍近い価格で販売する以上、販売する側としては顧客から上記の不明点が問われた場合、説明責任があると思うのですが。giganteumとされる品種を購入して、もしNS10㎝以下の花が咲いたら、それは栽培が下手からとなるのでしょうか?それとも返金?低地生息云々はgiganteumという名に尾ひれがついての作り話のように思えます。更にこの結果、高温タイプとなってしまった??のかも知れません。一方、選別実生では分類用語であるvarは付けられません。誤記となります。また実生であっても遺伝子的にそのサイズが継承され得る特性があれば株サイズに関わらず大きな花が咲く筈ですが、果たして入手された趣味家の株は、株サイズや栽培期間に関わらず全てがNS12㎝ほどになっているのでしょうか?株がまだ若いから、まだ環境に慣れていないから花が今のところ小さいとするのであれば、それはvar. giganteumではなく一般種です。言い換えればvar.を付けず単にgiganteumであれば、よく入賞株に付ける愛称と同じ意味合いになり、フォームや変種定義ではないので問題は無いのですが。

 下写真は当サイトで現在開花中の野生栽培株Den. tobaenseのラテラルセパルのサイズを示したNS11㎝ (上段) およびNS12㎝ (下段)の画像です。いずれも今年5月入荷の順化後の浜松での初花です。当サイトではこれらロット株の価格は従来通り4,000円です。疑似バルブの長さはいずれも35㎝程です。野生栽培株での観察では、花サイズはバルブの長さではなく、太さに大きく影響されます。これまでの栽培経験ではバルブが細い株は40㎝程の長さであってもNSは8㎝止まりです。またDen. tobaenseを今年の夏のような酷暑のなか、胡蝶蘭原種Phalaenopsis節と同じような高温環境(夜間平均温度25℃以上)に同居させていたら、間違いなく新芽は縮れ落ち、さらに根元を高温下で長期間乾燥させていれば、やがて枯れていたと思います。

 根がしっかりと張り、バルブが太く充実していれば一般種であっても下画像が示すように10-12㎝は普通です。それだけDen. tobaenseの花は株サイズと比較して不釣り合いなほど大きく、またその花姿も奇怪と云うか、ユニークで魅力的です。本種の栽培例についてはこちらのページを参考下さい。

Den. tobaense

現在開花中の花

 下写真は現在(27日)開花中の原種です。上段左、中央は南米種です。南米種は凡そ480種を現在栽培していますが、やっと整理をし始めたところです。

Anguloa eburnea Peristeria lindenii Den. sanguinolentum
Den. erosum Vanda merrillii Vanda ustii

Dedrobium tobaenseDendrobium toppiorum subsp. taitayorum

 今月の歳月記で取り上げた標題2種の花が開花しており、昨日(25日)に撮影しました。左写真のDen. tobaenseは左の花のラテラルセパル左右スパンは11㎝、右は10.5㎝です。写真右のDen. toppiorumいずれもスマトラ島Acheの生息種です。

Den. tobaense Den. toppiorum subsp. taitayorum

Aerides magnifica (Aerides odorata Complex)

 Aerides magnificaはフィリピンCalayan諸島生息で、2014年に固有種として登録されました。9月末現在、Aerides magnifica, magnifica albaおよびAerides quinquevulneraがそれぞれ、浜松温室にて同時に開花しているため、それらを撮影した画像を並べて見ました。マーケットを見るとオークションでAerides magnificaが24,000円となっていますが当サイトの現在の価格は野生栽培株でその約1/5の5,000円、大株で8,000円です。albaタイプでも20,000円です。Aerides Complex、特にAerides magnificaAerides inflexa,などを扱う入手ルートは限られている上に管理がずさんで、これらのロットにはAerides odorataquinquevulneraなど一般種が頻繁に混在し、園主とはFace to Faceで花を確認していることを条件に入手する必要があります。

Aerides magnifica Aerides magnifica f. alba Aerides quinquevulnera

Coelogyne moultonii

 ボルネオ島キナバル山を中心にSabah標高1,100-2,400mのコケ林に生息するセロジネCoel. moultoniiが開花中です。2014年3月にCoel. clemensiiCoel. hirtellaCoel. kinabaluensis等と共にマレーシアから入手したものです。入荷時は20㎝程の線形葉長でしたが、成長するとバルブがバスケットをはみ出すため、4-5バルブ毎に株分けしながら5年以上経過しました。下写真は葉長48㎝、幅8㎝となった株で、24輪が開花しています。バルブは円柱形で長さ28㎝、断面はやや楕円形状で長軸1.8㎝です。中-低温室にての栽培となります。

Coel. moultonii

スマトラ島、スラウェシ島、ボルネオ島など熱帯常緑季節林や熱帯雨林帯のFormosae節の栽培について

 マレーシア訪問が、現地ラン園のGeting Highlandsでの造園が遅れていることから、行きそびれています。それまでは時間に余裕があるため、現時点では温室の片隅の南米の蘭を始め、特にspとされた種名不詳種を中心に植え替えをしているところです。そこで多くの趣味家が栽培に困っているDen. tobaenseやDen. toppiorumなどFormosae節について考察してみました。7,000文字以上のレポートなのでこのページでは長文過ぎるため、下記のページに記載しました。ご参考下さい。

熱帯常緑季節林や熱帯雨林帯のFormosae節の栽培について

現在開花中のArides magnifica albaDendrobium dianae alba?

 今年2月入荷のArides magnifica albaが開花しました。Aerides magnificaは淡いピンク色の花フォームをもつフィリピンCalayan諸島の固有種で、2014年まではAeries quinquevulneraの変種あるいはAerides odorata Calayanタイプとも呼ばれていました。下写真左の今回開花株はそのアルバで、2月の入手時はalbaではなく、Aerides magnifica whiteとなっており、一部にピンク色あるいはリップに薄い黄色が残っているではないかと推測し、Aerides magnifica albescense(albaに似た)として数株販売しました。しかし写真に見られるようにセパル・ペタルおよびリップの全てが純白色のalbaでした。

一方、中央はDen. dianaeのalbaともflavaともとれる花が開花しています。本種は薄黄色をベースにリップ基部の側弁辺りに茶褐色の斑点が入るフォームと、ドーサルセパルとぺタルに赤いラインの入る2つのフォームがあります。本種は前者に近いフォームですが、リップ基部に斑点がなく全体が薄緑の単色です。下写真中央が今回開花した花で、右は一般フォームです。

Aerides magnifica alba Den. dianae alba/flava? Den. dianae common form

Dendrobium nafisae

 3日前の9月18日発行のドイツOrchideenJournal Vol.7-2に掲載された新種Dendrobium nafisaeが、当サイトのデンドロビウムページにあるsp8と同種の可能性有りとの情報を知人より頂きました。本種は2015年12月にスマトラ島生息種Den. fitrianumに混じって入手したもので、歳月記2017年2月と2018年1月に紹介しています。

現在当サイトで在庫するデンドロビウムやバルボフィラムにはかなりの種名不詳のsp種や未開化株があり、こららの中には新種や希少種の可能性もあり、これまで花がなかなか咲かないsp種は温室の片隅に忘れ去られ、やがて枯れ落ちていくこともあるため今秋には新たに植え替えをし、もう少し日の当たる場所に移そうと考えているところです。

Sp8 (Den. nafisae)

Vanda arcuata

 北スラウェシ島低地生息のVanda arcuataが入荷して3年経ち、ようやく開花しました。同時に入荷した同じ北スラウェシ島のVanda devoogtiiは今だ開花待ちです。下写真がVanda arcuataで、バニラのような良い香りがします。国内マーケットをネットで見る限り取り扱いがないようです。下写真が19日、浜松温室にて撮影の本種です。5㎝サイズでセパルペタルの薄黄色をベースに赤錆色の斑点とのコントラストが映え、かなりの存在感があります。

Vanda arcuata

Dendrobium igneoniveum

 下写真上段に示すようにDen. igneoniverumはセパルペタルが白のベース色にリップの基部が赤く、人気のあるスマトラ島生息のFormosae節デンドロビウムです。しかし本種についてorchidspecies.comには生息地の標高や輝度データがありません。このため果たして本種が高温タイプなのか中温タイプなのか不明です。おそらく今年の猛暑で、春に現れた新芽を無くした栽培者が多いのではないかと思います。当サイトでは本種の栽培を始めて6年程経ちますが、これまでの栽培経験から前記した同じスマトラ島のDen. tobaensetoppiorumと比較してより低地生息と推測できます。では高温で良いのかと云えば毎年、夏季に入ると元気がありません。栽培難易度としてはFormoae節と云うこともあり中難度と云ったところです。そこで今回の猛暑では一部を中温室に移して観察していましたが、現時点の結論としては中温室の方が明らかに新芽に勢いが見られます。

とくに夜間温度が25℃を超える熱帯夜が長く続き、且つこの高温時期に株周りを乾燥気味にすると新芽が萎れ落ちる可能性が高くなり、この対策として中温タイプとしての取り扱いが必要となります。しかし東北、北陸、北海道エリアではそれほど神経質になる程でもないと思います。むしろこうした地域では冬季の最低温度を15℃以上とすることが必要です。栽培経験から生息地は標高800-1,000m程と推測され、熱帯モンスーン気候のスマトラ島のこの標高は熱帯常緑雨林帯で、最低平均温度19℃、最高平均気温は30℃∓2℃です。

本種の当サイトの栽培は、バスケット植えと、炭化コルク取付で、炭化コルクでは厚めにミズゴケを敷き、常時湿った状態になるようかん水をしています。下写真は上段左の花写真を除いて、全て18日現在の撮影です。9株の新芽を選びました。 大株にするにはバスケットが良いと思います。本種はDen. tobaensetoppiorumと同様に植え付け後1-2ヶ月を経過すると、一部の根はミズゴケ表面から飛び出してきます。これを空中に伸びたまま放っておくと、5㎝程の長さに伸長した頃に根冠の緑色が茶色に変色し止まります。このため2-3㎝になったところで空中に出た根はミズゴケで覆います。この処理は胡蝶蘭原種とは異なります。胡蝶蘭では着生する根は表裏で機能分化があり、半面は空中に晒すことが好ましいため、ミズゴケで覆うことはせず、根に柔軟性があれば空中に伸びたあるいは伸びようとする根は、1mm径アルミ線で根冠部が支持材に接触するように押さえ留めます。根冠が緑色の段階であればFormosae節でも、ワイヤーで支持材に接触するように押さえることで根は伸長を続けます。株を元気に保つには、こうした些細な処理も時として有効です。

Den. ingneoniveum new growths in 2019 summer

Dendrobium lancifolium名で入手したDen. sp

 昨年の8月にマレーシアPutrajaya花展にてDen. lancifolium名で入手した下写真のデンドロビウムが開花しています。葉や疑似バルブ形状からDen. lancifoliumでないことは分かるものの、写真に該当する花とバルブ形状が今のところ見当たりません。Calcarifera節と思いますが、花サイズも左右のペタルスパンで3.5㎝あり多輪花であることから良く目立ち、現時点で種名が無いとは考え難く、今後の調査待ちです。(後述:Den. calicopisの可能性有りとの情報を頂きました)


Dendrobium tobaenseDen. toppiorum subsp. taitayorumのつぼみ

 15日現在、20株程あるDen. tobaenseの半数が蕾を付けており、来週から10月1週目にかけて開花が始まります。浜松温室でのDen. tobaenseは年2回開花し、一方Den. toppiorumは5月入荷で6月から今日まで4-5輪が途絶えることなく順次開花しています。いずれもスマトラ島北部Ache州の生息です。orchidspecies.comのサイトではDen. tobaenseの生息地をボルネオ島Sabahとしていますが間違いと思います。30年近くラン原種を扱っているマレーシアラン園園主も本種のボルネオ生息はこれまで聞いたことがないとのことです。またリップが黄色のDen. toppiorumボルネオ島Sabahとありますが、現在は生息地がパームヤシ・プランテーションですでに絶滅しているとマレーシアの趣味家から聞きました。確かにこれまで4年間ボルネオ島生息種を注文してきたのですが入荷はありません。

これらの栽培では昨年から鉢植えを止め、ヘゴ板あるいは炭化コルクにミズゴケで根を覆った植え付けをしており、通年でミズゴケが湿った状態を保つ管理をしています。また中温栽培として冬期夏期に関わらず最低平均温度を15℃以下にはしないことで、冬季にかん水を控えると云った対応は一切しておらす、かん水量は通年で同じです。これで作落ちや枯れる株はありません。もともとこれらの種の生息地の標高は1,000m程ですが赤道に近い熱帯常緑季節林であり、また熱帯モンスーン気候としての2ヶ月程の乾期があるものの、この乾期とは熱帯雨林の降雨量に対する相対的表現であって、東京の6月雨季の降雨量167mmよりも多く、また通年で最低平均温度は20℃±2℃です。言い換えればそもそも生息地には冬季はなく、またCAM植物としての生理的な休眠期間もありません。よってこうした最低平均温度が保たれた温室栽培である限り、かん水を控え株周辺を乾燥気味にすることは、CAM植物として夜間に呼吸を行う際に株の体内組織から水分を奪うことになり、逆効果であり成長を阻害します。

下写真は蕾を付けたDen. tobaenseDen. toppiorumをそれぞれ9株示したものです。Den. tobaenseの新芽発生状況は今月本サイトで取り上げました。Den. tobaenseおよびDen. toppiorumいずれも今年5月入荷株であり、2ヶ月の順化期間を待たずDen. toppiorumは6月から開花を始めていますが、Den. tobaenseは今回が入荷後初めての開花となります。写真は18枚いずれも15日の撮影です。

Den. tobaense

Den. toppiorum subsp. taitayorum

現在開花中の花

 13日現在、下写真の花が浜松温室にて咲いています。上段左はボルネオ島Sabah高地生息のClctn. merrillianumで、45輪の同時開花です。中央のSulawesi島生息種Den. klabatenseは現在浜松での中温室では10株ほどを栽培しており、全株で開花中です。右はニューギニア2,000m生息のDen. subclausumです。

中段左はボルネオ島低地生息のDen. kenepaienseで、ネットで見る限り国内マーケットでは当サイトのみのようです。中央はスマトラ島Den. toppiorum subsp. taitayorumで2010年登録の新種とされます。こちらも取り扱いは当サイトのみのようです。右写真はフィリピンルソン島1,000m生息のDen. robinsoniiと思われます。中温室にてほぼ2-3ヶ月間隔で咲き続けています。

下段左はモルッカ諸島標高1,200m生息のDen. sulawesienseです。Den. glomeratumとも呼ばれます。一般タイプの花色はやや明るい赤紫色ですが、今回開花の花は青味が強い紫色のフォームです。中央はニューギニア生息種でDen. lawesiiと思われます。Den. lawesiiは赤色か、上段右のような先端が黄色の2色フォームが一般色ですが写真のような白色をDen. lawesii whiteとして掲載された海外での画像が見られます。右はフィリピンPalawan生息のDen. albayenseです。Palawanからの本種の入荷は1年半前ですが当サイトが国内初と思います。

Clctn. merrillianum Den. klabatense Den. subclausum
Den. kenepaiense Den. toppiorum subsp. taitayorum Den. robinsonii
Den. sulawesiense Den. lawesii white Den. albayense

Dendrobium rindjanienseの新芽

 Den. rindjanienseについて7月の歳月記で、昨年暮れから4月頃までに発生した新芽の成長を取り上げましたが、ほとんどの株で再び新芽が発生しています。通常デンドロビウムは、大きな株でもない限り、その年に発生した新芽が、ある段階までのサイズになるまでの成長中は、それにエネルギーを費やすのか、次の新芽の発生は翌年のシーズンまでないか、あっても例外的なものです。しかし本種は株サイズに関わりなく、現在20株ほど栽培している中で8割以上の株に新たな芽が出ています。下写真がそれらの一部です。上段左および中央は今年3月の花と開花株で、他の7株は昨日(11日)撮影したものです。中温室内の本種が置かれた夏季の環境は18℃(夜間最低温度)から30℃(昼間最高温度)です。すべてブロックバークと炭化コルクのいずれかを支持材とし、 ミズゴケは常に湿った状態となるようにかん水をしています。

Den. rindjaniense

Dendrobium tobaense

 今年5月に1年ぶりに入荷したDen. tobaenseが新芽を伸ばし、10株ほどで蕾を付けています。最近は中温タイプのDen. tobaenseDen. toppiorumは全て炭化コルクへの取り付けです。これは、通常かん水は1-2日に一回ですが、コルク上に置くミズゴケの量で保水量は容易に決まり、根腐れを招く過かん水の状態を避けられると共に、通年でかん水量は一定で気にする必要が無いためです。ミズゴケに保水された水分は蒸散し乾いていきますが、重要な点は、かん水時の濡れた状態から気相のある湿った状態に早く移行し、如何にその状態を長く維持できるかどうかです。

板状に敷かれたミズゴケは過剰な保水性(量)はないものの蒸散が早く、乾湿の変化は鉢に比べて急速となる欠点があります。 一方、鉢ではミズゴケは筒状に詰められており、保水性は高く蒸散はゆっくりと進む反面、鉢の中心部は長時間濡れた状態が続き、植え替え時にしばしば見られるように中心部の根は枯れ、新根は中心部には向かわず、鉢の内部側面に張り付きます。

板状支持材の欠点を軽減するには、かん水時に一時的ではあるもののミズゴケに過剰に保留された水分を支持材が吸水し、その後は、ミズゴケからの蒸散による乾燥に対し、ゆっくりと吸水した水分を放出し長くミズゴケを湿った状態にすることです。支持材がそうした調湿機能をもつには多孔質性(水分を吸収する多数の微細な穴)が必要となります。炭化コルクにはこうした多孔性があり調湿機能があるとされていますが、どれほどのものなのかは今後調査する予定です。最近では経験値(かん水から次のかん水までの湿り具合)からミズゴケの量を決めており、今春の植え付けからは、根元周りのミズゴケの量はほぼ炭化コルクの厚み相当となっています。これはかなり厚く根の周りを覆っていることになります。この厚みは栽培環境の乾湿に大きく依存し不変的なものではありません。それぞれ炭化コルクを使用される方は自らの栽培場所で、かん水から次のかん水の間のミズゴケの湿り具合をチェックし、ミズゴケがカサカサに乾く状態がなく常に湿気のある状態になるようなミズゴケの量を決めることが最善です。下写真上段は7日現在の炭化コルク付けDen. tobaenseの一部で、右は発生したばかりの蕾です。2段以降は9株それぞれの新芽発生状況です。


Bulbophyllum lasioglossum

 6月からこれまでBulb. lasioglossumが2-3株毎に入れ替わり立ち代わり開花してます。フィリピンルソン島標高1,000mの生息種で、30㎝程の弓なりに下垂する花茎に、1㎝程の花を、40-50輪開花します。、リップ中央弁の縁には黒い細毛があり、風で前後にカクカクと動きます。現在20株ほど在庫があり、当サイトでは5バルブサイズを3,000円で販売しています。下写真はすでに花は散り始めていますが、1株に3本の花茎がついた画像です。2年前までは杉皮板でしたが、現在は炭化コルク付けです。

Bulbophyllum lasioglossum

中温室のCoelogyne bicamerataその他

 クールから中温室エリアで散水をしていたところCoel. bicamerataが開花しているのに気付き、この機会にと植え替えを行いました。Coel. bicamerataはスラウエシ島標高1,100m - 2,000mのコケ林に生息する中温タイプのセロジネです。国内マーケッをネット検索しても販売情報は本サイト以外なく、当方も2016年1月にCoel. spとして本種を入手して以来、入荷はありません。下写真上段に見られるようにセパルペタルが白色でリップ基部が緑色一色の上品な色合いで、猛暑の中にあって清涼感のある姿です。果たしてどれだけ在庫があるのか調べたところ5株ありました。すでに前回の植え付けから4年近くも経っているので、これらを含めこれまでと同じ、スリット入りプラスチック長鉢にクリプトモスで植え付けを行いました。

下段左は炭化コルクに植え替えしたDen. piranhaです。本種は.ボルネオ島の標高1,400m以上に生息しており、同じボルネオ島生息のDidtichophyllum節Den. olivaceumDen. lamrianumとは近縁です。これらもそれぞれ4-5株ですが栽培しています。当サイトが在庫するDen. olivaceumは白と緑色のflavaフォームです。問題はDen. piranhaは木製バスケット植えで良く成長し最長株では1m程になっていますが入手以来開花がありません。よく本種はミスラベルが多いとのことで、おそらくミスラベルであっても前記2種のいずれかと思いますが、それでも良いとする購入者以外、開花するまでは販売できないとしています。株形状からはそれぞれ3種には決定的な違いはありません。前記2種は今春に炭化コルクに植え替えを行い状態が良いので、写真に示すようにDen. piranhaもコルクに植え替え、これまでの薄暗い場所からLED蛍光灯と接触する程の近くに吊り下げてひたすら開花を待つばかりです。

Coel. cupreaは5株程栽培をしており毎年開花しています。開花は常に花茎当たり1輪で数ヶ月間次々と咲き続けます。現在開花中の下段中央もCoel. cupreaと思われますが、名称が cupreaからして銅色の筈にもかかわらず、この株だけが全体に薄黄緑色です。Coel. cupreaはボルネオ島とスマトラ島標高1,000m1-2,500mのコケ林の生息で低 - 中温種です。当サイトの株はボルネオ島生息株です。

下段右は2003年登録でスラウエシ島標高1,400m以上に生息のバルボフィラムBulb. novaciaeです。こちらも4年ほど前に入手し現在2株のみの栽培です。岩性とされますが当本サイトでは炭化コルク付けの中温室栽培で毎年開花しています。15cmと大きな花です。入荷時のラベルは何故かBulb. sulawesi albaでした。本種もマーケット情報は当サイト以外見当たりません。

Coel. bicamerata
Den. piranha Coel. cuprea Bulb. novaciae


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