栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 2018年度

   2019年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月 

4月

Paraphalaenopsis serpentiligua

 Paraphalaenopsisは4種が知られており、いずれもボルネオ島固有種です。その中でParaphal. serpentiliguaは標高1,000m以下の生息種で、Parapal. deneveiと共に野生株は数が少なく希少種の一つです。市場の多くは実生と言われています。昨年12月に30株程入手し炭化コルク付けで栽培をしています。1月からいずれかが開花しており、この4か月間は花が絶えることがありません。今回のロットの花は白色で、15年程前に入手したロットには薄ピンクもありました。今月末そうした中で薄黄色の花が咲きました。色見本を参照して名前を付けるとすると、Lightgoldenrodyellow色という何とも長い名前で、該当する日本語がありません。敢えて付ければ淡キリン草色とのことです。カメラで撮ってもハッキリしないため純白色を背景にこれまでの白色花と比較してみました。この色は過去15年間程で2回目です。左写真が白色(左)と今回の薄黄色フォーム(右)で中央写真が今回の花、右写真がこれまでの白色花です。

 ちなみに先週マレーシアよりかなり大きなParaphal. labukensisが入荷したとのメールがありサンシャインラン展にParaphalは3種程出品予定です。

Paraphal. serpentilingua pale yellow form white form

Vanda merrillii var. rotorii

 現在浜松温室ではVanda merrillii var. rotoriiのクラスター株が4株同時開花中です。変種ではないVanda merrilliiは1か月程早く開花が終了しました。セパル・ペタル全体が濃赤色のvar. rotoriiは、その濃度の違いやセパルペタルの基部に僅かな黄味が残るフォームが見られます。今回開花した株の一つは葡萄茶(えびちゃ)色で一段と濃色であったので撮影してみました。Vanda merrilliiはルソン島Nueva Ecija州を中心とした低地生息種で本種が生息する地域はコメを中心とするプランテーションが進み現在は絶滅状態にあるそうです。

Vanda merrillii var. rotorii

Phalaenopsis aphroditePhalaenopsis amabilis

 下写真は左がPhal. aphrodite f. albaで、右は個体差の範囲と思いますがPhal. amabilis Javaのyellow lipフォームです。

Phal. aphrodite f. alba Phal. amabilis Java yellow lip

Phalaenopsis hieroglyphica

 フィリピン生息の本種はセパル・ペタルの斑点がヒエログリフ文字に似ていることから付けらた名前です。本種にはPhal. lueddemannianaと同様にルソン島からミンダナオ島までフィリピン全土に広く分布しており、またそれらの生息域も似ていることからそれぞれがもつフォームの一部が互いに混在する中間体と思われる種が多く存在します。詳細は本サイトのphal. lueddemannianaのページで多数のサンプル画像が見られます。

 そうした中、12月ルソン島からの入荷株の中から典型的なPhal. hieroglyphicaの特徴をもつ株が開花しました。通常はセパル・ペタルのベース色はクリーム色か薄黄色が多いのですが、開花した花は白色をペースとする上品なフォーム(写真左)で、ヒエログリフィックな斑点を始め、リップ先端の剣菱形状(写真中央)と、ラテラルセパル先端(写真右)が細く尖ったPhal. hieroglyphicaの典型的な形状となっています。E. A. Chiristenson氏はその特徴を、それらの形状以外にPhal. hieroglyphicaPhal. lueddemannianaに比べ同時開花数が多いことも挙げており、またJ. Cootes氏は生息場所は低輝度と延べています。

 本種の市場に見られるのほとんどの販売形態は素焼き鉢にミズゴケ植えです。こうした株の多くは実生と思われます。野生栽培株は昨年の歳月記12月の’胡蝶蘭原種大株’の標題ページに画像を掲載したように成長した株は下垂形状となりポット植えは適しません。苗の段階からポットに植付け、茎を上向きで葉を左右に展開する栽培法ではPhal. lueddemanniana同様に株は野生栽培株に見られるような大きさにはならずほぼ一定で、花茎は葉の下で水平に伸長することから花向きが定まらず雑に咲いている景色となり、長く垂れた葉の間から花茎が現れ、葉を背景に花が顔を出しているような優雅さは得られません。

Phal. hieroglyphica

Dendrobium amboinensePhalaenopsis appendiculata

 上記の2種が現在開花中です。いずれも個性のある原種で下写真を本日(23日)撮影しました。Den. amboinenseは短命花ですが凡そ他のデンドロビウムには見られない独特の花形状をもち、これがDen. balzerianumorbilobulatumと同じFugacia節とは、バルブ形状や花寿命は似ているもののまるで花の姿は異なります。一方Phal. appendiculataはボルネオ島生息種で栽培の難易度が高いことで知られています。花の大きさは対称的です。

 当サイトでは15株程のDen. amboinenseを在庫しています。在庫株はいずれも花が大きく、一枚のセパルは10㎝長が普通で11㎝長(セパルあるいはペタルの両端間の一般表現では23㎝)のものもあります。ニューギニアの北西Pulau Ambon島の固有種で浜松では春秋2回開花します。

 Phal. appendiculataは1.5㎝程の小型の花です。通常はヘゴ板やコルク付けとなりますが、これら支持材での栽培では水分不足となりがちで多くの栽培者を手こずらせています。株サイズに合わせて小さな支持材となる傾向があり、このため乾燥が進み易くなることが原因の一つです。当サイトでは炭化コルク付けですが、元気がなくなるとしばしば素焼き鉢にミズゴケを入れ、これにコルクを1/3程差し込んで立て低輝度環境に置き、コルクの下部が常に湿っているようにします。この方法以外ではコルクに多めのミズゴケで団子状にして植え付けても上手く育つのではないかと思います。半透明ビニールポットにミズゴケで植え付け、常にミズゴケが濡れた状態であってもよく育ちます。マレーシアラン園のほとんどがこの方法です。但し本種は葉の下に開花するため、ポット植えでは花が良く見えません。販売保管向けの植え込み手段です。orchidspecies.comではマレーシアPahang州のコケ林に生息と記載されていますが、セレンバンで30年近く運営するラン園主の話では、この地域には30-40年前はPhal. appendiculataPhal. maculataが生息していたが、他国や他地域のコレクターによる乱獲またプランテーションによってすでに絶滅したとのことです。現在の株はボルネオ島由来とのことです。

Den. amboinense Phal. appendiculata

従来の習慣とは異なる植付け

 AeridesやVandaの従来からの植えつけは、種によってポットに大粒バーク、バスケットあるいはベアールートでの吊るしが一般的です。またデンドロビウムはポット、バスケット、ヘゴ板などこちらも種によって様々です。特にSpatulata節はほぼ例外なくポット植えで、海外では多くが植え込み材として炭を用いています。本サイトではこうしたこれまでの植え付け方法を変え、植替え時期を機にその多くを炭化コルクに切り替えています。自然界における生息様態が木やその幹あるいは岩などに着生する性質から、しばしば新しい成長芽や根の発生位置がポット形状には即していないとの思惑からです。

 こうした気根植物の植え付けにおいてポットに植えることで過水や気相が不足して根をダメにしたり、あるいは小さなバスケットを根元に付けて吊るし、根のほとんどを空気に晒すものの結果として水分不足で株が痩せてしまったり、新根がある程度伸長すると先端が黒変して止まるなどで株が大きくならないことに悩む趣味家も多いと思います。いわゆるそれぞれの種に合った温度、湿度、通風、支持材、植え込み材、肥料等の壁に突き当たることになります。ある種には良いのだが、ある種には良くないと言った問題です。

 そうした背景から本サイトでは根に関して、ポットでは得られない高い通気性と、吊り下げ型にはない保水力、さらにSpatulata節のデンドロビウムには成長芽が活着しやすい面を提供する植付けとして炭化コルクを用いることにしました。コルクは2つの形状を用意し、AeridesやVandaは平面(長方形で50-60㎝x12㎝x3㎝)板、Spatulata節には角柱(60㎝x8㎝x5㎝)です。下画像は2月末から今月にかけて炭化コルクに植え付けた合わせて60株のAerides(odorata alba, magnifica alba, migueldavidii, magnifica, leeanaなど)の一部です。全てコルクに薄くミズゴケを敷き、その上に根を置いただけの取り付けです。大半は入荷時BS株であるため根は四方八方に伸長しており、硬い根もあり曲げて板に押さえられる根だけを板に取り付けたものです。この板付により胡蝶蘭やデンドロビウム原種と同じ場所に同じように吊るすことができ、またかん水量や頻度も他属と区別することなく与えています。僅か2ヶ月程でほぼ全株に新根(下写真で先端が緑や褐色の白い根は全て取り付け後に発生)が出ており、根にとっては適度な保水性と通風が得られたことで、現地からの入荷時に見られた乾燥による細かな葉の皺もほとんどが消え下写真のように葉に張りが出て来たように思います。


昔と今

 下左写真は2015年東京ドームラン展に出店した時の当サイトのブース内に展示したPhal. stuartianaクラスター株です。これで1株です。また右は2016年同じくドームラン展にてブース内に展示したPhal. schillerianaクラスター株です。いずれも今日これだけの原種大株を入手することは難しく、現在フィリピン現地において再び探してもらっているところです。これらの株は残念ながらその後、半年程で作落ちがひどくなり、子株に株分けをせざるを得なくなり現在はありません。その原因はドーム出品の梱包から展示までの凡そ2週間余りの期間、胡蝶蘭原種にとって過酷な環境に置かれたことによるものでした。これだけの輪花数を同時開花している株にとっては相当の負荷がかかっていたところに、さらにドーム内でのメタルラックに触ると静電気でビシッと音がするほどの乾燥状態と共に夜間の低温に10日程晒されたことで回復不能となった訳です。特に2015年は本サイトにとっては出店初回で、場内がこれほどの乾燥と低温になるとは思っておらず初日から2日程はそのままで、3日目から散水を行うものの展示終了後の夜なってからの僅かな散水のみでした。これを教訓に2016年はやや小ぶりのPhal. schillerianaクラスターに替え、毎晩散水はしたもののこちらも半年ほどで株は弱まってしまいました。

 こうした経験から、2017年のドームは出店を中止し、サンシャインラン展に切り替えました。こちらは開催期間が5日間と比較的短期間であることと、散水は朝と、来場者が少なくなったところを見計らっての昼間、また夜はたっぷりの散水を行うことで、戻り株を見ても出品した株での作落ちは見られなくなりました。今年のドームラン展は環境は従来と同じでしたが、そうした経験から毎日3回の散水を行いました。しかし毎日の胡蝶蘭原種の微妙な変化を見ていると、ドームの環境では据え付け日を含め5日が限度で今年は2月14日の搬送から18日の月曜日までとし月曜日の夜に胡蝶蘭原種だけを浜松温室に引き上げることにしました。今回の胡蝶蘭は特に希少な特大サイズの野生栽培株が数多く、危険と感じた訳です。そのため火曜日以降来られた方は当ブースにて胡蝶蘭だけは入手することが出来なくなってしまいました。当サイトにとってラン展は、販売は勿論ですが、実際栽培をしている状態そのもの(植付け方法、植え込み材、株の状態)を直に見てもらうことも大きな目的であり、海外ラン園に見られるように長期間保管販売するために透明紙で包んだり、ビニールパックに入れたりすることはしません。海外から国内への搬送と、ドームの環境下における販売、さらに輸出入検疫に対応するにはこうした出品方法が不可欠とは思いますが、当サイトは来場者が栽培の実体が見られることも重視しています。この結果、栽培場所からそのままを持ち出した形態であるが故に、購入された方にとっては持ち帰って自身の温室にそのまま据え付け、栽培を始めることが出来る反面、想定外の外部環境には影響されやすくなります。購入者の栽培環境と合わないような場合も当然想定されますが、胡蝶蘭原種対応のそれなりの温度、湿度、輝度、通風があり、ラン展会場のような環境でもない限り、春と秋の植え替え適期に栽培者の環境により合った植え替えを勧めています。

 4年ほど前に本サイトでも取り上げましたが、上記のようなラン展出品の経験から、特に胡蝶蘭原種については初日から3日以内に入手するようにと勧めています。温度や湿度管理が十分で、かなりの栽培経験のある方は順化技術もあり問題ないと思いますが、4日以上遅れての購入は避けた方がよいかと思います。まして初心者にとっては最終日の購入はお金を捨てるようなものです。もっとも好ましいのはプレオーダーをし、初日あるいは2日目に受け取る方法です。プレオーダーは当サイトではラン展出荷日前日に梱包するため当温室からもっとも短期間で入手ができ、宅配便と変わりません。

 よくラン愛好会の方と話をする機会があり、ラン展に出品展示されている見事に開花している株は、ドームラン展のような長期間の環境に置いてその後大丈夫なのかどうか伺うことがあります。十中八九作落ちが起こるとのことです。このため出品は覚悟をしなければならないそうです。同じような勢いで次の年も開花したケースはこれまで見たことが無いそうです。

 話は戻りますが、もし下写真左のような開花株が再び得られれば、多くの方は開花している実物を展示会で見たいのではと思います。高温多湿の特別室でも用意して頂き、これまでに無い特大サイズのPhal. mariaelueddemanniaeなども含め、写真のような花に微風をあてて一斉に、胡蝶蘭由来の蝶が舞うが如く花が揺れる様子を演出できたら面白しろそうです。ワイヤーで弓なりに成形され微動だにしない慶弔用胡蝶蘭とは違った、そうした自然を映した光景から、これこそが野生ランの凄さと感じてもらう意味で、再び出品しようかとも思うのですが。

Phal. stuartiana Cluster Phal. schilleriana Cluster

Phalaenopsis inscriptisionensis

 胡蝶蘭原種の中で最も長い名前を持つ本種はスマトラ島中央部低地に生息します。過ってPhal. sumatranaと混同した時期があったようです。本種Phal. sumatranaとはposteriorカルス形状が異なります。orchidspecies.comによると通常、同時開花輪花数は2-5輪と記載されています。しかし株が成熟すると多数の花茎が発生するため、現在開花中の下写真(19日撮影)に見られるような多輪花となります。晩秋を含め開花期は年2回です。本種は栽培は容易ですが葉の下に開花し、またけっして葉からはみ出すことがないため、株は目の位置より上に吊るしての栽培が必要です。

Phal. inscriptiosinensis

Epicrianthes(Bulbophyllum) jimcootesii

 2月にフィリピンにて入手したBulb. jimcootesiiが開花しました。花は1㎝程と小型ですが、Epicrianthes節特有のペタルに付いた左右それぞれ9本の髭が特徴です。orchideenJournal Vol.6.2によれば本種はフィリピンミンダナオ島Bukidnon標高1,300mのコケ林に生息する2018年発表の直近の新種です。ミンダナオ島Bukidnonの1,300mとなれば中温から低温環境となるのですが、写真の株は胡蝶蘭Phal. amabilisなどを栽培する高温室にての開花となりました。殆んどの株は中温室にて栽培しているものの東京ドームに出品した戻り株で、忘れてそのまま高温室に置かれていたものです。開花にはやや高めの温度環境が良いのかも知れません。国内マーケット初の新種でもあり東京ドームラン展では3,000円で販売しました。来月のサンシャインラン展に2株ほど出品予定です。

Epicrianthes(Bulbophyllum) jimcootesii

忘れかけたBulbophyllum spの植替え

 2016-17年頃に入荷したスマトラ島生息のBulb.spの内、温室の片隅に置かれたままのバルボフィラムを現在見直しており、その後も種名が分からないままであることと、現地での入荷がその後途絶えているものを選び出し、それまでの杉板から炭化コルクに植え替え直し、これまで与えたことはなかった液肥を与え様子を見ることにしました。それらの一部が下写真のバルボフィラム3点で、希少性があるのではと現在思っています。

Bulb. sp1
Bulb. sp2
Bulb. sp3

Vanda limbata Lombok

 昨年8月にマレーシアにてVanda perplexaを注文していたところ入荷していたのはLombok島からのVanda limbataでした。その入荷直後の1株に蕾がありこれがやがて開花し、この画像を昨年8月の歳月記に掲載しました。Vanda perplexaと同じような色合いの花であることは確認したものの、Vanda limbata名でネット画像やorchidspecies.comの画像で見る限り、その多くのセパル・ペタルはいわゆる赤茶色で、Vanda perplexaの紅赤色と比較し、茶色っぽく色褪せて映り、今回の入荷株も同じフォームで期待外れであろうと昨年9月の歳月記には植え付けが終わった画像のみを紹介しました。趣味家もおそらくVanda limbata名からは同じ印象をもっていたのかその後、引き合いもなく今年の東京ドームラン展のプレオーダーリストでは価格を下げ、2,500円から3,000円としたものの、やはり入手希望者はいませんでした。ところが、入荷から8ヶ月が経過し、順化も終わり今月に入り2株に開花が始まり花色を見て驚きました。それが下写真です。

 蕾の段階、すなわちセパル・ペタルの裏面が白色をベースに異様に濃い赤紫色が透けて見え、はて?と様子を伺っていましたが昨日(15日)濃赤色の花が開花しました。Vanda limbataは9月の歳月記にも書きましたが、これまでスラウェシ島とJava島が知られています。園主によるとLombok島株は初入荷とのこと。このLombok島とVanda perplexaが生息するコモド島とは同じ小スンダ列島に属しており、これらのVandaの濃赤色は地域固有色なのかも知れません。一見、Vanda perplexaと見間違う程ですがセパル・ペタルの外縁が白く、これはVanda perplexaには無いVanda limbataの固有のフォームであり、白い縁取りがむしろVanda perplexa以上に赤を引立たせています。本種名を今後はVanda limbata Lombokと、Lombokを付帯名とし、スラウェシ島やJava島生息株とは区別し販売することにしました。価格も僅かながら変更して5月のサンシャインランに出品予定です。Lombokタイプは初日で売り切れるかもしれません。

 ところでこの機会にと、紅赤色のVandaを調べてみました。マーケットに見られる赤色Vandaは、青色Vandaと共にそのほとんどは人工的な交雑種です。原種としては前記のVanda perplexa、limbata、mariaeが画像検索で見られます。その内、ネット画像にある多くのVanda mariaeの赤色画像は怪しげで、シノニムとしてVanda merrillii var. immaculataとされていますが、この変種名immaculataの色はPhilippine Native Orchid Speciesによれば黄系で赤色ではありません。2017年フィリピンのPurificacion Orchids農園で多数のVanda mariaeの栽培株を見ましたがこれらは実生でした。開花株も多数あり、その花色はソリッドレッドではなくVanda merrilliiVanda limbata(あるいはperplexa)との交配種の印象を受けました。いわゆる紅赤色Vanda mariaeは自然界には存在せず人工的につくられた交雑種ではないかとの疑いです。一方、Vanda perplexaは現時点の確認範囲ではコモド島を含む、その周辺の国立公園内の生息種とされ採取は出来ませんので、市場にある本種は実生です。本サイトが2017年12月の歳月記に記載した標題Vanda limbata (perplexa)の30本ほどのperplexa株はサイズが全て等しく、また茎が直立し、左右の葉の配列と数が対称的であることからこれらは実生株であることが分かります。野生栽培株であれば自然あるいは栽培環境での風や周りの障害物あるいは脇芽からの若茎による加重等により主茎が曲がり、成長芽の伸長方向はランダムで直立した株は十に一つもなく、また左右の葉数は一部の葉が折れたり、欠けたりして非対称となり同じ姿はほとんどありません。他方、実生では小さなNBSサイズから株は互いにぶつかり合うことなく等間隔に吊るし、茎が真っ直ぐになるように針金や紐で留めて栽培しており、定期的な施肥を与えることで頂芽優先の性質から脇芽もほとんど無く多数の葉が整然と並び茎は直線的に伸びます。フィリピンBatangasのevergreenやミンダナオ島のPuentespina農園では根を除く茎の長さのみで1mを超えるVanda sanderianaの実生栽培株が同じ姿で1000株以上並んでいました。こうして考察すると、赤色の純正な原種を求めるとすれば、現時点ではVanda perplexaの実生株かVanda limbataの実生あるいは野生栽培株のソリッドレッドフォームに絞られるように思います。純正さにこだわるのは種の保存以外に、交配する際のそのフォームを遺伝継承させたい目的がある場合です。

Vanda limbata Lombok

現在開花中の茎および花を合わせ1mを超える株3点

 左はボルネオ島生息のDen. paathiiで一般種は白色ですが、薄ピンク色のセパルとなっています。中央はニューギニア生息のDen. stratiotesです。花寿命が長く1か月以上開花が続きます。右は栽培を始めて20年近くになるPaph. sanderianumです。本サイトの原点である胡蝶蘭原種の今月の花2009年11月に掲載の株を継承したもので、現在会津にて交配した実生を含めると合わせて500株近いPaph, rothchilidianum. sanderianumおよびgigantifoliumを栽培しています。これらは10年以上前に自らフラスコ培養をしており当時の歳月記には記載していましたが、胡蝶蘭の原種のサイトの歳月記も現在は2013年からの掲載でそれ以前は削除しました。そこで久々に古いファイルを見たところ、特に胡蝶蘭原種栽培については結構参考になる内容があり、下記に2009年から2011年頃の歳月記を下記から再度アクセスできるようにしました。10年前の歳月記で会津若松在住時の記載であり若干誤記もありますが興味のある方はご参考下さい。
2009-10年歳月記
2010-11年歳月記
2011-12年歳月記

Den. paathii Pink Den. stratiotes Paph. sanderianum

現在開花中の南米生息種3点

 現在開花中の南米生息のラン3点です。本サイトでは5年前からドラキュラを始め1,000株を超える南米原種を栽培していますが、販売するための整理や管理ができておらず数種を除き非売品のままとなっています。温室に来て頂く方のみを対象に販売ができるようにすることが現実的ではないかと思案しているところです。下写真はたまたま目についた現在開花中の3種です。全て高温室にての栽培です。但しLycaste xytriophoraは中温室にても別株を栽培しています。

Mormolyca rufescens big flower Batemannia colleyi Lycaste xytriophora

現在開花中の4点

 上段左は雲南省からベトナムに至る広い範囲に生息するVanda denisonianaのgreenフォームです。一般色は橙色です。バニラの香りがします。しばしば引き合いがあるのですが単価が安いため、海外から取寄せるにはコストがかかり海外ラン園を訪問した際に見つかれば入手すると言った具合です。このため3年程入荷が途絶えています。右はボルネオ島低地生息のBulb. ancepsです。可愛らしい花が3-4輪同時開花し、またバルブが扁平で直線的に繋がって成長するため株は垂直面への取付けが必須のバルボフィラムです。ラン展には必ず出品する品種で5月末のサンシャインラン展にも2株ほど出します。

 下段左はDen. petiolatumです。キャメロンハイランドの蘭園を訪問した際、ニューギニア生息のデンドロビウムにありそうな花を付けていたため入手したものです。数人の会員の方から現在市場の本種は実生株が大半であり、野生株は非常に珍しいのではとのことです。右はBulb. deareiを一回り小さくしたようなBulb. microglossumで、ドーサルセパルが他のペタルセパルに比べて大きく、それなりに個性があります。ボルネオ島産の中温タイプで杉板との相性が良いらしく現在50バルブ程の大株になっています。

Vanda denisoniana Bulb. anceps
Den. petiolatum Bulb. microglossum

現在開花中の6点

 上段左のDen. jiewhoeiはボルネオ島SabahからSarawakに至る生息種で2008年登録の比較的新しいデンドロビウムです。主に落葉してから開花し、当サイトでは高温と中温室で栽培しており、下画像は中温室での開花です。orchidspecies.comでは標高1,000m - 1,500mとされていますが、高温室でも元気に育ち、開花は中温室に比べ2ヶ月程早くなっています。半下垂タイプのためバスケット植えです。上段中央は今月初めに取り上げたDen. annemariaeです。ミンダナオ島生息の昨年発表の新種です。Den. sanderae v. majorに似ており花サイズはセパル・スパン(左右のセパルの端から端)で8㎝あり大型で5輪同時に開花化すると見ごたえがあります。右はボルネオ島低地生息のDen. Cymboglossumです。このデンドロビウムも多くが落葉してから開花します。高温タイプで東京ドームラン展にも開花株を出品しました。

 下段左はボルネオ島SarawakのBulb. kubahenseです。2011年登録の新種で、本サイトでは毎年この時期から6月頃までが開花期となります。3-4年前は人気が高くまた高価でしたが、現在は落着いています。ラン展に出品すれば毎回購入される方がいる種の一つです。ラン展以外でもここ3ヶ月で4株ほど出荷しましたが、いずれも花芽付きでしたので入手された方は開花が見られると思います。中央および右はドラキュラです。70種程低温室にて栽培中で販売を目論みつつもなかなかその準備が進まない南米種です。これだけの種を栽培していると、通年でいずれかのドラキュラの開花があり途絶えることがありません。これまでいろいろな植え込みを試みましたがコルク付けが最も成長が良いことが分かってきました。

Den. jiewhoei Den. annemariae Den. cymboglossum
Bulb. kubahense Dracula gongora Dracula chestertonii

Phalaenopsis bastianii

 現在開花中のフィリピン固有種のPhal. bastianii2点です。ルソン島中央部に生息します。左が標準的カラーフォームですが、セパル・ペタル上の赤褐色の斑点の大きさや配置が多様で、左右写真のように一見同一種とは思えないようなフォームの違いがあるのが特徴です。一つとして同じ模様はありません。ポット栽培が可能でプラスチック鉢にはヘゴチップが最も安定した成長が見られます。高温タイプで胡蝶蘭原種の中では比較的明るい環境を好みPhal. pulchraに似て高芽の発生率も高い種です。3月の本ページで取り上げましたが、本サイトの株は多くが大株のため炭化コルクや一部ではブロックバークでの栽培です。

Phal. bastianii

Phalaenopsis delicata

 少し難解な話です。Phal. delicataはフィリピン固有種で、E. A. Christenson氏の著書Phalaenopsis A Monographではvar. delicataとしてPhal. lueddemannianaの変種に分類され、その花画像も同著書のColor platesページに掲載されています。一方、ネットサイトPhals.netではPhal. lueddemanniana var. delicata名の欄には前者と全く異なったflavaタイプのようなフォームの花が掲載されています。本サイトのPhal. delicataの花画像はE. A. Christenson著書の画像とほぼ同じです。一方、J. Cootes氏の著書The Philippine Native Orchid SpeciesにはPhal. delicataの記載がありません。おそらくPhal. lueddemannianaの個体差の範囲との考えと思われます。

 このようにPhal. delicataの位置づけは確定していません。そこで本サイトでは10年ほど前にサンプルを多数所蔵していたことからPhal. lueddemanniana Phal. delicataとの違いを調べることにしました。Phal. delicataの花サイズはPhal. lueddemanniana に比べ小型であること以外は、セパル・ペタルおよび中央弁からは個体差の範囲内と見做されます。そこで分類上重要とされる中央弁基部にあるCallus形状を調べた結果、それぞれには大きな相違がありました。こうしたCallusの違いについては、他種ではPhal. amboinensisPhal. venosaPhal. fuscataPhal. kunstleriなどが分類判断データの一つとして用いられています。この状況から本サイトではこの両種については個体差ではなく、取り敢えずcomplex (近縁種)の関係と位置づけしました。

 そこで本題ですが、今年2月にPhal. bastianiiとして30株程をフィリピンから入荷したロットがあり、すでに何株かは開花しPhal. bastianiiを確認しているところです。その中で1昨日(4日)、花フォームがPhal. lueddemannianaに酷似するもののサイズが小さな花が開花しました。下写真上段左です。下段左は一般的なPhal. lueddemannianaと比較した画像です。そこでこの花のCallus形状を調べたところ、2分岐突起はanteriorとcentral位置の2組で、中央弁基部側にはPhal. lueddemannianaに見られる腺状突起が無い(写真上段右)ことが分かりました。これはPhal. delicataの形状であり、Phal. delicataPhal. bastianiiの株に混在していたことを意味します。下段右は参考に示すPhal. lueddemannianaのCallus形状で、posterior部には多数の腺状突起(棘のように突き出たもの)が見られ、上段右画像のCallus形状とは異なります。


Phal. delicata (Phal. lueddemanniana var. delicata)

Phal. delicata Callus on left flower

Comparison between Phal. delicata (L) and Phal. lueddemanniana (R)

Phal. lueddemanniana Callus

 そこで今後確認すべき課題が生まれました。この入荷したPhal. bastianiiの生息地はルソン島中央部の東海岸側エリアとされており、このエリアにはPhal. lueddemannianaも生息している地域です。となると、もしほぼ同じ地域内にPhal. delicataPhal. lueddemannianaが生息すれば現在の変種としての分類varは危うくなり、フォームとなります。変種の定義によれば地域的排他性が必要です。一方で、Callus形状が両者で大きく異なる相違があるにもかかわらずそれぞれをalba、flava、aureaの違いのようなフォームとしての区別で良いのかどうかです。取り敢えず本サイトが所有する30株および現地サプライヤーが在庫(本サイト用栽培ストックエリア)する100株ほどの中からPhal. lueddemannianaが現れるかどうかに注目です。

 こうした問題は販売上困ったもので、現地では類似種はPhal. lueddemanniana complexとして一括栽培をしています。しかし株形状だけでは前記した種名は判断できません。まして現地でCallus形状を調べ種を同定するようなスタッフは期待できません。たまたま開花した花を見て似た株同士を選択し出荷することが日常であり、この結果、入手したロット内で何が現れるか分からない状況にもなります。これでは花を確認しないで入荷時名のPhal. bastianiiで販売することもできず、一方で全株の開花を得るためには1-2年を要し、そんな悠長はことをしていてはビジネスとして成り立ちません。胡蝶蘭原種についてはこうした同定問題は少ないものの、新しい生息域からの野生栽培株を求めようとすればするほどデンドロビウムでは2-3割、バルボフィラムに至っては5割以上が開花を待たなければ種名か分からないのが現状です。今回のケースのような怪しげなロット内の開花前の株についてはPhal. lueddemanniana complexの中のどれが現れても良い、むしろその方が楽しいと言う奇特な方々に限っての販売となりそうです。

植え替えの時期と炭化コルク

 4月に入ると東京以北でも多くのランの植え替え時期となります。本サイトでは3月半ばまではサンシャインや東京ドームラン展後の対応で多忙でしたが、先月末から例年の植え替えが始まりました。特にバルボフィラムや一部のデンドロビウムの中にはspのままで、入荷してから開花確認ができない株や現状維持状態の株も数百株あり、特にこれらの株を優先しての植え替えになっています。またデンドロビウムのFormosae節は2年以内でのミズゴケ交換を行っています。

 本サイトの栽培はほぼ全てが原種で着生種が多く、その特性上垂直面への取り付けが大半となり現在7割近い株が炭化コルク付けとなっています。東京ドームラン展では毎日のように炭化コルクについての入手方法などの質問を受けました。徐々に炭化コルクで栽培される方も増えていると思います。繰り返しになりますが炭化コルクの特徴や注意点は以下となります。

 炭化コルクは2-3㎝のコルク片を、自身がもつ油性分を利用して板状に固め低温で炭化した無添加材で、その断熱・防音効果を利用した建材として販売されています。多数の隙間があり一般のコルクに比べて保水力が高いこと、炭化されていることでコケや害虫が付きにくいこと、またラン販売業者にとっては植え付けたままでも軽く、板形状であることから、多様な形状の一般コルクと異なりスペースも余り取らないことから箱詰輸送に有利であることなどが特徴として挙げられます。炭化コルクはポーランド製で25mmあるいは30mmの厚さを利用しています。最初の使用から6年以上経ちますがコルク片の接着が剥がれボロボロになる経験はこれまでありません。3年以上するとコルク裏面が白っぽく劣化する程度です。

 これまでの6年程の栽培を通し、ミズゴケとの組み合わせで根が炭化コルクを嫌う現象は取り扱った全ての種において見られません。殆んどの胡蝶蘭原種やバルボフィラム、また新しい茎が根元からでなくその一つ上の節から発生し株全体が上向きに成長するデンドロビウムなどに適しています。一方、こうした種への炭化コルク使用の最も基本的な要件は、栽培環境の高湿度化が求められることです。1日1回の散水が可能としても、夜間湿度が80%以上に維持できるかどうかに関わります。結論から言えばこの高湿度化が困難な環境では炭化コルクの利用は乾燥が進み栽培は困難です。より保湿性の高いヘゴ板やポットあるいはバスケット植えが必要となります。ヘゴ栽培も夜間の高湿度は成長に必須条件ですが、ヘゴ板/棒で成長が芳しくない環境でのコルクの使用は一層適しません。根をミズゴケで厚く覆うことで保水性を高めることは可能と思いますがコストの点で試したことはありません。

 炭化コルク材の初使用で注意しなければならないのは表面の洗浄です。コルク表面には粉末が多く付着しており、強いシャワーで両面のこれらを洗い流します。コルクの表面にソフトシャワーをした際、水が表面張力で丸くなって流れるようでは保水力は得られません。植え付けの際、薄くミズゴケを敷いてその上に根を広げさらにミズゴケを被せるか、直接根をコルクの上に広げてからミズゴケを被せるかは迷うところですが、本サイトでは生きた根が多く元気な株はコルクに直置きでそれから根をミズゴケで覆います。根およびその周辺を覆うミズゴケの量は細い根をもつ種はやや厚く、太い根の株は少なめにしています。株を留めるのは盆栽用1mm径アルミ線が最適で園芸店で得られます。これ以上の太さでは固すぎ根を痛め、細すぎても半年以内で錆びて切れます。糸ではしっかりと株の形状に合わせた押さえができません。またビニタイでは縛りが目立ちすぎます。1mmアルミ線も1年近くで切れますが、活着が進まずそれでミズゴケと共に株が落下しそうであればその際に追加で縛ります。

 2年程経過するとミズゴケは劣化して保水力が低下していきます。経験からは2年程度でミズゴケの植え替えが良いと思います。この場合、炭化コルクにつけたままの状態で株を傷めないように注意しながら強いシャワーを吹き付けミズゴケをコルクから洗い流します。2年もするとアルミ線はボロボロの状態となっているため、多くの場合でシャワーをする前にアルミ線をすべて外してからミズゴケを洗い流すことになると思います。この場合は、株の根元をしっかり手で押さえながらミズゴケを取り除きます。根がコルクの中や表面に活着している場合は株自体はそのままで新しいミズゴケで再び根を覆いアルミ線で巻き直します。多少の根がシャワー作業で切れても問題は無く、場合によっては根の一部は千切れますが株を取り外し新しい炭化コルクに替えることもできます。

 デンドロビウムでは取り付けから半年ほど経過すると、新根が覆っているミズゴケから突き出てきます。適当な長さに伸長すれば同じアルミ線で根の先端が板方向に向く、あるいは接触するように曲げて押さえます。Formosae節など種によっては、新根がミズゴケから出てきた段階で追加のミズゴケをそれら根が見えなくなるほどに被せアルミ線で留めます。これを行わないとやがて新根の先端は枯れ伸長が止まり、こうなると株が大きくなりません。一方、胡蝶蘭は自ら支持材に活着しながら伸長する性格があり、バルボフィラムも同様でミズゴケの追加は行ったことはありません。

 AeridesやVandaの中サイズ以下で根が比較的柔らかい種も最近は炭化コルクを60㎝ほどの縦長にカットし、根をこの上に乗せています。目的は根に適度な湿り気を与えるためです。柔らかいと言ってもそれなりの大きさになると太く固い根が四方八方に伸びているため板状であるコルクに全ての根を取り付けることは出来ません。曲げられる範囲でできるだけ多くの根を乗せます。この乗せるというのは炭化コルクに薄くミズゴケを敷きこの上に根を乗せてアルミ線で留めます。根をミズゴケで覆うことはしません。根が伸長してコルクサイズを超えたり、離れたりする部分はそのままとします。所謂、根を空中に晒すには乾燥しすぎる一方、ポット植えは過水で根が黒ずんでしまうなどの環境での利用です。

 仕事等の関係で数日間留守にする場合の対応については、炭化コルクの下部1/3程が入る大きめの素焼き鉢を用意し、これにミズゴケを入れまた鉢受けを用意し、これに水を張っておきます。コルクの下部を素焼き鉢のミズゴケに埋め込むことで数日間はかん水の必要はなくなります。目的は炭化コルクの下一部を濡らしておくことですので、その方法はいろいろと工夫があると思います。

 以上が大まかな概要です。素焼きとミズゴケあるいはバークなどで今一つ成長が良くないとか上手くいかない人にとって、炭化コルクの利用は一考する価値はあると思います。いろいろな形状のランが炭化コルクに取り付けられた実物を見たい方は、池袋サンシャインシティ・ワールドインポートマートでの蘭友会主催のラン展(5月23日 - 26日 )に出品しますのでお越しください。

Vanda javieraeVanda tricolor

 現在両種が開花中です。Vanda javieraeは昨年10月までバスケット植付けで根の大半は空中にベアールートとして垂らしていましたが、本種は中温環境での栽培のため株にとってはやや乾燥気味となりがちで4年間ほどで葉が痩せ開花数も減少してきました。そこで120株ほど栽培をしていますがそれらの大半を60㎝長の細長い主に炭化コルクを支持材としてこれに根を置き根に湿気を与えるることと、LED照明を当てることで元気になりました。現在多数の株で太い新根が現れ開花も始まりました。一方、Vanda tricolorは高温室で木製バスケットに取り付けており下画像では13輪が開花中です。Vanda tricolorは写真の開花株で5,000円です。いずれも野生栽培株です。
 
Vanda javierae Vanda tricolor

資料参照それとも盗作?

 胡蝶蘭原種の花をネット画像検索していたところ当サイトの画像が他サイトで使用されていることが分かり、そのサイトをアクセスして驚きました。そのサイトが下記です。

 https://www.aiosezionelombardia.it/2018/04/27/2263/

 本サイトのそれぞれの胡蝶蘭原種の画像および解説文(英文のあるものはそのまま)がページへのリンクではなく、上記サイトにコピーされており、よって相当量の情報となりますが、これに加えてPhals netサイトの画像も加わりページ全体が他サイトからのコピーが占めているのには唖然とします。本サイトでは非営利サイトであれば画像については画像へのcaptionの添付あるいは引用の明記があれば良いとトップページ下のcopyrightで規定していますが、文体までのコピーは認めていません。そうした所謂著作物規定は世界共通の考え方と思います。ほぼ全画像と全文をコピーして、それぞれの種の解説ページ末端に参照元として本サイト名が記載されているだけです。これだけの膨大なデータの丸写しで、許諾についての連絡メールは一切ありません。イタリア語が随所で使用されていることから、上記のサイトはイタリアと思われます。

 つい吹き出してしまったのはその自身のサイトのトップ(Home)ページの下にCopyrightAioSezionel...と書かれていることです。他人の情報は参照元として1行片隅に書くことでほぼ全てをコピーさせてもらうが、自分のサイトの内容のコピーは常識に従えと言っているようであきれました。

ミンダナオ島SurigaoからのDendrochilum sp

 昨年7月に紹介したDendrochilum sp redが開花を始めています。現在5株程で花芽を付けていますが、その内1株がほぼ開花し、2株目が開花間近です。園主からの画像は赤味の強い花色でしたが、今回の初花の花色(画像左)はオレンジレッド色で、間もなく開花する花(画像右)はクリムゾン色のようです。花色はどうやらCoel. longirachisのように環境や状態で赤味が変わる性質があるのかも知れません。

Dendrochilum sp Surigao red

2018年発表の新種Dendrobium annemarieae

 昨年OrchideenJournalで発表されたミンダナオ島Bukidnon生息種のDen. annemariaeが開花しました。同地区に生息するDen. deleoniiとは個体差の範囲と思われるほど類似しています。Den. deleoniiが標高1,300mに対し1,500mとされます。OrchideenJournal Vol.6.5 2018に両者の相違が書かれていますが、主な点を画像として取り上げてみました。画像は全て4月2日の浜松温室にての撮影です。

 多くの趣味家は下左右の画像を見ても一体何が違うの?と思われるかも知れません。OrchideenJournalには、中段写真でリップ中央弁がDen. annemariaeは途中から下に垂れているのに対し、Den. deleoniiの中央弁はほぼ真っ直ぐ前方に伸びていること、下段では中央弁を裏から見た形状がDen. annemariaeはSpur先端に向かって幅広(筒状)であることに対し、Den. deleoniiは中央から急に細くなっていることなどが解説されています。ではDen. sanderae var. major.はどうなのかこちらとも比較したいのですが開花期が異なるため撮影は開花待ちです。

 しかしこの程度の違いで別種として分類すべきか甚だ疑問で、個体差あるいは地域差、すなわち亜種、変種あるいはフォームの関係程度ではないかと考えてしまいます。微妙な形状違いで別種とするのであれば胡蝶蘭原種の遺伝子分析法のような、より科学的な視点からの分類を期待したいところです。

Den. annemariae Den. deleonii


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