栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 2018年度

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2月

国内マーケットではあまり見られないフィリピンバルボフィラム3点

  下写真はそれぞれ植え付けを完了したフィリピン生息のバルボフィラム3種です。上段はBulb. glebulosum、中段はBulb. emiliorum、下段はBulb. tenuifoliumです。Bulb. glebulosumは2008年登録のフィリピンAurora州生息の中温タイプです。昨年7月に本種名で入荷した株にBulb. inunctumがミスラベルで含まれていることが分かり、今回は別ルートからの再入荷となりました。Bulb. emliorumはパプアニューギニアとフィリピン生息が知られ高温タイプであり本サイトでは初入荷となります。またBulb. tenuifoliumは低地から標高1,500mに分布しますが今回の入荷株は低地生息株で高温環境が適しています。

Bulb. glebulosum
Bulb. emiliorum
Bulb. tenuifolium

Sumatra島からのBulbophyllum aeoliumCymbidium lancifolium

  下写真上段は新たにSumatra島から入荷したBulb. aeoliumです。本種はBulb. kubahenseBulb. lasianthumなどと同様にバルブ間のリゾームが長く、植え付けには困ったバルボフィラムです。特にSumatra島生息種はBS株となると葉が大きくリゾームが固いため曲げてバスケットに収めることが困難で長い棒状の取付材が必要にになります。上段左は60㎝ x 9cm x 3cmの炭化コルクに取り付けたもので先端のバルブから30㎝程の伸びしろを設けています。

 Bulb. aeolium自体は丈夫な種ですが、栽培がなかなか難しいとの意見をよく耳にします。この最も大きな原因はorchidspecies.comに記載されているようにその生息標高範囲が100m - 1,800mと広いことにあります。すなわちコールドから高温環境で育っており、これは低温から高温までの耐寒および耐暑性を意味するのではなく、その株それぞれの出所に応じた適温があることを示します。フィリピンのBulb. aeoliumは高温で良く開花するのだが、ボルネオ島由来は上手く育たないと言った原因はボルネオ島産はその標高から中温栽培が必要のためです。こうした栽培温度環境の違いは、同じ地域であっても標高が異なればその逆もあり得ます。この背景が分かるまでに数年かかりましたが、問題は株それぞれの出所がどの標高の株であるかがサプライヤーや現地栽培者に管理されていないため情報を得ることが難しいことです。解決は順化栽培過程において複数株を高温・中温それぞれの温度環境に置き、状態をチェックすること以外方法は無いように思います。

 一方、Bulb. aeoliumと似た花形状にBulb. uniflorumがあります。orchidspecies.comのBulb. uniflorumの記載を見ると間違いではと思われるのは、花写真のサイズが無調整であることは兎も角、標高表示が600m - 1,800mとされているにも拘らず高温マークのみが示されていることです。1,800mが高温とは考えられません。ちなみに昨年入手したボルネオ島生息のBulb. uniflorumは当サイトでは高温は適さず中温での栽培です。2つの種についての違いは葉形状が若干異なること(葉幅がBulb. aeoliumは広い)を2017年の歳月記で取り上げましたが、確定的なものではなく在庫株に葉形状の違いが観察されたことに基づいています。orchidspecies.comではBulb. aeoliumはココナッツの香りに対して、Bulb. uniflorumは嫌な(foul)匂いとされていますが、時折良い匂いがすると理解不能な表現となっています。画像検索から両者を形状比較すると花画像からはペタルの形状・サイズが異なる印象を受けます。さて上段の株ですが、温度の異なる栽培環境でしばらく様子を見ての判断となります。花は大きくダイナミックであるだけにそれだけの手間をかける価値はあると思います。

 下段は同じスマトラ島からのCym. lancifoliumです。本種は東南アジアのほぼ全域に生息し、日本ではナギランとして知られ、標高1,500m以上のクールタイプとなります。セパルペタルは薄茶から白色が見られますがサプライヤーからの花画像を見る限り入荷株は淡いピンク色のようです。

Bulb. aeolium Sumatra
Cym. lancifloium Sumatra


スラウェシ島(ソロモン諸島から修正)とソロモン諸島からのデンドロビウム2種

 昨年末から今年にかけてマレーシアより入手したスラウェシ島生息とされる2種類のデンドロビウムspが現在開花しています。写真上段および下段がそれぞれの花と株です。上段はDen. endertiiに似た花形状をもつDen. spで、Calcarifera節と思われます。これまでDen. endertiiはボルネオ島標高1,000m - 1,500mの生息種とされ生息範囲が比較的限られた地域であるにもかかわらず画像検索では他に類をみないほどの多様なフォームにこの種名が付けられており形状が定まっていません。下写真のリップ中央弁やSpurの形状、またカラーフォームに関して部分的に類似する花は多いものの全体として一致する画像は現時点では見られません。Den. endertiiがボルネオ島固有種とすれば、本種がスラウェシ島生息種とされる点からは新種とも考えられます。

 一方、下段はDen. sororiumと思われます。Den. sororiumはスラウエシ島標高650m - 1,300mの生息種とされます。しかし下段の種はソロモン諸島からの株であり、こちらも前記同様にDen. sororiumがソロモン諸島に生息する記録はこれまでありません。情報によればこれら2種はほぼ同一地点での生息とされます。一般論としてランの生息分布について南下説を考えればスラウェシ島とソロモン諸島に生息している同一種が、その中間に位置するニューギニアでの記録がないのは不思議で、今後ニューギニアにおいても生息が確認される可能性があります。

 上段のDen. sp(endertii-like)は当サイトと同一のインドネシアサプライヤーから得たC. Stanley氏が東京ドームラン展会場にDen. spとして出品しており、この環境において8日間開花し続けていたことを考えるとかなり環境変化に強く花寿命も長いのではないかと思われます。一方で下段のDen. sororiumは2-3日の短命花です。しかし12月入手以来、3ヶ月間で同一株に2回の開花が見られたことから短命花によく見られる通年での開花回数は多いようです。植え付けはいずれもバーク、ゼオライト、軽石(あるいは焼赤玉)と、ミズゴケクリプトモスミックスの2種類の植え込み材で様子を見ながら栽培をしています。いずれもネットからはマーケット情報がなく、国内初登場ではないかと思われます。

Den. sp (endertii?) Sulawesi
Den. sororium Solomon islands

新入荷種の植え付けと整理

 東京ドームラン展が終わりました。当ブースに来られた多数の趣味家の方々には感謝申し上げます。これから1週間程は温室の整理と、ラン展直前にフィリピン訪問で持ち帰った株とマレーシアから2代目に持って来て頂いた多数の株の植え付けがあり、その中には新種や現在のマーケットにはほとんど見られな原種も含まれこれらは順次本サイトにて紹介していきます。

 ラン展では希少種に人気があることは分りますが、今回意外であったことは罰ゲームに使う?のではと思われる程のハエの好きそうな強烈な匂いのする花が咲くコンニャク芋Amorphophallusや、またコブの塊のような蟻シダLecanopterisが好評で2日程で売り切れたことです。これらは2年前に共同出店していたフィリピンラン園が持ってきたものと同じで、若い人が買っていくのを見て試しにと半ば冗談のつもりで出品したものです。もう一つの出来事はミンダナオ島の新種の一つを展示していたところ、OrchideenJournalの編集者が来られ、この種名は自分の名前から付けられたもので、ネットで調べていたところ本サイトの歳月記にその品種名があり、現在日本にある筈がないのだが、どうして誰から入手したのかと質問に来られたことです。勿論、CITESや植物検疫ドキュメントは揃っていることと、市場性の高い新種の入手ルートは企業秘密で他人に明かすべきことでないことはご存知であろうと説明しつつも、一体ドイツではいくらで売られているのか伺ったところ日本円で3,000円程とのこと。それではあなたに敬意を払い日本では3,500円で販売しようなど、やがてランの話で互いに気が合い数冊のJournalを頂くことになり、本サイトの出品には珍しい種が多数あって興味深いので、ぜひドイツ・ドリスデンでのラン展に参加してはどうか、協力者を紹介するなどの誘いもありました。

 趣味家との栽培話や、こうした出来事の中で無事東京ドームラン展を乗り越えたものの、これから1週間程は、ラン展後に発送のプレオーダー作業が続き、今後もしばらく休む時間の無い日々が続きそうです。2か月後には再び海外買付が始まります。

東京ドーム世界ラン展2019

 いよいよ15日より22日まで東京ドームにて世界ラン展が始まります。昨日(13日)プレオーダーを含め発送のための梱包を終え、本日14日はドーム会場への搬送と設置となります。本サイトは1月のサンシャインラン展同様に2010年以降に発見あるいは新しく国内マーケットに登場した種を中心に150種程の野生栽培株の展示販売を行います。一方、ドームの気温や湿度の中でランを長期間品質維持することは大きな課題で、購入を予定される方にとって特に胡蝶蘭については初日からの3日間が重要な期間となります。本サイトにとって今年は、とりわけデンドロビウムやバルボフィラムなど直近の入荷が多いため順化処理を必要とする株も見られこれらは原則未掲載としており、こうした原種については順次本サイトで紹介しながら、順化状況と趣味家の栽培環境に合わせ浜松温室からの直送の予約を行います。一方、東京ドームラン展では原種とりわけ野生栽培種の入手や栽培方法等の情報交換を行う上で良い機会でもあり、原種愛好家の多数のご来場をお待ちしております。

Vanda coerulea 野生栽培株

 Vanda coerleaの野生栽培株を入手しました。本種はミャンマーからタイの800m - 1,700mに生息し、青色のVandaを作出する種親として良く知られた種です。現在市場での本種名のVandaは、ほとんどが実生や交雑種で野生株の入手は極めて困難です。実生と野生株との違いはその色の濃さにあるとも言われています。今回タイと繋がりの深いPulian Bulacan地区のフィリピンラン園を訪問し、園主が交配用の種親として保管している5株程のVanda coerulea野生栽培株の内、2株を分けてもらいました。果たしてどのような色合いが見られるか今後の楽しみです。1株を販売用としてドームラン展に出品します。


Vanda coerulea wild

Cleisocentron abasii その2

 Cleisocentron abasiiの野生栽培株大小合わせて40株の植え付けを開始しました。これまで入手したCleisocenron属では、Clctn. merrillianum、gokusingiiおよびwide leafタイプの3種で、今年になりClctn. abasiiが加わりました。市場ではClctn, gokusingiiClctn. abasiiと誤って販売している事例が見受けられますが、明確な違いは花茎の長さでClctn. abasiiは10 - 15㎝程に対してClctn. gokusingiiは1㎝程と短く、またClctn. abasiiと見間違うほどの葉幅が広く似たwide leafタイプも花茎はClctn. gokusingiiとほぼ同じ短長です。下写真左は浜松にて取り付け直後のClctn. abasiiの一部で、右はそのロット内の花茎を撮影したものです。今回入手した株は茎の長さが10㎝から40㎝程と多様です。

Clctn. abasii

Cleisocentron abasii

 3年目にしてやっとClesocentron abasiiの野生栽培株を入手できることになりました。下写真に示すように高品質です。東京ドームラン展には30点ほど展示販売する予定です。株の長さにより価格は異なりますが5,000円からを予定しています。現在市場ではCleisocentron gokusingiiを本種と誤って販売しているサイトが見られますが、最も大きな違いは花茎が通常10-15㎝長であること、また葉が下写真にようにClisocentron gokusingiiに比べ薄く、より開いています。

Cleisocentron abasii

Aerides

 上段は左が2016年登場のミンダナオ島生息種Aerides migueldavidii、右がAerides magnifica albascens、下段がAerides leeanaです。いずれも入手難な種です。今週からの東京ドームラン展 にAerides magnifica と共に後者2種を展示販売します。

Aerides migueldavidii Aerides magnifica albescens
Aerides leeana

Phal. schillierianaPhal. equestris blue

 Agitest検証を経たPhal. schilleriana L および特大サイズを200株現地で入手し、その内取り敢えず85株を日本に持ち帰りました。最大サイズは42cm(右写真)です。特大サイズの葉長は一般に言われるロングリーフとは異なるタイプですが長さ的には同等です。下写真上段は右からそれぞれ2株つづ特大サイズ(>35cm)、Lサイズ(30 - 34㎝)、一般サイズ(<29㎝)です。実生株では育成困難な大きなサイズであっても本サイトは一般サイズとしています。

 一方、下段はPhal. equestrisのBlue リップタイプです。今回はクラスター株だけを持ち帰りました。写真左から炭化コルク2つ目の株が1株の一般サイズです。これと比較して左右のクラスター株との違いがよく分かります。いずれも今週のラン展に数株を出品します。

Phal. schilleriana
Phal. equestris blue-lip

ミンダナオ島からの新種3点

 今回のフィリピン訪問でミンダナオ島生息の3種を入手しました。いずれも2006年直近の新種です。それぞれ下記となります。
  1. Dendrobium schettleri
  2. Epicranthes sp ( charishampeliaeあるいはequinoi?)
  3. Epicranthes (Bulbophyllum) jimcootesii
 下写真は右がDen. schettleri、中央がEpicranthes charishampeliae、左が同jimcootesiiです。それぞれいずれもミンダナオ島Bulkidnon標高1,200m - 1,600mnの生息種で、2018年OrchideenJournalでの投稿です。これらは東京ドームラン展に出品予定です。

right: Den. schettleri、center:Epicrianthes charishampeliae、left:Epicrianthes jimcootesii

フィリピン訪問

 5日から本日(9日)までフィリピンに出かけていました。ドームラン展前の大忙しの中で450株近い株を持ち帰ってきました。ミンダナオ島からの新種や人気の高い種が多数含まれており、明日から順次本ページにて紹介していきます。また来週早々にはマレーシアからの荷も届きます。こちらもラン展には何とか間に合わせたいと思っています。

東京ドームラン展用プレオーダリスト

 プレオーダーリストはトップページ中央右端下の「プレオーダリスト2019」からアクセスできます。11日までの受付となります。

ラン展出品の一部 I

 花画像はそれぞれの画像下の種名をクリックすることで見られます。Vanda deareiは一枚の葉長が35㎝を超えるFSサイズです。Den. odoardiはラン展出品は初めてです。Aerides roseaは雲南省生息種となります。Vanda coerulescensおよびParaphal. serpentilingueは蕾付きあるいは開花株を、Den. rindjanienseは茎長40㎝を超える大株を含め出品します。


Den. rindjaniense

Den. odoardi

Rhynchostylis coelestisblue

Vanda dearei

Aerides rosea

Aerides krabiensis

Den. aurantiflammeum

Paraphal. serpentilingue

Vanda coerulescens

東京ドームラン展

 今月15日から東京ドームラン展が始まります。本サイトのブーズは4m x 2.5mの広さで、隣にはエクアジェネラとペルーフローラが並び、入り口からは一番奥左となります。新たに海外から入荷する品種の多くが来週から再来週の到着となるため、東京ドームラン展のプレオーダーリストは1月のサンシャインラン展とほぼ同じ内容とし、新入荷種はラン展会場での直販および予約(海外から入荷する品種の一部には順化処理を必要とする株が含まれる可能性があり、これらは予約により順化後に宅配便による発送)といたします。プレオーダーは3日にリストを本サイトにアップデートし、4日から11日までを受付期間とさせて頂きます。なお歳月記1月に記載しました中国雲南省を中心とするランは各品種それぞれ1-2点ですが会場にての販売となります。

 

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