栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 2016年度

2017年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月

2月



 

Dendrobium sp

 1昨年スマトラ島からのDendrobium spとして入手した株が2年を経て開花しました。Crumenata節と思われますが、種名は不明です。上段左に示す正面からの画像では左のカールした細長いペタルと同形状の右のペタルがナメクジで齧られてしまい欠けています。縦幅は2㎝となります。入手して1年は中温タイプと見なしていたのですが、今一つの成長で、クール室に移動してから活発に新芽を出すようになり、昼間と夜間で10℃程度の温度差になり花をつけました。バスケット植えです。バルブおよび葉は細い円筒形で、バルブの根元から5㎝長程は膨らみがあります。(後記: Den. linearifoliumの可能性が高いと思われます。)


Dendrobium bullenianum, goldschmiditanum, usitaeの関係

 胡蝶蘭ではしばしば自然交配種が見られますが、デンドロビウムは僅かです。その中で自然交配種としてはDen. usitaeがよく知られています。Den. bullenianumDen. goldschmiditanumとの自然交配でカラヤン諸島Babuyan島の生息です。この結果、Den. usitaeは両者の色合いを併せ持つフォームが特徴となります。しかし年2-3回の開花が浜松の温室でありますが、その時期の気温に影響を受けるのか花色は不安定です。下写真は左上下が交配親で、右は上下にそれぞれDen. usitaeを示します。温室では現在、3種が同時開花中です。Den. usitaeも多数の株が同時に開花すると右写真下に見られるように色の個体差がよく分かります。この色合いは同一株においても開花の始まりから終わりまでの間で黄色から赤味のある橙色まで変化することがしばしば観察されます。


Den. bullenianum


Den. usitae

Den. goldschmiditanum

Dendrobium bullenianumDendrobium tiongii

 2-3mも離れて見れば、あるいは目を近づけて見なければその違いが分からないデンドロビウムがDen. bullenianumDen. tiongiiです。違いはDen. bullenianumは半立ち性に対しDen. tiongiiは立ち性であること、また下写真右に示すようにDen. bullenianumはリップおよびペタルに赤いラインが入るのに対し、Den. tiongiiはラインが無いこととされます。両種ともフィリピン固有種で前者はCalayan諸島からミンダナオ島北部の標高300m以下の広い範囲に生息し開花は夏から冬に、一方後者はルソン島からミンダナオ島までの標高500m以上で開花は春となっています。しかし国内栽培において開花時期は同時で、またルソン島やミンダナオ島北部では近接する生息域があり、これらの自然交配種があっても不思議ではないと思うのですが、果たしてポリネーターは、匂いも両者に無いのに写真右のフォームの違い程度でそれぞれの花を間違うことなく花粉を運ぶことが出来るのかが不思議です。余程Den. tiongiiのポリネーターは地域依存性が高いのか、あるいは一部にその自然交配株があるのだが似た者同士のため今のところ誰も気が付いていないのかとも考えてしまいます。


Den. bullenianum

Den. tiongii

Den. bullenianum(左)とDen. tiongii(右)

Dendrobium新種の可能性

 1月のサンシャインAJOSラン展にマレーシアラン園の2代目を招待したところ、そのお礼にと、デンドロビウムの名称不明種を10株程もらいました。赤い小さな花とのことで写真がメールで送られてはいたのですが肝心の花がボケていてよく分かりませんでした。会員の方から、疑似バルブ、葉の形態や赤い花であることから2008年9月ボルネオ島Sabah州で発見、2010年ジャーナル発表のDen. pseudokurashigeiの可能性がありとの情報を頂きました。

 その株の一つに1週間ほど前から蕾がつき開花しました。それが下の写真です。花サイズは縦幅1.2㎝で、バルブおよび葉形状はDen. pseudokurashigeiと同形と思われますが、花のリップ中央弁先端が写真左に見られるように3つの突起状となっている点と、距(spur)が湾曲し先が膨らんでいる点が異なります。微香ですがビスケットのような良い香りがします。左写真でリップ側弁に黒いラインが見えるのは側弁の縁が茶褐色となっているためです。マクロレンズを使用しての撮影となりました。デンドロビウムCrumenata節と思われます。植え付け当初、株の形状から高地系ではないかとしばらくクール温室に置いていたのですがDen. pseudokurashigeiがボルネオ島400mの生息種であることから、近縁種と見なして胡蝶蘭温室(18℃ - 28℃)に移動しました。2つ目の蕾が高温室に移動してから新たに現れており本種も低地生息種の可能性があります。


 デンドロビウムやバルボフィラムなど昨年は名称不明種をspとして多数入手しており、特にバルボフィラムについて最近は半数が名称不明です。趣味家としては何が現れるのか、むしろ興味津々で楽しいのかも知れませんが、販売する立場からは花を見るまでは売るに売れないというジレンマがありこれはこれで困ったものです。花未確認のspの入手を希望される方に販売するのは温室訪問者に限られますが、現在は株サイズにもよりますが2,500-3,500円の範囲で販売しています。

市場価格から見えるもの

 入荷した原種を幾らで販売するかを決める際、海外のラン園のネット価格をよく見ます。国内マーケットの価格はここ最近は国際価格並みになってきたところがあるものの一般的に高額過ぎる点で余り参考にしません。海外ラン園のそれぞれの品種の価格の高低差は希少種、一般種、人気種など現状のラン事情を反映し、それなりに勉強になります。例えばAsiatic Greenは国際的によく知られたシンガポールのラン園で、価格も標準的でその価格表が公開されています。インターネットでAsiatic Green price listで検索するとラン以外を含め膨大な価格リストが出ます。本サイトの価格もよくこのラン園の価格を参考にしています。如何にこのサイトの価格に対抗するかが海外仕入れ時の基本知識となります。

 この価格表でランに関し値段の最も高い原種を属別に取り上げてみると以下となります。表のそれぞれの属で、新種や話題種は個別見積りなのでしょうかこれ以上高額なランはネットカタログには取り上げていないようです。これ以外の種はほとんどが20-30ドルとなっています。

種名
サイズ
価格米ドル
Bulb. fritilariiflorum 5bulbs FS 60
Bulb. mastersianum 3-5bulbs FS 60
Coel. asperata 3-5bulbs FS 35
Coel. usitana 3-5bulbs FS 35
Den. aybii 3-5stems FS 55
Den. laevifolium 3-5stems FS 50
Den. shiraishii 3-5stems FS 55
Den. tobaense 3-5stems NBS 50
Den. torajaense 3-5stems FS 100
Phal. amboinensis flava 4-6"leaves ("はインチで2.5㎝) 100
Phal. appendicula alba 1-2"leaves 350
Phal. gigantea .6-10"leaves 100
Phal. pantherina 4-6" leaves 150
Vanda javierae 6-8"tall 150
Vanda jennae 6-8" tall 80
Paraphal denevei 8-10"tall 350

 面白いのはSpatulata節や数あるデンドロビウム(ちなみにDen. williamsianumが35ドル)の中でなぜDen. torajaenseがダントツの100ドルなのか不思議です。本サイトでもDen. torajaenseを扱っており、過っては2,500円でもほとんど売れないので中温の薄暗い場所に2年程捨て置かれていましたが、昨年この価格を見て驚き、さっそく陽の目が見える場所に移動し、最もコストの高いバスケット植えに昇格させ、価格も5,000円としました。1年ほど前までは温室を訪れた会員の方にしばしば無償で差し上げることもあったデンドロビウムです。胡蝶蘭ではPhal. pantherinaが150ドルとは驚きです。Vanda javieraeは数あるVandaの中で最も高額です。野生種であればこの価格は理解できますが、野生栽培株か実生かの記載はありません。ちなみに公開リストの中で新入荷としてバルボフィラムの中でBulb.sp ”Crimson Ribbon"名のバルボspが60ドルとなっています。これは本サイトの昨年12月で取り上げた本サイト名Bulb. potamophilumと思います。

 基本的に生き物は、温室での量産品でなければ、気候や在庫数でサプライヤーからの値は大きく変わります。このため販売する側からは生鮮食品のように時価制が好ましく小売カタログのように一定の価格に設定しようとすれば仕入れ値の変動によるリスクを避けるために必然的に高い方の価格に設定せざるを得なくなります。一方、時価とすれば、顧客からは前回この価格で入手したのになぜ今回は高いのか、あるいは前回は高値で買ってしまったなどクレームがでます。難しいところです。本サイトでは温室を訪れる人に対しては、カタログ価格を無視して勝手に値を変える時価モドキをしばしば行っています。この問題点はカタログ値以上にはできませんが、気分で2割程変動することです。かって町で見られた魚屋の魚売りのようなものです。スーパーになってこうした店はほとんど無くなってしまいましたが。

Bulbophyllum sp Papua New Guinea

 昨年10月のキャメロンハイランド訪問時に現地ラン園にて、Papua New Guineaからの種名不明のバルボフィラムを入手し、その株が開花しました。Hyalosema節であろうことは花形状で推測出来るのですが、orchidspecies.comに登録された同節20種のなかには該当する種が見当たりません。特徴はBulb. schmidiiに似たペタルの形状(写真中央)と、バンプ(細かな凹凸)状のラテラルセパルの表皮(写真右)です。このバルボフィラムを下写真に示します。ドーサルセパルは6.5㎝、ラテラルセパルは4.8㎝です。


Dendrobium butchcamposii

 今月の本ページで取り上げた昨年ミンダナオ島で発見されたDen. butchcamposiiについて開花直前の蕾が白と、薄ピンク色の2つのタイプがあり、開花した花を見ても特別に変わったところが無いと思っていましたが、よく見るとリップ中央弁の中心部に薄黄色の帯が基部に向かって走るもの(写真左)と、それが3本のラインとなっているもの(写真右)があることが分かりました。この違いは株単位で明確に2タイプに分かれているのですが分類学的に変種あるいは別種とされるほどの違いとも考えにくく気になったので下に写真を掲載します。バルブには視覚的な違いを見出すことはできません。

Den. butchcamposii

Dendrobium peculiare

 ラテラルセパルと距(Spur)はどこからどこまでなのか、その境がよく分からないこの変わった形状のデンドロビウムが現在ちらほらと開花しています。その後の調べで入手した株はスマトラ島産ではないかと思います。標高1,500m程の高山タイプとなります。orchidspecies.comでは花の匂いは記載されていませんが、薬臭い匂いがします。悪い匂いではありません。これは花の無いバルブを植え付けていた時も良く匂っていました。国内での市場情報は全くありません。

Den. peculiare

Dendrobium cruentum

 本種はミャンマーからベトナムに生息するFormosae節デンドロビウムで、特筆すべきはデンドロビウムとしては珍しいCITES Appendix Iで、最も絶滅の可能性の高い種の一つとされています。Appendix Iであることから現在純正種の入手は難しく、マレーシアPutrajayaラン展でも展示されている株のほとんどは花サイズを大きく見せるためのDen. formosumとの交配種やDen. suzukiと呼ばれる株ばかりでした。純正のDen. cruentumがないかと打診していたのですがベトナム系統の本種が1店舗で見つかりこれを入手しました。 交配種に比べ花は小さいのですが10倍近くの高額でした。栽培環境として通年22℃から34℃の栽培温度で湿度は80%以上、高輝度を好むとされます。

 この株を昨年3月に浜松にて自家交配し、8月にフラスコへの採り撒き、さらに一回目の植え替えを先週行ったところです。下写真左が親株で、右はフラスコ苗です。取り敢えず150株苗をつくり、今年暮にはフラスコ出し、来年から販売を予定しています。

 フラスコ間の植え替えでは、1cm程に伸びた苗の塊をそれまでのフラスコから取り出しこれをシャーレに移し、、この根の絡んだ苗の塊からバルブの比較的大きく成長した苗を1本づつ選び、これを新しいフラスコ培地に植え替えます。すべてを無菌状態下で行わなければならないため神経を集中しないとできません。あらゆる器具類、水、液肥などは125℃の圧力釜での殺菌済みを無菌のクリーンベンチ(高さ、幅、奥行き、1m、0.9m、0.7m)に並べ、手はアルコール消毒を行います。フラスコの口はベンチ内でも蓋の開け閉め毎に、蓋と共にアルコールランプで火炎殺菌をします。ヘッドマウントルーペを通して苗を見ながら理科学実験用機器レベルの先端の細い長短のピンセットをそれぞれ操作して苗が立つように一本一本植え付けるのは、選別から植え替えまでの100本当たり、無菌培養クリーンベンチの前に座り、手先のみを動かし微動だにしない姿勢を2時間以上保つことが必要です。マスクは当然付けますが途中でクシャミでもしようものなら終わりです。

 一度、夜に作業部屋の部屋を暗くしベンチのライトのみで作業していたところ、ベンチの中で目の前をよぎるゴミのようなものに気付き、はてと手を止めてベンチ内を目を凝らしてみたところコバエが1匹飛んでいたことがあります。ベンチ内はフィルターを通ったエアーがベンチ内から外に向かって流れているので、どうしてハエが入り込んだかは分かりませんが光に誘われてのことです。それまでの2-3時間の作業が全て徒労に終わりました。それほど無菌培養ではコンタミネーション(雑菌汚染)に注意が必要で、培養の成否は目に見えない菌との戦いで決まります。マンパワーがあれば1,000株を超える苗でも容易に生産できますが、一人での作業は1種当たり100-200株が限界です。


Den. cruentum Vietnum

Den. cruentum Flask Seedling

Bulbophyllum gracilimumの3様態

 昨年12月マレーシアからBulb. brienianumを30株程持ち帰りました。この株の一つが先月末に開花しBulb. gracilimumのミスラベルであることが分かりました。本サイトではBulb. gracilimumを既に5株程に加え50バルブ以上もあるcluster株も所有しており、これ以上増えても困るとマレーシア園主にクレームを出したところです。Bulb. gracilimumは糸のように細長い真っ赤なラテラルセパルを下垂し10輪ほどが円形に開花するCirrhopetalum節で線香花火のような印象でユニークです。タイ、ミャンマー、インドネシア、マレーシアからニューギニアを経てオーストラリアまで広く分布しています。

 今月に入りこれらの30株のほとんどが同時に開花し始め、その中の1株が赤味の抜けた薄黄色の変種であることに気付き驚きました。始めて見るものです。当初は別種ではないかと思いましたが、色を除けば花も葉の形状も同じであることから本種との結論に至り、そこでさらに開花している別の花を調べたところ、さらに1株、一般フォームとは異なる株も見つかりました。これらが下写真です。上段が一般フォーム、中段が今回のセミアルバタイプ、下段が同じく別のタイプです。

 通常アルバは数万株に1株と言われ、僅か30株に偶然にしても入っているとは考えにくく、下段のフォームも一般とは異なること、また異なる地域からではなく同一ロットであることからも本種はカラー配色の変異が多い種ではないかと思われます。おそらく1%程度、中段や下段のフォームが個体差のように存在するのではないかと考えます。それにしても面白い性質です。杉皮板にミズゴケの取り付けです。

Bulb. gracilimum

胡蝶蘭原種アーカイブ

 このサイトの前身である2009年から2014年までの「胡蝶蘭の原種」を久しぶりに見ていて、今月の花や歳月記に登場したそれぞれの原種は今どこでどうしているのだろうかと懐かしく感じています。会員登録だけは今もこのサイトから行っていますが、現在の登録数は170人程となりました。早く会員ページを立ち上げなければと思いつつなかなか進みません。なんとか時間を作り着手しようと思案しているところです。最近、胡蝶蘭原種栽培を始めたと言う方は下記にアクセスして頂きご参考ください。

http://www.ranwild.org/Phalaenopsis/


Dendrobium insigneDendrobium consanguineum

 ニューギニアからのDen. insigneとして昨年10月にマレーシアで入手した株を本ページ11月に紹介しました。その時の花画像はすでにマレーシアにて開花していた株を持ち帰って浜松で撮影したものです。順化期間が過ぎ、今月に入りこれらの株が開花しました。それが下写真です。花を見ていて、はて?とDen. insigneとは何か違うような違和感があったため調べたところ、かってはシノニムの関係、現在は独立したDen. consanguineumという種であることが分かりました。

 まず第1の違いは花のセパル・ペタル裏面が、Den. insigneは表面のベース(淡い黄色)と同色であるに対して本種は白です。第2にDen. insigneのリップには細毛が密に生えていますが本種は視覚的には困難なほどの短い細毛がリップ基部に僅かに生えている程度です。第3は本種のドーサルおよびラテラルセパルの幅がDen. insigneに比べて広く丸みがあります。Den. insigneはオースラリアからニューギニア、本種はインドネシア・マルク島(マラッカ諸島)とのことで生息域は近い関係です。

 そこでDen. consanguineumのマーケット情報をネット検索したのですが、まず国内ではこの種名すらヒットしません。シンガポールのAsiatic Greenのリストにはあるのですが在庫は無く、海外でも取り扱いはほとんど見られません。昨年10月のマレーシア訪問では10株ほどあり、その中から2株を持ち帰ったことから、12月の訪問時に残りがあれば全て購入したいと打診したのですが、すでに販売済みとなっていました。このラン園はシンガポールを経由したドイツへの輸出が多いので、その辺りに渡ったのではないかと思います。

 Orchidspecies.comを見るとDen. insigneDen. consanguineum共に花は短命と書かれています。この短命とは何日を指すのかは明らかではありませんが、敢えて短命と言われるとDen. amboinensisのように1日あるいはDen. crumenatumのように3日花を想定してしまいます。ところが浜松ではすでに5日経っているのですが、枯れる様子はまだなく果たしてDen. consanguineumはいつまで咲き続けるか見ているところです(後記:7日目で花がしな垂れてきました)。



Dendrobium niveobarbatumDendrobium polytrichum

 まるでそっくりな似た者同士は花の世界にもあり、その一組みがCrumenata節のDen. niveobarbatumDen. polytrichumです。同じフィリピンの固有種で、前者は2008年登録のミンダナオ島Bukidnonの新種、後者は1907年登録のルソン島からMindoro島に広く生息している種です。名前が違うのであるから、花を隅々まで見ればどこか違うところがある筈と何度見ても微妙で、僅かな違いは個体差の範囲内ではと考えると分かりません。この両者を下写真に示します。


Den. niveobarbatum

Den. polytrichum

  しかし敢えて取り上げれば、リップ側弁の内側に線状模様がDen. niveobarbatumにはあり、またDen. polytrichumには若干香りがあり、サイズは後者がやや大きな点が違います。それだけならばなぜこれらを同種とし、それぞれを変種や亜種の関係としないのかとも思われますが、決定的な違いは花にあるのではなく葉にあるからです。それが下写真です。Den. niveobarbatumは葉が扁平の幅広で、一方Den. polytrichumは筒状で細長く葉形状は全く異なります。

 こうした関係も不思議で、果たしてそれぞれの専属ポリネータ(花粉媒介昆虫)は迷わずにそれぞれの花に向かうことができるのか、間違えば自然交配種が大量に生まれる筈で、果たして同じポリネーターなのか、生息場所が排他的で且つ開花期(未確認)が異ることで交配が避けられているのか、さらに近縁種であろうけれども、なぜ一方は扁平の葉で他方は棒状の葉に進化しなければならなかったのか、数万年前は同じ種であったものが何らかの原因で生息場所が分かれ、一方は湿潤な地で葉は広く、他方は高輝度、風の強い乾燥気味の地で葉からの水分の蒸散を抑えるために針状の葉に進化したのか等々興味が尽きません。自然が生み出す生物多様性のなかで原種の全ての形状、配色、生態には、今ある姿になるべき必然性があった訳で、その背景を想像すると、美を求めて人が創り出す交配種とは違った、生存を賭けて自然が創り出した原種ならではの神秘さ・面白さがあります。


Den. niveobarbatum

Den. polytrichum

Tuberolabium quisumbingiiMicrosaccus wenzelii

 カトレア、デンドロビウム、胡蝶蘭などメジャーなランを好む人から見れば、本種のような小型でマイナーなランを何千円も出して買い求め楽しんでいる人は何やら嗜好の歯車が狂った変人ではないかと思われるかも知れません。なぜ何万とあるランの中で、1㎝にも満たない小さな花に愛着が湧くのか理解できないと言うものです。

 しかし不思議なことに、その小さな花をよく眺めてみると大きな花には無い造形美がしばしば感じられます。例えば本種の花写真を下に示します。左が現在開花中のTuberolabium quisumbingiiで右がMicrosaccus wenzeliiです。共にフィリピン固有種です。J. cootes氏の著書の画像を見ても花フォームの詳細はよく分かりません。一方、本サイトで撮影した画像の左写真のTuberolabium quisumingiiを見ると、花粉を運ぶ専属のポリネータを呼び寄せるために進化したリップ形状の結果が、青い目と口を表した仮面のように怪しげなフォームで、ツノ?はたまた耳?まであり、この造作はどのような意味があるのか謎です。良い香りもします。一方右のMicrosaccus wenzeliiは花のリップがセパル・ペタルに比べてアンバランスなほど大きく、濃緑の葉色に1点の混ざりもない純白な花は良く目立ちます。小さな花とは言え、このように数万年をかけて進化した故の形には不思議な表現力が見て取れ、ムシめがねで見ないと気が付かない、謂わばほとんどの人が知らない自分だけの知る造形にハマる人も少なくなさそうです。ワーディアンケースで栽培するにはコンパクトで最適なランと言えます。サンシャインラン展ではフィリピンPurificacion OrchidがTuberolabium quisumbingiiを1,500円、Microsaccus wenzeliiが1,000円でした。これらの引き取り株のため同額での販売です。

 ちなみに花写真は面白いもので、こうした小さなランを撮影する場合マクロレンズが不可欠です。Tuberolabium quisumbingiiのJ. Cootes氏の著書にある画像はR. Schneider氏の撮影によるとされますが、今一つ花の個性が表現されていません。おそらくこの写真家はこうした小型のランにはあまり興味のない人なのかも知れません。花写真と言えど、写真はそれを撮影する人の関心がどこにあるかがよく表れるものです。


Tuberolabium quisumbingii

Microsaccus wenzelii

巨大なVanda merillii

 販売する側がランに対して巨大とか美しいとかと言った主観的な形容は何か嘘っぽく、極力避けたいし避けているのですが、こればかりは巨大と言わざるを得ない、現在入手難になったVanda merilliiの下写真が送られてきました。 2mはあると思われます。胡蝶蘭、Aerides、Vandaなどは大きければ大きい程良いので探してもらいたいと、ここ数年の打診の結果です。今月末にフィリピンに会員の方と出かけることもあり、そのタイミングでのこれはどうでしょうかとのことです。問題はその大きさをどうやってフィリピンから成田に持ち帰るかです。これを約1.2mx45㎝x45㎝の段ボール箱に果たして曲げて入るのかどうか、入らなければ2つに株分けし、国内に持ち帰ってから寄せ植えするしかなく、また段ボール箱のサイズを考えると、成田で運送業者に預けた場合、浜松に着くまでに2日を要し、2月末の気温下では心配です。とりあえず桜の咲く頃までフィリピンのラン園に預かってもらい国内の夜間最低温度が5℃以上になってから運ぶことになりそうです。

 これほどの大きな株を栽培できる温室を持っている趣味家が果たして何人いるか、熱帯植物園行きならば兎も角それも問題です。しかし、こうしたサイズを入手できる可能性が2度あるとは思えないので何とかしたいのですが大変です。これを1-2年栽培し開花期を調整しAJOSサンシャインラン展に展示してはどうかと思案しているところです。


Vanda merillii

Dendrobium papilio

 Den. papilioは現在3ロットを栽培しており、いずれもルソン島北部の高地生息種です。第一ロットは昨年東京ドームラン展に出品した株、第二ロットは昨年9月フィリピンから持ち帰った株、第三ロットは昨年12月の株です。第一と第三はほぼ同じ生息場所とのことです。このDen papilioはコロニー(狭いエリアに多数が生息)を構成することなく、広範囲に散在しており、この性格はDen. aurantiflammeumと共通しています。そのことと自然界での生息数が減っていることから現在はほとんどこれまでの地域で見ることが出来なくなったそうです。

 栽培経験によるとDen. papilioは、国内では2-3月と秋(10-11月)に開花する性質があるようです。一方、海外で9月時点で入手した株の多くにタネが付いており、おそらく4-5ヶ月は経過したさく果であることを考えると、日本の晩春頃がルソン島北部生息域での開花期(雨期の始め)と考えられます。本種は30㎝から60㎝の長く細い疑似バルブに、アンバランスな5-10㎝程の大きな花をつけることが人気となっています。10㎝となるとPhal. amabilisでも野生株では限られた地域にしか生息していません。

 下写真は第一ロットの現在開花中の株で8㎝あり、このロットは6-10㎝範囲の大きさの花をつけます。大きな花を得るには、それに対応する根が十分に発達していることが必要で、根が僅かで例えばプラスチック鉢にバークで植え付けた場合、バルブを持って株が抜けるようでは根張りが十分ではありません。このためには植え付けてから1年程の栽培期間が必要です。それまでに開花することもありますが花サイズは精々5-6㎝ほどとなります。

Den. papilio

第三ロットと同じ生息域のDen. papilioの生態

もう一つの種名不確定なDendrobium wattii

 昨年3月にカンボジアからの入手したDen.spが開花し、Formosae節の花形状ではあるがはたして種名は?と 本ページに取り上げました。その株が1年後の今週になって再び開花したのが下写真の株です。左写真は昨年、中央は今月、右は中央の花の側面です。2つの花は別々の株でリップの橙色濃度が異なりますが同じロットの株で花サイズが5㎝程となります。まず花フォームからDen. formosumを思い浮かべるのですが、サイズがDen. formosumの12㎝に対して半分の大きさでありリップのフォームも異なります。

 それではDendrobium wattiiではないかと、ネット検索したところ、問題に突き当たりました。前項のDen. spuriumと同様に今度はDen. wattiiについて、orchidspecies.comの画像www.orchid.url.twの画像とが全く異なります。本サイトの下写真の花はまさしくwww.orchid.url.twの画像と一致するのですが、orchidspecies.comとはリップフォームおよびペタルの形状が異なります。皮肉にもDen. spuriumとは正反対です。本サイトのリップ中央弁先端はW型(胡蝶蘭ではハート型と言う)に対して、orchidspecies.comでは先端は尖っており、一方下写真のペタルは丸みのある楕円形に対してorchidspecies.comでは長楕円形です。この違いを個体差あるいは地域差の範囲と捉えるには無理があります。またorchidspecies.comのDen. wattiiは同じくorchidspecies.comのDen. infundibulumとサイズは違うものの花形状が似ており、中国雲南省からベトナムまで幅広く分布するDen. formosum近縁種はそれぞれが似て非なる特徴があり、種の同定が難解です。

 本サイトでは下写真の株はDen. wattiiであることにしました。そうなると本種は1,500mから2,600mの高地系デンドロビウムとなります。振り返って、昨年2-3月に開花を得てから種名不明であったことと、カンボジア生息種だけでは栽培環境が分からず、この1年間胡蝶蘭の高温温室に置き続けていました。夏季には昼間34℃、夜間でも25℃を超える熱帯夜が続く日もありこの環境でよく生きながらえたと驚いています。パプアニューギニアのDen. curthbertsoniiDen. vexillariusであれば枯れていたと言うより消えていたかもしれません。今回の開花で改めて株を見てみると、入手した時よりも株が小さくなって元気もなく、10株ある全てを素焼き鉢から取り出して調べたところ新しい根のある株は2株しかなく、開花した株も死に花になるところであったことが分かりました。本種をDen. wattiiとすることでその原因がやっと分かった様な気がします。さっそくタチガレエースとバリダシンに浸けた後、ヤシガラマットで構成した円筒形支持材に取り付け、クール環境に移動したところです。



Philippine Dendrobium spurinum (後記:Den. orbilobulatum ?)

 4年前会津から浜松に移る際に、知人から受け取った本種名の株が数株あり、その花を「今月の開花種」ページに掲載していた時期がありました。しかしその株はDen. balzerianumであることが分かり、3年前からDen. spuriumの主な生息国でもあるマレーシアラン園に入手を依頼していました。ところが昨年夏にフィリピンにてDen. spurium名の株があるとの情報を得て、果たしてフィリピンに生息するものか再びDen. balzerianumでないかと半信半疑ながらも持ち帰りました。というのは株の形状からはこの両者の区別ができないためです。またJ.Cootes氏の著書Phiippine Native Orchid SpeciesにはEuphlebium属の中にreferenceとしてDen. spurium名は見られるのですがフィリピン生息種として取り上げていません。

 Den. spuriumの花写真はorchidspecies.comを始め、ネットで数多く見られ、そのフォームは知っていましたが、今週に入り浜松で開花した花を見て驚きました。Den. spuriumのリップのこれまでのフォームは、セパル・ペタルと同色の白色にあずき色の網目状ラインが左右にそれぞれ入るのですが、今回開花した花のリップは下写真が示すように白、赤、紫と3色をベースに細かな網目状ラインが入り、またリップ側弁(lateral lobes)もソリッド色でかなり印象的です。果たしてこのフォームが今回入手した株単一のものなのか、ボルネオ、スマトラ、Java生息の本種に対するフィリピンの地域差であるのかと考えていましたが、10月に購入された方からこのページを見られ、メールで下写真と同一のフォームで開花したとの報告を頂きました。 一方、別の会員の方から下写真はフィリピンの固有種であるDen. orbilobulatumではとの報告を受けました。orchidspecies.comでDen. orbilobulatumを検索すると、本サイト下写真とほぼ同じ画像が見られます。この画像が正しければ下写真の花はDen. spuriumではなく、Den. orbilobulatumと判断されます。Den. orbilobulatumは1996年にデンドロビウム属として登録され、その後2009年にJ. Cootes氏はその属名をEuphlebiumに移行し、氏の前記著書にはEuphlebium orbilobulatumとして掲載されています。すなわちDen. orbilobulatumEuphlebium orbilobulatumとはシノニム(同種別名)の関係となります。

 しかしここで不可解な点があります。J. Cootes氏の著書でEuphlebium orbilobulatum、すなわちDen. orbilobulatumは、リップ側弁はオレンジ紅色(orange blush)を含む白色で、リップの基部は暗橙色とされており網目模様があることは記載されていません。それを示す画像はOrchidaceaeのEuphlebium orbilobulatumやorchid.url.twのDendrobium. orbilobulatumであり、そのカラーフォームは本サイトの下写真やorchidspecies.comのDen. orbilobulatumとはかなり異なります (注:氏の著書の画像はリップのTopviewがないためフォームが不明)。一方、Orchidaceae (www.phytoimages.siu.edu)では下写真に類似する画像Den. spuriumとして見られます。

 このように下写真のフォームはorchidspecies.comのDen. orbilobulatumとは一致するものの、Den. orbilobulatumについてネット画像検索を行うと本サイトの画像に一致する画像はorchidspecies.comのその1枚しか見当たりません。多くのDen. orbilobulatumとされるフォームとは似て非なる画像で、これらは前記OrchidaceaeやCootes氏が記載するフォームに近いことが分かります。これだけインパクトがある花フォームであるにもかかわらず、画像がorchidspecies.comの1枚しかないのも不思議です。推測ですがorchidspecies.comに写真を提供したドイツ人は、たまたま本サイトと同じフィリピンのサプライヤーから本種を入手したものと思われます。なぜこの花をDen. spuriumではなく、またJ. Cootes氏の記載したEuphlebium orbilobulatumとも似ていないフォームを、シノニムであるDen. orbilobulatumの画像としたのか、 決定的な形態的特徴があるのかも知れません。不思議にも本サイトとorchidspecies.comの種は、これまでのDen, spuriumともDen. orbilobulatumともかなりそのフォームは異なることになります。それらの変種、亜種あるいは新種か、 いずれにしても取り上げた種はFugacia節に含まれる近縁種どうしであることは間違いありません。見方を変えれば生息国のラン園やコレクターでもよく分らないことを非生息国の我々がいろいろと推測するのは、睡眠不足に陥るかも知れないものの、むしろ原種ならではの面白さとも言えます。

 Den, spuriumDen. orbilobulatumいずれにせよ、これほどの花であるにもかかわらず、種名と価格でそれぞれ検索してもマーケット情報が国内外のネットに見られないのも不思議です。おそらく国内市場においては初登場と思われます。本サイトでは5本バルブで3,500円、5本以上で4,000円を予定しています。

Den. spurium

ニューギニアDendrobium spの開花

 昨年12月に入手したニューギニアからのDendrobium spが開花しました。本種は先月の本ページでその株を紹介しました。疑似バルブは根元部分が大きく扁平に膨れており、その先は円柱状で40㎝ほど直立して伸びています。花は横幅1㎝ほどで、リップ中央弁表面に茶褐色の細毛が見られます。Crumenata節と思いますが、該当する種をネット検索しているのですが今のところ見当たりません。


Dendrobium sp Sumatraに紛れていた不明種

 2015年12月に入手したDendrobium sp Sumatraについて開花した2種類の花を本ページの昨年12月(3か月前)に掲載しました。今月に入りそれらの株を寄せ植えしているバスケット中から、これまでとは全く異なる第3の花が開花しました。下写真に示すように疑似バルブ径に比べてかなり大きな花で、Calcarifera節ではないかとネット検索したのですが一致するような種が現時点では見つかりません。疑似バルブは細く根元から同一径で、根元あるいは中央部の膨らみはありません。はたして1株のみ紛れ込んだのか、この他にも数株あるのか今後の開花を待つことになります。


Dendrochilum glumaceum

 サンシャインラン展でのフィリピンからの引き受け株としてデンドロキラムがあります。過去3回東京ドームラン展での販売経験から日本にはデンドロキラムの趣味家はほとんど居ないので出品しても売れないとアドバイスをしてきました。アメリカやヨーロッパでは良く売れるのになぜ日本では興味を持たれないのか不思議だとのことです。こうした実績からか、今回は5種類のみのデンドロキラムとなりましたが案の定ほとんどが売れませんでした。花のないデンドロキラムは日本のあちこちの道路わきの雑草のようで、花の中には赤や黄色の総状(穂状)花序を持つ種もあるものの、では同じような花序や色をもつ雑草のタデとどう違うのかと言われれば説明に窮します。”蓼食う虫も好き好き”と答える以外ないかと苦笑いしかありません。

 ところがそうした中にも存在感のある種があり、それがDendorchilum glumaceumです。この種も外見は他の同属種と取り立てて変わりはないのですが、決定的な違いは匂いです。甘いバニラの香りがするのです。このバニラの香りを持つ種は他の属種、例えばセロジネ属にはCoel. lentiginosaなどが存在します。異なるのはその香りの強さです。1-2m離れた位置からもはっきりと分かります。10バルブほどの大株で5-6本の花茎があれば部屋全体がバニラアイスの香りに包まれます。近年発見されたフィリピン生息で同属のDendrochilum kopfiiも強く匂いますが、香りの良さでは比較になりません。

 特に原種の趣味家の中には、幸か不幸か、家族から一体どこが良くてこれほど植物に熱中するのか理解できないと疎んじがられている人も多いと思います。外見でダメなら理解してもらう手段は香りしかありません。おそらくランに興味のない人も本種の香りを嗅けば自然の持つ神秘に驚くと思います。よくランの展示会場に入ると一種独特の花の香りが立ち込めています。カトレアを中心とした匂いです。しかしこれとも違う混ざりがなく厭味のない香りです。本種は低温から高温まで栽培可能な強健な種であるため、開花期間中はリビング等好みの場所に置けます。

 本種が記載された内容で不思議なことが2点あります。一つはJ. Cootes氏の著書で、本種最大の特徴はその強い香りであるにも関わらず、香りについては一言も触れていません。もう一点はorchidspecies.comではこの香りについて”Sweet hay”と形容しています。直訳すれば”甘い干し草の香り”です。この干し草の香りがよく分からないため評価ができませんが、一方でgarden.orgでは、Hay-Scented Orchidとする俗称はそもそも間違いで、その香りはAnies(セリ科の香草)のようで、Hay-scentedの香りはむしろDendrochilum magnumが近いとコメントしています。日本のWikipediaはバニラの香りとしています。

 匂いは動物の鳴き声ではないですが、国が違えば表現も違うのかとも考えてしまいますが、良い匂いであることは世界で一致しているようです。フィリピンでは全土に生息している故か安価で、3-4バルブ程で1,500円、8-10バルブで2,500円としています。浜松の温室は間もなくバニラアイスの香りに包まれます。

Dendrochilum glumaceum

Palawan諸島に生息するPhalaenopsis amabilisに見られる形状の多様性

 Phal. amabilisは今日の慶弔用胡蝶蘭の原資となった種ですが、この原種はいつ頃、どこから、どのようにして生まれたかを知っている人は少ないと思います。この詳細については本サイトのこちらに解説しています。その発祥の地であるフィリピンPalawan諸島生息の本種は花形状がボルネオからスマトラ島などのそれぞれの生息地域種に似た形状が含まれ、同一生息域に見られる形状の均一性がなく多様なことが特徴です。下写真は現在開花中の多数のPalawan Phal. amabilisから形状の異なる数点を選び撮影したものです。セパルペタルの花被片形状だけでなくカルス形状も異なりますが、こうした特徴はスマトラ島、Javaなどの同一地域内では見られません。2列写真の下段右の花は左右のクロス幅が10㎝ある大きな花で、野生株にもこのような大輪があることが分かります。


Phal. amabilis Palawan

特大Phalaenopsis equestris v. rosea (ilocos)

 野生株の大きさはついにPhal. equestrisにまで及びました。下写真がその比較を示すもので、株はセパル、ペタル全面がローズピンク色となるPhal. equestris v. roseaです。roseaという変種名もこの色から付けられたものです。Ilocosは本種が生息する地域名です。下写真左の左端中央の小型の株がこれまでの一般野生株のサイズです。左上に向かって花茎が伸び花をつけています。右写真はこの株と他の大株とを比較したもので、上下から挟まれている中の株が従来サイズ、上下が昨年末にフィリピンにて入手した株で2.5倍の差です。大株の小さなポットは出荷のための仮植えで、間もなく別の支持材に植え替えです。Phal. equestris v. roseaの実生は、1,500円ですが本種野生株は2,500円です。

Phal. equestris v. rosea (ilocos)

フィリピンミンダナオ生息Dendrobium新種2点

 昨年末フィリピンを訪れ、ミンダナオ島からの種名不明株としてデンドロビウム2種を入手しました。これを先月の本ページに掲載したところ会員の方からドイツ発行のOrchideen Journal Vol.4.3, 2016およびVol.4.4, 2016に記載の新種の可能性ありとの報告を受け、開花を待っていたところ、今週に入りようやく花を得ることが出来ました。それらが下写真の2点で、上段がDen. lydiaeで、下段がDen. butchcamposiiです。いずれもミンダナオ島北部Bukidnon州標高1,200mとされます。中温タイプとなります。文献でのセパルおよびペタルのサイズは4割程、浜松での開花サイズに比べ小さく報告されています。Den. lydiaeDen. mindanaoenseに似ていますが、葉が本種は扁平で、後者は円柱形で異なります。

 先月のサンシャインラン展に3株ほどそれぞれを出品し2株ほど販売したように記憶していますが、2016年発見の新種となると、それが国内初登場であったかも知れません。ミンダナオ島はフィリピンに残る、特に西部はランの秘境ですがPhal. micholitziiの生息する西部はアブサヤの拠点であり、外国人は無論、地元民にとっても危険な地域で近寄ることが出来ません。その点、北部は比較的安全で、Bukidnon州は山岳地帯と盆地が混在し、気候も2つのタイプがあり、生息する植物も多様性があり今後も新種が発見される可能性が高いと思われます。

Den. lydiae
Den. butchcamposii

Bulbophyllum sp

 2015年末にフィリピンでBulb. spとして入手したバルボフィラムが植え付けから1年と3ヶ月程で開花しました。当初花を見てBulb. cornutumではないかと撮影し調べると幾つかの点で異なることが分かりました。蕊柱の形状(写真右中央)およびリップ中央部にはBulb. claptonenseのように黄色の腺状突起(写真右下段)がある点です。またBulb. cornutumはドーサルセパル・ペタル、ラテラルセパルのそれぞれの長さおよび幅が(1.7㎝ x 0.8cm, 1.2cm x 0.6cm, 1.7cm x 1.1cm)とされるのに対し、本種は(2.5cmx1.2, 2.0cmx0.8cm, 2.3cmx1.5cm)で1.5倍のサイズです。下にそれぞれの部位の写真を示します。それでは本種は何かですが現時点では該当する種が見当たりません。現在4株程を在庫していますが、おそらく同じ種であろうと思います。


Bulbophyllum spの開花2種

 昨年10月にマレーシアにて入手した緑色のセパルからなるBulb(Cirrhopetalum).sp green sepal (下写真左)と、Bulb. sp Sarawak yellow (下写真右)が開花しました。前者はBulb. kubahenseのように葉の表面は暗緑色で裏側が赤褐色のバルボフィラムとしては異質な様態で、サプライヤーからの花写真があり、果たしてこれまで見たことがない緑色のセパルが本当なのか半信半疑の中で購入しましたが、写真通りの花が咲きました。Cirrhopetalumですので通常は放射線状に12輪程が展開するのですが、順化後の初花のため輪花数は少なくなっています。マーケット初登場と思いますが価格はバルブ数により2,500円から4,000円です。

 一方後者は入荷時には写真がなかったものの、ボルネオのサプライヤーであれば信用できるであろうと入手したものです。細長い15㎝程の花茎の先端に黄色という呼び名に相応しい鮮やかな黄色と、リップの真っ赤な点が特徴で、biflorumのように2輪を1対として開花します。価格はバルブ数により2,500円から3,000円です。
 

Bulbophyllum recurvilabre

レイテ島固有種として1999年登録された本種が開花しました。J. Cootes氏は著書で本種をLovely speciesと形容しています。花サイズは縦幅9㎝程です。似た種にBulb. papulosumBulb. trigonosepalumnなどが知られていますが リップが湾曲していることが特徴とされます。バルブ数によって若干前後しますが3,000円での販売予定です。


Bulb. recurvilabre


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