1月Bulbophyllum mastersianum 昨年10月にマレーシアにてサイズが4Nのように大きいBulb. mastersianumがあるとのことで20株程入手した本種が多数開花中です。下写真上段および下段の右側が本種で、左は一般的サイズのBulb. mastersianumです。色はオレンジブラウンですがセパルの長さが通常サイズよりも1.5倍程あり、かなりの迫力があります。ボルネオ島カリマンタン産とのことです。
Aerides leeana 本種はスラウェシ島とフィリピンの生息種とされます。他のAerides種と異なる性質はAerides属のほとんどが高輝度を好む反面、本種はかなりの低輝度環境に生息しているとのことです。長寿命の開花期間を持ち、咲き始めから満開となるまでには2ヶ月以上となります。国内市場での取扱い実績は少なく12,000-16,000円の価格が見られます。本サイトでは野生株のBS40㎝茎長で5,000円です。昨年9月10株をフィリピンから持ち帰ったのですが、8株は開花でミスラベルのAeridis odorataとAerides lawrenciaeと分かり来月訪問時にはミスラベル分の8株を入手する予定です。
Dendrobium annae 今や浜松の温室は考えられるあらゆる場所にランが置かれたり吊り下げられたりして、まるで林の中と化しており毎日管理していても通路の両脇の株以外何が開花しているのかも分からない様態となっています。温室を訪問した方から温室の片隅で開花しているDen. annaeを知らせてもらい、それにしては異様に大きな花であることに驚きました。通常本種は横幅5㎝の中サイズの花ですが、下写真が示すように7㎝あります。一般的に本種はそれぞれのセパル、ペタルおよびリップの先端に赤から青紫の斑点があるのですが、この斑点は開花毎にその濃淡を変える性質があり、たまたま今回は斑点が無い状態で開花しました。こうした色が出たり出なかったりは胡蝶蘭ではPhal. speciosaが知られています。本種は高芽が頻繁に発生し、温室訪問者のみを対象にその高芽をこれまで1,500円で販売しており、サンシャインラン展でも5株ほど持っていきました。次回の開花はこの大きさを保ちつつ赤紫の斑点を期待したいところです。
Pteroceras unguiculata サンシャインラン展のフィリピンPurificacion Orchidsからの引き取り株の植え付けが未だ終わらないまま、種名と価格を整理をしていたところ、価格が平均からすると高く、また4株を出品したものの一株も売れていない品種があり、はて?とそのPteroceras unguiculataという種名からorchidspecies.comで検索をしたところ、4.5㎝程の花を最大8輪程同時開花し甘い香りがする種で同検索サイトのPlant and Flowerで全体画像が見られます。なぜこの株が売れなかったのか花は清楚で華麗な印象があります。花寿命が短いとのことですが不思議です。本種の生息域はマレーシア、Java、ボルネオ島、スラウェシ島、フィリピンと広く、現在フィリピンではPterocerasとの名称で出品されていますが、本種がPteroceras属ではなくBrachypeza属として登録されたのは2014年の最近です。面白いことに、これまでシノニム(別名)としてAerides, Phalaenopsis, Pteroceras, Sarcochilus, Thrixspermumなど現在のBrachypezaに落ち着くまでに6種類の属名がつけられていました。見方を変えれば、本種はそれらの属がもつ特徴をそれぞれ葉、茎、花などに部分的に持っている不思議な種であり、その意味では珍種とも言えます。例えば単茎性で胡蝶蘭Phalaenopsis属に葉自体は似ている反面、葉と次の葉の節間が長くPhalaenopsisとするには無理があるなど、どこか似ていてどこかが違うという面白さがあります。さらに不思議なのは国内市場での販売が全く検索できません。Den. amboinenseのように開花から1-2日ほどで花が終わってしまうから、売れないであろうとこれまで取り扱いがなかったのか、それでも短命花は一般に年2回は開花するため、展示会用でなければそれなりに魅力的な種と思います。価格は下写真左のかなり大きな株のそれぞれが4,500円です。 なを写真右はフィリピン固有種の同じくPteroceras属Pteroceras longicalcareumで画像が込み入っていますが上部2株と下に1株の計3株を撮影しています。こちらも国内市場情報が見当たりません。画像で緑色の細く長く垂れた多数の茎は花茎でかなりの多輪花と思われます。orchidspecies.comによると、1mの長さになる複数の花茎に100輪程が開花すると記載されています。1株が10茎程ある大株で3,000円です。Pteroceras longicalcareumは3株をラン展会場で販売したそうです。
Phalaenopsis lueddemanniana solid red 10年以上前に台湾のラン園から東京ドームラン展で入手したPhal. lueddemanniana solid redを本サイトで自家交配を行い、その実生株をサンシャインラン園に10株出品したところ3日間で全品が売り切れてしまいました。下写真上段がPhal. lueddemaniiana solid redの親株で、下段左は4年前に行った同じ上段の親株の1回目の自家交配実生の花です。親のフォーム以上にその実生の方がsolidフォームを強く継承しているのではないかと思います。下段右は2回目の自家交配によるフラスコ出しから7ヶ月の実生で、今月から販売を開始した株です。親株はPhal. lueddemannianaの標準サイズに比べ大きく、サンシャインラン展に2年続けて参考出品しています。本種もPhal. gigantea albaと同じようにBSサイズに向かって価格が大きく変化します。サンシャインラン展では1,500円でした。現在は2,000円、今年年末には下段左のサイズで8,000円の予定で価格はここで打ち止めです。開花は来年末頃と思います。Bulbophyllum orthosepalum パプアニューギニア生息種である本種は大きな球状バルブにBulb. phalaenopsisに似た40㎝程の下垂する厚い葉をつけます。浜松の温室では現在20バルブ程からなる大株に多数の花が付いています。この株は2年前の東京ドームラン展でNT OrchidからPurificacion Orchidsが最終日の売れ残り株として半額ほどで入手し、その経緯は今一つはっきりしないのですがそれを本サイトが入手したものです。プレオーダーでは1バルブ1万円というかなりの高額で販売していました。入手時では8バルブ程であったと思いますが、バスケット植え付けで2年間で20バルブ程になりました。下写真が開花中の本種で、赤い袋のようなものが花です。花自体はあるのですが開花していると言う表現は似合わずセパルがしっかりと閉じた形態です。ほとんどの人はその花の中を見たことは無いと思いますので無理やりセパルをこじ開けて撮影したのが右写真です。Bulb. phalaenopsisほどではないものの嫌な臭いのする仲間です。
胡蝶蘭野生栽培株どうしの比較 野生栽培株と実生株とのサイズの違いはしばしば本ページで取り上げています。野生栽培株の中にもサイズが大きく異なる株があります。茎の数ではなく葉の大きさの違いです。下写真は左からPhal. sanderiana、Phal. bastianiiおよびPhal. schillerianaです。それぞれの写真の左右共にBSサイズであり、左は右と比較して小さく見えますが、実生と比較するとこれでも同等か大きいサイズです。すなわちそれぞれの右の株のサイズが異常な大きさなのです。左のPhal. sanderianaの最大葉長は28㎝、中央のPhal. bastianiiは26㎝、Phal. schillerianaは45㎝です。中央のPhal. bastianiiの左株は過去5年間毎年開花しているsolid redタイプで、右のPhal. schillerianaの左株は花茎が付いたBS株です。下写真のそれぞれの株は、こうした違いが遺伝的なものなのか、生息環境によるものなのか、あるいはその両方が関係するのかを調べるための調査用の株です。これまでの経験で大株となるための条件の一つは活着できる根張り面積を可能な限り大きくすることが必要で、根が短かったり多くの根が支持材から離れ空中に垂れ下がった状態では程度の差こそあれ大株にはなりません。よって胡蝶蘭原種とりわけ野生株は株サイズに比べて数倍の面積をもつ支持材に取り付けるか、下写真のように回り込むことで長い根が活着できる円筒形の支持材にすることが大株に仕立てる要となります。 大株を入手しても温室等で栽培をしていると新しい葉はあまり大きくならず、やがて実生株並みのサイズになってしまうと、よく耳にしますがこれは根張り面積が小さ過ぎることが最も大きな原因です。観察していると、根と葉の関係はそれぞれがユニークに対応しているようで古い葉は古い根と関係し、古い根が新葉と共に発生した新根に覆われたりして気相が狭められるとやがて古い根は黒ずんで枯れます。こうなると古い葉も枯れて落ちます。それぞれの根がそれぞれの葉に対して水分や栄養の供給を等しく共有し合っている感じがしません。古い根であっても広い活着面積があって根がその活着面と共に、空気に触れている気相面の両面をシェアーし生きていれば古い葉も落ちない傾向が見られます。こうした環境であれば古い根であっても3年程は十分生きています。 ポット植えが大株にならない原因はこうした状況が背景にあり、ポットは狭い空間のため古い根はすぐに新しい葉の発生とともに新根により窒息状態で腐り、結果古い葉が落ちるため、常に3-4枚の葉株以上にはならない事が起こっていると考えます。大株に仕立てるためには、こうした性質があることを考慮すると良いと思います。
最近理解したことが一つあります。カトレアの栽培では株の大きさに比べて小さなポットに植え込み、乾燥とぐしょ濡れかん水を繰り返すのが良いと知らされてきました。なぜこのような理解不能な手法が言われるのかと長い間疑問でしたが、胡蝶蘭栽培で分かったことは、結果論ともなりますが、この虐待栽培法の理由は古い根を殺すことにあり、新しい葉(根)が出れば、前記条件から古い葉を落とし、常に一定の株サイズを保つための手段になっていることです。確かに株に比べて大きな花が咲くカトレアでは、花サイズは余り変わらないまま株ばかりが大きくなっては観賞用としては困る訳です。知ってか知らずか分かりませんが、こうした背景説明が見当たりません。この結果、カトレアのそうした栽培法は他の属種にも良いに違いないと思い込んでしまいます。 マレーシアのあるラン園を訪問した時、カトレアの素焼き鉢が欠け、多くの根がはみ出してあちこちに蔓延り、株はまるでバンダ様態でこれがカトレアかと思うほどこれまで見たこともないような大株でした。考えてみれば数年前にカトレアを500株以上一回り大きな素焼き鉢で栽培していたのですがなぜ本サイトのカトレアは背丈がマーケットで見るようなサイズの倍近くになるのかと不思議でした。古い根が長く生き残り、葉ばかりが大きくなることが原因であることが分かりました。 ある説によると、カトレアで直射光に近い輝度を与え、光で叩く、と言った表現で株を大きくしない一方で大きな花を咲かせる手法を何かで読んだことがありますが、どうもこうした技法の紹介には、その目的となぜそれが良いのかの科学的説明が必要で、栽培初心者は真似て株を枯らしてしまうことになりかねません。株サイズを一定に保つことが良いとするカトレアと、大株にして多輪花が良いとする胡蝶蘭原種とでは栽培法が全く異なること、すなわち種によっては大きく育てることが必ずしも目的ではない、その理由を含めた解説も必要と思います。 Renanthera matutina 本種は薄赤色をベースに濃赤色の斑点を散らした花を多数同時開花するレナンセラでタイ、スマトラ、Java、ボルネオおよびマレーシアに分布しています。下写真は今回のサンシャインラン展Purificacionからの受け取り株です。フィリピンにはRen. storieiやRen. monachicaが固有種として知られていますが、本種がフィリピンに生息することが記録されたのは2011年のようで最近です。国内マーケットを検索するとRen. storieiやmonachicaは取り扱いがあるものの本種は不思議と見当たりません。ラン展でPurificacionは80㎝程のRen. storieiを国内市場の約半額の4,000円で販売し、一方本種はRen. storieiよりも高価であったことからフィリピンでは生息数が少なく入手難であるのかも知れません。下写真で葉が太く大きい中央2株がフィリピン産のRen. matutinaで、左右脇および左後方のそれぞれの3株はRen. monachicaです。価格については競合する株がある場合は本サイトに一任、マーケットでの実績が少ない株はPurificacionの希望販売価格にとの暗黙の了解をもとに、Ren. monachicaは国内一般価格が3,000円程ですので本サイトでは2,000円とし、Ren. matutinaは5,000円としています。(後記:Ren. matutinaは予約完了しました。)
Coelogne sp 2種 昨年1月の歳月記に記載したスラウエシ島からのセロジネsp(下写真上段)と、Coel. monilirachisに似た色合いのリップに特徴のある低-中温タイプの、スマトラ島からのセロジネ(写真下段)が開花しています。前者はCoel. bicamerataと思われ、後者は4月に入手したCoel. aff. longifoliaeに似ているのですが、リップの中央から先端にかけてのやや円形の広がりと、現地で見た花色は薄黄緑であったことから異なる種なのか、いずれにしてもlongifoliae節であろうかと思います。ネットからは国内マーケットでの情報は見当たりません。現在はいずれも3,000円で販売しています。本種はフィリピン固有種で淡い紫色の花をそれぞれの葉元近くで同時に開花する種です。昨年9月の歳月記にて本種の巨大なクラスター株を紹介しました。引き合いが多かったため、昨年末のフィリピン訪問で再び1.5m長を超える15茎から40茎程のクラスター株を入手しました。またサンシャインラン展にて1mから1.5m長の本種3株を引き受けました。下写真がそれらです。自然界では大木の枝から真下に垂れ下がり生息いるものと思われます。 写真左の3株はバスケット植えにし、右の3株も近々バスケット植えを予定しています。左写真で左の大株が10,000円、中央が6,000円、右が8,000円、また右写真は株の長さは左写真とほぼ同じ1mから1.5m長あり、それぞれが10茎1株からなり4,000円です。一つの栽培は、例えば右の3株は元を言えば1株であったものを分割したものと思われるため、3株を寄せ植えして大きな株にして1-2年後に開花株を展示会用として出品すればかなり迫力があるように思います。
サンシャインラン展Purificacion Orchids引き受け株II 国内マーケットでの実績がネットからはほとんど検索できない品種を紹介します。
文句の言えないミスラベル 原種を販売する者にとって最も頭痛の種は、台湾やタイからの原種名を名乗る交雑実生株が頻繁に入荷することです。特に胡蝶蘭とVanda原種にその傾向がひどく、今や実生株のミスラベル(交雑種)は2/3を超え甚大な損害を被っています。防衛の手段は実生は買わないことですが、そうもいかない種もあります。昨年12月中旬にマレーシアを訪問し、sp(種名不明株)や国内市場にはこれまでほとんど見られないバルボフィラムを多数入手しました。その中でBulb. cuspidipetalumがあり、持ち帰ってそれまでのヘゴ板から杉皮板に移し替える際、おかしなことに気付きました。一つのヘゴ板には2株が取り付けられており、よって20株のBulb. cuspidipetalumの注文で10枚のヘゴ板となっているのですが、その2株は葉色は似ているもののリゾームやバルブが明らかに異なる株です。何やら胡散臭い感じを受けながらも、それぞれの株を10株づつ、2つに分けて植え替えを行いました。それが下写真で、左写真はBulb. cuspidipetalumの花、中央は今回の2つに分けた株、右がそれぞれの株を拡大したものです。左側がBulb. cuspidipetalumと思われ、右側は細いリゾームとバルブで葉も披針形で異なります。 またしてもサプライヤーごまかしの水増しかと思いました。変種があるとその写真を見せ、あたかもすべてがそれであるとして一般種を送り付けるいつもの手です。しかしインドネシアサプライヤーならばいつものことですが、これらの株はボルネオ島Sarawakからマレーシアサプライヤーによって入荷したものであり、こちらは意図的なごまかしはこれまでほとんどありません。そこでまだ相当数ラン園に残っていた記憶があったため、マレーシア園主に中央と右の写真を送り、調べるようにメールをしました。3日程経ち、細い方はやはりBulb. cuspidipetalumではないことが分かりました。それでは何かとなります。園主が調べたところBulb. signatumというのです。 はて聞いたことのない名前であり、ネットで調べたところ1996年の比較的新しく登録された種で国内市場での取引が見当たりません。花もなかなか個性があり、この組み合わせを怒ってよいのか、瓢箪から駒とみてよいのか迷うところです。Bulb. cuspidipetalumは10株減ってしまいましたが、珍種が10株増えたのであれば、こうしたミスラベルならまあ良しとしよう、といったところです。現在両者とも順化中です。 サンシャインラン展Purificacion Orchids引き受け株 サンシャインラン展にて引き受けた株を現在、植え付けと共に整理中です。その中で栽培価値がありそうにもかかわらずなぜその販売価格で売れ残ったのか不思議な種が数点あるため一部を紹介します。これらは浜松温室で保管し、購入希望者に順次販売する予定です。 予約完了株は2月末に再入荷を予定します。
Vanda lamellata var. calayana 前記同様こちらもVanda lamellataで変種のcalayanaです。生息地であるフィリピンCagayan州およびCalayan諸島ではすでに絶滅したのではないかと言われています。フィリピンラン展でも本種の出品を過去5年以上、見たことがありません。自家交配の実生化を試み、フラスコ苗としてフィリピンに戻す優先度の高いランの一つです。
Vanda lamellata var. boxalli 写真はサンシャインラン展にフィリピンPurificacion Orchidsが出品したVanda lamellata v. boxalli のcluster株です。Vanda lamellata一般種の花は淡い黄色をベースに茶色の斑点、リップはピンクの比較的地味な色合いです。一方、変種である本種はクリーム色でラテラルセパルの内側半分が濃い茶色、リップはローズパープルとなります。特に今回出品されたクラスター株はドーサルセパル、ペタルは純白で、ラテラルセパル半分が白と赤茶、リップが明るい赤紫でこれらが成すコントラストが印象的な株でした。この色合いをもつ10茎から成る野生クラスター株としては破格の25,000円でしたが売れ残ったため、本サイトで引き取りました。株が大きすぎたのかも知れません。野生栽培株でもあり、倍程の価格にしたいのですが取り敢えずこの価格で浜松にて販売予定です。(後記:この掲載3時間後に予約が入り本種の発売は終りました。)
ランの入手法 展示出品で賞を目論む場合、珍種、希少種、一輪の花の出来、あるいはクラスター株の豪華絢爛さなど、それぞれの見せ方が考えられます。我々が最初に手にする多くの株は1-2茎(あるいはバルブ)から成る株ですが、これを親株として20茎程のクラスターにし百輪程の株にするには、仮に1年で1茎が増え、その茎が成長し新たな茎を発生するまでに2-3年程を要し、さらに新茎の発生は親茎当たり2茎までとし、それぞれの茎は枯れないと仮定すれば、凡そ12年を要します。若い人であれば兎も角、これでは大輪を見る前に老いてしまいます。一方、10茎から成るクラスター株を親株とし、これから20茎の株を得るには4-5年程となります。これは机上の計算で万事上手く育った場合です。、当たり前の話ですが親株が大きければ大きいほどさらに大株になるまでの期間は加速的に短くなります。よって小さな株では珍種を、人気種ではクラスター株を手に入れることが賞を獲得する最も近道です。一方で、それは分っていてもそうした株を手に入れる機会は早々あるものでもなく、また何よりも高価です。一つの方法は直接海外に出かけそうした株を入手することです。幸いにしてラン生息国のほとんどが親日国です。まず最初の対象国は飛行時間4時間、往復航空運賃5万円程で行くことが出来るフィリピンと思います。現地の物価は商品にもよりますが日本の1/5以下です。ランに限って言えば1/10も普通です。これまで持ち帰りできないほどの胡蝶蘭やVandaなどの大株を見てきましたが日本円にして2-3万円を超える価格は聞いたことがありません。これを超えるのは現地でも見ることがほとんど出来なくなった一部の種のみです。日本であれば同じ種が幾つかあれば、何か花の色が他と違う株がないかと探しますが、現地で驚くほどの数が吊り下げられた同一種の中には多様な色合いが混ざっており、日本で変種を探す苦労がバカバカしくなります。 そこで今年は、ビジネスとしてではなく、ランを育成する同志として一回の渡航で5人までが限度ですが現地でのラン展に合わせ定期的にフィリピンに出かける計画を立ててみようと考えています。これまでも毎年2-3人で出かけていますがこれを計画的に行うことです。言葉の問題、ランのCITESや検疫ドキュメント類の用意、フィリピンおよび成田での出入国時での対応など、海外でのラン買いが初めての人は不安が多いと思います。一緒に行けばこうした不安はなくなり、数回出かけ慣れれば仲間同士あるいは一人でも行けるようになります。若い趣味家であれば、旅費等の経費は持ち帰ったランを愛好会の即売会で販売するとか、ヤフーオークションで取り返す方法もあります。何よりも生息国のラン事情を知ることが出来ます。おそらく初めての人はランカルチャー・ショックを受けることになると思います。 Phalaenopsis sanderianaの大株 サンシャインラン展にフィリピンからプレオーダーでPhal. sanderianaを10株持ってきてもらいました。その内一般サイズの5株を販売し、大株である残りの5株は持ち帰りました。この大株とはクラスターではなく、1株が大きいと言う意味です。Phal. sanderianaは1昨年、本種の出荷元であった現地のサプライヤーが亡くなり、野生栽培株を得ることが難しくなったそうです。生息数が減ったのではなく提供者がいなくなったためです。今回入手のPhal. sanderianaはラベルにVangieとあり入手年月日が書かれていることからPOS会長の野生栽培株であったと窺われます。ちなみに昨年8月本サイトでは会長から直接Phal. sanderiana albaを受け取った経緯もあります。今回入手した株の一つが下写真で、最も大きな葉は葉長28㎝、葉幅12㎝です。Phal. violaceaやPhal. schillerianaなどの野生株では30㎝を超える葉長は珍しくありませんが、Phal. sanderianaとしてのこれ程のサイズは初めてです。写真後ろに写っている株はPhal. bellina albaの実生BS株ですが、BSでありながらも非常に小さく見えます。果たして輪花数がどれほどになるか楽しみです。
Coelogyne sp 3年前、spとしてマレーシアで入手したセロジネが開花していることに気付き、花がかなり大きく迫力があることからメジャーを入れて写真を撮りました。似たような種は多々ネット画像に見られますが、本種の特徴はリップ中央弁の先端部中央が細く突き出しており、この形状で画像検索する限り該当する種がなかなか見つかりません。昨年12月マレーシアで入手のDendrobium sp セパル・ペタルおよびリップそれぞれの先端が青紫となるデンドロビウムを先月紹介しました。今週に入り浜松温室にて数株が開花しました。この株はサンシャインラン展にも4株出品しました。デンドロビウムに詳しい方によると本種は新種の可能性が高いとのことです。マレーシア園主も始めて見るデンドロビウムとのことでした。下写真左上段でリップの外径形状が変わっており、また驚いたのは鼻を近づけるとビスケットのような良い匂いがします。これまでの似た花をもつSumatra spに果たして匂いがあったか確認していないため、この種固有の特性かも知れません。花サイズはペタルの左右スパンで3.8㎝で中サイズと言ったところでしょうか。その他、変わったところは右の疑似バルブで同一の太さで根元から先端まで50㎝程の伸長ですが緑色をしており、これもこれまでのSumatra spとは異なります。 New GuineaからのDendrobium sp 先月中旬にマレーシアを訪問し、12月の歳月記に取り上げたDen. peculiareに混ざってニューギニアから入荷したデンドロビウム3点です。いずれも開花しなければ種の同定は困難で今後半年近くは開花待ちとなります。1昨年来ニューギニア、スマトラ島、ボルネオ島およびミンダナオ島からの種名不明株が訪問毎に数点入荷しており、現在特にクールタイプ温室には種名不明株が20種を超えてしまいました。花未確認のspでも良いのでと購入を希望される方が増えています。しかし種名不明株に価格の付けようがなく、ひたすら開花を待つばかりです。上段は同一株の全体と疑似バルブ株元を撮影したもので鉢は2.5号です。バルブ下部6㎝程が幅広の扁平でその先はDen. subclausumに似たしっかりした茎様態で40㎝以上真っ直ぐ立ち上がっています。下段はそれぞれ別種です。新種あるいは珍種 CleisocentronとDendrobium? 今回のサンシャインラン展には、来年のラン展出店準備のために、しばしば訪れるマレーシア・ラン園の2代目を見学と勉強のため招待しました。その際2点のランを持参してもらいました。それが昨年6月に取り上げた葉幅の広い新種と思われるCleisocentronと、これまで取扱いがないと園主が言うデンドロビウムです。前者は青い色のCleisocentron gokusingiiのような花で、後者は赤い花です。下写真がそれぞれの株です。後者はバルブがやや扁平で株形状からはややクールタイプではないかと推測します。6月入手のCleisocentronはサプライヤーやクアラルンプールラン園での数週間に及ぶベアールート状態に等しい保存の悪さから歩留まりは1割にもならず、ほとんどを失いました。今回の入手株は左写真に示すようにかなり状態が良く、これからの順化栽培は容易ではないかと思います。 サンシャインラン展ではたまたま隣のブースがNT Orchidで、こちらでも今回数株この幅広Cleisocentronを販売しており12,000円だったそうです。おそらく同じサプライヤーかラン園からの入手と思われます。本サイトでは6,000円の販売予定です。いずれ名前が登録されると思います。 サンシャインラン展を終えて サンシャインラン展への出店がお蔭様で無事終わりました。本サイトにとりサンシャインラン展への出店は初めてでJGPもそうでしたが初回は予期せぬことが多々あり、来場者の皆さまには大変ご迷惑をお掛けしました。その一つは展示会前日の準備で、12時から14時頃は蘭友会方々の作品展示準備のため混雑するので避けるようにと伺っていたため浜松からは15時に現地に着くよう計画していました。しかし着いてみたところ展示物を始め他の出店者のブースほぼ全てがすでに設置を済ませていたのには驚きました。棚や株のレイアルト後に株毎の花写真と価格ラベルを付ける予定であったものの、退場時間も早く初日にはレイアウトまでが精々で、これらの準備が間に合わなくなってしまいました。後で伺った話ですが、15時時点では本サイトのブースが空状態であったことから、ある愛好会の方が本サイトが出店を取り止めたのだと勘違いして会員に連絡し、初日の来場を諦めた趣味家がいたそうです。展示期間中は18時に終了するのですが、JGPとは異なり出店者も来場者と同じ時刻に会場を退場しなければならないことも想定外でした。何とか株毎の花写真と価格タグが揃ったのは土曜日です。もう一つ深刻な問題は、今回フィリピンのPurificacion Orchidsとの共同出店でしたがフィリピンからの荷が成田植物検疫所で書類の問題から通関許可が下りないのです。エクアジェネラも同様です。このため初日の出店が間に合いませんでした。フィリピンの場合、フィリピン検疫所が発行する書式と、成田検疫所が求める書式が異なると言うのです。ハンドキャリーの場合の書式としては問題ないものが、貨物としては問題ありとするダブルスタンダードには困ったもので、ラン園の瑕疵というよりは各国間で統一すべき問題です。 今回のラン展では訪れる方々、客層についていろいろなことを学びました。JGPでは原種の大株は良く売れるのですが、サンシャインラン展ではまず興味を持たれません。これは想定外のことで、むしろ小さく分けても低価格にすることが必要で、1万円以上の品種はほとんど売れません。多くの来場者はかなり栽培歴が長い人が多い感じを受けました。一方でシダ類やJewel orchidにはそのほとんどが若い人であることも印象的です。 年初めに来年の話をするのも変ですが、次回はフィリピン、マレーシア、インドネシア、南米を始め、出来ればJGPを始めこれまでに国内出店のない国々にも参加勧誘を行って国際的な出店ブースエリアが出来ればと思っています。 サンシャインラン展の準備II ラン展の今回の特別展示がシンビジウムとのことで、これまでシンビジウムは全く関心がなかったのですが1株も出品しないわけもいかないと思い、マレーシア訪問前にマレーシアで最も入手難で希少なシンビジウム原種があれば入手したいので果たしてそうした種があるのか当たってもらいたいと伝えたところ、Cymbidium elongatumという原種が10株ほど入荷していました。ボルネオ島キナバル山周辺の標高1,200mから2,300mに生息するそうです。5株これをラン展に持参します。なお前項で取り上げたフィリピンミンダナオ島からのデンドロビウム2種の内、葉の細い写真右の種は、会員の調べによりDen. butchcamposiiで、これは新発見種で大変珍しい種であるとのことでした。数株ラン展にもっていきます。新発見とはいえ価格は株サイズによりますが3,000円-4,000円の範囲です。 サンシャインラン展の準備I 明日(4日)はラン展会場への出荷とレイアウトが始まります。タイトなスケジュールが昨年12月中旬から続き、何とか梱包が終わったところです。最終出荷チェックを今夜と明日早朝に行います。バルボフィラムと胡蝶蘭原種について今回は多品種少量の出品としており、バルボフィラムは本サイトで取り上げている国内市場での取引の少ない種が中心です。一方、胡蝶蘭は55種ほどの内、落葉期となっているAphyllaeを除くほぼ全ての種を出品する予定で45種程になります。おそらくこれだけの品種が一堂に会すのはこれまでのラン展には無かったのではと思います。デンドロビウムは本サイトで取り上げている新種や名称不明種が中心のマニアックな趣向で、一般種やスパチュラータ種は今回は控えました。それぞれごく一部を除き、1品種当たりは3株程ですので、日曜日には品切れになるかも知れません。それぞれ予約受付用の参考品として1株は残しますので、見て評価して頂く分には最終9日までご覧になれます。フィリピン訪問と入手株 昨年の暮、12月にはマレーシアとフィリピンの2つの海外訪問が続き、休む日もなく新年を迎えました。12月中旬に入手したマレーシアからのランも今だ植え込みが終わっていない株が3割程あり、取り敢えず仮植えを行ってサンシャインラン展後での植え付けとなります。下記はフィリピンから持ち帰りのランの一部で、現在入手難となったVanda merrilliiの野生栽培株5株でそれそれ1.5m程の大きさです。これほど大きい株になるとラン展での販売用としての出品は困難で、宅配便か浜松温室にての引き渡しとなります。
一方、今回はMindanao島から種名不明のデンドロビウムを2点入手しました。下写真がそれぞれです。左は葉が扁平しており株基は太く、右は同じように株基から10㎝程は太くその先はDen. papilioのように細くなっています。後者は入手時、萎れた花が1輪残っており白のベースにピンク色が混ざった2㎝ほどの花でした。一応後者は中温タイプではないかと思われます。
今回の訪問ではMindanao島およびその周辺からの原種が多く、8年近く求めていたPhal. equestris Mindanaoと、初めての体験ですが匂いのするPhal. equestris Surigaoは収穫でした。またPhal. sanderianaもクラスターではなく葉の大きな株を得ました。ラベルにVangiとありましたのでPOS会長の栽培株かも知れません。これらが下写真で、写真左の手前がPhal. sanderiana、奥がPhal. equestris Surigaoです。右写真は珍しく纏まって入手できたPhal. bastianiiです。Vanda merrilliiを除き、これらはサンシャインラン展に出品予定です。Vanda merrilliiは10月にEMSにて入手した通常サイズを出品します。
サンシャインラン展 Purificacion Orchids出品 Purificacion Orchidはフィリピンで数少ないラン販売が主体の4ヘクタール以上の広さをもつ農園を経営しています。ラン原種収容規模はフィリピン最大で、1昨年に3年に一度開かれるケソン市メモリアルサークルでの国際ラン展では議長として仕切り、またスタッフはPOS(フィリピンラン協会)の理事をされています。過去3年東京ドームに出店していましたが今回サンシャインラン展に本サイトと共同で参考出店することになりました。今回のサンシャインラン展ではラン以外にシダ類、エアプラントなどの珍種や希少種を出品するとのことです。以下がその中でのエアープラントリストです。画像でリストを掲載します。シダ類もベンチに並んでおり、当方はこの種は門外漢で分かりませんが、葉先だけがちじれた種や斑入りなど、世界でもかなり珍しいと園主が言う株も10種程用意されていました。ネペンシスも幾らか出品するのではないかと思います。前月へ |
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