栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

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6月


Phalaenipsis sumatrana (zebrina) Palawan

 Palawan Bataraza地域生息のPhal. sumatranaが開花しました。下写真がその花です。ボルネオ島SabahおよびPalawan諸島のPhal. sumatranaは別名Phal. zebrinaとも呼ばれPhal. sumatranaとは地域差の関係、あるいは別種ともされます。フィリピン現地ではPhal. sumatranaと呼ばれています。Phal. sumatranaPhal. zebrinaとの違いはセパル・ペタルのベース色がPhal. sumatranaが黄色を帯びているのに対して、Phal. zebrinaは白色とされます。しかしセパル・ペタルのベース色のみの違いをvar.(変種)やfm.(フォーム)とするのであれば兎も角、種別要因とするには無理があり 本サイトではPhal. sumatranaおよびPhal. zebrinaのカルス形状を比較しました。この2種についてはカルスの歯状突起の形状が異なることを本サイトでは指摘しています。

 一方でPhal. sumatranaPhal. corningianaとの違いが議論された時期があったようです。その判断の一つにセパル・ペタルの棒状斑点の配列が、Phal. corningianaでは中心(縦方向)に向いており、Phal. sumatranaは横方向とされる点です。E.A. Christenson氏はこの説は若干曖昧で、むしろ香りの違い(Phal. corninginaはCandyのような香りで、Phal. sumatranaはツンとくる嫌な臭い)を指摘しています。さてPhal. sumatranaPhal. corninginaの棒状斑点の議論を敢えてここに取り上げるのは、Phal. corningianaは棒状斑点は縦横いずれの方向も存在する反面、これまで本サイトが入手したPhal. sumatranaやPhal. zebrinaは例外的に1-2本の縦方向斑点が含まれることがあっても総体として前説のように横方向であり、Phal. sumatranaPhal. zebrinaの方向性については納得していたのですが、今回Palawanから入荷したPhal. zebrinaは下写真が示すように、縦方向の棒状斑点が多く見られ、E. A. Chiristenson氏の指摘は的を得ていることになり、棒状斑点の方向は種別判定の決定的要因とは成りがたいことが分かりました。再びPalawan生息種のもつ不思議さがここにも現れたことになります。

Phal. sumatra (zebrina) Palawan

Bulbophyllum fascinator semi-alba

 5月のサンシャインラン展に間に合わせるためタイから直輸入したBulb. fascinator semi-albaが開花しました。ラン展では2,500円で販売しました。本種は4年程前から実生がマーケットに見られるようになり現在は廉価品となっています。このSemi-albaの長いラテラルセパルは黄緑色を中心として微妙な色変化が個体差として見られます。今回取り上げたのは開花した花が、淡い上品な緑色がこれまで以上に際立った個性のあるフォームであったためです。百聞は一見に如かずで、下写真に収めました。炭化コルク付けです。同一ロットで20株程現在ストックしていますがさて次の花も同じような色合いであると良いのですが。

Bulb. fascinator semi-alba

Phalaenopsis pulchra

 胡蝶蘭原種のほとんどは下垂する葉のためヘゴ板やコルク付けによる栽培が必要ですがPhal. pulchraはポット植えが可能な数少ない種の一つです。花色はセパル・ペタル共に全面赤味のある紫色で稀に青味の強い色も見られます。現在浜松にて開花中のカラーフォームは写真左のこれまで見た限りでは最も濃い赤紫色であることから撮影してみました。レイテ島生息株です。一方、写真右は1mのヘゴ板に取付けたPhal. pulchraクラスターで元は一株です。全体で20株を超えますが高芽が高芽を生む繰り返しによる増殖です。最近は頻繁にクラスター造りを進めており、原種株の自然での風景が表現できればとの目的からです。これらクラスター株は展示用ですが、今後は受注生産での販売も行う予定です。このため現在、機会があるごとにサプラヤーには株の細断はしないで出荷するよう要請しています。

Phal. pulchra

Bulbophyllum violaceolabellum

 本種は中国雲南省からラオスにかけて石灰岩質台地の疎林に生息する岩生および着生種で高温タイプです。これまでの国内マーケットでの価格はBulbophyllum属の中では高価であることから栽培難易度の高い種かと思いつつも先月30株程を入手し炭化コルクに取り付け、順化栽培に入りました。植え付けから1か月ほど経過しましたが、80%以上の株で新芽が現れ勢いよく成長しています。何が気に入ったのか分かりませんが、どう見ても弱弱しい種とは思えません。サンシャインらん展に本種も5株ほどを3,000円で出品しましたが3日程で完売しました。それぞれ1株が5バルブ程のサイズでした。この価格は下記の植付け手間と炭化コルク等の材料費を考えれば株単体の実質相当価格は2,500円以下となります。下写真最上段は先月中旬の植え付け直後、2段以下は24日撮影の新芽の成長状態を示したものです。

 本種はBulb. blepharistesと同様に、仕入れ時にはそれぞれのバルブや葉がその他の種にはあまり見られない程に、いずれもあちこちを向いており植え付けには相当の技術が要求されます。下写真でバルブにワイヤーが巻かれていますが、これは1mm径の盆栽用アルミ線で、まさに盆栽で行われる”針金かけ”と同じ目的です。ランに”針金かけ”を行うのはBulb. blepharistesと共に本サイトとして今回初めてで、このような話も聞いたことがありません。この2種についてはポットであれ板付けであれ、一つのバルブの根を固定すると、他のバルブの根は反対あるいは横を向き、取り付け後の風景どころではありません。葉も輝度との関係から極力全ての葉の表面が一方向を向くようにしたいのですが、根と同様に上下左右を向いており定まりません。僅か5バルブ程が1本のリゾームで繋がった構成にも拘らず、なぜこれほどチグハグなのか、おそらく5㎝径ほどの枝に絡まっていたのでしょうがほとんどの株がそうとも思えず、どのような環境で成長してきたのか逆に興味が湧きます。そうした状態の中、まず根を板に付けることが最優先でそれを行った後、あちこちを向いたバルブや葉を針金をかけて引っ張り、バルブは板に極力垂直になるように全体を整形していきます。強すぎるとリゾームが折れてしまうため、針金をかける位置と張力の加減が難しく、一方、葉も互いに触れたり重ね合わないように起こします。そうして出来上がったのが下写真の最上段の風景です。結局、これらの取付には一般種の4-5倍の時間がかかりました。 このようにバルブがあちらこちらに引っ張られながらも新芽が待っていたとばかりに次々に出て元気なのも不思議です。1mm径のアルミ線は半年ほどで切れ始めるためそれまでに根がある程度活着すれば、それなりの方向を向いて落着くと思います。


やや変わり種のPhalaenopsis mariaePhalaenospsi pantherina

 下写真左は赤色斑点が太いフォームのPhal. mariaeです。一方右はPhal. pantherinaで通常セパル・ペタルのベース色は黄色ですが、緑色が強く出たフォームです。いずれも3年間ほど、この固有フォームが変わることなく再現していることから遺伝性が考えられ自家交配を計画中です。


Phal. mariae

Phal. pantherina

Dendrobium tobaense

 6月中旬を過ぎても多数のDen. tobaenseで開花が続いています。下写真はラテラルセパル左右のスパンで12.1㎝サイズ(左)と、ペタル間スパンで11.0㎝サイズ(右)の花です。セパル・ペタルは湾曲しているので測り易い方で行いました。市場ではこのサイズをgiganteumと呼んでいるようですが、本サイトでは茎が20を超えるとこの花サイズが一般で、すべて野生栽培株です。5月のサンシャインらん展には同じロットの5株程を4,000円で出品し完売となりました。Phal. amabilisと同じくらいの大きな花ですが本種の花フォームは個性があって迫力があります。これらは10㎝幅x30㎝長の炭化コルクに付け、中温室にての栽培です。根元のミズゴケが乾燥気味になればかん水を行います。乾燥してからではありません。これは四季を通して同じで、一般に言われるような冬季にはかん水をやや控えめにするなどと面倒な管理は、素焼き鉢にミズゴケの組合わせ栽培をしていた頃に行ったことはありますが、炭化コルクに替えてからは一切していません。1年を通して同じタイミングの繰り返しです。

Den. tobaense

Aerides inflexa

 ボルネオ島、スマトラ島およびフィリピンに生息する本種の花(画像はW. Suarez氏から頂いたもの)は一般に白色ペースのセパル・ペタルに先端部がマゼンダ色で同色の小さな斑点が全体に散りばめられています。この色はPurple-pinkやPink-blue色など個体差があります。

 1昨年フィリピンの趣味家から入手した一抱えもあるクラスター状の野生栽培株は、一般カラーフォームとは異なりセパル・ペタル全体にAerides leeanaのようなダークピンクで、所有者が付けたと思われるタグには種名の横に"wildroot Princess"の愛称が書かれていました。おそらくフィリピンのラン展での入賞株と思われます。このクラスター株が開花中であったため先月のサンシャインラン展に展示用として販売ブースに参考出品しました。

 かなり年月が経ったのかクラスターを構成するそれぞれの茎の下部の多くが古くなって枯れ始めており、植え替えを行う時期に来たとの判断で、今月に入り思い切って茎毎に株分けをし、根も選定を行いました。結果12株に分かれました。下写真右がそれらで、これらの株の花は左となります。フィリピン生息の本種は入荷が非常に難しいこともあり、これらの一部をこの機会に販売しようと順化に入りました。今年秋頃から販売を開始する予定です。

Aerides inflexa

 ここで本種に関して、いくつか気が付いたことがあります。まずAeridesはいろいろなカラーバリエーションがあることから、同じAerides属のAerides odorata、Aerides leeana、Aerides quinquevulneraなどとの違いを花色で判断することは難しく、ではどこで種別を行うのかが問題となります。デンドロビウムCalearifera節に見られるようなリップの基部から後方あるいは下方に伸びている距(Spur)が、Aeridesでは正反対の前方に曲がり伸びているのですが、Cootes氏によればAerides inflexaは、このSpurが直線的で真っ直ぐ前方に向かっている点を指摘しています。Aerides odorataquinquevulneraは確かにSpurは湾曲気味で先端はやや上方に向いています。またAerides leeanaは前向きながら下方に多くが向いています。この説を是とすると、 orchidspecies.comのAerides inflexaの画像は、クローズアップの画像は良いとしても、Spurは湾曲気味でAerides quinquevulneraのようにも見え、一方、かく言うCootes氏の著書Philippine Native Orchid SpeciesにあるAerides quinquevulnera var. purpurataの画像はSpurが真っ直ぐ伸びてAerides inflexaの如くでAerides quinquevulnera らしくなく、さらに悩ましいのはAerides inflexaのフィリピン生息地はルソン島に対し、Aerides quinquevulneraはルソン島、Mindoro島、およびNegros島とされる一方で趣味家から得たAerides inflexaはそのタグにMindoro島と記載されており、こうなると整理がつきません。果たしてこうしたレベルの情報で種の同定をして良いのかどうか首を傾げたくなります。いわゆる可視形状による分類手法の限界のような気がします。

 しかし、所有する種は写真左および中央に示すようにSpur(リップ基部から花の前方に伸びている薄黄色の先の尖った突起)はAerides leeanaとは大きく異なり、またAerides odorataquinquevulneraとも異なって直線的であり、まず間違いなくAerides inflexaと思われます。

Phalaenopsis minus

 Phal. minusが開花を始めました。2-3年程入荷が無く、昨年12月にマレーシア経由で3株と、先月初めて現地タイから直接20株程を入荷しました。本種はタイ北部の熱帯モンスーン(季節林)生息種のため大きな気温の変化と共に雨期と乾期があり、こうした複雑な自然環境に生息するAphyllae亜属は栽培が易しいようで結構難しい種です。いわゆる1-2年は何とか持ちこたえるものの、そこから先はやがて葉が無くなり根も枯れてしまうというものです。このような栽培経験をした趣味家は多いと思います。夏季の昼間は30℃以上でも良いのですが、夜間温度が15℃近くまで下がる月が1年に6ヶ月以上(栽培環境にて)となる条件が必要で、これは富山や新潟あるいは福島県以北の地域でなければ実現にはかなりのコストがかかります。

 会津では特別な管理をしていなくても、温室栽培で元気に育ち毎年多輪花であったのが、浜松に移ってからは今一つ元気がありませんでした。調べた結論としては上記のなような環境が本種には必要なことが分かりました。本サイトで言えば中温室内の比較的暖かい場所と言ったところでしょうか。夏季に山上げができる人、あるいは上記地域で栽培をしている方は、春から秋にかけてこまめな水分補給さえしていれば丈夫な種と言えます。

Phal. minus

Dendrobium flos-wanua

 今月の歳月記にツートーンカラーのDen. dianaeを取り上げました。入荷時のこれら株は小さな木片に粗末に取り付けられた5㎝程を最小に2-3㎝のバラツキのある背の低い20株程であったことは前回説明しました。その同じ入荷ロットの中に一際背丈の高い株が4株程混ざっており、その株が開花しました。Den. dianaeとは花フォームが異なり、調べたところ同じカリマンタン生息でDen. dianaeとは1年遅れの2011年登録の新種、Den. flos-wanuaであることが分かりました。疑似バルブや葉形状からはDen. dianaeと区別することはかなり困難で敢えて違いを言えば、葉がややDen. flos-wanuaがスリムであると言ったところです。国内では実生がマーケットにあるようですが、入荷株の様態を考えると開花した株は野生栽培株と思われます。

Den. flos-wanua

通称名Aerides odorata calayanaAerides odorata alba2種の新種名

 これまで現地ではAerides odorata calayana typeと呼ばれていたピンクの花色を持つ種と、そのalbaフォームは本歳月記の昨年10月に掲載しましたが、同種がCootes氏とW. Suarez氏らによりAerides magnificaとの種名で2014年に登録されていました。本サイトが入手したのは2015年の、登録された1年後でフィリピン国内のマーケットではかなり早くからAerides odorataあるいはquinquevulneraの変種として流通していました。いずれにしてもCalayanからの入荷は現在難しく入手難の種であることは間違いありません。現在それぞれ10株程を現地に注文中です。またミンダナオ島生息の2016年の新種Aerides migueldavidiiも同様に問い合わせ中です。下画像は本サイトに在庫中の新種名Aerides magnificaです。

Aerides magnifica Aerides magnifica alba

現在開花中の多輪花種Dendrobium lasiantheraBulbophyllum maquilingensis

 現在開花中のDen. lasiantheraBulb. maquilingensisはいずれも多輪花で知られていますが、これらの中に異常なほど花数が多い株があり撮影してみました。前者は花茎が3本、後者は蕾を含めざっと数えたところ32輪でした。

Den. lasianthera Bulb. maquilingensis

Dendrobium aurantiflammeumPhalaenopsis gigantea Sabahのさく果

 今年4月に交配し、先月さく果の画像を掲載しましたがその後の画像です。どうやら無難に受粉ができ、状態からすると胚のあるタネができる可能性が高まりました。Den. aurantiflammeumは通常の1.5倍程の花サイズをもつ株であり、Phal. giganteaはセパル・ペタルが黄色ベースの株です。特にPhal. giganteaは右写真に見られるように17㎝長と非常な大きさに発達しており、殆んどのタネをフラスコに撒いて実生化を図るとすれば数千の苗が採れると思います。両者共に希少変種であり、国内ではフラスコ苗の販売も視野に入れてはどうかと思案中です。

Den. aurantiflammeum Phal. gigantea Sabah

高温室で開花中の2点Dendrobium igneo_niveumDendrobium anosmum alba Moluccas

 一つの花茎に10輪以上が開花したDen. igneo_niveumと ニューギニア寄りのモルッカ諸島生息のDen. anosmum albaです。後者は野生栽培株からの高芽か分け株のようで株自体は小型ですが開花株となっています。これまで開花した多くはセミアルバタイプでしたが今回の開花株はアルバフォームでした。

Den. igneo_niveum Den. anosmum alba Moluccas

低温室で開花中の2点Dendrobium limpidumDendrobium hasseltii

  パプアニューギニア標高1,500m - 2,100mのDen. limpidumと、マレー半島やスマトラ島標高1,500m - 3,000mのDen. hasseltiiは共にクールタイプのデンドロビウムです。いずれも多くのクールタイプの特徴である花寿命が1か月以上と長く、垂直型の支持材に取り付けています。本サイトでは前者がヘゴ板に、後者はバーク木片および炭化コルク付けです。

Dendrobium limpidum Dendrobium hasseltii

Dendrobium tetrachromum

  現在開花中のボルネオ島500m - 1,200m生息のデンドロビウムです。昨年の開花に続き2回目です。標高から栽培は中温あるいは低温とされていますが、入荷した株は30℃を余り越えない程度の場所で新芽を出し、開花もしていることから今回のロット株は比較的低地に生息していたのではと思われます。バスケットにミズゴケ植え付けとなっています。


Den. tetrachromum

Bulbophyllum medusae Cluster

  3年前にマレーシアにてBulb. medusaeのクラスター株を入手し、これをヘリカルネットを円筒形にしヤシガラマットを巻いた支持材に株の要所々をミズゴケで押さえながら取り付けました。入手後半年を経たクラスター株の開花が上段左写真です。この株が3年後には右写真のように360°隙間なく生い茂りました。このようなクラスターになった場合、問題は株が上方に向かって伸長してゆくため古いバルブは下部に、新しいバルブは上部に集まる傾向があり、また花茎は新しいバルブに発生することから花は主に支持材の上部に開花するようになります。多輪花で花が株一面を覆うような景色にするには、クラスターを適度なバルブ数単位で細断し、それぞれのバックバルブからも新芽を発生させ、支持材全体に新らしいバルブが行き渡るようにする必要があります。

 下段写真左右は今回上段右の株を支持材から取外し、1m長の特大ヘゴ板に植え付けを行った写真です。この新しいヘゴ板取り付けの葉付バルブ数は150ほどで上段右の約半数を使用しました。特にBulb. medusaeは葉が固く、強く当たるとポキッと音がして容易に折れてしまいます。また1mの大型ヘゴ板はかなりの重さとなります。このためバルブ数を高密度で取り付けるにはかなり高度なテクニックが必要で、非常に神経を使います。この規模の植え替えとなると1日掛かりの大仕事です。植え付け当初はミズゴケが見えますが、3ヶ月程経つと緑色のコケが着き、落着いた景色になります。さらに2年程でヘゴ板が隠れる程にバルブ数が増えると思います。

 クラスター株(元株は1株ですが、これを細断した分け株の集まりのため、厳密に言えばクラスターではありませんが)を、最近はらん展や温室訪問者への展示用としていろいろと仕上げています。その背景は、原種を専門に販売するブースは、カトレアやシンビジウムなど改良種の華やかな雰囲気とは異なり地味であり、自然の生息様態に可能な限り近づけた姿と、原種の神秘的で迫力ある景色が見せられれば面白いのではとの考えからです。


Dendrobium dianae

  先月取り上げた本種名の同一ロットから、ツートンカラーのDen. dianaeが開花しました。2016年マレーシアにて趣味家から開花中の3株程を偶然に分けて頂いてから、マレーシア訪問の度毎にマレーシアラン園を通してインドネシアに発注を行ってきました。結果、2度インドネシアから入荷した株は全てDen. hymenophyllum Greenのミスラベルで今回やっと本物を得ることができました。文字通り3度目の正直です。2010年登録のボルネオ島Kalimantan生息の新種で、野生栽培株のツートンカラーは上記のように容易には入手できません。本種はボルネオ島、一方Den. hymenophylumはJava、スマトラ島で間違えようがないのですが、花でも葉でも似ていれば送ってしまえと言ったインドネシアサプライヤーのよくある話です。これまでの手痛い経験から、野生株であっても花を確認しない限り買うことのできない代表的な種の一つです。下写真は同じ花で左は開花3日後、右は1週間後の撮影です。日にちの経過とともに黄化してゆくのも本種の特徴です。

 2016年12月の歳月記に記載しましたが当時国内では16,000円の販売サイトがありました。現在は本種に関するマーケット情報は見当たりません。最初の入手は趣味家からの分け株であったため3,000円で販売をしました。僅かな株数でもあり、これらはサイトに紹介と同時に売り切れました。しかしその後の問い合わせも多く、2年間発注を続けたことになります。今回の株は野生栽培株からの株分けと思われ、趣味家からではなくインドネシアサプライヤーからマレーシアラン園経由の入手のため500円プラスしての販売予定です。同じDen. dianaeではあるものの緑単色とツートンカラーとの2つのフォームが混ざっているため、それぞれ花を確認しての販売となります。緑単色株も先月の 画像に見られるように透明感のある優しいフォームであることから同じ価格での販売となります。

Den. dianae (左開花3日後、右1週間後の撮影)

Dracula3点

 大型のドラキュラ3点が開花中です。 今年3月からメタルリングへの植え替えを行いましたが、さっそくリングの隙間から花茎が伸びて花を着けました。ドラキュラは7月から販売予定ですが夏季となるため本格的な売買は秋からと思います。サイズは自然体でのそれぞれドーサル・ラテラルセパルの突起先端間の縦幅でDracula gorgona(写真左)が25㎝、Dracula vanpira(写真中央)が21㎝、またDracula gigas(写真右)が16㎝となります。

Dracula gorgona Dracula vanpira Dracula gigas xanthina

Bulbophyllum incislabrum cluster

 スラウエシ島標高1000m程に生息する本種は2003年登録の新種で今年2月と先月の歳月記にも取り上げました。通常1株は5バルブ程で販売していますが、1昨年入荷した中にクラスター株が1株あり、この株はこれまで杉皮板に取り付けていました。花も5㎝とそれなりの大きさで黄色に赤褐色の斑点をもつ見栄えの良いフォームであることから、展示会出品用にと1m長の特大ヘゴ板に移植しました。バルブ数は新芽を含め67バルブで写真右が今回植え付けをした株です。

Bulb. incislabrum

現在同時開花中の似たものデンドロビウム3点

 Den. kuhlii、Den. rutriferumおよびDen. intricatumのそれぞれが現在浜松温室にて開花中です。前者2種はCalyptrochilum節、後者はCalcarifera節で節は異なりますが、花形状はそれぞれがほぼ同じサイズであり、少し離れて眺めると同じように見えます。下にそれぞれの画像を示します。これらはいずれもスリット入りプラスチックポットにミズゴケ100%あるいはミズゴケとクリプトモスミックスでよく育ちます。ただしDen. kuhliiは中温室となります。


Den. kuhilii  (West Java 760 - 2,500m))

Den. rutriferum  (New Guinea 600m)

Den. intricatum  (Cambodia, Thailand, Vietnam low-land)

6月のスケジュール

 例年と異なり今年は海外訪問の機会が1月以来今月まで無くEMSでの入荷となっていました。この反動もあって、今月から来月初旬にかけてマレーシア、フィリピン、タイなど4か国を1-2週間間隔で訪問する予定で、それぞれ合わせて2,000株以上の注文を現在行っています。このため温室内では先月からこれまでの栽培結果に基づき株それぞれの適所への移動を含め、すでに満杯状態であったレイアウトを大幅に変更し、新入荷予定株の栽培スペース造りに追われています。今月半ばから入荷株の紹介ができると思います。

 とりわけ本サイトの原点とも言える胡蝶蘭原種の在庫が現在減少しており、5月のサンシャインラン展ではバルボフィラムが中心で胡蝶蘭は数品種しか出品できませんでした。こうしたことからおよそ胡蝶蘭55種の内、40種ほどの入荷も予定しています。またこれまでは余り手を付けていなかったベトナム、ミャンマー、雲南省からタイまでの品種も積極的に入手する予定です。

 本サイトではこうした新しい入荷に合わせて、素焼きやプラスチックポットとミズゴケの仮植え販売は極力無くし、 栽培経験に基づいたそれぞれの種に適した素材に植え付けた状態、あるいは栽培景色として見た目の良い形態での出荷を計画しています。先月取り上げたバーク木片はその一つです。株は一品ごとに商品として販売できますが、栽培経験という抽象的知識は販売できません。書で表現することも一つですが書ではその表現力に限界があります。経験をどのように目に見える形にするかは、出荷のための便宜上の仮植えや、ラン展での海外ラン園が良く用いるビニールパックに入れたベアールートではなく、栽培状態と変わらぬ姿を見せることが良いと考えます。素材を多様化することは仮植えに比べ割高になりますが、支持素材、植え込み材、取り付け方法など、これらは環境に依存する要素が多いため1例にすぎないものの趣味家がそれぞれの品種に適した栽培手法の実体を見ることができることも意義があると思います。

Dendrobium papilio

 5月末より6月はDen. papilioの開花最盛期となります。本サイトでは100株以上を栽培しているため6月初旬の中温室は多数の花びらで華やかです。本種の栽培は昨年夏から全株が炭化コルク付けとなっています。


Den. papilio


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