栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 2017年度

2018年  1月 2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月

2月

Bulbophyllum sp Palawan

 PalawanからのBulb. spの開花が続いていますが、次々と異なる花が咲き、これで4種類目となります。全てCirrhopetalum節で最初の開花は昨年12月の歳月記に取り上げたBulb. brevibrachianumに似た種、2回目は今月取り上げたセパルの異常に長いBulb. makoyanum、また直近ではBulb. longiflorumに似た種が開花しました。今回の種は全体が薄黄色ベース一色の点ではBulb. loherianumに似ており、花形状ではBulb. sibuyanenseに似ています。前者はラテラルセパルは短く丸みがあり、ラテラルセパルの薄黄色に対してドーサルセパルやペタルはややオレンジ色が一般的で、後者にはセパルペタルの基部は赤味があり、今回開花した花は下写真のように薄黄色一色の清楚な色合いです。花茎は緑軸です。またorchidspecies.comではBulb. loherianumは花サイズが5mm、Cootes氏の著書ではラテラルセパルの長さは1.5㎝と記載されており、一方、Bulb. sibuyanenseは最長2㎝です。写真の花のラテラルセパルは2.5㎝です。前記以外のフィリピンに生息するバルボフィラムで該当する種が見当たりませんが、新種なのか既存種のPalawan地域差あるいは個体差なのかは、さらに開花サンプルが必要です。

Bulb. sp Palawan

Phalaenopsis schilleriana

 2月末現在、Phal. schillerianaが開花中です。写真は実生栽培では得られない葉長30㎝を超える8株の野生栽培株です。、今年はこれらを親株として交配を行いフラスコ培養を行う計画です。販売用Phal. schillerianaは6月頃を目途にフィリピンから新たに入荷する予定です。


Phal. schilleriana

Brasiliorchids (Maxillaria) schunkeana

 1月のサンシャインラン展で、Mundifloraから東京ドームラン展までの間、本種の他100株程を預かることにしました。透明用紙に包まれたままでは2週間ともたないため浜松では包装紙からそれぞれを取り出しミズゴケ等でポットに植え付け保存しました。今回の東京ドームラン展ではこれらを全てMundifloraに返し出品したのですが本種は1月同様に売れ残ることになってしまいました。出戻りです。現在開花している本種の花を見れば驚くほど真っ黒で、ポリネーターも飛来しないような黒色になぜ進化したのかと再び思い巡らしています。趣味家の好みそうなこれほど奇異な種がなぜ出戻りか分かりません。

 今回の東京ドームラン展ではMundifloraのブースの売れ行きは良いようで、また観葉種は引き取り手もいて残りが僅かであれば引き続き預かっても良いかなと思っていたところ、Equaflor-Aのマガリーさんの兄から妹と同様に、売れ残ったランを預かってもらえないかと相談されました。2箱程度になるとのことでした。1日おいて、それでは預かったランはミッションエージェントとして販売するが良いかと当方から申し出て価格、代理店手数料、情報対応などを打ち合わせました。問題はラン展が終了し浜松に搬送された2箱の中身です。どうしてこれほどまで詰め込むことが出来るのか唖然とするほどビッシリで、200株以上ありそうです。3年前の悪夢が過りました。

 丁度3年前、アルゼンチンからのラン園がドーム日本初出店の際、税関で書類上の不備が発生し、荷物がドームに到着したのは翌週の火曜日で、販売が残り4日間となるトラブルが発生しました。原種を販売するラン園としてはすでに内覧会土日が過ぎ致命的で、翌週の土日が残っていても最終日近くは、当時原価割れとなるほどのディスカウントが顧客や同業者から要求されることは必須で、南米や東南アジアの同僚たちから何とか協力してもらえないかと相談されました。半日考えた末、日本に持ってきた全800株相当を引き受け(購入)ました。地球の裏側から2日もかけてきたラン園の日本初の販売でのトラブルで、逆の立場ならどうしただろうかを考えた結果です。しかし入手したは良いものの浜松に持ち帰っての、初めて聞くような名前ばかりの800株の仮植えから本植えに至る1か月半近くは朝早くから夜遅くまでの重労働となりました。という訳で、Equaflor-Aの段ボールの中身を見て、再び悪夢を見たような気になりました。しかし1/3ならばと気を取り直し、取り敢えず仮植え(1か月程は本植え付けしなくても弱ることのない状態にする)を行っているところです。

 南米のランはこうしたこともあり、現在2000株近く、とりわけDracula1属だけでも70種以上あり、とうとう温室1棟分の7割近くを占めるようになり、このままカタログもなく販売もしないのは限界に近く、待ったなしの販売用ウエッブページの作成を開始し5月から販売を始めることにしました。

Brasiliorchids (Maxillaria) schunkeana

Bulbophyllum habrotinum

 本種は1994年命名のバルボフィラムで、ボルネオ島固有種です。多くの方からはマレーシア、スマトラ島、フィリピンに至る広域種で、今や2,000円程で入手できるBulb.pulmatumの類であろうと思われているようですがそれとは異なる種です。ネットからは国内では本サイトを除き1ラン園のみで6,000円での販売です。現在開花中で下写真のようにBulb. pulmatumと異なるのは長く垂れたセパル上部が金色をベースに赤い斑点が入ることと、Bulb. pulmatumが4-5輪に対し10輪程と多いことです。セパルの長さは8-10㎝で変わりません。本サイトでは3,500円での販売です。

Bulbophyllum habrotinum

Dendrobium cinnabarinum var. angustitepalum

 Den. cinnabrinum v. angustitepalumが開花しました。株や蕾の形状からはDen. cinnabarinumとの違いを見出すことはできませんが、下写真のようにangustitepalunの花形状は別種の如く異なります。ボルネオ島生息種で標高600m - 2,200mとされます。Den. cinnabarinumの生息域より低地と現地ラン園では聞き、胡蝶蘭と同じ高温室に当初置きましたがあまり元気が無く、結局一般タイプのDen. cinnabarinumと同じ中温室に昨年秋に移動しました。夏の暑さにはやや弱いように思います。株形状が似た同じボルネオ島のDen. aurantiflammeumは低地生息種で高温タイプです。木製バスケットにミズゴケ植えが最も成長が良いようです。

 写真の株は国内に持ち帰っての初花となりますが花サイズがDen. cinnabarinumと比較して小さく、これはこの種にしばしば見られる株サイズや順化後の初花の性質で、やがてDen. cinnabarinum並に大きくなるのかどうか今後の開花が楽しみです。

Den. cinnabrinum v. angustitepalum

東京ドームラン展を経て

 東京ドームラン展JGP2018が終了しました。今年は1ブースの出店でしたが多数の原種愛好家の方々にお越し頂き、内覧会から日曜日の3日間で展示出品の7割近くを販売することが出来ました。今回も1月のサンシャインシティAJOSラン展と同様に、少量多品種での出品を行いました。原種のみを扱う本サイトや幾つかの海外ラン園にとっては、この初日から3日間の売り上げが出店の成否を左右します。一方、平日に訪れる中高年やツアー団体の方々は栽培家というより主に観賞が目的で、それぞれ来場者の嗜好が曜日によって異なります。
 
 趣味家を対象とする原種の市場はあまり流行は無いように思われますが、数年前と比べてバルボフィラムやセロジネ愛好家が増えているように感じます。原種も新種や希少種は属に関わらず常に人気が高いことは変わりません。また若い年齢層の増加が顕著で好ましい限りです。この傾向もあってか、1例としてシダ類から現在はジュエルオーキッドに移っているなど数年単位で関心域は変動するようで、特に海外原種ラン園はこうした日本市場の動きや、競合の少ないニッチな市場を如何に捉えるかでブースを訪れる趣味家の数が大きく変わります。今年は台湾からのラン園がかなり少なくなった印象です。観賞用交配/改良種を販売する多数のブースは、その領域の専門ではない本サイトから見ると、いずれも似たり寄ったりの商品のように映り、果たして競合しないのかどうかが不思議です。台湾からのラン園も10年ほど前はドームに出かけるのにわくわく感があって楽しみでした。しかし5年ほど前からは皆同じような品種ばかりと感じるようになりました。こうしたことも出店数の減少に繋がったのかと思います。

 今回本サイトのブースはNT OrchidとMundifloraに挟まれ、本サイトの名称から海外ラン店と同列に思われているフシもありますが、3塁ベンチ側の広い通路に面した良い場所でした。その前にはラン販売ブースならば20店舗以上は入れるであろう広い空間があり、そこではわらび餅、ワイン、郷土料理、乾燥果物などの店が縁日の如く並び、はてこれらの店がランとどんな関係があるのかと眺めていたところ平日の午後にはどのラン園のブースにも増して黒山の人だかりであったのには苦笑いです。

 来年のJGP2019は企画担当会社が変わるそうです。いずれにしても原種愛好家としては、より多くの国々からラン園が参加しやすい環境が提供できるラン展になることを期待しています。

Dendrobium rindjaniense

 現在多くのDen. rindjanienseが蕾をつけています。順化中あるいは直後は3-4輪でしたが、順化後は株あたり10輪以上となっています。栽培は温室内のため開花期がいつかは一般論としては言えませんが、本サイトではこの時期のようです。花を見ると下写真左のように一般にはセパルペタルの先端部は白く、基部は明るい藤色ですが、今回蕾を付けている右写真の1株はかなり濃色で藤色に濃淡の個体差があることが分かりました。写真の株を含め数点JGPに出品予定です。

Den. rindjaniense

Bulbophyllum incislabrum

 1昨年入荷したBulb. incislabrumが開花しています。スラウエシ島生息種で2003年命名された新種です。そのためかorchidspecies.comでの情報は少なく、また国内のマーケット情報も無く、海外ではアメリカの1ラン園で65ドルおよそ7,000円で販売されています。

 2年近い栽培で本種は板付けが良くこれまでは杉皮板での栽培でした。中温と胡蝶蘭用温室の高温の2か所に分けて栽培をし、今回の開花は中温室です。高温でも弱ることはないのですが暑さを嫌うようで夏は風通しの良い軒下に吊るしたほうが良いようです。

 花のサイズは開花状態でのペタルの左右スパンで4.0-4.5㎝、高さもほぼ同じです。中々個性のある形と共に、セパルペタルは黄色をペースにチョコレート色の斑点が一様に散りばめられて光沢があり、またリップ中央弁はorchidspecies.comの画像では白をベースに基部と側面が紫色ですが本サイトでは純白となっています。本種は夕方になるとセパルペタル共に蕊柱とリップを覆い隠すように閉じます。これは生息環境が雲霧林であることを示しているように思います。下画像が今回の開花株です。東京ドームJGPに数株出品します。

Bulbophyllum incislabrum

名称不明のcalcarifera節デンドロビウム

 Den. doloissumbiniiの中に交じって下写真上段の名称不明種が開花しました。見方によって2007-2009年命名のDen. chewiorumであったり、あるいはDen. cymbicallumのようでもあり、はたまたDen. cerinumのようでもありと悩みます。現在開花中のスマトラ島Den. sp、Den. cerinum、本種それぞれの花を比較した画像が下段です。いずれとも異なります。入手経路からするとボルネオ島Sabah生息種であり、また上段右の疑似バルブ画像がDen. cymbicallumに酷似していることから、ではこれで決まりとなるのですが、それでも納得いかないのはorchidspecies.comによればDen. cymbicallumはクールタイプで、しかし1,500m以下?とあり、当浜松の温室では胡蝶蘭と同棲して高温環境であり、この環境で元気に成長しています。このことから低地生息のDen. cymbicallumの可能性大と、取り敢えずしておくことにしました。

 しかしcalcarifera節の多くが開花してから1-2週間もすると黄化してくるのですが本種はほとんど変わることなく淡い緑色で清楚な色合いを保っています。

Den.sp (cymbicallu?)
左:Den. sp Sumatra  中央:Den. cerinum 右:本種  

Bulbophyllum contortisepalum whiteとBulbophyllum makoyanum long Palawan

 写真左はマレーシアにて入手したBulb. contortisepalumです。一般に知られている本種は黄色ですが、赤色があり、さらに今回は白色を持ち帰りました。おそらくこの白色のBulb. contortisepalumは別名(シノニム)のBulb. streptosepalumではないかと思います。

 写真右は11月入手したPalawanからのBulb. spの中に含まれていたBulb. makoyanumで、順化期間がほぼ終了と同時に開花しました。円形に広がるセパルの直径は14㎝とこの種としては極めて大きく、通常順化後初めての花は10㎝程が多いことを考えると今後の開花によってどこまで大きく広がるのか楽しみです。東京ドームプレオーダーリストにはBulb. contortisepalum whiteは入れましたがPalawan産のBulb. makoyanumは入れていません。プレオーダを希望される方はお問い合わせください。

Bulb. contortisepalum white Bulb. makoyanum

Phalaenopsis javanica

 Phal. javanicaのインドネシアからの入荷が極めて困難になってきたようで、マレーシアラン園でも昨年夏ごろからの入荷が途絶えています。おそらく野生株は今後益々難しくなるであろうとのことです。本種はマーケットには実生があり、本サイトでも本種の選別株の自家交配を行っています。今回のマレーシア訪問で実生がたまたま訪問先のラン園にあったころから10株ほど入手してきました。実生株はPhal. violacea近縁種など一部を除いて扱わないのですが野生栽培株が入手難のための今回に限りドームラン展販売用として持ち帰りました。実生ですので野生栽培株の半額以下の2,000円での販売です。基本的に本サイトでは胡蝶蘭の実生は1,500-2,000円としています。これを上回る価格分は炭化コルク付け(取り付けコスト分)か自家交配種(交雑種でないことの保証)のいずれかによるものです。


Phal. javanica 実生株

Macodes sandeiana

 マレーシアの農園内を歩いていたところジュエルオーキッドの一角があり、葉模様が美しい代表的なMacodes sanderianaも並んでいました。百株程が纏まっているとそれなりに見ごたえがあります。これまでサンシャインラン展に2回、希少種と言われたジュエルオーキッドを選んで2-3種販売しました.。アクアプラントとして人気があるようでよく売れました。最近は扱っていませんので素通りしたのですが、価格を聞いたところキャメロンハイランドの道路わきの露店とほぼ同じでした。ネットを見ると国内では3,000-6,000円程で売られているようで、それではと下写真の15株を入手しました。こんな背景から東京ドームプレオーダーリストに入れていません。マレーシアの露天商気分で500円でも良いのですが、マレーシアの道路脇とは違ってドームと言う場所代があり、ラン展では1株1,000円での販売です。


Macodes sanderiana

Bulbophyllum

 今回マレーシアから持ち帰ったバルボフィラムの内の2種で、上段が2011年登録のスラウエシ島生息種のBulb. veldkampiiで、下段がボルネオ島のBulb.spです。下段右はそのsp種の開花画像です。いずれも高温タイプです。Bulb.spの花画像が分かりにくいのですがセパルペタルは黄色に対し、リップは緑色で中央弁に細毛があります。こちらはマレーシアの趣味家から得たものです。

Bulb. veldkampii
Bulb. sp Sabah

Vanda foetida

  入手して3年目にようやく開花に至りました。6㎝程の花で白地に薄い藤色のセパル・ペタルと、サンディ・ブラウンのリップ中央弁に深紅の側弁は存在感があります。比較的明るい場所に移動してから1年程経ったところです。スマトラ島生息種でorchidspecies.comには気温についての情報がありませんが、浜松ではVanda sanderianaなど他の高温タイプと同じ環境で4株を栽培しています。入荷時はいずれも30-40㎝でしたが3年程の成長で1mを超える株もあります。植え込みは大粒のコルクチップとバークで、吊るしではなく鉢植えです。

Vanda foetida

Dendrobium leporinum

 下写真はDen. leporinum です。左(後方に映っている種はDen. strepsiceros alba)および中央の株はニューギニアIrian Jaya、右はインドネシア北マルク州Halmahera島Jailolo地区生息のDen. leporinumです。右の株のように生息地がこれほど詳細に分かっているケースは珍しいことで、地域差を調べるうえで重要な情報です。本種はSpatulata節で1m程の大きさになります。特徴はリップの大きな団扇のような形状と赤紫の網目模様で、花茎当たり6㎝程の花が5-6輪同時開花します。通常花茎は2本発生することから10輪以上となり、かなり見ごたえのある種です。

 下画像から中央のIrian Jayaと右のJailoloとはリップ中央弁形状が前者がより丸みがあり、後者はやや楔型でリップ側弁やホーン(角:ツノ)と言われるペタルの形状に僅かな違いが感じられます。カラーコントラストはJailoloが強い印象です。この違いがそれぞれのロット単位で対比しており、地域差よる可能性があるもののさらに調査が必要です。

 国内マーケットではその美形からかほとんどが10,000円以上ですが、本サイトではIrian Jaya産は5,000円、2年程入荷が途絶えているJailolo産は6,000円としています。指定のない場合はIran Jayaとなります。

Den. leoprinum Irian Jaya Den. leoprinum Jailolo


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