栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

2018年 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月  12月

10月

フィリピンからの2種

 一つはVanda barnesiiで他はCeratocentron fesseliiです。いずれもよく知られた種ですが、左のVanda barnesiiにはセパルに僅かな斑点があります。この斑点が環境条件でどのように変化するのか興味があります。一方、右のCeratocentron fesseliiはフィリピンでは少数派のクールタイプです。一般の画像検索に見られるオレンジと赤の中間色が多い中では、赤味の強い鮮やかな色合いです。この株はこれまでフィリピンの標高500m程の比較的高温環境で栽培されていたようで、それでこれだけの発色であればクール環境ではさらに鮮やかな赤色となるのかどうか期待しているところです。同一ロットで30株程を入荷し、サンシャインラン展にその一部を出品する予定です。


Vanda barnesii

Ceratocentron fesselii

アルバフォーム2種

 フィリピンにて栽培中のアルバフォーム2種を紹介します。マーケットでは下写真の色合いをアルバと名付けていますが、むしろflavaフォームとすべきかと思います。一つはVanda roeblingianaで、もう一つはPhal. hieroglyphicaです。前者のアルバフォームはこれまで知られていないようです。また後者のアルバフォームは台湾やタイでの実生がすでにマーケットに見られますが、写真右の株は野生株です。これまでに見られない非常に上品な色合いで、これらは11月に入荷予定です。いずれもマザープラントとして自家交配を行い、実生を得た後はフィリピンに実生の一部と共に本種を戻すことにしています。


Vanda roeblingiana f. alba

Phal. hieroglyphica f. alba wild

植え替え中のBulbophyllum2種

 下写真は現在植え替え中の上段がBulb. saurocephalum subsp oncoglossum、下段がBulb. whitfordiiです。Bulb. saurocepahyalumとその亜種とされる2011年登録のsubsp oncoglossumとの違いは、リップ中央弁が平坦か、先端部が凸状で側弁の形状に相違があるとされます。写真の株は先端にやや膨らみがあり亜種であろうとの判断です。一方、写真下段は入荷名が希少種とされるBulb. cheiri yellowでしたが、PalawanにおけるBulb. cheiriの確認がない(2010年)のに対して、形状が類似するBulb. whitfordiiはPalawan生息の確認があり、また同種の特徴であるグリーン色も強いことからBulb. whitfordiiとしました。

Bulb. saurocephalum subsp oncoglossum
Bulb. whitfordii

少し変わったBulbophyllum

 フィリピンからは新たに15種程のバルボフィラムが11月末ごろまでに入荷予定で現地で確保次第、順次画像が届くそうです。その中で2点程、既存種に似て非なる花画像が送られてきました。左は種名が現時点では不明です。右はBulb. nymphopolitanum complexのようですが、それにしてはペタル・セパルの色が赤すぎ、ラテラルセパルの先端部が細長い点が特異です。指皮膚との色合いから映像の加工は考えにくく、本サイトではこれまで取扱のない種です。一方、ミンダナオ島の2016年登録の新種でBulb. virescensの近縁種とされる花の大きいBulb. hampeliaeはすでに確保済みで、これらはサンシャインラン展に出品予定です。


Cleisocentron abasii事情

 先日Clesiocentron abasiiの下写真が送られてきました。30-40㎝ほどの野生株で長い花茎から本種であることは間違いありません。USD120だがどうかとのことです。すなわち13,000円程となります。断りました。その理由は画像からは品質が良くないことと、ランとしてはマイナーなCleisocentron種がこれほど高価なのは日本向け価格であり、それには数年前の国内マーケットでの登場事情が背景にあるようで日本以外での本種の人気は取り立ててありません。高額でも良いとする需要があればそれはそれで良いのですが、今回やっととは言え、こうして出てきたからには、いずれそれなりの数が現れると思います。本サイトでは現在2,000 - 3,000円程で販売しているCleisocentron gokusingiimerrillianum並になれば購入も考えるとサプライヤーに答えたところです。

Cleisocentron abasii

順化中の胡蝶蘭原種3種

 8月末にマレーシアを訪問し持ち帰った胡蝶蘭原種Phal. amabilis JavaとPhal. viridisおよび9月末訪問のフィリピンから持ち帰ったPhal. schilleiranaが現在順化中でそれぞれで新根が現れてきたところです。これらは1月のサンシャインラン展に出品する予定です。


Phal. amabilis Java

Phal. viridis

Phal. schilleriana

Dendrobium tannii f. alba?

 Den. tannii名で今年1月に入荷した株には赤紫やピンク色など多様なカラーフォームが混在し、その中に下写真の白い花も3割程含まれていました。Den. tanniiで検索しても公式な登録は無いようで、この名前のページはorchidspecies.comにも無く、Den. bracteosumあるいはその一変種とされているようです。幾つかのDen. tanniiに関する記述からは、Den. bracteosumとの相違点として、リップの色やセパル・ペタルの形状が取り上げられていますが、その程度のみで別種とする根拠には無理があり、一方、変種とするのであればDen. bracteosumの一般フォーム株に対しての排他的地域性が必要で、さらに一つの入荷ロットから紫、ピンクおよび白色が同じような割合で出現することは野生株とは考えにくく、Den. tanniiとされる株はタイか台湾でのフラスコ苗の可能性が大きいと思われます。

 Den. tanniiが人工的に作出された実生ではなく野生種であってDen. bracteosumの変種とするならば、採取地およびそのコレクターがストックあるいは栽培している場所が流通ルート(1次あるいは2次業者)の中で知られても良いのですが、これも明確ではありません。花自体は下写真のように清楚で美しいのですが自然界に実在する野生株と見做すにはしばらく調査が必要です。


現在開花のDendrobium ramosiiDendrobium violaceum

 これまで生息確認が無かったフィリピンPalawanからのDen. ramosii(写真左)と、ニューギニア生息のDen. violaceum(写真右)が低温および中温室にてそれぞれ開花中です。Den. ramosiiDen. erosum、Den. rutriferum、Den. kuhliiなどと花は一見似ていますが、それぞれリップや疑似バルブ形状がよく見ると異なります。これらは下写真のように一つの花は2㎝程と小型ですが多輪花で、写真は15輪以上の同時開花です。

一方、Den. violaceumは花形状や生息域がDen. vexillariousと似ていることから、よく違いが聞かれます。花色に大きな違いはあるものの、Den. vexillariousは色変化が多いため稀に似た色が出現することがあります、現在本サイトで栽培している株の中では、Den. vexillariousの方が葉幅が広い傾向が見られます。花は1か月以上咲き続けます。下写真右で緑色の生ゴケが見られますが、本サイトのクール室では2年ほど前からコケが自然繁殖して写真のように炭化コルクを覆っています。おそらく中-低温室には1,500mから2,000mクラスの雲霧林やコケ林からの種が多いため、そこでのコケが生きたまま現地の栽培サイトを経てやがて本サイトに入荷し、それが繁殖している可能性があります。このコケはランには悪影響はないようで、むしろ根周りの湿度を保つ働きをしているようです。ちなみにこのコケを3-4㎝角に切り、高温室の同じ炭化コルクで栽培しているデンドロビウムのミズゴケの上に移植したのですが1か月程になりますが今のところ枯れないものの増える様子はありません。コケにも低温・高温タイプがあるようです。


Den. ramosii

Den. violaceum

Dendrobium reypimenteliiの異なるフォーム?

 先月末、2016年登録の新種でミンダナオBukdnon生息のDen. reypimenteliiを取り上げました。100株程ある中で現在次々と開花を始めています。しかし一部にカラーフォームの異なる株が現れています。ドイツのジャーナルOrchideenJournal Vol.5.1 2017ではBukidnonからの8つの新しい原種が紹介されており、その中のデンドロビウムに、Den. derekcabactulanii、Den. reypimentelii、Den. schettleri が記載されています。これらはいずれも先月紹介のDen. boosiiと同様に下垂し落葉した長い茎に同じような形状の花を付けるデンドロビウムです。それぞれCalcarifera節の近縁種と思われますが、カラーフォームやサイズの僅かな違いでそれぞれ別種として扱われると、果たして下写真の今回Den. reypimentelii名で入荷したカラーフォームがそれぞれ異なる株もまた同一種ではなく、やがて別名が付くのではと考えてしまいます。そこで問題なのはこうしたフォームの違いを、趣味家から購入希望があることを想定し花を確認後、区分けして栽培するかどうかです。

Den. reypimentelii Den. reypimentelii変種? sp1 Den. reypimentelii変種? sp2

Dendrobium hosei

 花画像と伴に2016年末にマレーシアよりDen. nabawanense名の株を入荷しました。しかしそれまで栽培していたDen. nabawanenseの花と酷似するものの微妙に様態が異なることから、その入荷株について亜種か変種ではないかと2016年10-12月の歳月記で取り上げました。2年余りを経過した今月に入り、植え替えの時期を迎え、これまで開花毎に撮影した画像を整理し調べたところ、この入荷種はDen. hoseiであることが分かりました。

 Den. nabawanenseとの違いは2点あり、一つはDen. nabawanenseのリップ側弁の外縁は山なりに変化しているのに対し、Den. hoseiの側弁はフック(鉤)のような形状をもつことです。これはorchidspecies.comにも指摘されていたのですが、園主からの画像では撮影角度のために鉤状には見えず判断ができませんでした。他の一つはDen. nabawanenseの疑似バルブ(茎)は1m程の長さまで伸長し下垂するのですが、Den. hoseiは30 - 50㎝止まりで立ち性であることです。これらの相違点から本種の同定に至りました。下写真左は今回木製バスケットから炭化コルクに移植したDen. hoseiで中央は浜松にて撮影の花画像です。リップ側弁の鉤型の形状が分かるかと思います。右花写真はDen. nabawanenseで側弁の縁は滑らかです。

 そこで国内マーケットでは両者が正しく区別されているか調べたのですがDen. hoseiがネット検索でヒットしません。Den. nabawanenseはボルネオ島固有種、またDen. hoseiはマレーシア、ボルネオ島、ニューギニア低地生息種で中 - 高温タイプとされます。これら2種はボルネオ島生息株としてマレーシアから入手したのですが、昨年3月の歳月記に記載しましたDen. hoseiの株から2株ほどニューギニア生息のDen. baeuerleniiが出現したことから、このDen. hoseiはニューギニア生息の可能性が大きくなりました。ちなみにhoseiとはシンガポールの英国人司教名Hose由来とのことです。

Den. hosei Den. nabawaense

Dendrobium niveobarbatum

  昨年1月のサンシャインラン展でフィリピンラン園から引き取ったDen. niveobarbatumが大きくなり、株分けと共に植え替えを行いました。本種は、最近新種の頻繁な登場で話題のミンダナオ島Bukidnonの生息種で、標高500m程の高温タイプです。2008年登録の比較的新しい種となります。同じフィリピンの広域種であるDen. polytrichumと花形状は酷似していますが葉形状が異なり、その形状の違いは2017年2月の歳月記に取り上げました。

 本種は下垂タイプです。これまではバスケット植えでしたが、どうも原種特に野生栽培株を支持棒に縛ったり針金で押さえて無理やり立てて栽培するのは、葉の向きや開花する花の位置などの景色が不自然、すなわち物を逆さまにして見ているようで、最近は立ち性と下垂性のそれぞれの特性に極力合わせた植え付けを行っています。その結果、着生ランが主なデンドロビウムは胡蝶蘭程ではないものの吊り下げ型も多くなります。下写真左は40㎝4Lサイズのバーク木片(商品名はブロックバークという)への取付けで右株の茎の最長は凡そ1mです。おそらく自然界ではこのようなサイズが一般的なのかと思います。花は右写真のようにリップに細毛が、また側弁内側には柿色の細いライン見られます。国内マーケットでの取り扱いは少ないようでほとんど情報がありません。

Dendrobium niveobarbatum

歳月記に取り上げた品種の価格

  新規に取り扱う品種や新種が次々と増える状況のなか、現在本サイトにはそれらの価格をまとめたページがなく、こうした品種については歳月記で述べた販売予定価格が唯一の情報となっていました。このため、トップページの中段右のリンク・メニューに”2018年度参考価格”を設け、今週末までに本日(18日)ポスティングしたリストに追加更新する予定です。

開花中の2種

  下写真左は現在中温室で開花中のDen. hamiferumです。大半が高温タイプのSpatulata節としてはニューギニア標高1,000m - 1,800mに生息する珍しい中温タイプのデンドロビウムです。一方写真中央と右はフィリピンミンダナオ島Bukidnon生息の2016年登録のDen. butchcamposiiです。こちらは標高データが見つかりませんが、2年間の本サイトでの栽培による推定では 1,500m前後と思われます。左写真でDen. hamiferumの上部に白い花が映っていますがこれはDen. lydiaeでこちらもミンダナオ島生息で2016年登録の新種です。標高は1,200mとされますが栽培からはDen, butchcamposiiと比べて5℃程度高めが良いと思われます。

Den. hamiferum Den, butchcamposii

Vanda javierae

 フィリピンルソン島Pangasinan州の標高1,200mに生息する本種は生息域が狭いためか数が少なく野生栽培株の入手はフィリピンラン展においても困難です。現在マーケットで見られる本種はほとんどが実生とのことです。野生栽培株は10年前から5-6年間入荷していましたが、最後に纏まって200株程を入手した後は、中温室にてそれらの栽培を続けています。サンシャインや東京ドームラン展には毎回5株程出品しており人気のある完売種の一つです。マーケットでの実生種は3-4,000円程度であるのに対し、野生株と思われる本種はAsiatic greenが現在150米ドル、約16,000円で販売しており、Vanda属としては最も高額な種で、それだけ野生株の入手は困難になりつつあるようです。

 本種は同じフィリピン生息のVanda sanderianaと同様に、根を植え込み材で覆うポット植えは適さず、これまで木製バスケットに植え付け、下垂する根は空中にそのまま垂らしていました。毎年5月から7月初旬まで温室の一角が白い花で溢れる程の開花を続けています。しかし中温室の夏季は遮光率の高いネットで常時覆われるため輝度が不足気味になることと、高温室と異なり中温である分、湿度が低く根周辺の湿度不足のためか、やや入荷時に比べ痩せた様態が見られ、先週から現在の全株120株程を細長い杉板あるいは炭化コルクに植え替えました。根を板につけてミズゴケで根を覆うのではなく(水分過多となるため)、薄くミズゴケを敷いた上に根を置く取り付け法です。また輝度不足はLEDで補うことにしました。今後は液肥を定期的に与え株を太らせる計画です。下写真は植え替えが終わった多数のVanda javieraeです。こうした植え付けは育成用で、販売品は見栄えも考慮し再び木製バスケットに植えつけての出荷となります。

 本種はしばしばリップ側弁に赤褐色のラインが入るVanda barnesiiと比較されます。本サイトで栽培している半数もVanda barnesiiですが果たして別種とするほどの違いなのか、本サイトではJavieraeの変種として栽培しています。現在はラインの無い薄緑色の側弁種(下写真上段左)の方がVanda barnesiiに比べてはるかに入手難となっています。来年のサンシャインラン展には例年通り5株ほど出品する予定です。

Vanda javierae

Aerides magnifica(旧名Aerides quinquevulnera v. calayanensis / Aerides odorata Calayan form

 現地でこれまで幾つかの旧名があったCalayan諸島生息の本種がAerides magnificaと命名されたのは2014年の最近になってからです。すでにCalayan諸島では生息域でのプランテーション化が進みAeridesの多くが絶滅状態にあり、現在のマーケットでの本種は園芸品種と聞いています。下写真は実生化のためにフィリピンラン園から預かっている株です。花は淡く柔らかなパステル・ピンク色ですが緑の葉に囲まれた景色の中ではよく目立ち存在感があります。これら以外にアルバタイプもあります。毎年元気よく開花するのですが自家交配では中々胚のあるタネをつけてくれません。今年も実生化への挑戦です。

Aerides magnifica

Phalaenopsis lindenii

 胡蝶蘭原種の中で人気の高いPhal. lindeniiが浜松温室では開花期を迎えています。その中にセパル・ペタルのベース色がこれまでに見た中では最も濃いピンクの株が開花しました。通常のカラーフォームは白か、所何処に淡いピンクが見られる程度です。下写真左の右側が今回のピンクフォームで左が一般的なフォームです。一方、右写真は下がピンク、上が現在開花中のアルバフォームでそれぞれ並べて撮影しました。

Phal. lindenii

Bulbophyllum singaporeanum

 本種はシンガポールと共に、隣接するマレーシアJohoreの低地に生息するバルボフィラムです。最も高い標高でわずか164mのシンガポールに野生のランが生息しているの?とつい疑ってしまいますが、本種はシンガポールでの数少ない野生ランの一つです。8月末にマレーシアから持ち帰ったバルボフィラムで、今月に入り浜松温室にて開花しました。下写真がその花です。なぜかネット検索では国内マーケットに見当たりません。シンガポールAsiatic greenが3バルブ20ドルとのことなので当サイトでも3バルで2,000円で販売予定です。炭化コルク取付コストを考えれば実質1,500円と言ったところでしょうか。

Bulb. singaporeanum

Coelogyne cristataのネット情報について

 またしても不思議な情報をネット販売サイトで見てしまいました。Coel. cristataはヒマラヤからタイ北部に至る標高1,500mから2,600mに生息するクールからコールドタイプのセロジネです。その販売サイトによると標題として”栽培は容易なセロジネ属初心者向き”とあり、さらに夏の暑さにちょっと弱いので、 夏はなるべく風通しの良い涼しい所で栽培、 花期は秋~冬初心者向き、栽培は極めて容易。”とあります。はてコールドからクールタイプのCoel. cristataがどうして極めて栽培が容易で初心者向きなのか不思議です。栽培の秘訣のようなものを教えてもらえるのでしょうか。

 traveldo.blogspot.comでは本種について以下の栽培詳細説明があり要約してみました。

栽培平均温度:夏季 昼間21-24℃、夜間14-15℃、昼夜の温度差6-9℃。冬季昼間11-13℃、夜間2-4℃、昼夜の温度差8-9℃
湿度:夏季85%、冬季60-70%
輝度:20,000-30,000lux
通風:常時必要
植付け:植え替えを嫌い、植え替えや株分け後は2-3年間開花が難しい

等です。米国ラン協会のAOSサイトにも詳細記載があり栽培湿度は上記と同じ。栽培温度は6-7℃自然環境より高くても栽培可能とのこと、しかし輝度はかなり高輝度が必要で、強い通風が重要であるとしています。上記は販売サイトでの栽培解説ですが、これだけ詳細に記載することは、米国等では曖昧や誤った販売促進情報で購入者側に損害が出た場合は訴えられるからでしょうか分かりませんが、日本とはかなり異なり経験則に基づく客観的記述が見受けられます。

 本サイトでもわずかに栽培していますがCoel. bicamerataと同じクールから中温室です。栽培初心者がこうしたそれぞれ異なるラン栽培情報のある中で、正しい知識を得るためには残念なことに国内に於いては販売サイトからではなく、非営利ネットサイトから複数の栽培情報を集め自身で判断するか、前回も述べましたが蘭友会等に入会することで栽培体験者にアドバイスをもらうことが、その後の失望を回避しランの栽培を楽しむ最も有効な手段と思います。

フィリピン生息のBulbophyllum inunctum

 Bulb. inunctumはボルネオ島およびマレー半島での生息が知られています。フィリピンLuzon島Aurora州での生息は最近の登録とのことです。このBulb. inunctumが7月に入荷のBulb. glebulosum名の株の中に混じっていることが開花で分かりました。Bulb. glebulosum名の株の全てがミスラベルかどうかは現時点では不明ですが葉形状が若干異なる株もあるように感じられ、同定には時間が必要です。

 今回ミスラベルとして開花したBulb. inunctumはボルネオ島やマレー半島の一般的なフォームであるセパル・ペタルがピンクあるいはクリーム色をベースに細い多数の赤紫色のラインが入るフォームとは異なり、下写真に示すように黄色をベースにドーサルセパルは赤色の斑点、一方ラテラルセパルがラインでyellowフォームと言われるタイプです。花サイズは12㎝と大きく、中心のリップの赤色が大きなアクセントとなっており美形です。ミスラベルも問題ですが、これはこれで存在感があります。J. Cootes氏はCoel. usitanaと同様にその著書Philippine Native Orchid Speciesのなかで、”なぜこれほど華やかな(spectacular)種が長い間フィリピンで発見できなかったのか驚きである”と述べています。

 こうしたミスラベルが含まれ、またそれらに予約タグが入っている株がある場合が最近はしばしばで、いつも悩みの種となります。花を確認した株は兎も角、それまではBulb. glebulosuminunctumのどちらでも良いか伺ってからの販売しかできなくなってしまいます。

Bulb. inunctum

 ちなみに、Bulb. inunctumの栽培はなかなか難しいあるいは花が咲かないという趣味家がいるのではと思います。と言うのは本サイトでも最近になり本種の栽培に悩まされたからです。orchidspecies.comの本種の生息温度範囲を見ると クールから高温までの広範囲となっており、地域によっては低地から2,000m程の標高範囲に生息しているものと推測されます。

 このような種の栽培上の問題は、果たして購入した株がクール、中温、高温のいずれの範囲でこれまで生息していたかによって栽培適温が左右されることです。新芽が現れない、現状維持あるいはじり貧状態になるなどの原因の一つは、これまでの生息環境温度との違いが考えられます。本サイトでも2年ほど前、マレーシアからの入荷株を高温にて栽培したとき現状維持が長く続き、やがて葉が落ちた経験があります。はたして温度以外に原因が見当たらないことから、残っていた株をやや低温に移した結果、新芽が現れるようになりました。Bulb. claptonenseも同じような経験をしました。こうしたことから、入手される場合はこれまでの生息域あるいは栽培の適応温度を販売者に確認するか、不明であれば夏季は32℃以下の場所に置くことなどで様子を見るなど注意が必要と思います。また開花(花芽の発生)のトリガーは昼夜の温度差が10 - 15℃程度になることが必要のようです。

種名がまだ決まらない?Bulbophyllum sp 2種 

 前項で取り上げた新種名Bulb. irianaeと同時に2016年12月に入荷したBulb. sp (restrepia-like yellow)と、2017年5月入荷のBulb. sp (lip yellow)は未だ名称が決まらないのか、情報はspのままとなっています。いずれもニューギニアからの低地生息種で中-高温タイプと思われます。

 Bulb. sp (restrepia-like yellow)はBulb. restrepiaと比べラテラルセパルが長く、反面Bulb. contortisepalumにある捩じれがありません。現状Hoplandra節のネット検索では該当種が見当たりません。ドーサルセパルが黄色、ラテラルセパルの基部から先端にかけて半分がマンダリンオレンジ、半分が黄色のフォームが特徴です。セパル・ペタルの色合いで種別を判定するのは科学的ではなく、orchidspecies.comにはスケッチ図でBulb. obovatifolium(Synonyms: Bulb. harposepalum)があり、記述では似ていますが情報が少なく可能性が高いと言ったところです。

 一方、Bulb. sp (lip yellow)は2017年5-6月の歳月記に記載しましたが、ユーニクな花フォームで開花するとリップの黄色が他のバルボフィラムには見られない程の鮮やかさで印象が強く、未だ種名が決まらないのは不思議です。すでにいずれかのジャーナルに新種名があるのかも知れません。Bulbophyllum alkmaarenseに似ていますが葉形状や花の細部は異なっています。codonosiphon節のネット検索では今の所、該当種が見当たりません。

Bulb. sp (restrepia-like yellow)
Bulb. sp (lip yellow)

種名が決まった新種のBulbophyllum sp

 2016年10月に本サイトが入手したBulbo. sp (Sarawak yellow)と、同年12月のBulb. sp (obovatifolium red) が今年のドイツ・ジャーナルOrchideen 2018 Vol. 4_9とOrchideen 2018 Vol.6_5にそれぞれ新種として発表されました。種名はBulb. isabellinumBulb. irianaeです。同誌によるとBulb. isabellinumはボルネオ島Kalimantan標高100mに生息、2015年1月に発見とされ、さらに栽培での開花は2017年10月と記載されています。本サイトで扱った同種はKalimantanではなくSarawakで歳月記には2017年2月に最初の開花を掲載しておりジャーナルに書かれた時期より8か月ほど先行していたことになります。一方、Bullb. irianaeはパプアニューギニア標高300mに生息、2018年の命名となります。本サイトでは2017年7月にBulbophyllum obovatifolium redとして開花画像を掲載しました。

 下写真は上段がこれまでBulb. sp Sarawak yellowと仮称していた新種名Bulb. isabellinum、下段はBulb. obovatifolium redと仮称していたBulb. irianaeです。右は現在の栽培状態を示しBulb. isabellinumは昨年から今年のサンシャインや東京ドームラン展に出品し販売を行いました。その時点と比べると、葉はかなりしっかりと大きくなっており、花写真に見られるようにCirrhopetalumrらしく当初の2-3輪から6輪と開花数も増えました。一方、Bulb. irianaeは人気もあり8割方が趣味家に渡りました。通常売れ残り株は訳あり株のため適時廃棄するのですが、最近はこうした見捨てられている1-2バルブ株を捨てるのも忍び難く、根張りの良いバーク(米松)木片に移し替え、寄植えの大株に仕立てています。下段右の画像がその一つです。

 本サイトではしばしば記載しているように現在、バルボフィラムやデンドロビウムなど、spをかなり栽培しており、特にフィリピンPalawanやMindanao、またニューギニアなど多くのspが開花待ちの状態です。ジャーナル発表前に当サイトが新種を公開するのも変ですが、情報社会における世界同時性は未知のランの供給も同じで、ネットを通して生息国サプライヤーと直結することで、むしろ分類学者や研究者よりも、趣味家の方が先行して新種を入手する可能性も高くなり、今後は一層こうした事例が増えると思われます。

Bulb. isabellinum
Bulb. irianae

バルボフィラム3種

 マレーシア経由でインドネシアから入手したバルボフィラム3点です。左の花画像はサプライヤーからのコピーです。右は植え付け後の株です。最上段はパプアニューギニアからでBulb. zebrinumの形状に似ていますがベース色が赤みが強いことと、セパルに細毛がある点で異なります。現在それぞれ2,500円で販売しています。

Bulb. sp (Zebrinum-like)
Bulb. sp (aberrans-like)
Bulb. zebrinum

台風で始まった10月その2

 7月から先月初旬までにフィリピン2回、マレーシア1回の訪問と、タイからのEMSで合わせて1,500株程のランを入荷しました。その9割が炭化コルク付けのため1株の植え込みに掛かる時間は材料の裁断等の準備を含めると1株当たり平均15分程となり、これだけの株数となると先が見えない状態でしたがようやく終盤を迎えています。温室訪問の方も増え、発送も一部始まりました。

 先日の台風24号の被害は想像以上に甚大で静岡県では昨日になって停電が完全復旧したそうです。結局地域によっては5日掛かったことになります。一方、不思議なことと思いながらも台風が去った翌日から自宅の植木の葉が急に枯れ始め、本日6日には一夜で、裏口に続く庭は下写真の落葉です。本日これが台風による塩害が原因とTVのニュースで初めて知りました。浜松では至る所でこうした状況のようです。本サイトの温室は海から7-8㎞程離れており全く想像外のことです。地元の人によるとこれまで経験したことのない事態とのことです。問題はビニールハウスが壊れたものの中の作物が飛ばされることがなくても、塩分を含む雨により、例えばイチゴなどはほとんどの葉が枯れてしまったそうです。台風の来襲と高潮時が同じであったことが原因のようです。温室の雨漏れもなく、また外にランを置いてもおらず安堵しているところです。


台風で始まった10月

 本サイトの温室がある浜松西区では10月1日0:00、台風24号の最接近時となり観測史上2番目となる風速42mを記録しました。この値はトラックを横転させるほどの強風とのことです。この結果、浜松市では凡そ8割となる27万戸が停電となり完全復旧は明日2日までかかることになりました。温暖な気候の浜松では農作物や果物栽培のビニールハウスが多く、本サイトの温室のメンテナンスを委託している業者からの午後の電話によると、今回程の強風に対しては為すすべもなく、殆んどのビニールハウスがこれまで経験のないほど多数で倒壊し悲惨な状況になっているそうです。

 本サイトの温室は、鉄筋でポリカーボネイト壁材を用いており、また先々月の台風20号の本土上陸前に温室屋根のビスを打ち直し補強をしていたことで、幸いに事無きを得ました。また新興住宅地である大平台は停電もなく、台風が去った明け方からは普段通りの生活となりました。今回の暴風が本サイトの温室に何の被害も与えなかったもう一つの原因は、会津から移って僅か5年ですが、当初から背の高い庭木や松、楠木、桜、ミズナラなどを住居を含め温室を取り囲むよう密集して植林したことで、これらが防風林の役割をしたようです。強風に煽られ撓る木々の様子を見ていると、想像を超える風圧を吸収してくれているのだと改めて感じました。今回台風の暴風域に入ってしまった地域の趣味家の方々も多いと思います。温室やランに被害が無ければよいと願うのですが。


前月へ