栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

2018年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月 8月  9月  10月  11月  12月

8月

新入荷Bulbophyllumの4点

 今回のマレーシア訪問で入手したバルボフィラムは25種ほどあり、その内18種程がニューギニア生息種とされます。下写真は取り敢えず園主からの画像4種です。種名はそれぞれ調査中です。下段左はBulb. cornutum flavaと思われます。
(後記: 掲載していた画像4点はIOSPの画像に類似との情報を頂き、画像に版権がある可能性を考慮し削除しました。4点のバルボフィラムは植え付け後、株の写真を掲載します。また花に付いてはリンク形式とする予定です。)

Dendrobium odoardiDendrobium stockelbubuschii

 Spatulata節のDen. odoardiDen. stockelbuschiiです。後者は1月の本ページでも取り上げた2016年登録の新種であり、前者はorchidspecies.comにも記載が無く詳細が不明です。いずれもニューギニア生息種とされます。下写真で右奥の背の高い4株がDen. odoardiで、手前の背の低い7株がDen. stockelbuschiiです。右写真は園主からのDen. odoardiの花画像です。これでラン園にあった全株です。いずれもマーケット情報はありません。


Den. odoardiDen. stockelbuschii

Den. odoardi

Bulbophyllum sp Sulawesii

 下写真は今回マレーシアにて入手したスラウエシ島生息のBulb. spです。画像で該当する種がないかネット検索しているのですが、今の所、見つかっていません。フィリピンによく見られるBulb. trigonosepalumBulb. papulosumの近縁種と考えられます。リップ中央弁形状が特徴で中心部に腺状突起があります。花画像は園主から、右の株画像は浜松にての撮影です。10株入手しました。

Bulb. sp Sulawesii

Paraphalaenosis serpentilingua

 ボルネオ島固有種であるParaphal. deneveiに次いで高価なパラファレである本種ですが、現在は実生が市場に出て安価に入手が可能になっています。それでも40㎝を超えるサイズともなれば10,000円を超える価格となります。シンガポールラン園Asiatic greenでは20㎝ - 30cm葉長で5,000円程です。下写真左はマレーシアで入手した本種で30㎝ - 43cmの葉長です。一方、右写真は15㎝から35㎝のサイズをそれぞれ示すものです。右写真の左から右端までそれぞれ葉長に合わせ段階的に2,500から10,000円の範囲となります。すなわち葉長が5-7㎝ほど長くなるに連れて1,000円づつ高くなるというものです。それだけ成長が遅いことを意味します。

Paraphalaenosis serpentilingua

Vanda hindsiiVanda limbata

 オーストラリア・クイーンズランドとパプアニューギニアに分布する東南アジア最南のVandaとしての興味からVanda hindsiiを持ち帰りました。同時にインドネシアとボルネオ島生息のVanda hastiferaも多数ありました。Vanda hindsiiは高温タイプである一方、Vanda hastiferaは中温タイプであることからかマレーシアラン園の高温下では可なり弱っておりVanda hastiferaについては今回入手を止めました。伺ったところVanda hastiferaは容易に入荷できるそうです。これに対しVanda hindsiiは稀とのことです。下写真右トレーは植え付け前のVanda hindsiiです。

 一方、左のトレーはVanda perplexaとして入荷した野生栽培株です。この株には入荷時に蕾があり、浜松にて開花したところミスラベルでVanda limbataでした。どうやらインドネシアのサプライヤーはVanda perplexalimbataの区別が分からないまま各国の第2業者に卸しているようです。Vanda perplexaは現在知られている生息域はインドネシアコモド島国立公園内であり、この地域からの野生株は違法採取となります。昨年12月の本サイトで紹介の株は実生株です。今回Lomok島生息株というコモド島から300Km程離れた島とのことで疑わしいとは思っていましたがやはりVanda perplexaではありませんでした。花は一回りperplexaに比べ小さく、写真右にあるようなセパル・ペタル外周の白い縁取りが特徴です。この花写真は30日に浜松にての撮影です。花フォームは焦げ茶から赤色まで個体差があるようで、右写真のカラーフォームであればVanda limbataでも良いかと株サイズで2,500円から3,000円の価格を予定しています。


Coelogyne Palawan

 7月初旬にフィリピン訪問で持ち帰ったPalawan生息のセロジネの掲載を忘れていました。下写真左の上段および下段の画像はCoel. palawanenseの花と株で、右の上下段は7月入荷の名称不明種です。リップ側弁内側にラインがあるのは左のCoel. palawanenseと似ているものの側弁形状とリップ中央弁の先端部形状が異なり、当初撮影の角度による違いかとも思いましたが、下段の葉とバルブ形状がそれぞれ大きく異なります。互いに近縁種であることは推測できますがこのspはラン園主も始めて見るものとのことで新種の可能性があります。根張りの形状から右の株は現在炭化コルクに取り付け、中温室にて順化中です。一方、今回マレーシアから持ち帰りのセロジネはCoel. odoardii, radioferens, rhobdobulbonおよび不明種3種の合計6種です。 順次このサイトに掲載予定です。

Coel. palawanense Coel. sp Palawan

1m超えのDendrobium aurantiflammeum

 本種は3年ほど前までは入手が難しい品種でしたが最近は1年で1回は入荷があるようです。当初の予定にはなかったのですが今月初め、大株で良質の本種が入荷するとの知らせで、ラン園に入荷した全株の40株を持ち帰りました。下写真はバスケットに仮植えとして寄せ植えしたもの(小バスケットはそれぞれ1株)で、1ヶ月以内に本植えを行う予定です。展示会向けとしての販売です。このサイズであればかなりの輪花数が期待されます。従来より安価に、サイズにより5,000円からの販売予定です。


Den. aurantiflammeum

胡蝶蘭原種3種

 今回のマレーシア訪問で入手した胡蝶蘭原種は、Phal. amabilis Java、 amabilis sulawesii、corningiana、floresensis、viridis、kunstleri、bellina coerulea、bellina alba、pantherina、violacea blue、amboinensisなどです。本サイトで初めての入荷はPhal. amabilis sulawesiiで、過去15年間でほとんどの地域のPhal. amabilisは栽培してきましたが、Sulawesii生息種は初めてとなります。下写真は今回入荷の仮植え中の3種で、大株揃いで30㎝超えが多く含まれます。それぞれ2-3週間以内に本植えを行い、この状態であれば9月末から10月初旬には出荷可能と思います。


Phal. amabilis Java

Phal. amabilis sulawesii

Phal. viridis

Cymbidium lancifolium

 日本を含め東南アジアほぼ全域の標高2000m級の高山に分布するシンビジュウムであるCymb. lancifolliumを趣味家からの依頼で入手しました。国内ではオオナギランというそうです。7月末にマレーシアラン園に入荷したものの、パスポート問題で1か月遅れの持ち帰りです。何とこのコールドタイプをそれまでマレーシアラン園の昼夜30℃以上の高温下に置いていたそうで半数が無くなったそうです。辛うじて生き残ったこれらを直ちに浜松のDen. vexillariusと同じクール室に置き様態を見ていたところ目に見えて元気になりミズゴケ・クリプトモスミックスで植え付け一安心しました。生き残れたのは根がしっかりしていたことのようです。2ヶ月程の順化が必要で、新芽の伸びを見てからの出荷となります。2,500円から3,000円の予定です。今回、Cymb. elongatum、Cymb. ensifoliumも入手しました。 こちらは現地入荷と同時持ち帰りのため元気です。


Cymb. lancifolium

Paraphalaenopsis denevei

 多くのParaphalaenopsisが下垂タイプであるのに対して本種の葉は開花サイズであっても30 - 40㎝程と短く、下垂および立ち植えのいずれも栽培ができます。ボルネオ島300mほどに生息の高温タイプです。Paraphalaenopsisの中では最も高価で同属他種に対し5-10倍近い価格(Asiatic Greenで25㎝長が$350:38,000円程)となっています。今回下写真左のFSサイズ10株を入手しました。スリット入りプラスチック深鉢にクリプトモス・ミズゴケミックスでの植え付けです。本種はカタログ価格となります。

Paraphalaenopsis denevei

Dendrobium rindjaniense

 半年ぶりのマレーシア訪問となりました。先月はパスポート残存期間不足問題でクアラルンプール空港からトンボ帰りとなり、海外滞在が僅か4時間半で帰国という最短記録を残してしまいましたが今回は無事入国できました。

 入手した品種の内、バルボフィラムは新しい種が多いのですが、他は再注文が主で、入手難やこれまでにない特徴のある種を得ることにしました。それらは順次本サイトで公開していく予定です。その一つにDen. rindjanienseがあり、今回はこれまでとは比較にならない程の大株を多数得ることが出来ました。

 Den. rindjanienseはインドネシアLomok島標高2,000m程の生息種で島の北部に位置するRinjani山に由来する名です。本種の栽培方法も凡そ分かってきたため、これまでのように10株ほどを毎回注文するのも煩わしいことと、本種はどうも栽培の段階ではなく流通の段階で利益目的で小株に株分けされているフシが感じられ、今回は株分けされたものは購入しないという前提での注文です。下写真は入手した株で左写真のトレーには60株あります。この60株の中で最小サイズの株が、これまで入手してきた最大サイズを上回る大きさであり、右写真はサイズの違いを示すためこれまでの大株との比較のため撮影しました。右の緑色のコケの付いた炭化コルク取付株が従来の大株で、左がバーク木片に取り付けた今回の株です。

 園主によると当初葉の全くない株が数株送られてきたものの、この品種では買えないとクレームを出したところ、下写真の株がどっさりと送られてきたそうです。余程クレームがきつかったのでは想像します。果たして温室の中で右写真の右株が左株サイズになるには何年かかるか分かりませんが中-低温タイプであることを考えると、難なく成長できたとしても10年以上は間違いなく要すると思われます。年配者にとってとても待てません。肥料を十分に与え多数の花を開花させ展示会用にと育成するのも良いのではと考えています。炭化コルク付けで従来価格に500円アップ程度で販売予定です。
 
Den. rindjaniense

Coelogyne celebensis

 猛暑の中、Coelogyne celebensisが次々と開花しています。花茎に1輪づつ数回続けて開花し花サイズはセロジネの中でも最も大きな一つです。1昨年入手してから2年半でほぼ100%新しいバルブと葉に入れ替わりました。1株当たり4バルブほどについていた現地栽培での傷んだ葉が、傷の無い新鮮な葉に入れ替るのにそれだけの年月を要したことになります。下写真はそれらの株で、右やや奥はCoel. multifloraです。こちらも全ての葉が浜松に来てから発生した新しいバルブと葉になるのには同じ年月がかかりました。この2品種は葉も大きくスペースを取るため多くが吊り下げられた他種の下のベンチに置かれています。いずれも強健な種です。左上の垂れ下がっている根は10株程のAerides magnifica(旧名: Aerides odorata calayana)です。左下の細い多数の茎の株はDen. carinatumです。


Coel. celebensis

Dendrobium taurinumの植付け法

 デンドロビウムSpatulata節のDen. taurinumは美しい種の一つですが、しばしば本ページで述べているように本種は特に移植時、細菌性の病気にかかり易く、順化には最大限の注意が必要となります。温度、湿度、通風、輝度などの環境条件に配慮しても歩留まりはランの中で最悪です。J. Cootes氏は著書Philippine Native Orchid Speciesで野生の本種の栽培は避けるべきと述べています。最近再びNegros島生息の野生栽培株が入り、如何にして栽培時における細菌病を防ぎ歩留まりを良くするか調べることにしました。

 これまでの経験ではミズゴケと素焼き鉢の組み合わせではEstablishedされた株を除いて1年以内にほぼ全滅しています。そこでこれまではクリプトモス、コルクチップ、バークおよびそれらのミックスコンポストを植込み材としていました。その中ではクリプトモス100%とスリット入りプラスチック深鉢が最も順化成績に優れていることが分かっています。海外ではほぼ100%が大粒の炭でプラスチックバスケットに植え付けられています。現在国内ではこうした炭が入手できません。

 クリプトモスの植え込み材の場合、株が落ちることはほとんど無いものの、入荷した時点での株の根は、それまでの取付材から剥がされ、出荷までの1-2週間はトレーに寝かせて根の周りをミズゴケで覆ったのみの状態で保管されるため、剥がす際の損傷によって根の半数以上が壊死しており、こうした状態の株を新たに植え付けても株を構成する太い茎の多くがやがて細菌腐敗病で倒れます。多輪花となる花茎をつける太い茎(疑似バルブ)を失えば本種の持つ華麗な風景を見ることが困難となり、比較的若い茎では輪花数がやはり少なくなります。

 そうした経験を通して、Spaturala節のほとんどの種でこれまで行ってきたポット植えにその原因の一つがあるのではないかと思うようになりました。本ページでしばしば取り上げているように、自然での着生の姿勢や根周りの環境を知ることがまず必要で、それには剥がされた根の状態(平面的にビッシリと隙間なく平行に並んでいるか、それぞれの根がランダムに四方八方に伸びているかなど)や、根の伸長方向と茎の伸長方向との関係、さらに新芽の発生(成長)点を見れば凡そは判断ができます。結果として本種はほぼ垂直な支持木に活着していたことが分かります。また新芽が発生する成長点はバルブの1節上部にあることで常に上方に向かって株が増殖することが分かります。このためホットに茎を立てて植付けようとすれば古い茎元の1-2節は植え込み材の中に埋め込まれる結果となります。これでは古い茎はやがて枯れ、株は比較的若い茎のみとなります。よって茎数も少なくなります。そこで垂直取付材とするのですがコルクやヘゴ板に、花茎を含め1.5m - 2mにもなる本種を取付けた株全体の姿や見栄えも考える必要があり容易ではありません。

 そこで今回は太い枝を想定して長さx幅x厚みのそれぞれを60㎝x8㎝x5㎝の炭化コルクに取り付けることにしました。それが下写真下段です。上段は本種の花フォームで右がNegros島生息種です。下段左で根の周りのミズゴケが新しい株とやや緑がかった株がありますが、取り付け後に新根がミズゴケの表面や空中に張った場合、これらをミズゴケで随時覆っているためです。追肥ならぬ追植えです。こうした植え込みから2ヶ月が経ちますが、これまで一株も落ちた株はありません。特筆すべきは、これまで1か月程で多くの株で壊死していた太い茎が、入荷時にすでに被病していたものは別にして枯れていないことと、植付け時から1週間ほどの間に起こる落葉もポット植えに比べて僅かです。新芽の発生も早期に見られます。下段右の中央の株の根元に、茎の太さが凡そ分かるように1.5㎝幅のラベルを立ててみました。今後1年程の観察でこうした炭化コルクへの植え付けの良否を判断しなければなりませんが、現在のところは順調に成長しています。 

Den. taurinum

猛暑の中での胡蝶蘭原種順化栽培

 今年は猛暑が長く続いていましたが、この4日間程は浜松も日中は32℃前後に、早朝は25℃となり、この季節としての例年の気温に戻っています。それでもこの高温のため温室の散水は変わりません。7月初週にフィリピンから入荷した胡蝶蘭原種が仮植えから本植え、さらに1か月を経過した現在、新芽や新根の発生や伸長が始まっています。入荷時にはかなり弱っていた株もかなり落着いてきました。9月中旬からの出荷時期には葉に張りも出てくると思います。

 下写真は全て胡蝶蘭野生栽培株で、そのほとんどに新芽が現れ、すでに1-2㎝程伸長しています。春秋の季節であればこれで順化完了となるのですが、 まだ猛暑が続くかも知れず当面9月中旬までと様子を見ているところです。胡蝶蘭原種については、入荷してからのこうした順化期間の世話がその後の生育に大きく影響します。すなわち作落ちや細菌病に関わります。胡蝶蘭野生栽培株は自然界では55種程の中で50種程は下写真のように葉が下垂した状態で生息ており、ポットへの立植えはできません。一方、実生株は小苗時にはポット植えが一般に行われることからほとんどがその形態で販売されています。しかし立植えで葉が左右に開いた頂芽の基部にはかん水によって水が常に溜まり、特に細菌病の危険性が高くなります。

 今年のような猛暑では散水頻度も高くなり、多くの立ち植え栽培をされている方は頂芽を失くしたり、葉先が黄変したのではとないか思います。さらに胡蝶蘭原種は弓なりの長い花茎を持つ種が多いため、立ち植えでは支持棒を立てて花茎を固定するなど自然とはまるで異なる風景になってしまいます。、本サイトでは実生の一部を除き、野生栽培株は1-2種を除いて全てコルクやヘゴ板への植付けを行っており、これは現地ラン園や趣味家と同じです。


Phal. fasciata

Phal. mariae

Phal. pulchra

Phal. lueddemanniana Mindanao

間もなくの海外ラン園訪問

 マレーシアおよびフィリピンの訪問が間もなくです。マレーシアラン園へは先月末パスポート残存期間不足問題で空港から引き返したことで、6ヶ月ぶりとなります。フィリピンは先月に続いての訪問です。両者を合わせての今回の訪問では1,000株を超える、属種で80種程の入荷が決まっており、それにラン展会場での入手が10種以上になりそうです。画像の公開と価格の決定は植え付けに合わせ順次行う予定です。

 購入予定の花や株の写真が多く送られてくるのですが、マレーシアでは昨年からラン園に荷が届くまでは写真を公開しないようにと言われており、今回はフィリピンも同じ要求が来ています。数に限りのある品種は、現地のラン園やディーラー間で、誰が先に仕入れるかの競争や、またそのルートの探り合いがより激しくなっているようです。いずれにしても9月中旬までに公開し、末頃に発送となれば国内の気温も落着き、現在猛暑で控えている宅配便発送が再開できるのではと思います。 どのような品種が登場し価格となるか、ご期待ください。

栽培温度の適正な表記

 本サイトではランの生息環境情報について高温、中温、クールおよびコールドタイプの4つの温度帯に分けています。ここでタイプとは栽培者にとっての、それぞれの種が良好な成長を得るための重要な栽培適正温度も示唆しており、これらはorchidspeices.comの情報や発表論文また本サイトの栽培経験などを参考にしたものです。それぞれのタイプの詳細は 以下となります。

高温タイプ (海抜0m - 800m生息種) 夜間平均温度20℃ - 28℃
中温タイプ (標高800m - 1,500m) 夜間平均温度18℃ - 22℃
クールタイプ (標高1,500m - 2,000m) 夜間平均温度14℃ - 18℃
コールドタイプ (標高2,000m 以上) 夜間平均温度10℃ - 15℃

 タイからベトナム、フィリピン、ボルネオ島、マレーシア、インドネシア、ニューギニアなど赤道から離れた地域と直下では標高が同じであっても気温が異なるため、上記は一つの目安で、地域により特に中温からクールタイプは±400m程の標高差があり夜間平均温度も若干変化します。上記は東南アジアを中心とする定義で、南米のランはこれまでの経験からラン園の定めた、特に中温およびクールタイプについては、一段低温側の温度帯となります。

 環境温度を夜間平均温度で表現するのは多くのランにとって昼間の気温変化には耐性がありその範囲は広く、クールタイプであっても短時間であれば30℃程でも許容できます。一方、成長に重要なのは夜間の温度とされ、これは着生植物など夜間に生理的活動が活発になるためとされます。この活動には夜間の湿度がより重要であり、標高1,200m - 2,000mクラスの多くのランが生息する地域では1日の大半が霧で覆われる雲霧林(コケ林とかCloud Forest)が多く、また800mから1,200mクラスのハイランドやオープンフォレストでも多くの期間で昼間は太陽光が強く気温も30℃程になるものの、夕方から朝にかけては数メータ先も見えない程の濃い霧に覆われ、夜間の高湿度は成長に不可欠となっています。また同一種でありながら生息地が離れて分布している場合、低地から高地の広い標高範囲に生息することがあり、こうした種は比較的栽培許容温度は広い(前記温度帯の2つのタイプに跨る)ものの、厳密(目的の花色やサイズを得たいなど)にはその生息場所に合った栽培温度が必要となります。言い換えれば標高が不明な場合のこうした広域分布種は順化期間内あるいは栽培で適切な温度を見つけ出すことが必要となります。

 ランの栽培をこれから始めようとする初心者や、ワーディアンケースあるいは温室などの栽培環境を造るのが難しい趣味家は、生息範囲が広い種を選ぶか、株数によってはかなりの重労働となりますが季節に応じて栽培場所を移動するなどの対応が必要となります。ランの栽培は難しいとよく言われますが、その種の適正な温度・湿度が用意できるかどうかの問題で、あとは水やりだけで上手く育つものです。どのような動植物でも生存に必要な環境があります。人間のように夏は薄着、冬は厚着で暑さ寒さを凌ぐことは植物にはできません。精々葉を落として乾燥や若干の寒さに一定期間ならば耐えられる程度です。

 さて本題ですが、ネット販売のサイトを見ていたところ、ある品種の性質として”耐寒性のある品種”と書かれた表記がありました。その種はいわゆる上記で言えばクールタイプあるいはクールタイプに近い中温タイプとされるものです。読者がこの”耐寒性のある品種”のみの表記をどのように解釈されるかに興味をもった次第です。クールタイプを耐寒性がある品種とするのは間違いではありません。一般的には耐寒性があると言えば”寒さに強い”と解釈されます。ではその品種の暑さに関してはどうか、は書かれていません。この一文でそれが高温タイプあるいは一般的なカトレアとか胡蝶蘭原種などと同じ環境では育たない品種であることを、読者が理解できるかどうかが問題です。おそらく初心者の多くは、”耐寒性のある品種”と書かれていれば、カトレアや胡蝶蘭などの一般種に比べて寒さに強く、育て易い品種に違いないと思われるかも知れません。殆んどの種で現実はその逆です。

 どうしてこのような問題が起こるかですが、多くの趣味家、特に原種マニアは常にマーケットにおいて珍しいあるいは新しい種を求めます。しかし人が住める場所や開拓が進む低地では新種の発見は、極めて小型の目立たない花種を除いて、10年以上前にほとんど終わり、orchideenなどドイツのジャーナルにおいても、メジャーな属の近年の新種発表の多くは1,000m以上のこれまで余り人の入ることのない地域の種が占めています。例外的に低地での発見もありますが、その多くはこれまでの紛争地帯で外部のコレクターが入ることの出来なかった場所です。すなわち新しい発見は未開拓の地域に移っていることは必然ですが、同時により一層高地に移りつつあり、その標高が年々高くなっています。その結果としてマーケットでも珍しい種はクールや中温タイプが増えることになります。これは寒さにも強い種が増えたと言うよりも、栽培の視点からは寒くないと生存できない種が増えたと考えるべきです。いわゆる高山植物です。マーケットでは、それなりの設備あるいは山上げのような対応が無ければ栽培が困難なこれらのタイプを、”耐寒性に強く耐暑性に弱い”などとの表現では売れなくなるかも知れず、長所のみを強調し、短所は語らずが販促上必要なのでしょう。敢えてその品種の特性をカタログに記載するのであれば、その温度タイプか、あるいは栽培に必要な温度範囲を何℃から何℃までと記載すべきと考えます。その文字数は”耐寒性のある品種”と変わりません。

 趣味家の間では経験を通して、この株は暑さに弱いので7月ともなれば涼しい場所に移すとか、その逆に寒さに弱いので秋になれば早めに室内に取り込むなどの言葉が使われてきました。すなわち栽培の基本はその種の弱点を如何に補うかの気遣いにあります。言い換えれば、その種の弱点を知ることが優れた栽培者となり得る第一歩です。

 情報の意図を理解したり、それぞれの種の生息環境に応じた栽培手法についての知識を得るには、とりわけ初心者にとっては、経験豊富な人たちがいる地元のラン愛好会、もし嗜好の合う愛好会が近辺に無い場合は全国規模の全蘭蘭友会などに積極的に入会し情報を共有・交換することが有効です。本やネットから得る知識とはまた違って、経験者が語る知識やアドバイスを直接聞くことで、どれ程栽培の失敗による失望と損失を避けることが出来るであろうかと思います。

現在開花中の2点:Dendrobium wilsoniiPhalaenopsis fascata

 中国南部の標高1,000m - 1,300mに生息のDen. wilsoniiが開花(下写真左)しています。orchidspecies.comによると本種の花サイズは2.5㎝ - 4cmとありますが、今回開花した株はペタル間のスパンで7.5㎝と大きく、全ての葉が落葉した疑似バルブにこれだけ大きな花が着くと良く目立ちます。環境によっては最大とされるサイズのさらに1.5倍のサイズになり得るのかどうか、あるいは4Nタイプかは次回の開花の再現性に待つしかありません。本種はorchidspecies.comでクールタイプとされていることから夜間平均温度は15℃となりますが本サイトでは夜間20℃の中温栽培です。

 一方、写真右は先月初旬に入荷したPhal. fasciataの野生栽培株です。こちらは高温タイプで胡蝶蘭原種では珍しいポットで立植えができるタイプです。この種の入荷は7年ぶりとなります。入手難ではなくPhal. lueddemannianaPhal. sumatranaに押されて目立たないため人気が今一つであることが原因です。今回入荷の株はこれまでのPhal. fasciataと比較してベース色がやや緑色を帯びており落着いたフォームです。本サイトでの本種の価格は先月の歳月記に取り付け前の株画像を掲載しましたが野生栽培株で2,500円です。胡蝶蘭原種については在庫数が3-4年前と比べ種類、数共にめっきり減っており年内には再び全55種程を集めたいと取り組んでいます。


Den. wilsonii
Phal. fasciata

オオランヒメゾウムシによる被害と対策

 昨年1月にPurificacion Orchidから全蘭サンシャインラン展の売れ残りとしてRhyncostylis rieferiiを数株引き取りました。同年8月、その株の頂芽に円形の黒い斑点が数点発生し、その時点では斑点病の一種かと思いトリフミンを散布しました。その後、年末になってデンドロビウムSpatulata節の数種類の新芽を始め、散発的に他の数種にも被害が見られるようになり、よく見ると斑点には斑点内の葉肉がナメクジによる食害のように葉脈だけが残った擦れた様態もあり斑点病にしては不可解で害虫の疑いが濃くなりました。そこで深夜懐中電灯で見回って調べたところ、黒い5mm程のゾウムシのような長い口吻を持った虫がデンドロビウムの新芽に多数見つかりました。

 そこで殺虫剤テルスターを散布した結果、虫は消え食害も止まったものの数か月後に再び同じ被害がデンドロビウム、パフィオペディラム、Aerides、Vandaに現れ、ゾウムシ類の害虫について当サイトと取引のある専門の方からも情報を頂き、その害虫がオオランヒメゾウムシであることが分かりました。

 ”沖縄県のラン園場に発生したオオランヒメゾウムシ” 大石、上地、他、九病虫研会報53, pp:111-113 (2007)によると、この害虫は東南アジアに広く分布しており、国内では1996年東京、1978年千葉県、1990年愛知県、1992年大分県で採取されており、海外においてはシンガポール、フィリピン、タイ、インドネシアなどで記録されているそうです。被害は主に新芽と茎でVandaは根も含まれます。本サイトではAeridesは花茎のみが食害されています。下写真上段は本サイトで捕獲したオオランヒメゾウムシで、下段はそれぞれ左からDen. linealeRhyncostylis rieferiiPaph. sanderianumです。この被害は極めて深刻で頂芽が写真下段のような病痕となれば商品としての価値がなくなり、新しい新芽を待たなければならなくなります。一つの救いはナメクジと異なり齧られた後からこれまで細菌性の病気が発生しておらず、いわゆる’傷’状態であることです。軟腐病のような細菌性の病気をしばしば伝染するナメクジとはこの点が異なります。

 当初は前記したように殺虫剤テルスター水和剤の規定希釈の散布を行いました。これで散布後に成虫をほとんどを見かけなくなりましたが、かなり弱った状態ではあるものの1両日後に数匹の生存が確認できました。これら成虫はやがて死滅するのか再起するのかは不明です。前記会報に記載の成虫に対する殺虫効果としてアセフェート水和剤と合成ピレスロイド系殺虫剤が確認されているとのことで今年に入り、ピレスロイド系であるテルスターの1000倍希釈とアセフェート成分をもつオルトラン乳剤250倍希釈を混合して散布しました。それでも3ヶ月程経過すると再び成虫被害が観測されます。これらは室外から新たに入ってきたものの可能性が高いと考えられます。と言うのは夏季は昼間、温室の入り口のドアーを開放しており再発被害が常にその入り口周辺の株に多く見られるからです。

 葉や茎を齧ることによって散布した殺虫成分が体内に入り効果が出る浸透移行性薬剤では後手に回ることになり、農薬が体に触れると直ちに効果が現れる即効性(ノックダウン効果)のある合成ピレスロイド系殺虫剤トレボン乳剤(成虫用に)と茎の中の幼虫には浸透移行性薬剤であるオルトランの2種類の殺虫剤を新たに混合して3月から10月の期間で3回散布することにしました。現在は収まっているもののランの成長期には2-3ヶ月間隔での散布が必要です。これら2種類の組み合わせによる植物への薬害はこれまでの3回の散布においていずれにも観測されていません。ちなみに病害虫防除には、薬剤散布を薬品ごとにそれぞれ行うことは面倒であり、最近では上記薬品と共にトリフミン(耐カビ系病害)、アグレプト乳剤(耐細菌性病害)を含め全てを混合して済ませています。薬剤耐性を防ぐため、耐カビおよび細菌性薬品はダコニールやナレートなど他の薬品と交替して使用しています。

 猛暑の中、夏季の間は温室の外に株を出し栽培している趣味家も多いと思います。熱帯性の害虫と思いますが、温暖化によりどこから飛来するか分からない状況下においては、従来ならばナメクジ被害と思われた下写真のような症状が出たら、この害虫を疑うことも必要と思います。ナメクジ用防除剤では効果は無く、また数多い薬品の中で効果が確認されたのは会報によれば現状、前記の成分を含むもののみであり、害虫防除剤なら何でも良いのではと思われている趣味家の参考にと、この被害について取り上げてみました。


中温室にて開花中の3点

 中温室では猛暑下の高温室とは異なり夏季の温度は20 - 28℃で前記のVandaと共に現在数種の花が開花しています。その中から3点を撮影してみました。


Den. ramosii

Phal. lindenii alba

Phal. lindenii

Vanda coerulescens

 5月にタイから入荷し、蘭友会サンシャインラン展に出品したVanda coerulescensが現在10株程のそれぞれで一斉に開花が始まりました。期待通りのブルーの花でひとまず安心しました。ネット画像には今回開花の花のようなセパル・ペタル及びリップ共にブルーのフォームや、セパルペタルが白色あるいはリップがピンク色なども見られます。下段右は5月撮影のクラスター株で、上段および下段左の花は8月11日の撮影です。

Vanda coerulescens

Dendrobium virgineum

 こちらもミャンマー、タイ、カンボジア、ベトナムの標高1,600m以下に生息するクールから中温タイプのFormosae節デンドロビウムです。仮植えをした当初は、このところの猛暑下で元気がなく、生息環境は同じ節であるDen. tobaense(800m - 1,500m)と似ているのではと推測し中温室に移動しました。いずれにしてもこの節については素焼き鉢とミズゴケ栽培は、1年はもつもののその後はじり貧となることが多く、昨年7月より根がヘルシーである内にと、乾湿サイクルのメリハリが良いヘゴ板や炭化コルクへの植付けに替えており、今回も本植えはそのようにしました。本種についてあるサイトによると香りがあるとされていますがorchidspecies.comには香りマークはありません。さてどちらかは開花待ちです。

 ネットで本種の画像を検索すると、中にはDen. draconisを本種と間違えている画像が見られます。また取扱いが少ないようで国内では1件、NBSで3,000円程が見られます。ebayでは2バルブで25米ドルがあります。本サイトでは4-5バルブを2,500円、6バルブ以上を3,000円とする予定です。下写真は4株の炭化コルク取付け例です。


Den. virgineum

Dendrobium albosanguineum

 ミャンマーおよびタイに生息する本種は、標高600m以下の高木の林冠に生息する高温タイプで、.花サイズは最大9㎝と大きく花寿命も長いデンドロビウムです。本種名のラテン語alboは白色、sanguineは血色が意味するようにセパル・ペタルは白色、蕊柱先端とリップ基部には赤いベンガラ色の斑紋が特徴です。orchidspecies.comによると本種は乾湿のサイクルを好み、Tree-fern(ヘゴ板)のような支持材への取り付けがベストであると述べています。

 先月5日に20株、タイから直輸入し凡そ5週間に及ぶ浜松での長い仮植え期間を経ての植え付けが終わりました。本種も他の入荷株同様に、栽培情報とこれまでの生育環境を示す根の様態をそれぞれ参考にし、炭化コルクおよび一部をバーク木片に植付けました。猛暑下における仮植え期間中の様子からも本種は素焼き鉢とミズゴケではなく、ヘゴ板やコルクへの取り付けが適していると思われます。

  国内マーケットでは3-5バルブの小株が3,000 - 4,500円程で販売されているようです。本サイトでは炭化コルク付けの5-6バルブサイズを2,500円、10バルブ以上の大株を4,000円としました。下写真は植付けを終えたそれぞれのサイズのDen. albosanguineumで、左写真で左奥3株がバーク木片取付、中央3株が5-6バルブ株、右側4株が10バルブ以上の株です。写真中央はバーク木片取り付けの拡大画像を示したものです。左画像の炭化コルクの長さは30㎝です。

Den. albosanguineum

Bulbophyllum socordine

 先月の本ページにて”Bulbophyllum sp Mindanao”の標題で紹介したバルボフィラム3種の内、Bukidnonからの株が開花しました。Bulb.socordineでした。本種は2008年登録の比較的新しいフィリピン固有種でルソン島中央部から中南部生息とされていましたが、ミンダナオ島Bukidnonにも生息していることになります。生息地標高は1,000m程の雲霧林と推測され中温タイプで、今回の開花も中温室です。ラテラルセパルの形状が独特でシューズのような姿はBulb. frostiiに似ています。しかし節がそれぞれ異なり、本種はBrachyantha、またBulb. frostiiはCirrhopetalumです。本種の花サイズは8mm程で7-9輪同時開花、一方Bulb. frostiiは2.5㎝と大きく2-3輪です。下画像が現在浜松中温室にて開花中のBulb. socordineです。国内初入荷なのかネットからはマーケット情報が見当たりません。

Bulb. socordine

Dendrobium cumulatum

 Den. cumulatumの植付けが終わりました。7月の入荷は20株あり、それぞれが1株凡そ20茎(疑似バルブ)からなる大株です。タイからの殆んどの直輸入栽培株は比較的廉価に入手できることから本サイトではこのサイズで2,500円としました。コルク付け以外に展示用としてバーク木片LLサイズに取り付けた株もあります。下写真は20株の内の15株です。

 

Phalaenopsis equestris MindanaoとIlocos

 ミンダナオ島からのPhal. equestrisの植付けが終わりました。Phal. equestrisはそのリップに多様なカラーフォームがあることで知られていますが、変種(var.)とされているのはフィリピン北西部Ilocos地域生息のPhal. equestris var. roseaのみで、他のalba、aureaおよびcyanochilaは分類上、変種ではなくフォームfmaとされています。Phal. equestris fma cyanochilaはペタル・セパルは白色でリップ中央弁が金色から先端に向かって青に変化する2色のフォームをもち、その生息地詳細はJ. Cootes氏著書Philippine Native Orchid Speciesによると不明とされています。しかし本サイトのこれまでの入手経験ではミンダナオ島に限られており、排他的地域性が高い印象です。であればcyanochilaはrosea同様にフォームfmaではなく変種varと考えられます。現在市場でのPhal. equestrisの多様なリップカラーについて現地ラン園によれば20年以上の取り扱いでリップカラーが青色の野生株は一度だけ見たことがあるとのことで現在のカラーバリエーションは台湾での改良種とのことです。

 下画像上段はミンダナオ島からのPhal. equestrisです。これまでミンダナオ島からの株は青紫単色フォームと上段写真中央のようにcyanochilaフォームの2種類です。Phal. lueddemanniana同様にミンダナオ島からの入手は非常に困難で、これまでの10年間で数株の散発的な入荷はありましたが、ラン園には多数の株が栽培されており、纏まった入荷は今回が初めてです。昨年の入荷種はcyanochilaであり、同じルートであるため上段写真左の株はcyanochilaフォームの可能性が高いと思われます。下段は今回ミンダナオ島生息種と共に入荷したIlocosからのroseaです。本サイトではミンダナオ島生息種はヘゴ板やコルクに、Ilocos生息種はポット植えとしています。Ilocos産は葉が左右上向きに展開するのに対し、ミンダナオ島生息種の多くが下垂タイプの葉形状と花茎がIlocos産に比べて長い特徴があるためです。しかし自然界におけるroseaは大木に活着し、葉が下垂している(写真左)ことからも本来はヘゴ板やコルクが適しているのかも知れません。

Phal. equestris Mindanao
Phal. equestris var. rosea

Dendrobium tannii

 今年1月にマレーシアから入手したPapua New Guinea生息のDen. tanniiがこの猛暑の中、開花しています。色はピンクタイプと薄いピンクがかかった白タイプでそれぞれの株が混在しています。かなり花持ちが良く、すでに全開(7月13日)から3週間が過ぎました。本サイトでは2,500円の販売です。

Den. tannii

仮植えと植付け後の胡蝶蘭原種

  下写真左は7月10日撮影の仮植え状態の胡蝶蘭Phal. lueddemanniana Mindanao等で、写真右は8月2日撮影の炭化コルク植え付け後の画像です。現在温室内は70%寒冷紗下において、午前10時頃からは37-8℃となり午後1時ごろには40℃まで上昇します。このため11時と14時に、地下120mの井戸水(16℃)で散水を行い35℃以上の温度上昇を抑えると共に微風を24時間当てています。いつまで続くか分からない猛暑ですが盛夏の植付け栽培は重労働です。暑さにヘタる種や、古い葉が黄化する種が僅かながら見られ、こうした種は直ちに中温室に移動させています。このため中温室はこれまでにない混雑ぶりで、株間が左右前後30㎝もない密集状態となっています。写真右は高温室での順化中の風景です。

 外気温が35℃ともなる状況での宅配便等による発送はリスクが高く、特に浜松から1日半から2日を要する広島以南や福島以北は、株の取り付け材に含まれる湿気で箱内が蒸せ、葉へのダメージが避けられません。このため9月末ごろまでは温室から直接持ち帰られる人のみへの販売で発送を止め、予約で対応しています。しかし温室に来られてもこの猛暑が続く限り、散水で幾分温度を低下させているとは言え、温室内が温度35℃・湿度70%程ともなると10分と居られません。来年からはミスト冷房とか、低温の地下水を利用した冷房を考えざるを得ない事態になってきました。


Dendrobium ramosii

  先月、Dendrobium sp Palawanとしてフィリピン現地より持ち帰ったDen. fairchildiaeに似た株が1週間ほど前から複数の株で同時に花芽をつけ開花を始めました。確認したところDen. ramosiiでした。Den. ramosiiはルソン島生息種でPalawanでの生息は知られていませんので初めての確認かも知れません。植え付け後しばらくして詳細に株をDen. fairchildiaeと比較したところ、Den. ramosiiの茎は先端に向かってスリムなのに対し、Den. fairchildiaeは茎上部の節間でやや膨らみが見られる点と、前者の茎は赤味が強い違いが見られます。葉形状での区別はほとんど不可能でした。本種は2.500円での販売となります。

 フィリピンからのデンドロビウムやバルボフィラムの種名ミスは特に2 - 3年ほど前からひどく、バルボフィラムに至っては50%以上のミスで、売買商品としての体を成していません。これは10年以上前の全盛時代のように属毎に栽培担当者が居て、それなりに管理されていたものが徐々に景気が低迷しスタッフ削減が余儀なくされたことが原因と考えられます。 こうした状況から、1昨年より分からない株を販売する場合は思いつきの名前を付けるのではなくspとして販売するようにと依頼しています。それでも昨年はDen. guerreroiDen. ionopusであったり、Bulb. giganteumBulb. mearnsiiであったりと散々です。最近のミンダナオ島ルートからのランはspと名付けた種は別として、何とか株とラベルに付いた種名が一致しつつあると言ったところです。これは特に新種とされる株についてはサプライヤーあるいはラン園で撮影した花画像が無いと購入しない方針としたためです。

Den. ramosii

Pteroceras (Brachypeza)unguiculata

 先月初めにフィリピンから持ち帰りの株の中にPteroceras spがあり、サプライヤーからの花画像を調べたところPteroceras unguiculataと分かりました。本種は昨年1月の歳月記にも取り上げました。サンシャインラン展でPurificacion Orchidsに数株が残り、これを5月のラン展まで預かりとし一部を販売し残りを戻しました。今回はミンダナオ島Lanao地域の生息種として入荷したものです。ミンダナオ島ではSurigao生息は知られていますがLanaoは初めて聞きます。

 J. Cootes氏著書Philippine Native Orchid Speciesによるとマレーシア、ボルネオ島、スラウエシ島など広く分布しているようですが、フィリピン生息記録は最近とされます。本種に関するマーケット情報はほとんどなく、同書によると見つけることが難しい(seldom found above 500m)とのことです。orchidspecies.comのPlant and Flowerで4-5㎝サイズの花が8輪程同時開花している画像が見られます。美景です。非常に甘い香り(very sweet perfumed)があるそうです。前回の歳月記でも指摘しましたがマーケット情報が見当たらない最も大きな理由は、見つけにくいこともあるかも知れませんが、短命花であるため市場性が低いのではないかと考えています。前書によると1日花どころか6時間(lasting barely 6 hours)と書かれています。これ程の短命種は他に知りませんが、6時間では栽培者ですら開花タイミングによっては花を見るチャンスを逃してしまうかも知れません。全く展示には向かないランとなります。

 しかし見方を変えればこれも考えようで、それ程の短命であれば世界中のほとんどの人が写真以外に実際の花を見ていない筈で、故にその香りも知らないことになります。周りの誰もが実体観賞のないその花と、ほとんど使われない”very sweet”と敢えて形容される程のその香りを得ることが出来るのは、栽培をする者の特権でこれはこれで幻の花の如き魅力を感じます。下写真は入荷してから1か月近く経ちましたが植付けが終わった本種です。コルク付けでサイズにより2,500円から4,000円を予定しています。


Pteroceras (Brachypeza)unguiculata


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