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11月
現在(27日)開花中の多花性バルボフィラム3種
この時期、多数のバルボフィラムが開化しており、多花性あるいは同時開花性の3種を撮影しました。写真左のBulb. geniculiferumはこれで1株ですが38輪、中央のBulb. medusaeは1株で花茎9本、一方、右のBulb. unitubumは株当たり3-4輪ですが多数の同種株が同時開花しています。画像下の青色種名のクリックで詳細画像が見られます。
ラン資材の現状
コロナによる流通への影響で、あらゆる物価の高騰が伝えられていますが、ランの資材も特にミズゴケはこれまでもしばしば指摘してきたように、価格高騰だけでなく、入手自体も一層困難となっています。栽培が数十株である趣味家にとっては、500gパッケージのミズゴケは現在のところ入手可能と見られ、2倍近い価格の高騰以外の問題は無いと思いますが、百株を超えるような栽培では3㎏パッケージが、特に吊り下げ取付けには保水性が高く繊維の長い3Aクラス以上の品質が必要となり、資材業者によると現状においては予約から入手まで2年以上の待ちになるそうです。生き物に使用する資材が注文しても2 - 3年後にしか入手できないとなれば、使用する側にとって販売が実質中止されたも同然です。ミズゴケに代わる代替品も考えますが、例えばミズゴケを全てバークに換えれば良いのかと云えば、それまでと同じ栽培環境下で成長可能な種はまず存在しません。
一方、植込み材以外の小物品はこれまで海外製品が多くを占めています。こちらも海外からのコンテナの出荷が減り、纏った購入が困難になりつつあります。前項のメタルリングも、纏った(例えば50個以上)入手はすでに出来ません。資材業者や楽天、アマゾンのオンラインカタログにはミズゴケやヘゴ板などは”在庫切れ”文字ばかりが占め、広告が無駄なほどです。こうした状況に陥っているのは資材業者の責任ではなく、最も頭を抱えているのは資材業者に他なりません。誰もがこれ程の事態になるとは予測できなかったのでは思います。20日現在、当サイトでは下画像が示す資材をストックしています。ミズゴケは3Aクラスが15㎏、炭化コルク、また10m長のヤシ繊維マットなどです。
これら以外には100Lクリプトモス4袋や、ヘゴチップ20袋などもあり、また厚味のある60㎝と40㎝長の杉皮板がそれぞれ50枚、間もなく入荷予定です。7月末に入手した50枚は2ヶ月間で使い終わりました。前記ミズゴケの12㎏分は1年前の注文で、また画像上段右の大型ブロックバークはカタログには無いものの資材業者からの情報で、それぞれ数日前に得たものです。これらは今後3か月程で消費されることになりますが、特にミズゴケについては、その後の見通しが立っていません。多くの趣味家にとって資材不足の状況下においては、入手先や方法また植込みや栽培管理方法など、ラン友同士で情報を交換し、臨機応変に対処することが必要と思います。
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今後3か月間分の植込み資材の一部 |
大型バーク(手前から83cm, 65㎝, 79cm長) |
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15㎏(3㎏3Ax5袋)ミズゴケ |
炭化コルク 90㎝x60㎝12枚 |
ヤシ繊維マット 10mx1m |
ドラキュラ属の植替え
ドラキュラは低温栽培を代表するラン属の一つで、多くの種が標高2,000m級に生息する、いわゆる高山植物であり、国内栽培では専用のクール環境が必要です。当サイトでは現在、Dracula属凡そ150種の内、その半数となる77種を栽培しており、いずれもサンシャインや東京ドームラン展でEcuagenra、MundfloraおよびEquaflor-Aからそれぞれ入手した株です。猿顔をした珍妙な花形状から興味のある人も多いと思いますが、国内にはクール系ランを育てる趣味家は少なく、ラン展の売残りが毎年多く出て、当サイトの株もラン展最終日の残り株を引受け購入したものです。
当サイトのクール温室は冬期を除き夜間平均温度は15℃ 、昼間は 22℃以下に、また冬期は前記温度から3℃ほど下がる環境にあります。多くの種は前回の植替えから5年近く経ちますが、2年前から植替えと共にDraculaのページを制作する予定でした。今回やっと植替えを実行することになりました。温室内では70種以上の栽培のため通年で開花が見られ、下画像は現在(19日)開花中のDracula3種選んだものです。画像左のDracula agnosiaは2012年命名の新種で、2016年頃まではaff. olmosii名でラン展に出品されていました。当サイトでも過去の歳月記にolmosiiとして紹介しています。花は小型ですが新種のためか、Ecuageneraでの本種はDracula種の中でも高額で、現在のオンライン価格は$45(ディスカウント価格$38.25)とされ、日本円(\140/$1換算)では\6,300です。これはDracula vampireの$25(\3,500)と比べかなり高額であることが分かります。ちなみに現在国内のオークションサイトではDracula vampireが10,000円 - 15,000円の落札が見られ、またDracula roezliiもEcuageneraのカタログ価格$25(\3,500)に対し、国内オークションでは15,000円で、米国向け価格の凡そ4倍となっています。当サイトでは両種ともにかなりの数を現在栽培しています。
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Dracula agnosia |
Dracula venefica red |
Dracula chiroptera yellow |
Draculaは花茎が植込み材を潜って下方に伸長するため通常のポット植えが出来ず、これまで全面隙間のあるメタルリングや炭化コルク、スリット入りプラスチックポットの3種類に植付けを行ってきましたが、メタルリングが成長が良いため、今回の植替えでは全種ワイヤーネットカゴに統一すべく植付けを進めています。下画像上段左はこれまでの植付け材から取外し、根を洗浄・病害防除処理をした後の仮り植えされた株で、画像はその約半数となります。右は炭化コルクのこれから取外し予定の株です。下段左はメタルリングへの本番植付け後の株の一部で、右は拡大画像です。現在(19日)200株程の植付けが終了したところですが、新たな植え付けで3割程の株が大きくなり株分けをしており、植え替え後の総株数は420株程になりそうです。売れ残り株を引受けたことをきっかけに、現在の株数が400株を超える事態になるとは6-7年前には想定していませんでした。これだけのボリュームの植替えとなると、凡そ5㎏のミズゴケが必要で、コロナ下のミズゴケ不足の状況下で植付け作業だけでなく資材の入手も大変です。
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これまでの支持材から取り外し、本番植付けを待機中の株 |
取外し前の炭化コルク付けDracula |
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メタルリング植え付け後の様子 |
左写真の一部拡大画像(リング8㎝径) |
今回の植替えでは知人にEcuageneraカタログのドル建て価格に500円- 1,000円ほどを上乗せした価格で一部を出荷しました。この価格はEcuageneraによる国内ラン展での価格よりも安価と思います。
未だコロナの影響で海外からの入荷が困難な状況にあり、現地サプライヤーのこれからの準備も考えると今後半年ほどは更に待たなければならず、一方で当サイトも販売を休止して3年が経ち、これ以上手をこまねいている訳にも行かず、来年早々からまずは2000年以降に命名された
新種バルボフィラムの一部をほぼ従来価格に3年間の植替えと栽培管理費を500円ほど上乗せで販売開始する予定です。1m長前後のペタルをもつPaph. sanderianum等を含め他属も検討中です。コロナの影響でランだけでなく資材の価格高騰や入手難が今後2 - 3年程は続くと思われ、このままではこれからランを育てたいと思っている人のみならず、これまでの趣味家にもラン離れが起こるのではと心配になります。
今週(14-19日)開花中の12種
画像下の青色種名のクリックで詳細画像が見られます。
現在開花中の20種
浜松の10月中の高温室内は昼間に上昇した気温が残り、夜間でも18℃を下まわることがなかったのですが、今月に入り暖房器が稼働するようになりました。1日の昼夜の温室内温度差が10℃程になると、多くの種で成長が盛んになり多数の花芽の発生も見られます。下画像は現在(6日)開花中の20種です。青色種名のクリックで詳細画像にリンクします。
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