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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2021年度

     2022年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月

6月

現在開花中の21種

 Bulb. othonisは旧名Cirr. nutansとされていたフィリピン固有種で、パラワンからレイテ島まで広く分布しています。しかしマーケットで見かけることはほとんどありません。写真はパラワン生息種です。右のBulb. contortisepalumは開花して数日経過しても薄緑色が変わらないためgreenとしたものの、画像下の青色種名のリンク先はwhite種と同種と見做し、whiteフォームのページとしました。Coel. celebensisは通年で開花しており、写真の花株の葉サイズはそれぞれ長さ54㎝、幅16㎝の大きさで、これらが数株あると、周りのポット植えの株を覆ってしまうため、十分離して配置する必要があります。現在はポット植ですが、それを大型のバスケットに入れて吊り下げています。Coel. kinabaluensisは同属のcupreaと似ており、違いはリップ側弁や葉の形状、またリゾームの長さや開花期の違い等があるものの、環境に影響される個体差の範囲内とも思われ、同定は極めて困難です。花の外見は感覚的に’彫りの深さ’と云ったところでしょうか。

 Trichoglottis atropurpurea flavaは世界に数株しかない希少種と思います。2014年、現地にて入手し6年を経て2020年に開花、今年は花茎当たり8輪の開花となりました。栽培にはかなりの高輝度が重要なようです。Schoenorchis gemmataは四川省ラン園のサンシャインラン展の売れ残りです。花サイズが最大5mmとの情報がありますが、現在開花中の花の実測値は3mm(縦3mm、横幅2mm)で、ラン属の中でも極小種の一つと思います。しかし花をルーペで見ると、リップ形状はパフィオペディルム・マリポエンセのようで、僅か2mm程の袋ながらもその自然の造形には感心してしまいます。改版ページに本種も近々加える予定です。

Bulbophyllum othonis Palawan Bulbophyllum contortisepalum green PNG Bulbophyllum contortisepalum red PNG
Bulbophyllum membranifolium Borneo Coelogyne celebensis sulawesi Coelogyne kinbaluensis Borneo
Trichoglottis atropurpurea flava Philippines Schoenorchis gemmata Yunnan Phalaenopsis deliciosa subsp. hookeriana
Dendrobium strebloceras Moluccas Dendrobium sp aff. flos-wanua Borneo Dendrobium victoriae-regina Luzon
Dendrobium lambii Borneo Dendrobium peculiare Sumatra Dendrobium bicolense Luzon
Dendrobium dearei Borneo Dendrobium ovipostriferum Borneo Dendrobium uniflorum alba2 Philippines
Dendrobium dianae Borneo Dendrobium dianae bicolor Borneo Dendrobium sp05 Borneo

植込み材

 今日のミズゴケの入手難は前回も取り上げましたが、来年も供給の目途が立たないであろうとも言われています。こうした状況に伴い、ミズゴケ以外の植込み資材までも品薄になりつつあり、これまで経験のなかった事態に陥っています。洋蘭の基本資材であるミズゴケが来年も輸入困難となれば、おそらく近年のラン園芸史上、最も深刻な問題になるかも知れません。さらに価格も現在小さなパッケージ(150-500g)が2倍どころか2年前の3倍ほどになりつつあります。その一方でバークは現在Lサイズの入手難以外は目立った変化はなさそうであるものの、国内環境下においてミズゴケミックスが出来ないバークを中心とする植付けでは、特に着生ランにとっては高湿度環境化が可能な温室が必要となります。地生ラン栽培のようにバークに軽石や焼赤玉土を混ぜて根周りの湿度を高めれば良いのではとも考えるものの、こうした組み合わせはポット内の気相率が下がり、着生ランには適さず成長は期待できません。まして吊るし栽培は困難です。資材の高騰を含め現在の状況が長引けば、今後ラン愛好家が減少するのではないかと危惧します。

 いずれにしてもミズゴケに代わり得る人工的な植込み材の開発が急務と思います。10年ほど前には、アサヒビールから、大麦殻を低温焼成したモルトセラミックス(オーキッドベース)がありましたが、このような地生から着生ランまで有効な植込み材が再登場するか、繊維会社等による保湿性や通気性のあるミズゴケに代わる商品の開発も期待するのですが。

 とは云うもののランは生き物であり、栽培者としては手をこまねいている訳にもいかず、取り敢えずミズゴケを全く使用しないで着生ランを育てる為の植込み方法を考えなくてはなりません。現在入手可能な材料で、ミズゴケより安価で、使用後は家庭用ごみとして廃棄出来、ポットや吊り下げにも良い、言い換えれば適度な保水性と通気性を持ち、現状の事態が改善するまでの2-3年間は維持できる栽培方法があるかどうかです。そうした背景から今回試作的に次のような実験を始めました。

 材料はヤシ繊維ロールマットとバークのみです。但しマットは1㎝角程度に裁断し、Sサイズのバークとミックスしたものです。ヤシ繊維であれば糸状のものでも良いかと云えばダメで、なぜマットかと云えば下写真に見られるように繊維が極めて密に絡み圧縮されている構造がポイントで、高い透水性と共に繊維間に水滴を保留する保水力があります。すなわち繊維自体に水を吸わせるのではなく繊維間の隙間に水を留めることで保水力を得る訳です。

ヤシ繊維マット(左:表面、中央:裏面、右:厚み)

 下画像は10.5㎝(3.5号サイズ)のスリット入りプラスチック鉢用として準備したもので、画像左下のようにロールマットから15㎝角を切り出し、これを左上の様に凡そ1㎝幅の短冊状にまず裁断、さらに1㎝幅で細分化して写真中央の角切りとします。その下の画像は、角切りマットとミックスするSサイズのバークで、一握り程度の量です。角切りマットとバークをミックスしたものが右側上のポットに入った状態です。その下はPhal. lueddemanniana dark redを植え込んだ状態です。植付けは、まず角切りマットをポット底部に薄く敷いた後、ポットに根を収め、根の間に角切りマットを詰め込みます。大方収まった後にバークを蒔き、ポットをぽんぽんと叩きながらバークをマットの隙間へ入り込ませつつ、軽くマットを押さえ出来上がりです。マットを小さく角切りする理由は、鉢内の気相率を一定にするためです。

 ここで植込み材のコストですが、1mx1mのマットから使用頻度の高い3.5号鉢サイズ用の容量は15㎝角相当から得られ、よって44鉢分となります。1mx10mのロールマットを6,000円と想定すれば440鉢分となり、1鉢当たりのコストは14円程度であり、一方、12Lのバークが1,400円として1鉢当たり25円程で、以上を合わせて植込み材のコストは約40円です。また使用後の植込み材が全て”燃えるゴミ”となることは大量に廃材が出た場合、以外と重要なメリットとなります。3.5号スリット入りプラ鉢は27円程であり、また使用後のプラ鉢は病気防除のため次亜塩素酸ナトリウム(キッチンハイター等)で消毒すれば数回は使用できます。


 ここで幾つかの留意点があります。一つは植付ける前に角切りマットやバークは一晩程、水に浸しておくことが有効です。2つ目はヤシ繊維は連日のかん水のため使用期間は2-3年となります。2年目頃になるとランに直接害はないものの白カビが生えることがあり、ヤシ繊維の劣化を早めます。この白カビはバークでも見られるものです。当サイトではむしろ2-3年で繊維がボロボロになることの方が、植え替え時にマットに入り込んだ根を傷つけることなく、容易に取外せる点でメリットと考えています。注意点はこうしたヤシ繊維の特性から、利用目的によっては市販品の中に早期劣化を抑えるため防カビ剤等が塗布されていないか、植込み材として使用する以上、無添加であることを確認する必要があります。

 以上がミズゴケを使用しない着生ラン専用の植込み材の1例です。今後20株ほどを上記の方法でデンドロビウムなどにも適用し、半年ほど状態を観察して成長が見られるようであれば、ミズゴケが従来のように容易に得られるようになるまで植替えの必要な株から順次この植え込みを試す予定です。また現在ミズゴケを使用しない吊るし用植付け方法も検討中です。

現在(20日)開花中の12種

 このところ曇りや雨の日が多く湿度が高いため水撒きは一日おきとなっていました。12種を選んで撮影しました。Bulb. translucidumは30株ほどあり、90㎝程の株サイズの場合、開花期には1株当たり3-4週間間隔で2-3回は開花するため、この3ヶ月間は多数の花がいつも見られます。その中で赤色が濃い花を選んで撮影しました。隣のBulb. tollenoniferumは開花末期になると黄色からオレンジ色と赤味が増し、写真の状態になると2-3日で落花します。Den. punbatsuenseは多様な花形態があり、当サイトでは現在改版ページに5タイプを掲載していますが、下写真の花はそれらとはセパル・ペタルのフォームやSpurの形状がそれぞれ異なり6タイプ目になるかも知れません。これらが果たして同一種なのか疑問で、分子系統法に基づく分析が必要ではないかとも思います。Den. sanderaeは前回記載と同一株です。リップ中央弁先端が開いたので再度撮影しました。当サイトの改版ページには本種をこれまで掲載していなかったため今月中に追加する予定です。

Bulbophyllum translucidum Leyte Bulbophyllum tollenoniferum PNG Bulbophyllum recurvilabre Leyte
Bulbophyllum scaphioglossum New Guinea Dendrobium reypimentelii Mindanao Vanda ustii Luzon
Dendrobium punbatuense Borneo Dendrobium sanderae Luzon Coelogyne dayana Borneo
Coelogyne rubrolanata Mindanao Phalaenopsis sanderiana Mindanao Phalaenopsis violacea v. mentawai Sumatra

フィリピン・ルソン島生息のBulbophyllum mirum

 これまでBulb. mirumの生息地はボルネオ島、マレー半島、Java島、スマトラ島とされており、当サイトではボルネオ島生息株を栽培してきましたが、2019年にフィリピンにて初めて、現地サプライヤーからルソン島生息とされる本種を入手しました。両生息株は毎年開花しており、ボルネオ島株が2ヶ月ほどルソン島株よりも早く、開花期はややずれているものの今回初めて同時開花したため、撮影し比較することにしました。両株の花サイズは共に2.5㎝程(ラテラルセパル長)ですが、下画像からはルソン島株が側面からの目視ではより膨らみがあり、また葉はボルネオ島生息株の広楕円に対し、長楕円形であることが分かります。これらの相違点が地域固有の特徴なのか否かは評価サンプルが少ないため確定できませんが、本種がルソン島にも生息している情報は当サイトが初めての発信かも知れません。本種の生息域は1,000m以上とされるためブロックバークに植付けた中温湿にての栽培としています。

Bulbophyllum mirum

現在(10日)開花中の21種

 Dendorobium sanderaeは10年以上前から栽培しているものの、これまでラベルが変種名であるDen. sanderae majorとされていたため、リストに含められていませんでした。下画像では開花直後のリップ先端部が開いていない状態です。Paph. sanderianumは季節外れの開花となります。ペタル長は72㎝で、当サイトでは一般的な長さとなります。Dendrobium uniflorum albaは先月の当ページに掲載した株と同じで、ほぼ全輪が開花したので再度取り上げました。本種は木製バスケット植えで、今回は1株に21輪の同時開花となりました。4月に初掲載した2019年登録の新種Bulbophyllum freitagiiは前回とは別株です。どうやら当サイトのBulb. contortisepalum redおよびdarkとラベルが付いた株に複数含まれているようで、となると本種が5株ほどあるかも知れません。ネットには本種はラテラルセパルのスパイラルが見られないと記載されたページがあります。しかしスパイラル特性はBulb. contortisepalum Complexの特徴とされるものの、この節ではBulb. falciferumを含め、しばしば成長や環境状態でスパイラルが少なかったり無い状態があり、偶々その記載者はそうした状態にある株を見たのではと思います。一方、Bulbophyllum clandestinumは株形状から、なぜ本種がBulbbophyllum属であるのか不思議です。Bulbophyllum claptonense aureaはこれまで1株では最多の7輪が同時開花(左の一輪は左の小株の花)したので掲載しました。ブロックバークに植付けた中温湿での栽培です。画像下の青色種名をクリックすることで詳細情報にリンクします。

Den. cinnabarinum angustitepalum Borneo Dendrobium sanderae Luzon
Dendrobium leporinum NewGuinea Dendrobium sp aff. uniflorum alba Borneo Paphiopedirum sanderianum Borneo
Dendrobium ellipsophyllum orange Palawan Bulbophyllum amplebracteatum Sulawesi Bulbophyllum freitagii Paua New Guinea
Bulbophyllum novaciae Sulawesi Bulbophyllum clandestinum Sumatra Bulbophyllum sp31 Mindanao
Bulbophyllum claptonense aurea Borneo Bulbophyllum scotinochiton Sumatra Bulbophyllum dearei Luzon
Phalaenopsis pulchra Leyte Phalaenopsis sanderiana Mindanao Phalaenopsis mariae Mindanao
Dracula cordobae Ecuador Dracula tsubotae colombia Dracula polyphemus Ecuador

初開花のバルボフィラム2種

 当サイトで初開花のバルボフィラム2種です。左のBulbophyllum. infundibuliformeはニューギニア生息種で2016年12月にマレーシア経由で種名Bulbophyllum garupinumとして入荷しました。Bulb.infundibuliforme garupinumとはシノニムの関係であり登録年数は前者名が先なので、当サイトではBulb.infundibuliforme とします。2017年6月の歳月記で、その入荷ロットからBulb.infundibuliforme の亜種とされるBulb. hymenobracteumが開花したことを取り上げました。その記載の中でサプライヤーからのinfundibuliformeの花写真も掲載しましたが、6年を経てやっと花を得ました。ベンチの奥に4年間ほど置かれていたのを2年ほど前に炭化コルクに植え替え、明るい場所に移動した経緯もあり、おそらくこれまでに何度か開花していたかも知れません。一方、右画像は2018年マレーシア・Putrajaya花展でNT Orchidから入手した20種程のバルボフィラムspの一つで、特徴はペタルの模様とリップ中央弁の模様が同じであることです。種名は調査中です。これまでNTOrchidは株を小さく分割し販売する傾向があり小型種では作落ちが避けられず殆どの株は枯れるか、開花までに相当な年月を要します。当サイトでは、ここ2-3年の栽培で何とか生き残った株に開花が見られるようになりました。これら2種の詳細画像は青色の種名のクリックで得られます。

Bulbophyllum. infundibuliforme New Guinea sp33 New Guinea

現在開花中の12種

  青色種名のクリックで詳細画像が見られます。Dendrochilum woodianumは、J. Cootes著Philippine Native Orchid Speciesの画像では花被片が全て赤一色ですが、最上段左画像に見られるように先端部が黄色の彩色となっています。画像の株はルソン島北部から(サプライヤーの説明)とされている一方で、前記著書ではMindoro島とされおり、地域差による色変化とも考えられます。であれば変種となるのですが。本種は生息標高域が1,000m以上で中温室にての栽培となっています。

 最下段右のトケイソウは、ランではありませんが高温室にてランと同居しています。インパクトのある花で’紫色の雨’という粋な添名が付いています。Purpleとは華麗なと云う意味もあるそうですが、四半世紀以上も前のプリンスの歌う”Purple rain”は悲しい歌です。

Dendrochilum woodianum North Luzon Dendrochilum coccineum Mindanao Bulbophyllum flavescens Luzon
Dendrobium chameleon alba Luzon Dendrobium insigne New Guinea Dendrobium igneoniveum Sumatra
Dendrobium uniflorum alba Malaysia Dendrobium crocatum Malaysia Dendrobium anthrene Borneo
Coelogyne celebensis Sulawesi Thrixspermum aff. celebicum Philippines Passiflora caerulea 'Purple Rain'

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