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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2021年度

     2022年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月 

4月

現在(30日)開花中の2010年代発表の新バルボフィラム3種

 画像左からBulbophyllum magnumは2013年、Bulbophyllum translucidumは2016年、Bulbophyllum kubahenseは2011年にそれぞれ発表された新種です。Bulb. translucidumBulb. kubahenseの栽培法は入手後2年程で分かりましたが手を焼いたのはBulb. magnumです。入手年に一度開花がありましたが、開花条件が分かるまでに7年を要しました。こうした実体験に基づく栽培情報に関するページを別途立ち上げるべく現在取り組んでいるところです。

Bulbophyllum magnum Bulbophyllum translucidum Bulophyllum kubahense

Phalaenopsis philippinensis

 現在、Phal. philippinensisが最花期となっています。一般に本種の花サイズは7㎝とされていますが、当サイトでは数株に10㎝程の大きな花も開花しています。下写真右が本日(29日)メジャーと共に撮影した花です。白色のセパル・ペタルに、大きなリップ側弁の鮮やかな黄色が特徴です。生息域がルソン島北部の標高1,200mの中温タイプのため、同節の高温タイプであるPhal. schillerianastuartianaとの同居は困難で、昼間最高温度は30℃でも問題は無いものの、夜間平均温度は通年で20℃前後の中温室で栽培しています。16日撮影の前回紹介の別花も中心部に淡いピンク色を帯びた希少なフォームです。

Phalaenopsis philippinensis

Bulbophyllum sulawesii semi-alba ?

 スラウェシ島生息のBulb. sulawesiiのラテラルセパルは通常、上段右の画像が示す黄土ー 赤茶色で、ペタルやドーサルセパル背面にはラインあるいは斑点が見られます。現在当サイトで、spとラベルに記載された株から、左写真に示すBulb. sulawesiiの茶成分が抜けたセミアルバのような花が咲きました。開化初期の色合いかとも考え、開花後から3日間様子を見ていたのですが変化が無く、ネット検索画像にもセパル・ペタル全身が白に近い淡黄色のBulb. sulawesiiは今のところ見当たらないため、本日(28日)撮影をしました。改版ページには1両日中に追加する予定です。(後記:30日更新しました。)

Bulbophyllum sulawesii semi-alba? Bulbophyllum sulawesi
Bulbophyllum sulawesii semi-alba ?

Dendrobium gayoense

 これまで改版ページでDen. sp aff. fitrianumとした下画像左に示すデンドロビウムについて知人より情報を頂き、Die Orchidee vol. 6(13) 2020 にDendrobium gayoenseとして発表された新種と知り記載変更を行いました。当サイトでは2016年12月にスマトラ島アチェ州からマレーシア経由で本種を入手し、歳月記2016年12月にサプライヤーからの花画像と共に紹介したのが最初です。翌月(2017年)1月の歳月記では、AJOSサンシャインラン展に4株を出品したとの報告があります。果たして購入者がいたかどうかは不明です。新種として発表の3年以上も前に入手したことになります。これまでの10年近くを振り返ってみますと、新種としての発表前や発表直後に種名不詳spとして入手した種は少なくありません。こうした種は全て入手後の直近のラン展でspとして3,000円前後で販売してきましたが、なにせ名前が無い種は、花写真は添付するものの殆ど売れませんでした。コロナが落着き海外との取引が再開出来るようになれば、これまでと同様に名無し株が多数入荷すると思いますが、新種と分かれば入手が困難になるのが常ですので、原種コレクターは新たに入荷するsp株には注視した方が良いかも知れません。

Dendrobium gayoense Sumatra Ache

現在開花中の15種

 17日 - 21日に撮影した15種です。画像下の種名のクリックで詳細画像にリンクします。最上段左の種は改版ページでsp03としているバルボフィラムですが、改めてBulbophyllum sp aff. uniflorumとしました。

Bukbophyllum sp aff. uniflorum Sulawesi Bulbophyllum gjellerupii New Guinea Bulbophyllum chloranthum Papua-NG
Dendrobium ellipsophyllum green Palawan Dendrobium ellipsophyllum orange Palawan Dendrobium mutabile Sumatra
Dendrobium wattii Thailand Dendrobium deleonii Mindanao Dendrobium lineale blue New Guinea
Dendrobium victoriae-reginae Luzon Dendrobium yeageri Luzon Dendrobium balzerianum Leyte
Phalaenopsis parishii Thailand Phalaenopsis hieroglyphica Luzon Phalaenopsis mariae Mindanao

Bulbophyllum trigonosepalum 近縁種

 2017年にフィリピンのレイテ島およびミンダナオ島からBulb. trigonosepalum近縁種として多数の種名不詳株が入荷しましたが、その株の中に、形状からはBulb. trigonosepalumを含むLepidorhiza節と思われるものの、取り扱ったこれまでの近縁種には見られない花が15日開花しました。下写真がその花です。そこで本種と他種との違いを表1に示しました。明らかな相違点はBulb. trigonosepalum 近縁種はほぼ全てが好ましくない匂いがありますが、本種は木片に似た微香があり悪臭ではありません。また花茎は30㎝以上あり、Bulb. trigonosepalum近縁種の中で30㎝を超えるのはBulb. mearnsiiのみです。

Bulbophyllum sp aff. trigonosepalum (Inflorescences: 34cm)

  表1 Bulb. trigonosepalum Complexとの比較
  本種 basisetum mearnsii nymphopolitanum papulosum trigonosepalum
リップ中央弁
リップ側弁
セパル 斑点有り 斑点無し 斑点有り 斑点無し 斑点あり 斑点無し
花茎長 30cm 10㎝以下 50㎝ 5㎝ 10㎝ 10㎝以下
匂い 木片の香り(弱) 悪臭(強) 悪臭(弱) 悪臭(微) 悪臭(強) 悪臭(弱)

 一方、驚いたのはorchidspecies.comに記載されたBulb. recurvilabreの画像です。今回取り上げた本種と酷似しており、J. Cootes著Philippine Native Orchid Species p60,2011や当サイトのBulb. recurvilabre 画像とは大きく異なります。では本種の登録種名はと調べているのですが今のところ不明です。今回開花の種と、Bulb. recurvilabreとの相違点については、Bulb. recurvilabreの開花期が5月なのでリップ側弁等の詳細情報を得た後、報告します。

今週(10-16日)開花の24種

 最上段のBulb. laxiflorum orange-lipは、白色タイプとは分けて新たに追加しました。またBulb. odoratumはリップ形状が異なることが分かり、改版ページでは下記画像に変更し、従来の種はBulb. gibbosumとしました。Calanthe vestita albaは当サイト初めての登場です。2016年東京ドームラン展でのPurificacion Orchidの売れ残り株であったと思います。フィリピン生息のCalantheで花茎やセパル・ペタル背面に細毛があり、またSpur(距)が湾曲して先端が前方に向う種はvestitaが知られており、この種はピンク、赤、白色と多彩で白色タイプにはリップ中央弁基部に黄色の斑点があるのですが、今回開花した花には斑点が無く、白一色であることからalbaとしました。Calanthe vestitaのalbaフォームが希少か否かは不明です。青い種名のクリックで各種の詳細画像や情報ページにリンクします。

Bulbophyllum surigaense Mindanao Bulbophyllum laxiflorum orange-lip Java Bulbophyllum chrysoglossumNew Guinea
Bulbophyllum dolichoblepharon Laguna Bulbophyllum translucidum Leyte Bulbophyllum basisetum Mindanao
Bulbophyllum sp aff. trigonosepalum Mindanao Bulbophyllum sp New Guinea Bulbophyllum odoratum Malaysia
Dendrobium crocatum Malaysia Dendrobium polytrichum Luzon Dendrobium roslii Malay Peninsula
Dendrobium carinatum Luzon Dendrobium stratiotes New Guinea Dendrobium Peculiare Sumatra
Dendrobium phillipsii Mindanao Dendrobium aurantiflammeum Borneo Calanthe vestita alba
Phalaenopsis philippinesis Luzon Phalaenopsis modesta Kalimantan Coelogyne usitana Mindanao
Vanda javierae Luzon Vanda barnesii Luzon Coelogyne celebensis Sulawesi

Coelogyne salvaneraniana

 Coel. salvaneranianaは2011年発表のフィリピン固有種です。改版ページでは種名由来であるフィリピンのsalvanera農園にて当サイトが撮影した花写真1枚のみでしたが、入手から2年半を経て浜松温室にて現在開花中です。生息地がミンダナオ島Surigao標高700mとのことで、当初中温室にて栽培したものの動きがなく、昨年高温室に移動しての開花となりました。詳細画像は画像下の青色種名のクリックで見られます。撮影は本日16日です。同じフィリピンの固有種としてCoel. vanoverberghiiが知られていますが、ネット画像のみからでは本種との形態的な違いを見出すのは困難です。

Coelogyne salvaneraniana

Bulbophyllum kubahense

 浜松温室では4-6月がBulb. kubahenseの開花期となります。1m長の重いヘゴ板に取り付けた株が現在10本の花茎を付けており、本日(15日)時点でその内の4本が全開しています。下画像左がその株で、当初は全長50㎝程のサイズでしたが、4年間の伸長で1mを超えました。80㎝を超える頃、先端がヘゴ板の裏面に廻り込むようになり、写真に見られるようにヘゴ板の上部が密集し、先端のバルブは空中に飛びだしています。開花の終了後には株分けを予定しています。画像中央はヘゴ板の正面、右は裏面からの撮影です。右写真には全開の花が一つと、蕾をつけた花茎が4本見られます。

Bulbophyllum kubahense

Bulbophyllum freitagii

 本日(12日)、4株程栽培中のBulb. contortisepalum redの1株に開花があり、改めて眺めているとリップ中央弁がこれまでのBulb. contortisepalumには見られない形状であることに気付き、マクロレンズでリップ周辺を撮影しました。ネットで調べたところ2019年登録の新種Bulbophyllum freitagiiと思われます。特徴はペタルとリップ形状にあります。下段には今回開花した種と、これまでのcontortisepalumのカラーフォーム種と、contortisepalumの近縁種であるBulbophyllum falciferumとの相違点を比較するため、それぞれのペタル画像を掲載しました。これら画像から明らかなように上段の種は、これまでのcontortisepalumとされる種とはリップを含めペタルに多数の細毛があり、大きく異なります。またバルブ間のリゾームも他と比較して長いように感じます(それぞれの種の詳細画像は下記種名のリンク先で見られます)。前記したように登録は2019年ですが、当サイトが入手したのはBulb. contortisepalum red名で2016年でした。ここで改めてBulb. contortisepalumのカラーフォームの違いとされる各種を比較すると、ペタルやリップの形状にそれぞれ違いがあることが分かります。contortisepalumのredとwhiteはベタルは似ていますが、whiteのリップには細毛があります。種を可視的に同定する場合、多数の構成要素の内、花色やサイズは環境や個体差に依ることが多く、主に花被片(セバル・ペタル)やリップの形状を基に種名が決まります。そうした視点からはこれら形状差があるカラーフォーム種を全て同じBulb. contortisepalum名とすることが適切なのか検討が必要と思われます。

Bulbophyllum freitagii
Differences of petal shape

 それぞれの種の詳細情報は以下の種名をクリックすることで見られます。
 Bulbophyllum freitagii
 Bulbophyllum contortisepalum red
 Bulbophyllum contortisepalum white 
 Bulbophyllum contortisepalum yellow
  Bulbophyllum falciferm

現在開花中の6種

 画像は5-6日の撮影です。Vanda florensensisは6年以上前にマーケットに登場したにも拘わらず原種としての登録が無いようで人工的なVanda tricolorハイブリッドとも考えられ、改版ページではVanda tricolor affとして掲載しています。本種は現在、バスケットからはみ出した50㎝程の垂れた根を含めると2mを超える株になっています。Vanda limbataの花色は赤茶から濃赤色まであり、今回開花した花色はその中間色と云ったところです。このような多様な色合いはVanda sanderianaに見られるように、特に輝度に影響を受けるのではと推測しています。Paraphalaenopsis labukensisが現在多数の株で開花しています。その中で黄色味の強い花を撮影しました。これ程の黄発色を持つ株は珍しいと思います。Paraphal. labukensisは乾燥を嫌う一方で根の伸長も盛んなため、長い(1m程)のヘゴ板が良いのですが、現在は木製バスケット植えです。下画像それぞれの種の花色の違いや様態は青色種名のクリックで見られます。

Vanda ustii Luzon Vanda floresensis Indonesia Vanda limbata Indonesia
Paraphalaenopsis labukensis Borneo Dendrobium igneoniveum Sumatra Dendrobium uniflorum Philippines
 

Bulbophyllum callichroma

 Bulb. callichromaの開花期になりました。7年程前に本種を入手し、当初は通年で夜間平均温度15℃、昼間最高温度が24℃のクール室で、Dracula属やDen. vexillariouscuthbertsoniiなどに混じって栽培を始めました。ネット情報には低輝度(shade)が好ましいとされていることから、70%寒冷紗の下に置きました。しかしBS株にも拘わらず3年経ても開花が無く、4年目に中温(夜間18℃ - 20℃、昼間28℃)で輝度の比較的高い場所に2株程を移動しました。その半年後に、それらに初の開花があり、これまで輝度不足であったことが分かり10株程を炭化コルクやブロックバークなどに順次植替え、中温室の中でも比較的高温・高輝度な(Bulb. inacootesiなどと同じ)場所での栽培としました。それから3年目の今期は、ほぼ全ての株に花茎が発生しています。

 下画像はブロックバークに取り付けた株で、中央は2021年4月の開花(花茎2本)、右は1年後となる同一株の今期の開花で、背面方向の1本を含め1株に7本の花茎が見られます。株の成長度合や輪花数から現在の環境が最も良好で、このロットは比較的低地(標高500m - 800m)の生息株と推測しています。

Bulbophyllum callichroma 2021年4月 2022年4月

現在(1日)開花中の11種

 下画像は1日撮影の11種です。画像下の青色種名をクリックすると詳細情報にリンクします。

Dendrobium schettleri Mindanao Dendrobium aphyllum Malaysia Dendrobium amboinense Ambom Isd.
Dendrobium anosmum Luzon Bulbophyllum grandiflorum New Guinea
Bulbophyllum callichroma New Guinea Bulbophyllum patens Malaysia Bulbophyllum incisilabrum Sulawesi
Phalaenopsis philippinensis Luzon Phalaenopsis lindenii Luzon Phalaenopsis lamelligera Borneo


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