tsuun

栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2021年度

   2022年 1月  2月  3月  4月  5月 

1月

現在開花中のPaphiopedilum sanderianumVanda lamellata var. calayana

 毎年この時期になるとPaph. sanderianumVanda lamellata var. calayanaが開花します。Paph. sanderianumは栽培を始めてから15年以上経ちますが毎年開花が続き、今年は16株が同時開花しました。下写真左が浜松温室にての29日撮影の画像です。一つの花茎には3-4輪の花が付くことからペタルは1株当たり6-8本となり、2つの花茎を発生している大株も数株あることから全体で50本以上のカールした長いペタルが垂れ下がり、その景色は壮観です。一方、Vanda lamellata var. calayanaは、生息地Calayan島ではすでに絶滅したと聞いています。こちらも入手して12年以上が経ちます。画像下の青色の種名をクリックすると詳細画像にリンクします。これらの花が咲くと、ランの栽培を始めた頃を思い出します。

Paph. sanderianum Borneo Vanda lamellata var. calayana Philippines

Bulbophyllum costatum

 2018年夏にBulb. glebulosum名で入荷した種にBulb. costatumが開花しました。入荷以来、このロット株ではBulb. glebulosumは1株も確認できず、代わりにBulb. inunctumが開花し、ラベルミスとして扱ってきました。たまたま新年を迎え水撒きをしていたところ、2株にBulb. inunctumとは若干異なる印象の蕾が付き、果たして何かと期待していたところ21日に開花、調べた結果、Bulb. costatumと分かりました。本種は当サイトにとって初めての開花で、Bulb. inunctummembranifoliumとは近縁種となります。一部には本種とBulb. membranifoliiumはシノニム(異名同種)とされているそうです。またorchidspecies.com(IOSPE)では、本種名の画像が見られますが、ページ内のリンク’別角度からの画像’では同一花とは異なるBulb. inunctumが表示され、さらに昨年も別種で取り上げた花サイズについて、2.56”が6.4mmと換算記載されメートル法では1㎝にも満たない値になっています。当サイトで開花中の下記写真の花サイズは7.5㎝で、バルボフィラムとしては大型の花です。本種については色々な点で曖昧なことから下写真に参考にと、近縁種の比較画像も掲載しました。本種はJ.Cootes’Philippine Native Orchid Speces’に依れば、フィリピンルソン島Quezon州生息の固有種とされます。しかし一部のサプライヤーのページにはボルネオ島も見られ、これは誤記と思われます。本種詳細は下画像青色種名のクリック先となります。

  ネットでBulb. costatumを検索すると、香りについてIOSPEでは香りマークが無記載ですが微香があり胃腸薬の匂いがします。国内およびAsiatic Greenでのマーケット情報は見られません。おそらく市場では取引が殆ど無いバルボフィラムと思われます。当サイトでもそうでしたが、上記の混沌とした実状を考えると、花の無い(あるいは販売者自身が花を未確認)の本種の購入は類似種のミスラベルの可能性が有り、避けた方が良いかも知れません。

Bulbophyllum costatum フィリピン ルソン島
Bulb. costatum Bulb. inunctum Bulb. membranifolium

もう一つのセロジネ(Coelogyne sp aff. asperata?)

 下画像は現在開花中で、前記2種と同様に始めて開花する淡い黄緑色のセロジネです。リップ形状からはCoel. asperataに酷似していますが、本種はクール室にての開花であることと、花サイズは画像が示すように3.5㎝程で、Coel. asperataの7㎝とは大きく異なります。スッキリとした甘い香りがします。またバルブ、葉、花茎も本種はそれぞれ8,32,16㎝に対し asperataは14,50,45㎝と凡そ1.5-2倍の違いがあります。さらに本種の花寿命はCoel. asperataの短命(1週間程)に対し、すでに2週間が経過しています。花軸は新芽から発生しており、リップ形状と合わせVerrucosae節と思われます。下段右写真は右側の株がCoel asperata、左側が現在(18日)開花中の本種です。

 本種はCoel. longifoliumに混在しての入荷のためスマトラ島の高地生息の可能性が有り、一方Coel. asperataもスマトラ島の低地から1,600mに生息とされるため、花や株サイス共に大きく異なるものの、Coel. asperataの標高差による形状の違い(変種)とも考えられます。さらなる調査が必要です。

Coelogyne sp aff. asperata

始めて開花するセロジネ2種

 新年を迎え浜松温室内では例年と変わらない種が開花しています。温室では、昼間は寒冷紗を通った太陽光により25-27℃となり、夜間は灯油暖房で14℃に維持され、冬期とは云え、多くの種で根や葉が盛んに伸長しています。クール温室では昼間17℃、夜間12℃といったところです。こうした中、現在はデンドロビウムの改版ページの制作が1日当たり8時間以上、また外は真冬で適期ではないものの植替えが5時間程と、連日こうした作業に追われています。デンドロビウムの改版ページは300種を超え、その中で類似種がある場合には、その相違点を文字ではなく画像で比較することが有効と考え、10数年間に蓄積した膨大な写真からの選択・編集を行っています。残り2週間程でサイトの更新が出来ると思います。一方、現在コロナにより海外からの入荷が出来ず販売を休止していますが、昨年9月にマレーシアラン園より12月頃にはEMSでの発送ができるとのメールをもらい期待していたものの、オミクロンでEMSも怪しくなり現在はひたすら発送待ちの状態です。渡航は今年も難しいとしても、EMSの再開が1日でも早く来ることを願っています。

 前記したように2年近く入荷が無い中で、サプライヤーからの花写真はあるものの未開花株や種名不詳種がバルボフィラムを筆頭に50種以上あり、未開花の原因が栽培環境によるものと考え温度や輝度、通風などが異なる場所への移動を行い調査を続けています。そうした中、今年に入りセロジネで始めて開花した株があり、これらを撮影しました。

 下写真は1月現在、同時開花中の3種のセロジネです。横の配列はそれぞれの種を、縦はその種のリップと葉を示したものです。左はCoel. rochusseniiでボルネオ島、スマトラ島、フィリピンなど広範囲に生息する良く知られた種です。中央sp1及び右sp2が今回初めて開花する種で、Coel. rochusseniiに似ています。Coel. rochusseniiは1m程離れていても分かる強い香気を放っていますが、sp1とsp2は無臭です。いずれも花軸はバルブ基からでTomentosae節と思われ、Coel. rochusseniiの近似種か変種(地域差)と思われます。種名は今後の調査となります。葉は左から広線形、楕円形、倒披針形で、バルブは右が細長く、中央は表皮は滑らかで、3種の中では太く短いことが特徴です。より詳細な画像はデンドロビウムページ更新後にセロジネのページに掲載予定です。

Coel. rochussenii Coel. sp1 Borneo Coel. sp2 Borneo


前月へ

ー4