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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2019年度

   2020年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月  8月  9月  10月  11月  12月 

9月

Phalaenipsis sanderianaの歳比べ

 入荷時に高温タイプのPhal. sanderianaが中温タイプのPhal. philippinensisの中に混ざっていたものの、そのまま中温室にて栽培を続けていました。通常Phal. sanderianaの花寿命は30-40日です。しかし今回、その開花からすでに70日経っても枯れる様子がありません。交配種胡蝶蘭では出荷調整のため栽培温度を制御して開花時期をずらしたり、花寿命を延ばす処理は知られていますが、原種も同じ性質かと思いつつも、1ヶ月おきに撮影した画像を見て、短命花種の開花から枯れるまでの拙速さ比べ、そのゆったりとした形状変化に興味が湧きました。見方にも寄りますが、開花直後のふっくらと丸みのある若い花姿が、やがて徐々に引き締まって形を完成させ、次第に皺が現れ始める様子は、人と何ら変わらないではないかと感心してしまいます。下写真は左から7月24日、8月28日、9月30日の撮影です。こうした花姿を知ると、店頭で開花しているPhalaenopsis節(Phal. amabilis, aphrodite, schillerianaなど)の花を見て、店員に開花してからの日数を尋ねることなく、おおかた分かるようにもなります。

July 24 Aug. 28 Sept. 30

Bulbophyllum inunctumBulbbophyllum membranifolium

 現在、Bulb. inunctumBulb. membranifoliumが開花しています。いずれも生息標高範囲は広く、高い方では2,000m級に及ぶそうです。入手した際には果たして高温から低温のいずれのタイプか、入荷元に確認しなくてはならない種の一つで、栽培でどうも上手くいかないと云った場合の原因の一つは栽培温度が適切でない可能性があります。下写真左は両者を並べて29日に撮影したもので、左がBulb. inunctum、右下がBulb. membranifoliumです。いずれもその生息地の違い故か、同一種の中にもそれぞれに個性があり、中央及び右写真はBulb. inunctumでのフォームの違いを示したものです。現地マーケットでは徐々に低地生息域が減少し、高地産に移っており、生息地情報が不明の場合は、比較的涼しい場所での栽培から始めた方が良いと思われます。

Bulb. inunctum(left),.membranifolium(right) Bulb. inunctum

Aerides magnificaの開花

 Aerides magnificaの開花が始まりました。本種はフィリピンCalayan諸島生息種で現在はプランテーションによってほぼ絶滅状態と聞いています。2014年に本種がmagnificaとして登録されるまではAerides odorata Calayanaとフィリピン・マーケットでは呼ばれており、現地でもかなり高価で当サイトでも2万円程でした。下写真は野生株からの栽培株で新たなルートから得たものです。右写真はアルバフォームです。現在は実生株が得られるようです。

Aerides magnifica

デンドロビウムSpatulata節の植替え

 Spatulata節デンドロビウムが150株程あり、現在植替えを行っています。3年間植え替えをしなかったため、そのほとんどの株で若い疑似バルブは鉢から飛び出し根を空中に晒したままの状態でした。上段写真左は1.3m長のDen. stratiotesの植替え前の状態で、中央がスリット入りプラスチック鉢にクリプトモス100%で植付けた後の様子です。右写真は左の株の今年7月撮影の花です。これまでの植込み材は、大粒バーク、軽石、Ph調整炭のミックスでした。

 一方、下段は70㎝長のDen. leoporinumでMaluku島Jailolo生息株す。本種は新しい成長芽が疑似バルブ(茎)の根元から1つ上の節で発生するため、次々と上方に向かって成長し、鉢植えではすぐに植込み材から飛び出してしまいます。下段写真左はそれぞれの疑似バルブの根元を示したもので、新しいバルブの根を植込み材の中にに収めようとすれば、他のバルブの下部はかなり植込み材深く埋まってしまいます。これではやがて古いバルブの根元が腐敗するリスクがあります。そこで今回Spatulata節としては例外的に、垂直支持材に取り付けることにしました。Spatulata節でこうした植付けを行っている他種はDen. taurinumとなります。写真中央は60㎝炭化コルクに乗せた植付け前の本種で、右は植え付け後の画像です。

Den. stratiotes 1.5m Den. stratiotes (中央)植え付け後 Den. stratiotesの花
Den. leoporinum 70㎝

Dendrobium igneoniveumに見る若芽の発生と伸長

 昼間の日差しは強いものの、朝晩は肌寒く感じる季節になりました。温室内の昼夜の温度差も大きくなり、初春と同様に、この時期はほとんどのランで新芽や若芽に動きが見られます。この時期の株の成長は翌年の開花に不可欠で、もしこうした変化がないようであれば、8月の猛暑によるダメージを根が受けている可能性が高いと考えられます。下写真は28日、デンドロビウムFormosae節のDen. igneoniveumの若芽を撮影したものです。現在当サイトでは15株ほどを高温室にて栽培しており、酷暑に耐えてようやく元気を取り戻した感じです。

Den. igneoniveum

現在開花中のDendrobium cymboglossum flavavelillarious var. retroflexum

 現在希少とされるデンドロビウム2種が開花中です。左はDen. cymboglossumのflavaフォームです。一般フォームはセパルに複数のラインが入ります。一般種として入荷した株の中に偶然1株本種が混在していました。右はDen. vexillarious v. retroflexumでセパルおよびペタルは白色に近く、セパル・ペタルの背面が薄っすらと青味がかっています。これらは昨年に続き2回目の開花となります。前者は高温室、後者はクール室での栽培で、いずれも現在は炭化コルク付けですが、Den. vellillariousは、前に本ページで取り上げた山野草鉢へ、花後に植え替えを予定しています。

Den. cymboglossum flava form Den. vexillarious v. retroflexum

Peristeria lindenii

 本種は南米コロンビアやエクアドルなどの標高800 - 1,000mの多雨林山岳帯生息種とされます。3年ほど前にMundifloraから引き取った株で、昨年末に高温室にて開花していた迫力のある本種を見て、今年初めにスリット入りプラスチック深鉢にクリプトモスで植え替え、今度は中温室の高温側に置いて栽培していました。現在2株で開花中です。こうして花画像を見ると、南米のランはDraculaや先月取り上げたIda cinnabarina をはじめ、東南アジアのランとはまた違ったエキゾチックな趣があります。

Peristeria lindenii

Dendrobium jiewhoeiにみるリップ形状の多様性

 Den. jeiwhoeiはボルネオ島Sabah及びSarawak生息のCalcarifera節デンドロビウムです。当サイトでは2015年マレーシアPutrajaya花展で入手したのが最初です。その後2018年にはDen. hymenophyllum redで注文した株が全てDen. jiewhoeiのミスラベルで、さらに2年前にフィリピンラン園を通し、インドネシアラン園からJava生息のDen. montanum名で入荷した株の多くがDen. nudumのミスラベルでしたが、その中に今回1株、Den. jiewhoeiが開花しました。ミスラベルとしての品種としては期待外れですが、海外デンドロビウムマーケットでは本種は高価な多輪花種の一つで、国内マーケットでは当サイト以外情報がありません。一斉に開花すると存在感があり、より安価な株に間違って混入し入荷するのも不思議です。

 こうした経緯で、現在15株ほどを主にポット植えで栽培していますが、その花フォームには下写真上段に示す3つのリップ形状の相違が見られます。今回、これらが同時開花したため詳しく調べてみました。下写真は全種24日の撮影です。左(フォーム1)および中央(フォーム2)はDen. hymenophyllum redとしてマレーシアからのミスラベル種で花のリップ中央弁形状は、ネット画像で一般的に見られる方形あるいは台形であるのに対し、フォーム3はPutrajayaおよびインドネシアからの入荷種で3角形であることと、ペタルの縁がノコギリ状です。さらに下段左は葉形状を示し、葉が細長い左側がフォーム3で、右のやや幅広で濃緑葉がフォーム1および2となります。左から2つ目の写真は疑似バルブ(茎)色を示し、手前緑色の茎がフォーム3で、奥の2本の赤茶色の茎がフォーム1および2の持つ色です。さらにその右の写真はフォーム1の新芽で赤茶色に対し、右写真のフォーム3の新芽は緑色です。このようにリップ形状や疑似バルブの色にはフォーム1および2とフォーム3には明確な違いが見られます。これ程の視覚的特徴の違いから個体差や地域差の範囲内とするのも違和感があり、フォーム3は別種相当と見做すことも考えられますが、それも議論のあるところです。一方、Den. jiewhoei(2008年)はDen. calcariferum(1935年)のシノニムとされています。おそらくはフォーム3は、フォーム1および2に対して亜種あるいは変種としての位置付けにあるのではと思います。当サイトではフォーム3を他と区別するために当面aff. jeiwhoei.とします。

Den. jiewhoei フォーム1 Den. jiewhoei フォーム2 Den. jiewhoei フォーム3
葉形状 疑似バルブ色 フォーム1及び2新芽バルブ色 フォーム3新芽バルブ色


(続)温室の新レイアウト

 今月歳月記の最初に取り上げたAerides, Vandaを中心とした温室のレイアウトに納得がいかず、16日から3日かけて再度変更しました。結果として3棟分のレイアウト変更作業に要した日数は丁度1か月となりました。目的は株全体をむらのない風通しの良い配置とすることです。下写真は変更後の画像です。上段左はAerides magnificaleeanaを中央通路に沿って配置したもので、現在手前のAerides magnifica及びalba合わせて15株ある中で13株が写真に見られるように多数の花茎を伸しています。この背面の壁側通路沿いにはセロジネやデンドロビウムが並んでいます。右はバスケット植付けのVanda各種です。下段左は20株程のVanda sanderianaの一部で、右は1.5 - 2m超えの背丈になったVanda foetida, floresensis, luzonica, ustiiiなどです。

 これらAeridesやVandaはポット植えは適さず、根を空中に垂らす栽培が良いのですが、国内の環境では往々にして湿度不足で葉がしな垂れたり、次第に痩せていく様態が見られます。Vanda専用の温室であれば、フィリピン・バタンガスやミンダナオ島ダバオのラン園の様な高温高湿環境もできなくはないものの、同じ棟内にAeridesやVandaが占める割合は60%程度で他属も多数同居しており、全種を同一栽培条件にして、管理の負荷を軽減することも必要です。このため 昨年夏から、下段左写真のVanda sanderianaに見られるように根周りに通気性や親水和性の高い農業用不織布を絡めたり、Aeridesでは写真上段左のように根の一部をコルク板に取り付けるなどして、ベアールートに比較し根周りの湿度を長時間維持することで、セロジネやデンドロビウム属などとの同居を可能にする栽培実験を進めてきました。大粒のバークや、ココナッツ繊維などを用いたポット植えも、かって試してみましたが、植込み材の経年変化による気相率の変化で、ポットから飛び出た根だけが生きているような不安定な様態もしばしばで、百株を超える大株となるVandaの栽培管理には不適との判断をしました。幸いに同一種であっても株数は豊富にあり、栽培実験用サンプルには事欠かないことから、よくも悪しくも偶々の実験結果ではなく、普遍的な傾向が把握できます。こうした試みの1年後の結果は良好で、Vanda sanderianaでは下段左の写真のように、痩せ気味であった株の葉数が増え、葉に勢いがでており、そうした処理をしない株との違いが目立つようになっています。

Aerides属。手前はmagnifica、奥がleeana Vanda lombokensis, dearei, devoogtii, mindanaoensisなど
Vanda sanderianaiなど, Vanda floresensis, ustii, luzonica

現在開花中のデンドロビウム

 現在(12日)開花中のデンドロビウムを9種撮影しました。この残暑期間は開花株が少なく、10月に入れば再び多くの種で開花が見られると思います。写真のそれぞれはポット植えがDen. jiewhoeiofficinale、炭化コルクがDen. calicopisroslii、他は全て木製バスケットでの栽培です。

Den. calicopis PN Malaysia Den. anthrene Borneo Den. roslii PN Malaysia
Den. jiewhoei Borneo Den. annae Sumatra Den. sp (endertii aff.) Sulawesi
Den. lambii Borneo Sabah Den. officinale China Den. sororium Solomon Isds

現在開花中のセロジネ3種

 残暑が続きますが、温室内はかん水をしなくても換気扇で35℃ほどになりました。下写真は左および中央が中温室で、また右は猛暑中から高温室で開花を続けているセロジネをそれぞれ撮影しました。見るからに左と中央は涼しそうで一方、右は暑そうな色合いです。

Coel. bicamerata Sulawesi Coel. cuprea Borneo Coel. celebensis Sulawesi

Phalaenopsis lindeniiの開花

 現在多数のPhal. lindeniiが開花しています。その内の数株を選び並べて撮影(11日午前中)しました。当サイトではPhal. lindeniiは中温室での栽培です。写真で右から3つ目の支持材に茶色のコケが付いた株は、ヘゴ棒への植付けから16年経ちます。以来一度も植え替えをしていませんが毎年開花しています。

Phal. lindenii Isabela Province Luzon

Bulbophyllum recurvilabre

 Bulb. recurvilabreが5株ほどで現在開花中です。フィリピンレイテ島標高500m以下に生息の本種は、下写真上段左の花が示すようによく目立つフォームにも拘わらず、1999年までなぜ発見されなかったのか不思議です。当サイトは2016年に入手し2017年2月の歳月記に開花画像を掲載しました。その時の花フォームは下写真下段中央で、Bulb. nymphopolitanum 近縁種の一つとの印象でしたが、Purificacion Orchidsが同年東京ドームに本種の開花株を出品し、そのインパクトのある花フォーム(上段左と同一)を見て驚き、このフォーム株を入手しました。花の縦スパンは10㎝です。現在開花中の花は下段左でやや小ぶりの7㎝です。本種は下写真が示すように多様な花フォームがあり、他種との相違点は湾曲したリップ中央弁に筋状のくびれが2つ(他種の中央弁は一つ)あることです。下写真は全て当温室にて撮影した画像です。orchidspecies.comやJ. cootes著Philippine Native Orchid speciesには香りの記述がありませんが、煮干しのような匂いがします。なお現在、当サイトのバルボフィラムページには本種が未掲載となっており次回更新時、このページが追加予定です。

Bulbophyllum recurvilabre

Stanhopea pullaIda cinnabarinaの植付け

 50cmを超える大きな葉をもつ南米のランの植え替えをしています。Stanhopea pullaはコスタリカ、コロンビア低地熱帯雨林帯生息の着生ランです。花茎はDraculaと同様に株の下から下垂する性質のためポット植えは適さず、バスケットが一般的です。一方、Ida cinnabarinaはベネズエラ、エクアドルなどに生息の地生ランです。下写真左がStanhopea pullaで、これまでの鉢植えから取り出し水洗いした直後の状態で、大量の根と新芽が4本発生しています。今回は花を得るため、これまでの鉢植えから写真中央の大型バスケットに100%ミズゴケで植え替えました。 また前月にその大きな花サイズを取り上げたIda cinnabarinaは、今回の植え替えではプラスチック鉢から右写真に見られる特殊な山野草鉢にクリプトモス100%で植え替えました。この鉢は、会津在住時にレブンやカマナシ・アツモリソウに使用していたもので大深高台焼〆という厚みのある素焼きの山野草鉢です。かん水をすると、その厚みにも拘らず鉢表面に水分が浸み出てくるほどの通気性と保温性の高い鉢です。ただ現在は生産されていないようです。浜松に移住する際、廃棄するにはもったいないと15鉢程持ってきたものです。写真左のStanhopea pullaも実はこの鉢でこれまで栽培していたもので、その成長効果は極めて高く、低-中温系の大型のラン、例えばAnguloa属、また気難しいCym. elongatumなどもクリプトモス100%でこれに類する山野草鉢に植付けた栽培実験を近々行う予定です。その目論むところは、アツモリソウ栽培で学んだことですが、栽培温度に関しこうした厚みのある山野草鉢は通風があれば、鉢からの気化熱で根周りは5-7℃程下がる(一般の素焼き鉢では2-3℃)ことから、低温系のランは中温で、中温系は高温にて栽培可能になるのではないかという期待からです。

Stanhopea pulla Ida cinnabarina

2016年12月入手のDen.sp Sumatraについて

 先日知人より、スマトラ島生息の新種が掲載された直近のドイツ・ラン専門誌Orchidee 6(20),2020の記事をメールにて頂きました。ジャーナルによるとその新種はスマトラ島Ache州、標高1,300-1,600mの生息で、2020年2月に入手し6月に開花、発見者の名から種名をDendrobium bandiiとしたとあります。記事の中にその新種の画像が幾つか掲載されており、その中のFig.6の画像を見て驚きました。当サイトが2016年12月マレーシア経由で、スマトラ島生息種として入手し、翌年3月に開花したため2017年同月の歳月記の「Dendrobium sp」に記載した種と同種と思われたからです。このsp種は歳月記2018年2月の「名称不明のcalcarifera節デンドロビウム」、また2020年2月の「Dendrobium sp SumatraとCymbicallum Complexの開花と花比較」でも取り上げ、また2017以降サンシャインや東京ドームラン展などにもDen. spとして販売出品してきました。つまり当サイトでは新種発表の3年以上前に、すでにこの新種を入手し販売していたことになります。新種発表の数年前にすでに入手していたケースは本種だけでなく、これまで何度もありますが、いずれも出品しても無名のため購入される方はなく出戻りになってきました。こうした状況はデンドロビウムだけでなくバルボフィラムも同じで、例えば2017年5月の歳月記の中の「サンシャインラン展でのBulbophyllum spの販売方法」で取り上げ、20種程のsp種を同年の蘭友会サンシャインらん展に出品しました。これらの中には、2020年1月の歳月記「続バルボフィラムBulb.nymphopolitanum complex」で紹介した全ての種が含まれていました。今日をもってもそれらの種名あるいは変種、亜種など位置付けが分かりません。これら以外にも花写真があるにも拘わらず歳月記でspとされている多数の種は新種の可能性大です。

 新種に興味のある趣味家は、当サイトのブースで名前の無い怪しげな株が出品されていた場合は、迷わず購入した方が良いかも知れません。種名不詳段階では高くても3,000円を超えたものはこれまで無いと思います。しかし一旦、知名度の高いジャーナルに新種として紹介されると、その後は現地からの入手は困難となり、当サイトとしても数が少ない場合は実生化の必要があり販売は難しくなるためです。

Den. bandii (New species) Sumatra Ache

Dendrobium boosiireypimenteliiの開花最盛期

 現在(5日)、それぞれ40株程を栽培しているDen. boosiiDen. reypimenteliiが一斉に開花しています。この時期開花のDen. boosiiはフィリピン・ミンダナオ島Bukidnonの生息種で、レイテ島生息株も数株栽培していますが、こちらは2ヶ月程遅れて開花が始まります。一方、Den. reypimenteliiもミンダナオ島Bukidnonの生息です。Den. boosiiは2011年、Den. reypimenteliiは2017年登録のいずれも新種となります。また同じ下垂タイプでBukidnon生息の新種Den. schettleriも2-3ヶ月遅れての開花となります。下写真は全て5日の撮影です。

Den. boosii Mindanao Bukidnon Den. reypimentelii Mindanao Bukdnon

温室レイアウト変更完了

 クール温室を除く3棟の新しいレイアウトがほぼ完了しました。下写真は上・中・下段それぞれバルボフィラム、胡蝶蘭およびVandaを中心とする各棟内の現在の様子です。上および中段の画像は棟の中央通路と左右壁側にある通路から撮影した風景です。このレイアウト変更により全株に対し風通しが良くなり、また奥行15mの通路側から目や手の届く位置となったため株の状態が把握し易く、今後の成長を期待しています。なお、温室は全棟、温度センサーによる自動開閉式の天窓付きで、壁・屋根は中空ポリカーボネイトを2層(枚)重ねの鉄筋建てです。内部はさらに全面(天井・壁)を中空2重構造のサニーコートで覆っています。寒冷紗は電動式で、サニーコート上面に設け遮光率は70%です。浜松では温暖な気候とは云え、こうした構造は浜松に移る前の凡そ8年間、寒冷地会津で学んだ、とてつもない冬期の暖房コストを避けるためです。会津ではアルナグリーン製ポリカ11m x4.5mの温室で、1棟分の晩秋から早春までの暖房費は、浜松での上記3棟分の合計よりもさらに高額でした。 また現在の温室には灯油式暖房装置と共にエアコンも設置しているものの、エアコンはクール温室の1棟を除き、他棟では5年近く使用していません。これらの棟での夏期の空冷は自動換気扇と16℃の地下水によるかん水です。このように当サイトの温室は自動や電動仕掛けだらけの設備ですが、これも写真に見られるような数千株の、しかも多くが数株単位で形やサイズが異なる種の栽培ともなれば日常の管理が大変で、他に手が回らないからです。かん水をしながら1株づつの様態をチェックし、他はボタン一つで、と云った管理が日課です。

バルボフィラム中心とした温室
胡蝶蘭、パフィオペディラム、デンドロビウム温室(中央及び右写真は通路奥側からの撮影)
Aerides, Vandaを中心とした温室

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