栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2019年度

   2020年 1月  2月  3月  4月  5月  6月  7月 

5月

Coelogyneの植え替え

 3-4年間ほど植え替えの無かったセロジネの植え替えをしています。下写真は左からCoel. multiflora. exalara, dayana, marthaeです。これまでCoel. multifloraおよびexalataはスリット入りプラスチックポットに、また dayanaおよびmarthaeは大型木製バスケットにそれぞれクリプトモス・ミズゴケミックスの植え付けでしたが、いずれも先端部の2-3のバルブはバスケットやポットからはみ出し、その根は空中に浮いていました。またバスケット植付け株は根が木片に幾重にも重なって活着し、取り外しが困難で、バスケットを解体しての作業となりました。写真左のCoel. multifloraはポット表面から60-80㎝の背丈があります。新たな植付けは株分けと、古いバルブをカットし、1-2バルブ分の伸びしろスペースを設けるため、ポットは一回り大きなサイズを用いました。ポット、バスケット共に植込み材は従来と同じクリプトモス。ミズゴケミックスです。セロジネの植え替え作業はこれでまだ1/3ほどで、これからCoel. odoardii、celebensisなどが始まります。低中温タイプの6種類程のセロジネは1年前に済んでいます。

Coel. multiflora Sulawesi Coel. exalata Borneo Coel. dayana Borneo Coel. marthae Borneo Sarawak

Bulbophyllum sp New Guinea

 2016年4月に入手したニューギニアからのBulb. spが開花中です。本種は同年同月の歳月記に取り上げています。入荷から1年後に15株程ある内の2株に開花が見られたものの、その後は一向に開花がないまま時が経ち、昨年秋にそろそろ植え替えをと、1株を低温室から作業場所のある高温室に移動し、2ヶ月ほど植え替え待ちをしていたところその株が開花しました。どうも本種は低温ではなく高温タイプではないかと全株を高温室に移動し、様子を見ていたところ、今月に入り複数株で開花が始まりました。ニューギニアからの種名不明種はそのほとんどに生息地(域)情報がなく、これまでの経験から高温タイプを夜間最低温度12℃程に置いても枯れることはない一方で、低温タイプを夜間25℃以上の高温環境に置けば、いつの間にか消えてなくなることから、ます低温あるいは中温室に置いて栽培を始めるようにしており本種も当初は低温室とした訳です。

 これまでの3年間、本種も低温室で枯れることはなく発芽もあり、しかし新芽が成長すると古い葉が枯れてゆくため株サイズは変わることなく、いわゆる現状維持様態が続きました。今回高温室に移してからも同じように発芽するものの、古い葉が枯れることはないことから、結果として本種は高温タイプと見做し、現在はBulb. lobbii、kubahense、medusaeなどと同じ環境での栽培に変更しました。では本種の種名ですが、ネットで同種と思われるバルボフィラムがIndonesia OrchidのFacebookに2年前から見られ、当初人名のような名前が付けられていたため種名検索したものの公的な該当種がなく、現在は画像だけが見られます。おそらくすでにどこかのJournalに発表されているのではと思います。下写真は27-28日の撮影です。

Bulb.sp New Guinea

こんな原種も現在植え替えています。Cattleya trianae 'Highjack' AM/AOS

 2013-4年頃は多数のラリアやカトレア原種を集めていました。2016年にこれらを処分し、現在は販売していませんが、手放しがたい種が幾つかあり、その一つがCattleya trianae 'Highjack' AM/AOSで、原種としては可なりの美形です。確か2013年にプレオーダーとしてBela Vistaから東京ドームで入手したカトレアかと思います。写真左が本サイトで開花した花で、右は今回植え付けの終わった株です。炭化コルク60㎝x12cmに取り付けています。これまではポット植でしたが、本種はリゾームが上に向かって伸びるため、やがて新芽の根は空中に張り出したままとなり成長が遅く、吊り下げ型の取り付けに変更しました。写真全てが1株の元親から成長し分割した株です。本種はマーケット情報が少なく、今年2月初旬の米国マイアミのラン展での入賞花が見られます。花フォーム画像からは自分が所有する故か贔屓目に見てしまいますが、下写真の花の方がセパル・ペタルとリップ色との濃淡のコントラストが美しい気がします。

Cattleya trianae 'Highjack' AM.AOS

新種Bulbophyllum translucidum の開花

 2016年発表の新種、Bulb. translucidumが開花しました。当サイトが入手したのは2016年9月で、翌年5月の歳月記に取り上げました。入荷時にはBulb. leytense名のミスラベルでしたが、フィリピンLeyte島からの入荷株であることと、葉とリゾーム形状がBulb. leytenseと似ていたため、その名前を付けたものと思われます。2016年発行のDie Orchidee 2(4) 2016によると生息地はミンダナオ島北東部Agusan del Surの標高約320mとされ、その他SamarおよびLeyte島とあります。本種については先月の歳月記に杉皮板から炭化コルクへ植え替えた様子を紹介したばかりで、植え替え後の初開花となります。国内マーケットは当サイト以外ないようで、何度か東京ドームやサンシャインラン展に出品しましたが買われた方がいた記憶がありません。下写真は花、株共に25日の撮影です。

Bulb. translucidum

Bulbophyllum claptonense aure

 Bulb. claptonense aureを2015年7月のマレーシアPutrajaya国際花博で入手して5年が経ちます。その翌年、東京ドームラン展にNT Orchidが2バルブ50,000円で出品していたのが国内マーケットの初登場と思います。当サイトは2017年のサンシャインラン展で3バルブ20,000円で出品しました。下写真は23-24日撮影のBulb. claptonense aureです。中央はこれまで3回の株分けをした元株、右は株分けの際のバックバルブの一つで1年程で新芽や蕾が見られます。これらはブロックバークに取り付けており非売品です。本種は人気が高く、分け株はすぐ売れてしまうこともあり、現在マレーシアに注文をしているところです。

Bulb. claptonense aurea Borneo

現在開花中のデンドロビウム

 5月末現在開花中のデンドロビウムです。

Den. olivaceum Green Borneo Den. officinale China Den. peculiare Sumatra
Den. Chameleon alba Luzon Philippines Den. lambii Sabah Borneo Den. phillipsii Mindanao Philippines
Den. smilliae Papua New Guinea Den. lancifolium New Guinea Den. balzerianum Leyte Philippines
Den. endertii aff. Den. polytrichum Luzon Philippines Den. nudum Sumatra
Den. laxiflorum Moluccas Den. klabatense Sulawei Den. yeageri Luzon Philippines

Dendrobium amboinense II

 3月に取り上げた本種が第2波の開花を迎えています。本種は短命花ですが、1年で4回程の開花期が見られます。独特な花形状と純白のセパル・ペタルが特徴です。今回取り上げたのは、ドーサルおよびラテラルセパルがこれまでで最も長い、10㎝を超える花が開花したためです。下写真手前がそれで植え替えが残っていた数株の一つです。疑似バルブを太く充実させればLS15㎝サイズも出現するかもしれません。

Den. amboinense

Bulbophyllum gjellerupii

 現在、Bulb. gjellerupiiが開花しています。下写真上段が21日撮影の花と株です。本種はラテラルセパルが上方に向かって開花する形状のバルボフィラムです。この株はキャメロンハイランドで2016年入手したもので、花サイズはラテラルセパル(LS)が3㎝ほどです。このラン園にはマレーシア生息種と共にニューギニア種も多く栽培しており、Bulb. gjellerupiiはニューギニア生息種とされます。本種についての記録は1929年と古いようですが、花サイズ、栽培温度などを含めほとんど情報がなく、マーケット情報も国内は無く、海外もほとんど見当たりません。当サイトの栽培では、高温タイプで開花期は春となっています。そこで形状の似たBulb. cheiriBulb. lyriformeなどをネットで調べていたところ、orchidspecies.comのBulb. cheiriのページで疑問な点が見つかりました。

 orchidspecies.comのBulb. cheiriページのシノニム(同種異名)項にBulb. megalanthumBulb. witfordii名があります。これらはフィリピン生息種としてPhilippine Native Orchid Species Cootes 2011で花画像を見ることが出来ます。問題は2.8㎝とされるorchidspecies.comのBulb. cheiriと、Cootes氏書にあるBulb. cheiri, megalanthum, withfordiiとはいずれもセパル・ペタルのサイズが異なるだけでなく、花フォームもそれぞれ同種とは思えない相違があります。写真下段は当サイトにて2017-2018年に撮影した、左からBulb. cheiri, megalanthum, withfordiiと思われる種で、それぞれBulb. cheiri、Bulb. sp cheiri aff 、Bulb. sp cheiri yellow typeとしてPalawanから個別に入荷した株です。サイズはラテラルセパルがそれぞれ5.5㎝、4㎝、5㎝です。下写真上段やorchidspecies,comの画像とは、いずれの種も大きく異なりBulb. cheiriのシノニムに位置づけることは無理があるように思われます。

Bulb. gjellerupii LS:2.8cm
Bulb. cheiri aff. Palawan LS::5.5cm Bulb. megalanthum aff.Palawan LS: 4cm Bulb. withfordii Palawan LS: 5cm

Bulbophyllum bicolor ?

 中国およびベトナム生息種とされるcirrhopetalum節Bulb. bicolorは、肌色をベースにセパル・ペタルの内側には赤色のラインが複数平行に走り、前方に長く伸びたラテラルセパルが特徴です。久々に当サイトの温室にて開花したため、今回改めてorchidspecies.comのBulb. bicolorを参照したところ、花サイズが1.25㎝と記載されており、一体このサイズはどの範囲を指すのか、今回開花した花はBulb. annandaleiとほぼ同じサイズであり、それではとorchidspecies.comのBulb. annandaleiを見たところ、こちらは5㎝とあります。おそらく横幅と縦幅の違いと思われますが、NSサイスで表記するのであれば、acrossとかhightなどの情報を付帯する必要があります。下写真上段の花と株は21日撮影でBulb. biolorとして入荷したものです。ドーサルセパル先端からラテラルセパル先端までのNSサイズは5㎝、ラテラルセパルは3.2㎝です。1つの花が5㎝で、これが複数同時開花するのですからバルボフィラムの中でも、もっとも派手な種の一つになるにも拘わらず、入荷以来1株も売れなかったのは、はたしてBulb. bicolorでは花が小さ過ぎて魅力がないと思われていたのかと早速、廃棄同然のこの株を植え替えました。それが上段右画像です。

これまでBulb. bicolorとしていた花サイズ縦スパンNS:5㎝ 左株の炭化コルクへの植え替え
Bulb. annandalei 一般フォーム Bulb. annandalei Cameron Highlandsから入荷

現在開花中のCoelogyne4種

 写真は現在開花中のセロジネです。左から3列それぞれはNSで7-10㎝の大きな花サイズです。Coel. xyrekesはマレーシアの1次業者から入手した株で、この業者は森林に囲まれた山中に住んでおり、普段は山からとれる山菜や果物を、またそうした売り物が無い期間、いわゆる農閑期は、花木を国道脇の露店で販売している人たちです。数年前その人たちの住居を訪れたとき、Coel. xyrekesがないかと尋ねたところ、4時間程待ってくれと言うのです。この中途半端な時間はどうしたものか同伴の園主に聞いたところ、彼らはこれから片道2時間ほどかけて山に入り取ってくるらしいのです。それにしてもこれからジャングルの中で、しかも高い木の上で開花していなければ分かり様もないセロジネを探し、登って採取するのに4時間はやはり短すぎ、おかしいと再度聞いたところ、彼らは農閑期の生計を支えるため山に入った際、いくらかの花木を集ておき、先祖代々からの山でそれらを移植栽培しているらしいというのです。キャメランハイランドなどマレーシア国道脇露店の販売人は、長年そうした生業をしている人たちであることを初めて知りました。4時間も待てないので、明日持ってきてもらいたいと伝えたところ、翌朝工事現場でよく見る1輪車に20株ほどを乗せてラン園に持ってきました。よく見ると元はほぼ1株のクラスター状態から10バルブ程の単位に株分けされているようでした。コロナウイルスが沈静化し、再度マレーシアに出かけるときはクラスター状態のままにしてもらうよう要求することを考えています。上手くいけば1株が抱えきれない程の巨大なCoel. xyrekesを入手できるかもしれません。

Coel. xyrekes Seremban Malaysia Coel. usitana Bukidnon Mindanao Coel. celebensis Sulawesi Coel. dayana Borneo

Dendrobium uniflorum f. alba giant? II

 Den. uniflorum近縁種は販売者にとり最も厄介なグループの一つです。前項でDen. uniflorum albaフォームに似た4㎝サイズの花を取り上げました。再び最近登録されたDen. jyrdiiOrchideenJournal Vol.6・05, 2018)を含め、株と葉を画像で比較してみました。

 下写真は花画像を除いて、19日に撮影したものです。 左がDen. uniflorum albaです。中央および右がその類似種で、その花サイズは左のDen. uniflorumに比べて花も疑似バルブも大きく、生息地が明確なのは右のDen. jyrdii-aff IIで、Palawan諸島です。フィリピンにおけるDen. uniflorumの生息地北限が現時点ではIlocos Norte(ルソン島西北端)とされ、一方.Orchiddeen記載ではDen. jyrdiiは現在Palawan生息地以外は知られていないとされることを考慮すれば、下写真右はDen. jyrdiiである可能性が高くなります。一方、中央のDen. jyrdii aff. Iは前項で取り上げた種で、その生息地が不明であるものの、Den. uniflorumの最大値を遥かに超える長い疑似バルブで、花と共に株サイズに大きな違いがあります。OrchiddeenによればDen. jyrdiiは1.5mを超えると記載されていることから、この種もDen. jyrdiiの可能性があります。写真4段はそれぞれのSpur(距)を表示したもので、3列目のDen. jyrdii aff IIがやや長いようですが、明確な違いは見当たりません。いずれにしても、大きなDen. uniflorumに似た白い花であっても、Den. jyrdiiとされる種はフィリピンPalawan生息種で、2018年時点ではそれ以外での生息地は確認されていないとのことですので、Den. jyrdii aff. Iのような大きな花と長い疑似バルブをもつ株が、Palawan諸島以外で発見されれば、それは新種あるいはシノニムとして別名が付くかも知れません。

Den. uniflorum alba Den. jyrdii aff. I Den. jyrdii aff II
株サイズ:45cm 株サイズ:95㎝ 株サイズ:60㎝

胡蝶蘭Aphyllae亜属種の植え替え

 現在胡蝶蘭Aphyllae亜属(Phal. honghenensis, hainanensis, wilsonii, braceanaなど)の植え替えを行っています。Aphyllae亜属は、中国雲南省からベトナムまで大陸山岳地帯に生息し胡蝶蘭の中では栽培難易度の高い種です。植え替えは2017年以前の杉皮板取り付けの株から、2年半前の炭化コルク付けの凡そ30株程で、今回から炭化コルクに統一しました。従来と異なるのは、取り付け材の長さを60㎝x9㎝と45cmx8cmの2種類とし従来の1.5倍長としたことです。2016年歳月記に栽培法を記載していますが、当時は1年分の情報を1ページで表示していたためロード負荷が重く、これを軽くするため抜粋したリンクをつくりました。

 下写真上段は植え替えが終わった株の一部で、これで1/3です。この亜属は入荷時にはsp名が多く、しばしば注文を頂くのですがミスラベルを避けるには、花を確認するまで出荷が出来ません。花の確認次第、順次販売となる代表種です。


Dendrobium uniflorum f. alba giant?

 現在、Den. uniflorumアルバフォームが開花中です。一般フォームのDen. unflorumの花サイズはorchidsecies.comによると1.25 - 3.1cmとされ、また疑似バルブ(茎)の長さはJ. cootes氏著Philippine Native Orchid Specesでは最大(up to)長40㎝と記載されています。しかし今回開花した株は花サイズNSで縦横幅共に4㎝、疑似バルブは90㎝を越えており、それぞれの情報とはかなり異なります。現在当サイトでは、Den. uniflorumのアルバフォーム株は木製バスケット植え付けで5株栽培しており、これらはいずれもフィリピンからの入荷ですが疑似バルブ長は40-50㎝です。今回の特大サイズの株は、Den. paathiiの中にラベル無しで紛れて当温室内で数年栽培されていたため、フィリピンあるいはボルネオ島どちらの生息株かが不明です。下写真は全て本日(18日)撮影で、左下段は左から本種、一般Den. uniflorumDen. ellipsophyllumでサイズを比較したものです。右は本種の株で炭化コルク吊り下げ取り付けとなっています。


Cymbidium ensifolium subsp. haematodes

 2018年、Cym. spとしてミンダナオ島Bukidnonから入荷したシンビジウムが開花し、Cym. ensifolium subsp. haematodesであることが分かりました。Cym. ensifoliumの亜種とされるsubsp. haematodesは現在、独立したCym. haematodes名で扱われているようです。下写真は現在(17日撮影)開花中のCym. haematodesです。本種のBukidnon生息は初めての確認と思われます。Cymb. ensifoliium類似種は日本を含め、インドからベトナム、さらにマレーシア、インドネシア、ニューギニアと広く分布しています。その中でCym. ensifoliumのマーケット情報は、しばしば見られるものの、Cym. haematodesについては、本サイトが2019年のAJOSサンシャインおよび東京ドームラン展に出品した情報以外ありません。この時のCym. ensifoliumおよびCym. haematodesはボルネオ島生息株でした。

Cym. ensifolium subsp. haematodes

Bulbophyllum lobbii giant

 Bulb. lobbiiはマレーシア、インドネシアおよびフィリピンと生息域は広く、またその近縁種も多く良く知られたバルボフィラムです。花サイズはorchidspecies.comによれば7.5㎝ - 10cmとされます。一方、マーケットでは10㎝を超える本種をgiantと呼んでいるようです。この花サイズは株の成長や充実度に応じて変化することはなく、サイズは一定しています。下写真左は当サイトにて現在開花中(16日撮影)のBulb. lobbii giantで、3年前にマレーシアの1次業者の庭の木に活着していた株です。花サイズを見て入手しました。ペタルスパンが12㎝です。右写真は左がフィリピンPalawann諸島のBulb. palawanenseでBulb. lobbii近縁種としては大きい方ですが、並べると小さく見えます。株がクラスター状となっていることから近々植え替えを行う予定です。


Bulbophyllum sp red from Sulawesi

 BSサイズにも拘わらず、入手して数年間開花が無いランを相当数,、現在在庫していますが、2015年12月に入手したスラウェシ島からのBulb. spが4年半を経て、やっと開花しました。あまりに長い花の未確認状態であったことから購入される方もなく、ひっそりと温室の片隅に眠っていました。当サイトのバルボフィラム・サムネールにあるsp3です。花形状からはBeccariana節でBulb. virescensuniflorumaeoliumなどに類似しています。しかしsp3のラテラルセパルはBulb. uniflorum, aeoliumと比べ6㎝と長く、バルブ形状はスリムで、Bulb. virescensaeoliumのような幅広の扁平ではありません。また類似種の中では、本種と同じスラウェシ島生息種は現状Bulb. virescensのみです。一方、ネット画像で見られるBulb. virescensのredタイプとも違和感があります。唯一、T.W..Cheng氏のBulb. virescensとするPinterest画像に似ているものの生息地情報は不明であり、ではスラウェシ島生息とされる既存のBulb. virescensの形状や花フォームを確認したいのですが確証的情報は見当たりません。現時点ではBulb. virescensの変種あるいは亜種ではと考えています。

 下写真は今回(14日)撮影した花画像です。花数は3輪ですがこれは初花故で、株が充実すれば多輪花になると思われます。写真の株は1年半前に杉皮板から炭化コルクに植え替えしたものです。上記の情報と共に現地ラン園には、その後の入荷が無いこともあって希少種の可能性もあり、中・高温室や輝度の異なる場所にそれぞれ分散し栽培していた5株を植え替えし、開花した株の環境(高温タイプ 15-35℃)に移しての栽培にしました。

Bulb.sp from Sulawesi (Bulb. virescens aff.)

現在開花中の胡蝶蘭原種

 Phal. schilleriana、amabilis, philippinensisなど、大型の花種の開花期が終わり現在開花中の胡蝶蘭原種は余り多くありません。これからはPhal. pulchrabellinaなどが花芽を伸ばしており開花期を迎えます。下写真のPhal. corningiana blue-lipは野生栽培株ですが、実生を作ったと園主からメールがありました。

Phal. pulchra Leyte Phal. bastianii Luzon Phal. lamelligera Borneo
Phal. maculata Borneo Phal. floresensis Flores島 Phal. corningiana blue lip

Dendrobium amboinenseの植え替え

 3月の歳月記に取り上げたDen. amboinenseの植え替えを現在進めています。半立ち性(新芽は上方に向かうものの、伸長に伴い弓なりとなり、やがて下垂する)の本種はこれまで写真上段右の円筒形状取付材にて栽培をしてきました。これはヤシガラマットを円筒形に丸め、筒の中にはクリプトモスを入れ、外面はミズゴケを4-5mm厚で一様に覆ったものです。この筒形取付材は、特に胡蝶蘭原種用として10年以前によく使用し、根が長く伸長する種や乾燥を嫌う種に適しています。欠点は、3年程度で植え替えをする場合、マットの網目に潜った根が取り外しにくく、かなりの根を切断せざるを得ないことです。この結果、ヘゴ板よりは少ないものの、多くの根が失われることで暫くは作落ち(一部の落葉)が避けられません。

 写真下段左は、上段右写真の円筒形支持材から取り外した株の一部です。今回の植え替えは4年を超えていたため、ヤシガラマットが劣化し、ボロボロと崩れる状態であったため、ほとんどの根を無事に取り外すことが出来ました。この結果、画像から本種の根が株サイズに対して如何に多く、長いかが分かります。上段左の花のセパルが9㎝長の大きなサイズである理由も、このような根張りの良さによるものかも知れません。このため植え替えは、これまでの筒型取り付け材と同等かそれ以上の根張り面積を得るため、下段右写真に見られるような50cmx12㎝サイズの炭化コルクへの取り付けとしました。

Den. amboinenseの植え替え

バルボフィラムに見る花サイズの違い

 現在(7日)開花中のバルボフィラムの中で、同種にも拘らず花サイズが大きく異なる2種を取り上げてみました。下写真左はSumatra島生息のBulb. grandiflorumで、右はBulb. maxillareです。Bulb. maxillareは写真左がマレー半島、右がPalawan生息株となります。こうしたサイズが同種で大きく異なる種は、胡蝶蘭やデンドロビウムには余り見られませんがバルボフィラムではしばしばで、個体差、地域差、一過性のもの、あるいは染色体異常などが考えられます。しかし僅かな差ではなく倍近くあるいは以上にサイズが異なり、且つ1株だけでなくロット内ではほぼ同じ特性をもつことも不思議です。

Bulb. grandiflorum Bulb. maxillare

Adenium obesum

 ランではありませんが今月に入り、塊根植物のAdenium obesumが開花を始めました。昨年2月フィリピンで入手し、現在はポット表面から60㎝程の背丈になっています。入手時は花が無く、茎も短い形状でしたが、どうやら園主は気を遣って、それぞれ花フォームの異なる株を選んでくれたようです。夏期は朝日のみの当たる屋外の日陰に置き、10月から6月までは温室内でランと同居です。そのため温室内では塊根植物にとって湿度が高過ぎると思われ、かん水を極力控えています。5株あり全体で30個ほどの蕾が見られます。植え付け時はポットに余裕が多少あったのですが、下写真に見られるように窮屈になってしまい花が終わり次第、一回り大きなポットに植え替え、1mを超える株に育てることが目標です。

Adenium obesum

現在開花中のデンドロビウム

 浜松温室にて現在開花中のデンドロビウムを撮影しました。

Den. punbatuense Borneo Kalimantan Den. igneoniveum Sumatra Den. fimbriatum Thailand
Den. laxiflorum Moluccas Den leoporinm New Guinea Den. lineale blue New Guinea
Den. intricatum Thailand Den. yeageri Luzon Philippines Den. loddigesii China
Den. cinnabarinum angustitpalum Borneo Den. khanhoaense Vietnum Den. paathii Borneo
Den. uniflorum Luzon Philippines Den. canaliculatum New Guinea Den. sp Palawan Philippines
Den. ovipostoriferum Borneo Den. mutabile Sumatra Den. tannii Moluccas
Den. stratiotes New Guinea Den. aurantiflammeun Borneo Den. erosum Malaysia
Den. victoriae-reginae Mindanao Philippines Den. toppiorum taitayorum Ache Sumatra Den. batakense Sumatra

Vanda floresensisの開花

 2016年4月に入手したVanda floresensisが始めて開花しました。このロットは2回目で初回は2015年10月です。不思議なことにorchidspecies,comやWikipediaなどには本種名が無く、Ijunggrens.orgのVanda species listに、多数のデンドロビウムの新種報告で知られるP.O'Byrne氏によるレポートで、フローレス島および小スンダ列島(バリ島からティモール島に至る島々)の生息種との記載があります。また本種名で画像検索すると、セパル・ペタルは黄色をベースに、クリムソン(深紅)色の斑点が広がり、リップ中央弁が青紫色のフォームと、セパル・ペタルおよびリップが共にエビ茶色の、2つのフォームが見られます。いずれもセパル・ペタルの先端部はソリッド色で、基部に向かって斑点模様となっています。さらにリップ基部の左右の突起形状が白色と、中央弁と同色のフォームがあり、通常ではあまり見られない同種間のこうした花色の違いが種の同定を難しくしているように思います。この2つのカラーフォームは個体差なのか、地域差なのかは不明で、本種に関する詳細情報はほとんどありません。

 種名の公的機関への登録が無いとすると、例えば人工的に創り出された交雑種(例えばVanda tricolorVanda limbataとの交配)の可能性も考えられます。しかし2016年の入荷15株の状態(サイズ、葉および茎形状の不均一性)からは実生とは考え難いものでした。下写真が現在(3日)当サイトにて開花中のVanda floresensisです。かなりの美形で、このフォームはインドネシア・サプライヤーAnggrek Rahayuサイトの花画像と似ています。今回の開花は長期間に渡って開花が無かったため温室の片隅に置かれていたものを、昨年10月にクラスター1株を含め3株を輝度の高い場所に移動して栽培したことが功を奏したと思われます。

 下写真下段中央はクラスター株で4つの新芽があり6茎の大株になっています。右は、本種についてこれほど情報が少ないのは希少性が高い可能性があるとの思惑から、眠っていた10株程の内、5株を新たに植え替える準備を始めた株です。

Vanda floresensis

Vanda lombokensisの開花

 インドネシアLombok島生息のVanda lombokensisが開花しています。今回の開花は2018年末の入荷株で炭化コルク付けとバスケットでの植付けをそれぞれ5株ほどで栽培をしている中のコルク付け株です。本種は黄色をベースにセパルペタル全面に赤褐色の斑点があり、またリップ形状が独特で、Vandaの中では個性と迫力のあるフォームをもちます。本種を最初に入手したのは2014年12月で、下写真の株は第3ロットとなります。それぞれのロットごとに生息環境の違いか、フォームが僅かながら異なります。5年間の栽培を通して分かったことは、本種はVandaの中で最も成長が緩やかな種であることです。現在台湾やタイでの実生が安価に入手できるようになりましたが、FS株になるにはかなりの年月がかかると思います。定年を過ぎ開花を急ぐ方は、FS株を入手されるのが必須で、小型株では年齢との争いになるかもしれません。ただ本種のFS株を取り扱っているラン園はこれほどの美形にも関わらず海外においても僅かです。

Vanda lombokensis

新型コロナウイルス問題

 昨日NHK特設サイトで、国内のラン業界にも深刻なコロナウイルスによる被害が及んでいることを知りました。慶弔用胡蝶蘭マーケットですが1/3程度に減少しているとのことです。一方、フィリピンではマニラ首都園のロックダウン封鎖によりランの出荷は止まったままだそうです。このため農園では、これまで開花間近な株を出荷していたものの、行き先を失った数千株が満開となり、作業者にとっては始めて見るその美しい風景を喜んでいるとのオーナーの強気のコメントもありました。裏返せば、その次に来るものは何か?そう思わざるを得ない深刻さが伺えます。

 当サイトでは原種のみの特殊なマーケットを対象としていることから影響は余りありませんが、問題はラン生息主要国間での渡航制限によって、海外からのランの入手ができないことです。おそらく夏ごろには渡航制限も緩和すると思いますが、ラン生息国での実際の感染者数や潜在感染の恐れは、しばらくは残ると考えられ、こうした国に出かけるには、ワクチン接種を行った上でないとリスクが高く、結果としてワクチンが出来るまでの1年近くは渡航は困難です。EMSによる対応もあり、これができるのがいつになるかです。それまで当サイトでは現在8,000株ほどあるランの植え替え等の整理と、入手以来4年以上開花が見られない株、名称不詳のsp株などを中心に栽培管理を強化する予定です。 いずれにしても1日も早いコロナウイルス問題の終息を願うばかりです。
 

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