10月現在開花中の花 26日現在、開花中の花です。
続COVID-19の影響 昨日(24日)、マレーシアラン園より現状出荷可能なリストのメールを再度もらいました。来月初旬までにランを発送するとのことです。クアラルンプールへの条件付き活動制限令(CMCO)は27日までとされていることからと思われますが、マレーシアのコロナ感染者は増え続けています。一方、メールによればインドネシア・サプライヤーの拠点が現在ロックダウン状態で出荷ができないそうです。インドネシアでは現在パンデミック状況にあり、医療崩壊が起こりつつあると云われています。こうした各国情報の詳細は、’新型コロナウイルス’と国名の2文字で検索すると分かります。このためスマトラ島、ニューギニア、ボルネオ島カリマンタンなどに生息のランの入手がしばらく出来ません。当サイトも多くの引き合いを現在頂いていますが、原種を専門に扱うことから海外サプライヤーへの依存度が高く、現在5,000株以上のランを栽培しているものの、入荷の見極めができなければ、限られた種以外は出荷が困難です。これは当サイトが販売の一方で、ラン栽培等の情報発信を行っており、このためには相当量の種と株数が必要となるからです。マレーシアラン園からのメールの通り出荷が進めば、マレーシア生息以外のランは当面難しいかも知れませんが、年末からはEMSによる入手が期待できます。コロナが去れば全ての問題は解決する訳ですが、もっとも恐れているのはその間、海外のサプライヤーやその下で働いているスタッフたちが耐えて行けるかどうかです。ワクチンが出来るのは来春と言われているので何とかそれまでは頑張って頂きたいと願うばかりです。種名混乱の極みBulbophyllum abbreviatum, Bulbophyllum auratum, Bulbophyllum corolliferum 上記バルボフィラム3種は下写真上段に見られるように、それぞれでクリムソン色がマーケットでは多く、花全体のサイズも3㎝弱と似ています。現在(24日)、これら3種が同時に開花したため撮影しました。ネット情報を調べてみると、花画像と種名が3種3様に入り交じっています。原因はよく分かりませんが、前項のセロジネのように開花間もない頃の花の様態から数日後に安定した形状になるまでの変化が大きく、またそれぞれの種にはシノニムが多く、属名統一変更による影響もあって混乱をを招いているように思います。例えばBulb. abbreviatumについてorchidspecies.comでは花画像が現在削除されており、これまで本種とされた花はBulb. trigonopusであるとする一方で、Bulb. trigonopusのページ内にはBulb. trigonopusとして知られてきた花として、似ていない異なる画像があります。またBu;b. asperulum, Bulb. pulchellumとされてきた種も同様にBulb. trigonopusとされ、さらにBulb. trigonopusのシノニム種名が1881年から1994年までの間で10種挙げられています。驚いたのは偶然にも、前記した異なる画像は当サイトが現在改版作業している新ページにBulb. sp30として掲載している種で、これはキャメロンハイランドで入手したもので、花もバルブ形状もBulb. abbreviatumとは全く異なります。 次はBulb. auratumですが、こちらはネット画像を見るとかなりの割合でBulb. corolliferumと思われる画像がBulb. auratum名で混在しています。 株としてBulb. auratumが他と若干異なるのは、葉がやや大きく下写真の赤紫色花株では葉裏に赤みが入ります。反面Bulb. corolliferumでは花色に関わらず、表裏は緑一色です。ここでも下写真の花フォームとorchidspecies.comの画像とはセパル表皮に異質さを感じます。本来、Bulb. auratumはセパルがauratumの名の由来である黄色(aurea)ですが、このフォームは当サイトのバルボフィラムサムネールのBulb. auratum aureaに掲載しています。白色も存在し、下中央の画像は(f. purpureum)といったところです。 またBulb. corolliferumもorchidspecies.cpmの画像とは様態が異なり、下画像は変種のvar. atropureumとされています。しかし本種のorchidspecies.comの画像種はマーケットではこれまでに見たことがありません。セパルが水平に展開する画像は、開花直後に時折見られ、やがて下写真のように下垂するものと思われます。世界での主なラン園での画像では大筋で下写真の画像と同じです。これまでの10年間で3種の内、マーケットで稀な種はBulb. abbreviatumでした。 下段はリップの違いを撮影したもので、左右(Bulb. abbreviatumとBulb. corolliferum)はセパル形状と共に蕊柱の形状が異なること、また中央のBulb. auratumは左右の種に対し蕊柱が小さく中央弁基部での間隔が狭くなっています。
Coelogne celebensisの色変化 Coel. celebensisはスラウェシ島標高1,000m以下に生息し、花サイズは10㎝を超える大型のセロジネです。現在10株ほど栽培しており、通年でいずれかの株が開花しています。本種の特徴はリップ色が開花時から枯れるまでの間に大きく変化することです。通常開花時では、リップ中央弁の色は橙色(だいだい色)ですが、やがて赤褐色へと変化していきます。今回撮影した花は、開花直後のまだ完全に開ききっていない時の色が、下写真左に見られるように赤味の強いニンジン色(19日撮影)で、やがて中央写真の赤褐色(23日撮影)へと4日程で変化しました。左と中央の画像は別花のように見えますが、同じ花です。株の中には黒色に近い暗褐色に変化する花も見られます。短い期間内に起こるこうした現象は、花に含まれるアントシアニン色素の変化とされますが、その変化が植込み材のピンク系によくみられるpHや、青系にみられる温度によるものとは、このセロジネに関しては環境が異なっていても同じ生態であることから考えにくく、では開花後の光によるものか、次回開花直前に花に遮光して、色合いを比較しようと思います。右写真はCoel. celebensisの株で花茎は50㎝程伸長し、1輪つづ開花を続けます。バルブの充実した株では葉幅が25㎝ほどにもなります。プラスチック・スリット入り深鉢にクリプトモスの植付けです。花茎は花が付くとその重みで弓なりに下垂するためベンチ置きは適さず、花茎の発生時にポットごとバスケットに乗せ、吊るしています。ところで現在当サイトのトップページメニュー”その他原種”のセロジネは6種のみの掲載ですが、現在進めている改版ページでは40種の増版となります。
Dendrobium rindjaniense 数珠のような疑似バルブをもつ本種の開花最盛期は例年3月頃となりますが、今月一部に開花が始まりました。これまでポット、バスケット、コルクなどの植付け材を試してきましたが、本種はデンドロビウムとしては珍しくブロックバークが適しており、20株程ある本種の半数を花後にブロックバークへ植え替える予定です。また2年前に現れた新芽は、現在は50 - 80㎝程の長さになっており、今春に発生した新芽(写真右)も良く伸びています。一方、通常花芽は落葉した茎につきますが、珍しく新芽の先の方に蕾が現れた株(写真中央)がありました。orchidspecies.comではLombok島2,000mのクールタイプされています。しかし当サイトでは全株、中温室の高温寄りで栽培しています。この場所は通年で夜間平均温度は20℃以下、昼間は30℃を超えることもしばしばの環境で、昼間でも25℃以下とするクール室の環境とは異なります。クールタイプということで、3年前に10株程をドラキュラやDen. vexillariusなどを栽培する場所に置いたことがあります。しかし中温室の株は新芽や根の活発な動きがあったにも拘わらず、クール室では現状維持状態でした。Den. tobaense、papilio、deleoniiなどと同じ環境が良いようです。では高温環境ではどうか?正しいテスト結果を得るには1株では不足で、少なくともサンプルとして4-5株を同一環境で比較する必要があります。熱帯夜が長いマレーシアラン園で10株以上あった売れ残り株が次に訪問した際には消えている状況を見ると、かなり高額な本種を高温に晒す勇気はありません。多くのデンドロビウムで、その株に異常を感じたときはすでに生きた根はほとんど失われており、そうなる前にバルブに蓄えたエネルギーで辛うじて生きているだけであって、再生は手遅れが多いためです。
先週からこれまでに開花した花 11日より本日に至る10日間に撮影した花です。Den. serratilabium、Den. corallorhizon、Cym. aliciae、Coel. bicamerataは中温、他は高温タイプです。写真上段3種はいずれも一両日花です。
トリカルネット植付けのBulbophyllum anceps 本日(21日)、Bulb. ancepsをトリカルネット円筒材に取り付けました。Bulb. ancepsはボルネオ島低地(標高300m以下)生息のバルボフィラムで、円形で扁平なバルブが特徴です。、本種は取付面に密着しながらジグザグに伸長するため、ヘゴ棒など垂直取付け材が適しています。今回は本種が左右に分岐することと、植え替え期間を3年以上にしたいため、取付け時の株サイズの倍の伸びしろをもったトリカルネット円筒材としました。下写真で花画像を除き、本日の撮影です。円筒の長さは50㎝、直径は10 - 11㎝です。下段右はこの植付け材に使用した1m x 10mのヤシガラマット(ヤシ繊維ロールマット)で、筒サイズに合わせて切り出し使用します。このロール1巻きはニュージーランド・ミズゴケ3A級3kgの1袋と比較し3割ほど安価です。またこの1m x 10mの1巻きからは、写真にみられる50㎝長10㎝径の筒用としては約60枚が得られます。
現在開花中のAerides4種 現在開花中のAeridesです。Aerides magnificaおよびlawrenciaeいずれもフィリピン固有種で低地生息の高温タイプです。当サイトでは株数が多いため、根の一部を炭化コルクにつけた栽培法ですが、コストを問題にしなければ本属は木製バスケットが最適です。
現在開花中の原種胡蝶蘭4種 現在開花中の胡蝶蘭原種4種を撮影しました。この時期は胡蝶蘭原種の開花は少なく、多くの種で開花が見られるのは4ヶ月後からとなります。
Bulbophyllum bandishii バルボフィラムの中で最も高額種の一つ、ニューギニアIrian Jaya低地生息のBulb. bandishiiが開花しています。生息国インドネシアのラン園Foresta Orchidsでの昨年末の価格は1バルブ当たりUS$25とされていました。当サイトでは現在3株栽培しており、それぞれ1株6バルブからなる野生栽培株です。orchidspecies.comでは花サイズが1㎝(幅) x 5㎝(高さ)とされていますが、当サイトの花はNS(自然体でのサイズ)で4㎝(幅) x 12.5㎝(高さ)の倍以上の大きさであることから、本種の花サイズについて誤解のないよう本日(19日)写真に収めることにしました。
マレーシアにおけるCOVID-19の影響 マレーシアでは、これまで1日のコロナウイルス感染者数は200名以下でしたが、先々週から4倍の800人を超える感染者数となりました。この数値は日本から見れば少ないように思いますが、周知の通り国が違えば公表値と実態は不明で、感染者数の増減率がより重要です。特にボルネオ島Sabah州での感染者が多いのですが、マレーシア政府は14日から条件付き活動制限令(CMCO)をクアラルンプールなどおもな都市に実施、この制限令は地区を跨ぐ移動の禁止、3人以上の外出禁止、休校、休業命令を受けた企業の多い中で仕事の移動は許可証が必要など、ロックダウンに近い処置です。先月から進めていたEMSによるマレーシアからの入荷対策ですが、こうした事情から暗礁に乗り上げています。CITES申請はクアラルンプールにある農業省に出かけての申請であることと、主なマレーシアのランはボルネオ島Sabahからの入荷であることなどから、輸出用ドキュメントの取得や荷物輸送への影響が考えられます。10月末までの制限とのことですが、この1週間の感染者数の急激な増加では延長の恐れもあります。当サイトの問題としては遅くとも11月中にマレーシアラン園を集配拠点とする、ボルネオ島を含めインドネシア、ニューギニア生息のランの入荷が困難になれば、来年早々から始まる国内ラン展への、そうした生息国からの新たなランの出品ができません。フィリピンからはすでに年内入荷が難しく在庫のランでの対応を考えているものの両国からの新たな入荷が無ければ、ラン展への参加は一層困難になります。また来年前半から国際的なラン展が続きますが、このような状況では、国内勢のみの縮小した規模になると思います。現状判断ではコロナウイルス・ワクチンが出来るまでは国を跨ぐラン取引は難しいかも知れません。しばらく海外事情の様子見です。 花形状の似たDen. modestum、Den. niveobarbatum、Den. polytrichumの識別 いずれも現在開花中の、花のよく似たフィリピン低地生息のデンドロビウム3種を撮影しました。左がルソン島生息のDen. polytrichum、中央がミンダナオ島生息のDen. niveobarbatumで、セパル・ペタルの色、サイズ、またリップの髭状の細毛が同じで、互いの識別が困難な種です。大きな違いは、下段写真に見られる葉形状が前者は細い円柱形に対し、後者は幅広の扁平でであることです。一方、右写真は同じくルソン島生息のDen. modestumです。セパル・ペタルの色や大きさは前記2種と、また葉はDen. polytrichumと同形ですが、違いはリップの細毛が無く、フリンジ状であることです。なぜかPhilippine Native Orchid Species, J. Cootes 2011にはDen. modestum(Rchb.f 1855)の記載がなく、似た花画像のDen. multiramosum(Ames1915)が記載されています。これらがシノニムとはされていませんが同種と考えています。下写真中段はリップ側弁を外したそれぞれの中央弁形状です。1m以上離れて花を見る限りは識別困難ですが拡大比較するとその違いがよく分かります。また下段はそれぞれの株です。
久々の登場デンドロビウム2種 現在(17日)、Den. fairchildaeとDen. microglaphysが開花中です。前者は10年以上前にフィリピンで入手した当サイト最初のデンドロビウムで、ルソン島標高1,200m生息の中温タイプ、後者はボルネオ島標高800mに生息の高温タイプです。いずれも下写真にみられるように多輪花種です。
Vanda pumila 3年前にVanda coerulescensとして入手した株が開花しましたが、Vanda pumilaのミスラベルでした。一度目のVanda coerulescensはタイのラン園から直接で、こちらは本物でしたが、今回の開花株はマレーシア経由でした。入荷当初は開花を期待していたのですが一向にその様子は無く、やがて中温室奥に吊り下げたままでした。本日(16日)、近くを通ったとき、これまでに経験のない香りがし、どこからかと探したのですが見当たらず、ポットの下から花茎が出てベンチとの隙間で開花する種が時折あることから、それかと諦めて水撒きをしていたのですが、葉の裏に隠れて咲いている花を見つけ本種と分かりました。かなり広範囲に良い香りがします。Vandaとしては25㎝程の高さの小型の株です。始めて見る花なので、ネットで調べてみたところ、orchidspecies.comにはインドから中国、ミャンマー、タイ、ベトナム、スマトラ島まで広範囲に生息し、高輝度で木製バスケット栽培が良いとされています。
マーケット情報としては海外では20米ドルほど、国内ではヤフオクで2,300円の落札記録がありました。ヤフオクでの紹介には’超希少’と謳われていました。果たして何を基準に’超’なのかは分かりません。希少性と価格は比例することから、この機会にと当サイトが所有するVandaを数種選び、当サイトの価格を決定する際、しばしば参考にさせて頂く、シンガポールのAsiatic Greenラン園の16日現在の公開価格で調べてみました。下記となります。
上記表ではVanda javieraeが特出して高価で、これは希少故の価値からと思われます。現在は実生も市場に出ているそうですが上記価格が実生か野生栽培株のいずれを対象としているかは不明です。実生であっても本種はフラスコ出しからFSサイズになるには通常10年はかかるため高価となります。当サイトでは現在Vanda javierae野生栽培株FSを80株ほど栽培しています。Vanda sanderianaは3,600円程ですが、この価格は実生と思われます。Purificacion Orchidsによれば現在市場の大半は実生とのことです。野生株を得るには生息地ミンダナオ島Apo山を臨むDavao市のラン園、例えばChua Orchid Garden等以外では困難と思います。話題を戻しVanda pumilaの欧米のUS$20前後の価格相場からは一般種と判断されます。販売品が’希少’か否かは、その種名(英字)とPriceの2文字でGoogle検索すれば容易に分かります。Vanda pumilaの価値は希少さではなく、Vandaの中で特出している香りが本種の最大の’売り’と思います。 当サイトでは現在Vanda ustii、luzonicaまたmerrilliiを多数栽培していますが、入荷時の大株をさらに4-5年栽培した1.5mを超えるサイズばかりで、栽培には温室が必要です。またこれらを販売するにも宅配便では大き過ぎるため、車で温室に来られる人のみが対象です。Vanda javieraeも前回植付けから3年経ち、年内の植え替えを予定しています。昨年のフィリピン訪問時や、その後の発注で集めた手頃サイズのVandaが現地ラン園にストックされているのですが、1月のタール火山噴火に続くCOVID-19により訪問ができないままにいます。 新たな植付け材での栽培 7月の歳月記でトリカルネットにヤシ繊維マットとミズゴケを巻いた円筒形の株の取り付け材を紹介しました。植替え期を契機に今後は栽培の難しいとされる品種に積極的に導入しようと取り組んでいます。理由は、これまでの10年以上の栽培を通して最も成長の良い原種用取付材であり、また3-4年程の耐用年数があること、さらに今年の酷暑を新芽が全て乗り切ったのは、この植付け材であったからです。これまで植付け材としては、ヘゴ板はコストが高く、炭化コルクは根周りを乾燥させない管理が必要で、またプラスチックや素焼き鉢のミズゴケ単体、クリプトモスミックスあるいはバークなど様々な鉢や植込み材を試してきましたが、多くの種で問題はないものの上手く育たない種も少なくはありません。その原因は株が置かれた場所の環境と、植付け材や管理がその株にとって適合しなかったことに尽きます。しかし栽培者にとって場所の設定や時間的な制約のある中での栽培には限界もあります。 難しいとされる原種、とりわけ気根植物の栽培の最も重要な要件は、根周りを濡れ過ぎず・乾き過ぎずに保つことです。しかし乾湿の度合や変化の速度は栽培する環境(温度、湿度、通風、輝度など)が100例あれば100通りの違いがあり、どのような植込み材や鉢あるいは支持材を用いても避けることは不可能です。また種によっては根周りの湿度の適度な変化が、気温と組み合わさって成長や開花に必要な要因とも考えられます。 こうした状況の中で、管理に無理が無く、可能な限り長時間に渡り、湿度を好ましい安定した状態に保ち得る素材の組み合わせは何かが課題となります。これまでの経験では熱帯常緑季節林や熱帯雨林に生息するFormosae節、また固く長いいリゾームを持つ栽培が難しいとされる種を、その栽培景色を含めて、現時点で最善と思われる植え付け材が、前記したトリカルネット円筒形状体と考えています。今回はこの製作手順を紹介します。 写真の解説のため、左から右方向に写真をそれぞれ1-4とします。1は今回の素材で、トリカルネット、ヤシ繊維マット、防鳥網、クリップ、園芸用1mmアルミ線です。2はトリカルネットを丸めヤシ繊維マットを取り付けたものです。円筒形の長さは株サイズに合わせて35㎝から60㎝の数種類を作っており、径も様々です。3は防鳥ネット上にミズゴケを敷いた画像で、ミズゴケはその繊維が円筒に巻き付くよう写真に見られるように水平に敷きます。4はそうして全体を極力均一にミスゴケを敷いた状態です。
下写真1はヤシ繊維マットを巻いた円筒を上写真4のミズゴケ面に、より均一に密着させるため、押さえ付けながら防鳥ネットを巻きつけていき、巻き終わったならば2のようにバラケないようクリップで数か所を仮留します。その後、1mm径のアルミ線を全体に巻いて固定したものが3となります。4は手前の筒がミズゴケの取り付けが終わった数個の円筒です。
最終仕上げは円筒の内部の詰め込み材の選択です。候補としては相性の良いミズゴケ、クリプトモス、バーク、などが考えられます。しかし4の段階で、すでにミズゴケの使用量は50㎝長の筒の場合、4号素焼き鉢の使用量の凡そ3-4倍となります。円筒形内部までミズゴケを詰めるとなると可なりの材料費を覚悟しなくてなりません。さらにクリプトモスも同様ですが、詰め込む量や強さによっては、芯にまでかん水の際の水が浸透せず、筒表面のミズゴケだけに浸み込むこともあります。当サイトでは下写真左のような厚手(写真は3mm厚)の親水和性のある不織布を中央写真のように丸めて筒内に納めます。結果、写真右のようになります。これで表面のミズゴケに、内面から長時間適度な湿り気を与えることができ、炭化コルクでは困難な、夏期の野外での栽培にも有効となります。寒冷紗のような水の通りが良さそうなメッシュ布を詰め込んでも良いと思います。この後は株の取り付けとなります。 ここで材料の問題として、ヤシ繊維マットが容易に入手できるかどうかがあります。現在、この3mm厚の不織布を3重重ねとし1㎝弱の厚みにしたものを代用できないか試験をしています。この試験とは、果たしてランに有害な防虫・防カビなどの薬品処理がないか、根を直付けして株が新芽の発生や根の活着、また開花など、嫌がることがないか等々を調べることです。胡蝶蘭Phal. bellina野生株のテストでは、この半年での栽培で問題なしとなりました。さらにデンドロビウムからVandaまで他属も現在試験中です。布の白色が気になるという趣味家がいるかも知れませんが、上写真のようにミズゴケをその上に一面覆うことで景色上の問題はありません。 下写真は筒型取付材に植付けたDen. toppiorum(左:5日前植付け))、Bulb. uniflorum Cameron Highlands(2列目:7月植付け)、Bulb. virescense(3列目:7月植付け)、Bulb. pardalotum(左:3年前植付け)のそれぞれで、7月植付けのバルボフィラムは多くの新芽が今年の酷暑にめげず大きくなっています。また3年前植付けのBulb. pardalotumは植付け時は6本の30㎝長程の細長い株でしたが現在、60㎝長の筒全体に繁殖し、最も湿気の多い下部は雑草のシダです。上記トップの写真2の奥にあるミズゴケ付け前の直径の大きな筒は間もなく実装のBulb. binnendijkiii用です。胡蝶蘭も一部はこうした筒に取り付ける予定です。 上記した筒型取付け材では、ほとんどの種で根の多くは筒の表面を這うよりも、内部に潜行します。長い根をもつ胡蝶蘭では根張り空間が限られると、やがて空中に大半の根が飛び出し、湿度の低い空間に晒され根は常に乾き気味となり、その時点から株の伸長が止まります。しかし筒型構造では常に湿気のある、筒内部に多数の根を張ることから実質成長に有益な根張り空間を広げたことになり、大きな葉を持つ株を得るのに有効となります。
どのような素材や製作物であっても、長所と短所があります。上記植付け材の長所は前記したように、トレイやバスケット植えでは得られない、自然体に近い原種の姿を維持しつつ安定した成長が得られる反面、問題点はそれを製作する手間です。ポット植えならば5-10分で植え付けが完了しますが、素材の裁断から巻きつけなどの作業を含めると10個ほどの筒材を製作するのに、1日掛かりで、さらにそれから株の取り付けとなります。では資材業者が商品として製造できるかと云えば、少なくとも日本人の人件費からはコスト高となり商品としては極めて高額となり困難で、海外への委託製造以外難しいと思います。現状では趣味家自身がそれぞれ製作する植付け材であり、夜なべ仕事にはなりますが、しかしそれだけの効果は十分期待できると思います。当サイトでも今後この植付け材を使用する株は販売用ではなく、栽培難易度や希少性の高い種、展示あるいは栽培研究用となります。 Bulbophyllum amplebracteatum、caruncuatum、およびorthoglossum 現在(12日)、Bulb. amplebracteatumとBulb. caruncuatumが開花中です。この2種は今年は7月にも同時開花しています。類似種にBulb. orthoglossumがあり、こちらは3月の開花でした。とりわけBulb. amplebracteatumとBulb. orthoglossumは一目では識別が困難です。そこでこれら3種の違いを理解するため画像比較してみました。Bulb. amplebracteatumとBulb. orthoglossumとの違いは、リップ中央弁の表面にイボ状の凹凸がある形状(Bulb. amplebracteatum)と滑らかな形状(Bulb. orthoglossum)で、下写真中央の黄色のセパル・ペタルに入る赤色ラインは株によって濃淡があり、この有無は同定の条件にはなりません。一方、Bulb. caruncuatumの中央弁は黒色で凹凸があり、他2種との識別は容易です。現在Bulb. amplebracteatumは炭化コルク、他はスリット入りプラスチック深鉢のミズゴケ・クリプトモスミックスでの高温栽培です。栽培はいずれも容易でBulb. caruncuatumは8月に紹介した新しいページに掲載予定のBulb. carunculatumに見られるように4倍体と思われる大きなサイズも見られます。
Bulbophyllum basisetumとBulbphyllum leysianumのマーケットでのミスマッチ 現在(10日)、フィリピン生息のBulb. basisetumが開花中で下写真を撮りました。そこでこの機にと本種のネット情報を検索していたところ、国内外のマーケットで本種に酷似した花画像が多数あり、しかし種名がBulb. leysianumとして販売されていることが分かりました。Bulb. basisetumは、いずれもフィリピン固有種であるBulb. mymphopolitanumグループ(trigonosepalum、papulosumなど)に見られる独特な花形状で、当サイトではこのグループは全て所有していると思っていたため、Bulb. leysianum名のバルボフィラムがフィリピンに生息しているのかと調べたところ、Philippine Native Orchid Species, J. Cootes, 2011には記載がなく、またorchidspecies.comでBulb. leysianumで検索したところ、全く異なる花画像が表示されました。であれば現在Bulb. leysianumとして販売されている花画像は誤りとなります。orchidspecies.comではBulb. leysianumはHyalosema節で、この節の多くはBulb. antenniferumなど 鳥のくちばしのような花形状であり、これはOrchidRoot、米国蘭協会AOS、また研究論文などに掲載のBulb. leysianumとする画像と同種です。 一方、Orchid.Orgでは、その解説に本種はRolfe(1919)によりHyalosema leysenianumが記録され、これが現在のBulb. leysianumとして登録(accept)されたとし、この種はマレー半島やJava生息としています。ここまでは正しく、であれば花画像はHyalosema節の種に類似する筈ですが、明らかに異なるLepidorhiza節の画像(Bulb. basisetumなど)を掲載しています。またBulb. leysianumはフィリピン生息種として現時点では確認されていません。 さらに海外の販売ネットサイトを見ると、Andysorchid、orchid.url.twなどに記載の、また国内ではヤフオクも同様にBulb. leysianumとした花画像はBulb. trigonosepalumやbasisetumと思われます。世界中のこの混乱は、憶測ですが原因はOrchidOrgのようで、画像を間違えて掲載したものが世界中に流布したようにみえます。この結果、花画像だけが誤ったサイトと、その誤った花画像に基づいて、その生息地をフィリピンとした上記台湾のような販売サイトが現れたのではと思います。つまりフィリピン現地ではBulb. leysianum名はマーケットにはないことから、フィリピン供給元がBulb. leysianum名で出荷したとは考えにくく、フィリピンから入荷した 未開花のBulb.spが、ラン園でその後に開花し、花形状から OrchidOrg等を参照して種名をBulb. leysianumとし、しかし産地は入荷国のフィリピンとしたのではと思われます。これだけ多くの発信サイトがありながら、情報の少ない新種ならば兎も角、発信者の誰も花と種名との対応をチェックしなかったことが不思議です。種名と画像の不一致は、未開花株では入荷時(供給元)のラベル名称を用いることが多く当サイトでもしばしば誤りが起こります。当サイトでは多くは会員や友人からその間違いを指摘して頂いており、修正していますが問題は種名を誤ると実体と誤記名の株の生息環境が異なった場合、購入者が栽培方法を誤ることも考えられ、販売者側は花を確認出来た時点で種名に間違いがないか良く調べるしかありません。
ところで上写真のBulb. basisetumの花ですが臭いです。Bulb. mymphopolitanumグループはいずれもその花の香りは、いわゆる悪臭です。ただ匂いもそれぞれの種および時間帯で強弱があり、多くは鼻を30㎝程に近づけないと分かりません。このグループの中でとりわけBulb. papulosumはバルボフィラムの中でも数メータ先まで抜群の異臭をまき散らす種で、近く(1m内)には居たくありません。しかしPurificacion Orchidsが4年前の東京ドームで、こんにゃく系の花付芋を数株販売した時、夕刻になると匂いが漂い始め、傍には近寄りたくないことと近くの出店者にも迷惑なので花に袋を被せていたのですが、その匂いこそが良いのだとすぐに売れ切れました。世の中にはこんな物好きがいるものだとその時、仏教の教え輪廻転生(りんねてんしょう)が本当だとすれば、おそらくこうした人たちの前世は、良かれ悪しかれハエやアブであったに違いないと、購入した人の楽しそうな後姿を見て思いました。では、その芋を現在、フィリピンなどに多数発注して販売しようとしている自分を鑑みれば、自分の前世はハエやアブを招くコンニャク芋の方であったかもと。 紅葉(磐梯朝日国立公園 中津川渓谷) この時期は毎年台風を警戒して温室の屋根などを補強するのですが、今回の台風14号は幸いに進路を大きく東に変え本土上陸は無いようでホッとしています。台風が去ると本格的な秋に入ります。今年はCOVID-19で多少時間があることから、過ってよく出かけた会津の裏庭のような距離にある磐梯朝日国立公園内の中津川渓谷の紅葉写真を、ショパン夜想曲1曲分に乗せ自動更新のアルバムを作成してみました。ランとは関係がありませんので紅葉に関心の無い方はスキップしてください。中津川渓谷の紅葉は台風が去って後、2週間ほどで最盛期になると思いますが、この地の美しい紅葉は日本有数と思います。45枚程の写真は全て筆者の撮影で、ページブラウザはマイクロソフトEdgeが対象です。PCがWindows10であれば問題ありません。下の文字をクリック下さい。現在(8日)開花中の花 猛暑が過ぎ、気温が25℃を下回るようになり、多くの種で花芽が現れています。開花中の花を20点程選んでみました。5-8日の撮影です。
Dendrobium sp (aff. endertii.)のリップ・カラー 昨年10月の歳月記にDen. sp aff. endertiiのリップカラーフォームを取り上げました。今年も同様に多数の株で開花しています。本種は通年で開花し続け、開花休止期間が見られません。さらに高温と中温室に分け、合わせて20株程を栽培していますが、環境温度にも成長変化が見られない至って強靭なデンドロビウムです。今回リップカラーがこれまでの中で最も黒い花(左写真)が開花していたため撮影してみました。
Dendrobium klabatense スラウエシ島標高1,000m付近に生息の本種を最初に入手したのは2014年のPutrajaya花博で、その後2017年にマレーシア経由で15株程を持ち帰りました。下写真は5-6日撮影で、6株合わせて100輪程が同時開花しています。本種はセパル・ペタルが白色と、薄いピンク色の2つのカラーフォームが見られ、当サイトが入手したロットでは、ほぼ9割の株が上段左写真のように純白で透明感のあるアルバフォームです。 花サイズはorchidspecies.comの2.5㎝に対し、下段寸法画像の4㎝で1.6倍です。国内市場では昨年のヤフオクに出ていましたが、現時点での希少性についてはその後の発注をしていないため不明です。当初はバスケットにワイヤーで疑似バルブ(茎)を纏めて立たせた植付けでした。しかし茎は半立ち性(若芽は上方に向かうものの、伸長と共に弓なりとなりやがて下垂する)であることと、60㎝以上伸長するため、バスケットやポット植えは適さず、現在は全株をヘゴ板に取付けています。高温環境を嫌うことから中温室(夜間平均温度は通年で20℃以下)の栽培としており、毎年春と秋に多数の花を付けます。
現在(3日)開花中の花 今年の夏は猛暑が続いたため、例年とは開花時期が多少変化するのではと思いましたが、昨年の歳月記を見ますと、9月末から10月にかけての開花種はほぼ同じとなりました。一方、COVID-19により海外渡航は今だ出来ません。先月まで猛暑のためペンディングをしていた海外からのEMS搬送が、ようやく気温も下がり可能となるため、今月中には現在500株以上発注しているランの入荷が始まることを期待しています。下写真は現在開花中の花で、4種選んでみました。下段はランではありませんがフィリピンでのラン展で、その花の形から3年前に衝動買いをしてしまった蔓性で、大きな咢と胃袋のような形をしたAristolochia giganteaと思われるウマノスズクサ科の花です。なぜブラジル生息種がフィリピンで販売されていたかは分かりません。今年の開花は例年よりも小ぶりでした。
前月へ |
|||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||