8月
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Ida cinnabarina |
現在開花中の花
温室のレイアウト変更は最後のバルボフィラム1棟分がほぼ半分まで進み、来週早々には終了予定です。浜松では32℃の気温の中、’すごく涼しくなりましたね’が挨拶となりました。お互いつい笑ってしまいます。32℃を下回れば出荷準備の再開となります。連日の猛暑を乗り越え開花している花の一部を撮影しました。全て28日午前中の撮影です。写真の並びは撮影した順です。Den. uniflorumはリップにある3本のラインが薄緑色のためalbaフォームとしました。よくDen. ovipostriferumと間違ってネットに掲載されているDen. deareiは数年ぶりの写真です。開花寿命が凡そ2ヶ月と高温系デンドロビウムの中で最も長い多輪花種の一つです。写真のBulb. fascinatorはsemi-albaともされますが、セパルやリップの色は明瞭な固有色であることからgreenフォームとしました。エクアドル生息のIda cinnabarinaは手のひらほどの大きな花です。Den. punbatuense Borneo Sabah | Vanda lamellata v. remediosae Phiiippines | Den. uniflorum f. alba Borneo |
Den. treubii Molucca 諸島 | Den. lamellatum Java | Den. dearei Borneo |
Den. sanguinolentum Borneo | Aerides quinquevulnera Philippines | Bulb. fascinator green |
Den. ovipostoriferum Borneo | Coel. asperata Sumatra | Phal. bellina Borneo |
Phal. pulchra Leyte Philippines | Den. cinnabarinum v. angustitepalum Borneo | Den. deleonii Mindanao |
Phal. lindenii Luzon | Paraphal. serpentilingua Borneo | Bulb. annandalei Cameron Highlands |
Phal. sanderiana Mindanao | Den. tobaense Sumatra | Den. boosii Mindanao |
Den. reypimentelii Mindanao | Den. furcatum Sulawesii | Den. sulawesiense Molucca 諸島 |
Coel. longifolia Sumatra | Masd. impostor Ecuador | Dracula cordobae Ecuador |
Lycaste reichenbachii Peru | Bulb. cootesii Philippines | Bulb. lasioglossum Luzon |
Ida cinnabarina Ecuador | Phal. modesta Borneo Kalimantan | Den. lancifolium New Guinea |
Bulbophyllum contortisepalum aff.
パプアニューギニア生息のBulb. contortisepalumが開花しています。本種は長いラテラルセパルがカールしていることが特徴でバルボフィラムの中では人気の高い種です。マーケットでは黄色の花フォームが一般的ですが、稀に赤や黒っぽい色も見られます。ところが今回の株はそれらのいずれでもなく薄黄緑色です。そこでリップ形状をマクロレンズで撮影したところ、一般種の黄色フォームとはかなり異なっていることが分かりました。下写真左が今回開花した花で、中央がそのリップ拡大画像です。右は当サイトが在庫する黄色の一般種のリップ拡大画像です。中央のリップ拡大画像はorchidsnewguinea.comのレッドフォームとされるPhotoAのリップに似ています。flickrサイトにもリップ拡大画像がありますが形状はかなり異なります。 薄緑の花色についてはOrchidRootsにも見られます。しかし写真中央の、繊毛のあるコの字形に湾曲した中央弁形状は、ネット画像の多くが不鮮明であることも一因かもしれませんが見当たりません。今回の比較で気が付いたのですが、右写真黄色フォームの赤いリップ中央弁も見当たらず、色は兎も角も本種に関してはリップ形状の鮮明なクローズアップ情報が必要で、何か新しいことが分かるような気がします。今回の開花で、少なくとも下写真の中央と右のリップ中央弁形状は別種ほどの違いです。次回黄色や赤色フォームが開花した際にはさらに詳細なリップ形状を撮影したいと思います。Bulb. contortisepalum aff. (green form) | Bulb. contortisepalum yellow form |
温室のレイアウト変更
温室内では、昼間40℃近くに、また夜間でもその余熱でほぼ30℃と、8月に入って続く異常気象下において、これまでの栽培について再考することも多く、当サイトでは先週より4棟の温室の内、クール室1棟を除く3棟のレイアウトを大幅に変更することになりました。課題は全てのランに24時間行き渡る通風と、均一にかん水ができる株の配置です。当サイトの温室は1棟が15m x 5.5m程の空間で4棟あり、現在全体で凡そ7,000株を栽培しています。これまでの温室内のレイアウトは下写真上段左に見られるように、2mの長さの単管パイプを多数接続し、中央通路に沿って長く連なる枠組を作り、2017年からは多くの株がストックできるようにと、通路に対し直交する向きに2m長の緑色園芸支持棒を、高さと前後の間隔をづらしながら水平に取付け、ここにコルクやヘゴ板等に植付けた株を吊り下げてきました。単管パイプの柱と柱の間の空間(2平方m)を1ブロックとすると、このブロック内で栽培できる株数は、園芸支持棒をそれぞれ12本使用して、1本当たり平均15株を吊り下げることで180株程になります。また温室1棟内には同形の枠組みを中央通路を挟み左右に設けており、全体で12ブロックとなります。一方、地面から50㎝の位置にエクスパンドメタルの床を設け、ここにはポットやトレーに植付けた株を置き、また中央通路と左右の壁側にある通路にはそれぞれ扇風機を取付け通風を得ています。このレイアウトの目的は、高密度に株を栽培するためですが、問題は扇風機からの風は通路寄りの株にはよく当たるものの、支持棒の中央付近はほとんど無風状態で、この結果、通路側と中央部の株に乾燥度合の違いが生まれることです。これまでのレイアウト | レイアウト変更後 | ||
レイアウト変更後 |
浜松今年国内最高気温40.9℃を記録
浜松ではこれまでに経験のない、1週間以上毎日雨天が続くと、次には1週間以上全く雨のない猛暑に襲われ、とうとう16日には観測史上初の40℃を超えてしまいました。今年の国内最高気温とのことです。エアコンを稼働していない温室内は当然それ以上の高温となります。当サイトの温室では、かん水に地表から120mの地下(井戸)水を用いており、水温は通年で一定の16℃です。16日にはこれを午前9時と午後1時に散水し、温室内を34-38℃に維持しました。これまで40℃超えは、5-8月にフィリピンやマレーシアを訪問した際、マニラやクアラルンプール国際空港のビルを出たときの気温とほぼ同じで毎年体験してきましたが、まさか浜松でもとは驚きです。問題は、こうした高温下では出荷が難しくなることです。受入れ側に冷暖房エアコン温室があれば良いのですが、出荷では植込み材を新たなものに替えたり、根や葉の剪定で病害防除処理を伴うことがあり、厳しい環境変化は種によるものの、1か月間程は好ましくなく、これまでも気温が32℃以上となる間は出荷は控えていました。気象予想では猛暑はまだ暫く続くようです。Inflorescences of Aerides magnifica & magnifica f. alba Photos:Aug./17 |
ナメクジ被害のBulb. uniflorum
ナメクジには多くの栽培者が悩まされていると思います。当サイトでは時折ナメクジ殺虫剤マイキラーを散布していますが、その間を潜り抜けるようにナメクジ被害に遭っています。ナメクジには誘って食べればといった誘引殺虫剤では手緩く、触れただけでお終いとなる強力な薬剤が効果的です。昨日(14日)朝、蕾が膨らみそろそろ開花かと期待していたBulb. uniflorumが、開花と同時に齧られていました。それが下写真です。どうもナメクジには臭覚があるのか香りのある種をよく選んで齧るようです。これまでの経験から、写真左の右の花でラテラルセパルの一つが齧られないで残っていますが、こうした食べ残しがある場合は、ほぼ確実にその夜に再び現れることを学んでおり、その夜中の11時ごろに懐中電灯を灯しながら見に行きました。案の定です。さてそれをどうするか、通常ではピンセットあるいは箸で摘まみ退治となりますが、当サイトでは、最近はそうした面倒なことはしません。スプレーボトルに規定希釈のマイキラー(1/200)を入れたものを用意しておき、数センチ離れた場所からナメクジに直接スプレーし、そのまま捨ておけば翌日朝には近くに亡骸があります。しかし今回はマイキラー原液に毛筆を浸し、これをナメクジにこれでもかと塗りました。本日(15日)早朝、その亡骸が床に落ちているのを見ました。多様なフォームのDen. punbatuense
14日は全国的な猛暑で、浜松での温室内は寒冷紗70%遮光下においても40℃を超えました。高温対策として温度を検知した自動散水も一つの方法ですが、原種を多品種栽培する場合、それぞれの形状やサイズが大きく異なり、さらに種の特性に応じた輝度や通風なども考慮した、込み入ったレイアウトの中では、定点からの一様な散水は、株それぞれの被水量にムラができ有効ではありません。よって晴天下において外気温が30℃以上ともなれば温室内は35℃を超え、1日2回以上の手撒きの散水が必要となります。今年は6月より炭化コルクやヘゴ板等に付けた株を30株程、栽培調査のため室外の風通しの良い日陰に吊るし観察してきました。梅雨期が終わるまでは問題がなかったのですが、30℃を超える晴天日が続くと、4-5時間で植込み材が乾いてしまい、晴れた日は4回以上の散水ができなければ板付け株の屋外での維持はできないことが分かりました。今回のような日本の猛暑が、5月頃から5か月間程続くフィリピンやマレーシアのラン園が、炎天下においても寒冷紗一枚で、板付けや吊り下げ栽培を続けられるのは、午後に決まって襲うスコールや夜の濃霧による高湿度環境が背景にあると思います。これを日本の屋外で真似ることは困難です。Form1A | Form1B | Form2A |
Form2B | Form3 | Form4 |
Form1およびForm2 Spur | Form3 Spur | Form4 Spur |
猛暑の中、開花のデンドロビウム
ここ1週間程の当サイト高温室では昼間38℃を超えています、この高温環境にも拘わらず、前記取り上げた高温室の多輪花デンドロビウム3種などを含め多数の種が開花しており、新たにデンドロビウム6種を選んでみました。フィリピン生息のDen. elineaeは2017年登録された新種です。またDen. dianae f. flavaは10日間程の開花時から落下する2日前まで写真が示す淡い緑色で、これまでDen. dianaeを40株程栽培していた中で唯一のフォームです。Den. crabro Borneo Sarawak | Den. erosum Malaysia Cameron HLs | Den. elineae Luzon Norte |
Den. deleonii Mindanao Bukidnon | Den. dianae f. flava Borneo Kalimantan | Den. chewiorum Borneo Sabah |
フィリピン近況
3ヶ月ぶりに原種専門のフィリピンBarangayのラン園からメールをもらい近況を聞くことができました。フィリピンは現在、東南アジア域内でのCOVID-19累計感染者数が最多で、今月4日には1日当たりの感染者数が6,000人を超え、再びマニラ都市圏がロックダウンされました。ラン園によると、Barangay地域の感染者は今のところ発表されていないそうですが、その周辺都市は多いようです。こうした国内状況により植物検疫事務所は休業状態で、このラン園でもここ3ヶ月程収入がないそうです。取引再開がいつになるか分かりませんが、貧富の差が大きいフィリピンの社会事情からは3密を避けつつwith corona生活は期待できず、治療薬ができるまで難しいと思われます。入荷が1年以上先であっても、フィリピンランビジネスの維持・支援のため、今後ラン発注の有無に関わらず一定額を定期的にデポジットすると伝えました。そうしたところ、COVIDによって収入が断たれ困窮しているルソン島、ミンダナオ島、Visayas諸島のコレクターたちにとっての支えにもなるとのことでした。現在(8日)開花中の多輪花種
1茎あるいは1株当たりの同時開花数が多い現在開花中の6種を選んでみました。上段左の濃青色Den. victoriae-reginaeは9輪、中央のDen. cymboglossumは20輪、下段中央のDen. toppiorum subsp. taitayorumは13輪、右のBulb. lasioglossumは蕾を含め51輪です。全種8日の撮影で、Den. cymboglossum, Den. sanguinolentumおよびDen. dianaeは高温室、他は中温室での栽培です。現在高温室は昼間の最高温度が38℃、夜間最低温度は昼の余熱で27℃となっています。 一方、中温室は昼間の最高温度は32℃、夜間最低温度は18℃です。Den. sanguinolentumは木製バスケット、他は全て炭化コルクでの栽培となっています。昼間は換気扇が回り続けるこの高温環境の下、植込み材を決して乾かさないように維持するのは一苦労です。Den. victoriae-reginae dark blue Mindanao | Den. cymboglossum Borneo Sabah | Den. sanguinolentum Sumatra |
Den. dianae Borneo Kalimantan | Den. toppiorum subsp. taitayorum Sumatra | Bulb. lasiolossum Luzon Bataan |
編集中のBulbophyllumサイト
現在、これまでに扱ったバルボフィラム属のページを編集しています。間もなく完了し、次はデンドロビウムとなります。編集に当たっては、これまでの花画像に加えて、栽培者でなければ提供(撮影)できない映像表現とはなにかと、ネット検索で見られる多くの画像に欠けている情報を考えてきました。その一つは、花写真はあるものの、その株写真が少ないこと、またバルボフィラムCirrhopetalum節では、類似種が多い中、同定に必要なリップの鮮明なクローズアップ画像がほとんど見られません。今回当サイトでは、花と共に株やリップクローズアップ画像をほぼ全ての種に追加することとしました。