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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2019年度

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8月

Ida cinnabarinaの花サイズ

 前項でIda cinnabarinaの写真を掲載しました。大きな花のためひときわ目立っており、本日(30日)早朝に再度撮影しました。下写真です。花の左右および上下スパンはそれぞれ11㎝と13㎝強です。葉長はバルブ先端から80㎝もあります。orchidspecies.comでは花サイズが僅か4.5㎝との記載で全く異なります。本種の属名はIdaですがLycasteもあり、ochidspecies.comでは属名Sudamerlycasteで、Ida cinnabarinaとはシノニムの関係とされます。花サイズの違いは一つの推測ですが、本種はベネズエラ、コロンビア、ペルー、エクアドルに至る広域生息種であることと、これまで複数の属名をもつ経緯から、地域差、亜種あるいは近縁種の可能性もあります。サイズが倍以上の違いとなれば、大輪の花と思い購入したものの半分にも満たないことにもなりかねません。期待通りの株を得るには、生息地と共に花サイズを指定して入手する必要があるかも知れません。本種はエクアドル生息株です。

Ida cinnabarina

現在開花中の花

 温室のレイアウト変更は最後のバルボフィラム1棟分がほぼ半分まで進み、来週早々には終了予定です。浜松では32℃の気温の中、’すごく涼しくなりましたね’が挨拶となりました。お互いつい笑ってしまいます。32℃を下回れば出荷準備の再開となります。連日の猛暑を乗り越え開花している花の一部を撮影しました。全て28日午前中の撮影です。写真の並びは撮影した順です。Den. uniflorumはリップにある3本のラインが薄緑色のためalbaフォームとしました。よくDen. ovipostriferumと間違ってネットに掲載されているDen. deareiは数年ぶりの写真です。開花寿命が凡そ2ヶ月と高温系デンドロビウムの中で最も長い多輪花種の一つです。写真のBulb. fascinatorはsemi-albaともされますが、セパルやリップの色は明瞭な固有色であることからgreenフォームとしました。エクアドル生息のIda cinnabarinaは手のひらほどの大きな花です。

Den. punbatuense Borneo Sabah Vanda lamellata v. remediosae Phiiippines Den. uniflorum f. alba Borneo
Den. treubii Molucca 諸島 Den. lamellatum Java Den. dearei Borneo
Den. sanguinolentum Borneo Aerides quinquevulnera Philippines Bulb. fascinator green
Den. ovipostoriferum Borneo Coel. asperata Sumatra Phal. bellina Borneo
Phal. pulchra Leyte Philippines Den. cinnabarinum v. angustitepalum Borneo Den. deleonii Mindanao
Phal. lindenii Luzon Paraphal. serpentilingua Borneo Bulb. annandalei Cameron Highlands
Phal. sanderiana Mindanao Den. tobaense Sumatra Den. boosii Mindanao
Den. reypimentelii Mindanao Den. furcatum Sulawesii Den. sulawesiense Molucca 諸島
Coel. longifolia Sumatra Masd. impostor Ecuador Dracula cordobae Ecuador
Lycaste reichenbachii Peru Bulb. cootesii Philippines Bulb. lasioglossum Luzon
Ida cinnabarina Ecuador Phal. modesta Borneo Kalimantan Den. lancifolium New Guinea

Bulbophyllum contortisepalum aff.

 パプアニューギニア生息のBulb. contortisepalumが開花しています。本種は長いラテラルセパルがカールしていることが特徴でバルボフィラムの中では人気の高い種です。マーケットでは黄色の花フォームが一般的ですが、稀に赤や黒っぽい色も見られます。ところが今回の株はそれらのいずれでもなく薄黄緑色です。そこでリップ形状をマクロレンズで撮影したところ、一般種の黄色フォームとはかなり異なっていることが分かりました。下写真左が今回開花した花で、中央がそのリップ拡大画像です。右は当サイトが在庫する黄色の一般種のリップ拡大画像です。中央のリップ拡大画像はorchidsnewguinea.comのレッドフォームとされるPhotoAのリップに似ています。flickrサイトにもリップ拡大画像がありますが形状はかなり異なります。 薄緑の花色についてはOrchidRootsにも見られます。しかし写真中央の、繊毛のあるコの字形に湾曲した中央弁形状は、ネット画像の多くが不鮮明であることも一因かもしれませんが見当たりません。今回の比較で気が付いたのですが、右写真黄色フォームの赤いリップ中央弁も見当たらず、色は兎も角も本種に関してはリップ形状の鮮明なクローズアップ情報が必要で、何か新しいことが分かるような気がします。今回の開花で、少なくとも下写真の中央と右のリップ中央弁形状は別種ほどの違いです。次回黄色や赤色フォームが開花した際にはさらに詳細なリップ形状を撮影したいと思います。

Bulb. contortisepalum aff. (green form) Bulb. contortisepalum yellow form

温室のレイアウト変更

 温室内では、昼間40℃近くに、また夜間でもその余熱でほぼ30℃と、8月に入って続く異常気象下において、これまでの栽培について再考することも多く、当サイトでは先週より4棟の温室の内、クール室1棟を除く3棟のレイアウトを大幅に変更することになりました。課題は全てのランに24時間行き渡る通風と、均一にかん水ができる株の配置です。当サイトの温室は1棟が15m x 5.5m程の空間で4棟あり、現在全体で凡そ7,000株を栽培しています。これまでの温室内のレイアウトは下写真上段左に見られるように、2mの長さの単管パイプを多数接続し、中央通路に沿って長く連なる枠組を作り、2017年からは多くの株がストックできるようにと、通路に対し直交する向きに2m長の緑色園芸支持棒を、高さと前後の間隔をづらしながら水平に取付け、ここにコルクやヘゴ板等に植付けた株を吊り下げてきました。単管パイプの柱と柱の間の空間(2平方m)を1ブロックとすると、このブロック内で栽培できる株数は、園芸支持棒をそれぞれ12本使用して、1本当たり平均15株を吊り下げることで180株程になります。また温室1棟内には同形の枠組みを中央通路を挟み左右に設けており、全体で12ブロックとなります。一方、地面から50㎝の位置にエクスパンドメタルの床を設け、ここにはポットやトレーに植付けた株を置き、また中央通路と左右の壁側にある通路にはそれぞれ扇風機を取付け通風を得ています。このレイアウトの目的は、高密度に株を栽培するためですが、問題は扇風機からの風は通路寄りの株にはよく当たるものの、支持棒の中央付近はほとんど無風状態で、この結果、通路側と中央部の株に乾燥度合の違いが生まれることです。

 限度を超える高温下に置かれたランの症状の一つは、低温タイプの種によく見られますが、まず葉先が黄色く変色する葉先枯です。放置すれば変色範囲が広がり、やがて葉は枯れ落ちます。落葉についてはしばしば指摘しているように、順化中であったり季節の変わり目で葉が変色し落ちること自体はよくあることですが、こうした背景には根に何らかの異常が起こっていることがあり、根のダメージは深刻で注意が必要です。今回の猛暑で数株の葉にそうした症状が見られました。昼間一時的であれば40℃であっても高温タイプのランは問題はないものの、夜間温度も高いと植込み材の乾燥も進みます。

 そこで、今回は2017年頃まで行っていた写真上段右のレイアウトに戻しました。このレイアウトは裏面にも同じ並びで通路に沿って株を平面的に配置しており、単管パイプに取付けられた扇風機からの風は、それらの表面を流れ、またかん水や株個々の状態観察はこれまでに比べ容易となります。一方で、栽培密度は写真左と比べ低下します。そこで、園芸支持棒のこれまでの2-3段から、コルクやヘゴ板など取付材のサイズ別にグループ化して吊り下げ、高さ間隔を調整しで3-4段とし、この結果支持棒間の間が狭くなり風通しが悪くなるのを避けるため、吊り下がっている上下の株の前後幅を広くすることにしました。

 こうしたレイアウト変更により、園芸支持棒の取付、また形状やサイズの異なる数千株のランの配置換えなど大変な作業となりました。特に最近の猛暑下での温室内では40℃近い高温・高湿となり、長時間の作業は熱中症の危険もあり1日の作業量は2ブロックが精々です。よって1棟当たりのレイアウト変更には凡そ6日を要し、先週(16日から22日まで)は多くがこの作業に費やされました。写真上段右および下段がレイアウト変更後の一部の様子です。今だ最も込み入ったバルボフィラムの1棟分が残っています。この猛暑下での株の出荷は、高温障害の危険性があるため避けており、その空いた時間を使い今週中には3棟全てのレイアウトを済ませたいところです。栽培は何年経験を積んでも常に試行錯誤の連続です。まあそれもラン栽培の楽しさではありますが。

これまでのレイアウト レイアウト変更後
レイアウト変更後

浜松今年国内最高気温40.9℃を記録

 浜松ではこれまでに経験のない、1週間以上毎日雨天が続くと、次には1週間以上全く雨のない猛暑に襲われ、とうとう16日には観測史上初の40℃を超えてしまいました。今年の国内最高気温とのことです。エアコンを稼働していない温室内は当然それ以上の高温となります。当サイトの温室では、かん水に地表から120mの地下(井戸)水を用いており、水温は通年で一定の16℃です。16日にはこれを午前9時と午後1時に散水し、温室内を34-38℃に維持しました。これまで40℃超えは、5-8月にフィリピンやマレーシアを訪問した際、マニラやクアラルンプール国際空港のビルを出たときの気温とほぼ同じで毎年体験してきましたが、まさか浜松でもとは驚きです。問題は、こうした高温下では出荷が難しくなることです。受入れ側に冷暖房エアコン温室があれば良いのですが、出荷では植込み材を新たなものに替えたり、根や葉の剪定で病害防除処理を伴うことがあり、厳しい環境変化は種によるものの、1か月間程は好ましくなく、これまでも気温が32℃以上となる間は出荷は控えていました。気象予想では猛暑はまだ暫く続くようです。

 40℃前後になっても高温タイプのランは一気に弱まることはありませんが、注意すべきは32℃以上の気温になれば植込み材の乾燥が一段と進み、根周りがカラカラ状態になる恐れがあり、これを如何に避けるかです。デンドロビウムやバルボフィラムなど根の比較的細い種は、高温下で根周りの乾燥状態が繰り返されると新芽が落ち、葉がしな垂れ、やがて変色し枯れ始めます。胡蝶蘭では、32℃以下の気温下では問題がなかったPhal. cochlearis、fimbriataなど高温タイプと思われている種にも大きな影響がでます。初めてのことですが、このところの高温続きで30株ほどあるPhal. schillelrianaの葉に、若干色褪せたような変化が見られたため、16日、低輝度で常に一定の通風があり、株全体に等しく散水できるようにとレイアウトを変えました。湿った植え込み材等の気化熱で、2-3℃ほど株周りを冷やすためです。こうした中でも、猛暑を気にしない種もいます。フィリピンCalayan諸島のAeridesです。Aerides magnificaは暑さ我感ぜずと、冷房のない温室で10株以上が一斉に花芽を伸ばしています。下写真はその一部です。17日の撮影で、左右それぞれがalbaタイプです。

Inflorescences of Aerides magnifica & magnifica f. alba Photos:Aug./17

ナメクジ被害のBulb. uniflorum

 ナメクジには多くの栽培者が悩まされていると思います。当サイトでは時折ナメクジ殺虫剤マイキラーを散布していますが、その間を潜り抜けるようにナメクジ被害に遭っています。ナメクジには誘って食べればといった誘引殺虫剤では手緩く、触れただけでお終いとなる強力な薬剤が効果的です。昨日(14日)朝、蕾が膨らみそろそろ開花かと期待していたBulb. uniflorumが、開花と同時に齧られていました。それが下写真です。どうもナメクジには臭覚があるのか香りのある種をよく選んで齧るようです。これまでの経験から、写真左の右の花でラテラルセパルの一つが齧られないで残っていますが、こうした食べ残しがある場合は、ほぼ確実にその夜に再び現れることを学んでおり、その夜中の11時ごろに懐中電灯を灯しながら見に行きました。案の定です。さてそれをどうするか、通常ではピンセットあるいは箸で摘まみ退治となりますが、当サイトでは、最近はそうした面倒なことはしません。スプレーボトルに規定希釈のマイキラー(1/200)を入れたものを用意しておき、数センチ離れた場所からナメクジに直接スプレーし、そのまま捨ておけば翌日朝には近くに亡骸があります。しかし今回はマイキラー原液に毛筆を浸し、これをナメクジにこれでもかと塗りました。本日(15日)早朝、その亡骸が床に落ちているのを見ました。

 同じく害虫で、オオランヒメゾウムシは手を伸ばし掴み取ろうとすると飛び去るのではなく、ポトリと落下する特技があり、その小ささと色合いから下に落ちた虫を探すことは難しく、どうして危機が迫ると飛び去ることより落下することをこの虫は選んだのか、その逃避DNAに感心してしまいます。こうなればDNA対人の知恵との戦いで、この場合も掴み取ろうとするのではなく、規定希釈殺虫液(ノックダウンタイプ)を直近からスプレーで吹きかけ確実にあの世に送ります。常に温室の片隅に薬品を入れた小型のスプレーボトルを準備しておくことが役に立ちます。通常ならば害虫を見つけたなら温室全体に農薬を撒くことが最善ですが、この猛暑の中、レインコート、手袋、マスクをつけた完全装備の農薬散布は熱中症のリスクや、高温下の農薬散布はランに薬害を生じる恐れもあり、上記のような狙い撃ちも止む無しです。 ナメクジは齧るだけでなく細菌性腐敗病を持ち込み、ゾウムシの幼虫は株の芯を食べ枯らします。梅雨期から10月中旬頃までは害虫被害も多く、防除対策が必要です。

 ところで下写真のBulb. uniflorumはマレーシアキャメロンハイランドでBulb. binnendijkiiとして入手したミスラベル株ですが、リップ紅色の鮮やさから、どうやらキャメロンハイランド自生のBulb uniflorumのようで、これはこれなりに存在感のある色合いで気に入っています。本日(15日)さっそく、株分けと共に植え替えをしました。


多様なフォームのDen. punbatuense

 14日は全国的な猛暑で、浜松での温室内は寒冷紗70%遮光下においても40℃を超えました。高温対策として温度を検知した自動散水も一つの方法ですが、原種を多品種栽培する場合、それぞれの形状やサイズが大きく異なり、さらに種の特性に応じた輝度や通風なども考慮した、込み入ったレイアウトの中では、定点からの一様な散水は、株それぞれの被水量にムラができ有効ではありません。よって晴天下において外気温が30℃以上ともなれば温室内は35℃を超え、1日2回以上の手撒きの散水が必要となります。今年は6月より炭化コルクやヘゴ板等に付けた株を30株程、栽培調査のため室外の風通しの良い日陰に吊るし観察してきました。梅雨期が終わるまでは問題がなかったのですが、30℃を超える晴天日が続くと、4-5時間で植込み材が乾いてしまい、晴れた日は4回以上の散水ができなければ板付け株の屋外での維持はできないことが分かりました。今回のような日本の猛暑が、5月頃から5か月間程続くフィリピンやマレーシアのラン園が、炎天下においても寒冷紗一枚で、板付けや吊り下げ栽培を続けられるのは、午後に決まって襲うスコールや夜の濃霧による高湿度環境が背景にあると思います。これを日本の屋外で真似ることは困難です。

 こうした状況の中、温室内ではボルネオ島Sabah生息で2008年登録の新種Den. punbatuenseが開花を続けています。当サイトが在庫する本種は2018年にDen. serena-alexianumのミスラベル名でボルネオ島から30株程入荷したものです。ところがこのロットの株にはこれまで多様な花フォームが見られ、最近開花の株の中に、果たして同一種なのか疑わしいフォームも現れました。下写真6枚が同一ロット内のそれぞれの花画像です。写真でForm1および2はすでに当歳月記に取り上げました。現在(14日)開花中の花がForm3と4です。下段はそれぞれの花フォームがもつspur(距)の形状を示します。

 spur形状は種の同定に用いることがあり、同一ロット内に3つの異なる形状が含まれるのは不思議で、orchidspecies.comではDen. punbatuenseの花フォームはForm1,2に類似しているものの、spurは直線的です。しかし当サイトで開花したspurが直線的な花はForm3で、しかも先端は上方に向いており、Form1,2の花やspurが似ていません。 またForm4もForm1,2とは花、spur共に違和感があります。ちなみにミスラベル名のDen. serena-alexianumはネット画像を見るとForm1と同じように湾曲しています。 仮に同一種でもspurの形状変化はあり得るとすると別の問題が生じます。例えば花形状が酷似するフォームが含まれるDen. dianaeDen. hymenophyllumはspur先端が湾曲し前方に向かっているか後方に伸びているかで同定する場合があり、これは如何にとなります。こうした似て非なる種が増えると、見た目ではない分子分類学の出番が必要かも知れません。しかし同名種の中でのフォームの違いも多数の株を同時栽培しているから直面することで悩ましいものの、これはこれで一興でもあります。

Form1A Form1B Form2A
Form2B Form3 Form4
Form1およびForm2 Spur Form3 Spur Form4 Spur

猛暑の中、開花のデンドロビウム

 ここ1週間程の当サイト高温室では昼間38℃を超えています、この高温環境にも拘わらず、前記取り上げた高温室の多輪花デンドロビウム3種などを含め多数の種が開花しており、新たにデンドロビウム6種を選んでみました。フィリピン生息のDen. elineaeは2017年登録された新種です。またDen. dianae f. flavaは10日間程の開花時から落下する2日前まで写真が示す淡い緑色で、これまでDen. dianaeを40株程栽培していた中で唯一のフォームです。

Den. crabro Borneo Sarawak Den. erosum Malaysia Cameron HLs Den. elineae Luzon Norte
Den. deleonii Mindanao Bukidnon Den. dianae f. flava Borneo Kalimantan Den. chewiorum Borneo Sabah

フィリピン近況

 3ヶ月ぶりに原種専門のフィリピンBarangayのラン園からメールをもらい近況を聞くことができました。フィリピンは現在、東南アジア域内でのCOVID-19累計感染者数が最多で、今月4日には1日当たりの感染者数が6,000人を超え、再びマニラ都市圏がロックダウンされました。ラン園によると、Barangay地域の感染者は今のところ発表されていないそうですが、その周辺都市は多いようです。こうした国内状況により植物検疫事務所は休業状態で、このラン園でもここ3ヶ月程収入がないそうです。取引再開がいつになるか分かりませんが、貧富の差が大きいフィリピンの社会事情からは3密を避けつつwith corona生活は期待できず、治療薬ができるまで難しいと思われます。入荷が1年以上先であっても、フィリピンランビジネスの維持・支援のため、今後ラン発注の有無に関わらず一定額を定期的にデポジットすると伝えました。そうしたところ、COVIDによって収入が断たれ困窮しているルソン島、ミンダナオ島、Visayas諸島のコレクターたちにとっての支えにもなるとのことでした。

現在(8日)開花中の多輪花種

 1茎あるいは1株当たりの同時開花数が多い現在開花中の6種を選んでみました。上段左の濃青色Den. victoriae-reginaeは9輪、中央のDen. cymboglossumは20輪、下段中央のDen. toppiorum subsp. taitayorumは13輪、右のBulb. lasioglossumは蕾を含め51輪です。全種8日の撮影で、Den. cymboglossum, Den. sanguinolentumおよびDen. dianaeは高温室、他は中温室での栽培です。現在高温室は昼間の最高温度が38℃、夜間最低温度は昼の余熱で27℃となっています。 一方、中温室は昼間の最高温度は32℃、夜間最低温度は18℃です。Den. sanguinolentumは木製バスケット、他は全て炭化コルクでの栽培となっています。昼間は換気扇が回り続けるこの高温環境の下、植込み材を決して乾かさないように維持するのは一苦労です。

Den. victoriae-reginae dark blue Mindanao Den. cymboglossum Borneo Sabah Den. sanguinolentum Sumatra
Den. dianae Borneo Kalimantan Den. toppiorum subsp. taitayorum Sumatra Bulb. lasiolossum Luzon Bataan

編集中のBulbophyllumサイト

 現在、これまでに扱ったバルボフィラム属のページを編集しています。間もなく完了し、次はデンドロビウムとなります。編集に当たっては、これまでの花画像に加えて、栽培者でなければ提供(撮影)できない映像表現とはなにかと、ネット検索で見られる多くの画像に欠けている情報を考えてきました。その一つは、花写真はあるものの、その株写真が少ないこと、またバルボフィラムCirrhopetalum節では、類似種が多い中、同定に必要なリップの鮮明なクローズアップ画像がほとんど見られません。今回当サイトでは、花と共に株やリップクローズアップ画像をほぼ全ての種に追加することとしました。

 それぞれの種の概要は、従来通りページに記載しており、種毎の栽培方法は別サイトにリンクするシステムを計画中です。現在の情報に一つ欠けているのは花サイズ情報です。ジャーナル等の出版物から知ることは出来ますが、趣味家にとり英文の学術誌を読むことにもなり、また花の部位毎の寸法値では直感的でありません。花の大きさが一目で分かる方法は、花をメジャーと共に撮影した写真を用意することです。しかし数十種の花ならば兎も角、数百種を対象とするには、開花のタイミングや花の向きなど様々で、その種を所有する栽培者でなければ撮影は困難です。こうした映像は今後の開花を待ち、順次掲載する予定です。下記のBulbophyllum indexはサムネール画像を、またその中の14種を参考として編集中のページにリンクできます。年末の一括更新までには未開花のsp種も相当数あることから、250種を超えると思います。全種が当サイトでの栽培を経て撮影されたもので、情報発信や栽培調査を目的にこれらのほぼ全てを現在も所蔵しています。これらの種の中で入手を希望される方はお問い合わせください。出荷可能な種、見積りあるいは取り寄せなど状況をお知らせします。

 ちなみに来週から編集が始まるデンドロビウムは300種を越えます。その次はAerides、Vanda、セロジネ属、さらに2015年以降撮影した胡蝶蘭原種、Draculaと続きます。

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