栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2024年度

2025年  1月  2月 

2月

現在(7日)開花中の7種

 Bulb. inacootesiaeは昨年9月に、30株程を炭化コルクから杉板に植替えしました。本種は通年で、夜間平均気温20℃以下を必要とする中温タイプのバルボフィラムです。また高輝度を好むため温室の天井に近い明るい場所に吊り下げていました。しかし寒冷紗があっても天井近くは太陽光により気温が可なり上昇し、特に昨年の猛暑期間には夜間平均温度が30℃を越えていたようです。高温室であれば天窓の開閉があり熱気の停滞はないのですが、夏期の中温室では室内を冷房しているため天窓は終日閉じていることで起こる問題です。この結果、根が障害を受けることとなり、植替え後には1昨年のDen. aurantiflammeum同様の深刻な作落ちが現われ、3割近いバルブが枯れました。現在は可なり回復し新芽が出始めたところです。このように環境による株の弱体化はまず根から始まるものの、葉やバルブとは異なりその予兆が目視できないため気が付かず、多くが手遅れとなります。 今年の夏期も昨年並みの猛暑が予想されていることから、中温室では天井周辺を含めた空気の循環が必須と思われ、相応の対応を準備する計画です。
 Bulbophyllum spBulb. trigonosepalumの黄系フォームに似た形状ですが、開花時は薄緑でした。縦および横幅はそれぞれ3.5㎝程の小型サイズとなります。多輪花で初めて見る花です。下段のDen. cymbicallum aff.はマレーシアRoyal Floria Putrajaya 2018年の花展にて入手したデンドロビウムですが、まだ種名の確定に至っていません。先月末にも花画像を掲載しましたが、数十輪が同時開花した本種の画像はこれまで掲載していなかったことから、今回は15本程の花軸に一斉開花する株全体の風景を撮影(7日)しました。

Bulbophyllum inacootesiae Mindanao Bulbophyllum nasica yellow NG Bulbophyllum acuminatum Borneo
Bulbophyllum sp Mindanao Dendrobium macrophyllum Luzon Coelogyne sparsa Luzon
Dendrobium sp aff. cymbicallum Borneo

 2月に入り寒さが一段と厳しくなっています。当サイトでは10年以上使用してきた石油温風暖房機が製造中止となったことを機に先月、4棟全ての空調をエアコンに切り替えました。高温室3棟では例年11月から3月頃までの期間は、終日寒冷紗を外しており晴天日の日中には外気温が0℃であっても、温室内の気温は最高で30℃近くになります。このためエアコンの暖房は、設定可能な最下値16℃とするものの、昼間の余熱によって室内の平均気温は夜間で18℃、昼間は28℃程に保たれています。この結果、晴天日では暖房がフル稼働する時間は夜間の数時間のみとなります。こうしたことから当サイトの温室内には冬期と云った環境は無く、新芽や新根の発生も盛んで、ラン栽培の一般論である”冬期は潅水や施肥を控えめにする”との対応とは無縁です。
 2012年以前の当サイトのラン栽培は、除雪車が通る道を除き、2月末まで地面は雪に覆われて地表が見られない豪雪地帯の会津若松でした。そうした環境の中、栽培はポリカ仕様の15坪アルミ温室の2棟でしたが、冬期には石油温風暖房機は24時間稼働し続け、月当りの灯油コストは凡そ8万円/棟にもなりました。現在ならば15万円程になっていたと思います。2013年からは国内で雪が最も降らない地域の一つである浜松への移転をした際には、こうした過去の経験を教訓に、奥行き15mの鉄筋温室の内外壁にはそれぞれ中空ポリカーボネイト板を張って2重構造とし、さらに温室内部は全面サニーコートで覆う構造としました。栽培株が500株を越え始めれば栽培スペースも広くなり、光熱費を下げるため、夏季の猛暑対策を含め、少なからずこうした対応も必要になってくるのではと思います。

Brassia arcuigera aff.

 2015年から3年間ほどサンシャインや東京ドームでのラン展において、南米出展者の売れ残り株をしばしば引き取っており、その数は350種を超える程でした。当方ではこれらをwebサイトで販促することはなく、温室に来られた方のみに販売してきました。そうした中にはひときわ目立った種もあり、その一つがBrassia arcuigeraです。本種入手時の種名ラベルにはBrassia lanceana/caudataとあり、その2種名のいずれかかであろうとのラン園の意と思われます。しかしセパルの斑紋の多少を個体差と見做せば、花形態はBrassia arcuigeraにより類似しています。この株の特徴はその花のダイナミックな姿で、下写真に見られるように一輪の花の縦サイズは30㎝超えで、IOSPE記載の22.5㎝と比較してかなり大きく、これが水平に伸びた65㎝程の花茎に14-5輪が同時開花することから圧倒的な存在感があり、また良い香りもします。現在は70㎝長ヘゴ板で栽培しており、今回開花が見られたことから撮影(4日)しました。

Brassia arcuigera aff. Ecuador

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