2月
Bulbophyllum sp (種名不詳種sp14)、Bulbophyllum polyflorum,およびDendrobium rhombeumの植え替え
23日から25日の3日間にバルボフィラム2種とデンドロビウム1種の植え替えを行いました。下画像左は2016年キャメロンハイランドにて入手した
Hyalosema節と見られるバルボフィラムです。本種については一見、Bulb. arfakianumやfraudulentumのalbaあるいはflavaフォームのようですが形状を詳細に比較すると相違のあることが分かります。またキャメロンハイランドのラン園からの入手のためマレー半島やボルネオ島などの生息種を推測されがちですが、このラン園はニューギニア生息種も多数栽培しており、本種の形状からはニューギニア生息種の可能性が高いと思われます。現在も種名が不詳であり、当サイトでは現時点では未登録種と考え、バルボフィラム・サムネイルにsp14として詳細情報を掲載(青色種名のクリック先)しています。
画像中央のBulb. polyflorumは2016年に記録された新種です。バルボフィラムの中で最も入手難な種の一つです。この入手難とは生息数が少ないという意味ではなく、現地から入荷する種の十中八九はミスラベルであったことからです。生息数は不明です。この経緯は 2017年6月の歳月記に報告しています。
画像右はDen. rhombeumです。本種の問題点は、中国、タイ、ボルネオ、Java, スマトラ、フィリピンなど東南アジアほぼ全域に分布する Den. heterocarpumのシノニム(異名同種)としてIOSPEなどのリストに含まれていることです。この情報故かネットにはDen. rhombeumは”東南アジアに広く分布する種”としたサイトも見られます。一方、J. Cootes著Philippine Native Orchid Species 2011では、Den. rhombeumはフィリピン固有種とされ、その特徴はペタル形状にあるとしています。また同著書にはDen. heterocarpumの掲載はありません。すなわちフィリピンにDen. heterocarpumは確認されないとの意味にもなります。一方、IOSPEのDen. rhombeumのページにはDen. heterocarpumとは非常に似ているがリップ・カルス(リップ中央弁の凹凸)や全体形状が異なる、との記載が見られます。当サイトでは、本種のペタルはその種名由来のrhomboid(偏菱形)から両種は別種としています。
ここで問題は、当サイトではフィリピンPalawanに生息のDen. rhombeumおよびDen. heterocarpumの両種を前記時期に入手し栽培しており、これらの中には両種の中間体も見られることです。この詳細は当サイトの Den. heterocarpumのページに記載しています。
下画像でBulb. sp14は60cm長の杉板に、またBulb. polyflorumは右側が60cm、左が45cm長の杉板(いずれも無垢材)に取付けています。画像右のDen. rhombeumは全て高芽の植え付けです。今回3株の親株に、合わせて50本以上の高芽があり3-4本を寄せ植えして一組とし、14枚の杉板にそれぞれを取付けました。1年以上親株に着いたままの高芽もあり、30cm(根を含めると60cm)長を超える株も数本あります。画像は杉板14枚の内の8枚で60、45、40cm長の杉板となります。バスケットも考えましたが、長期間の高芽状態が続き多数の根が直線的に15ー30cm程下垂しておりバスケットでは根が折れ曲がるため、平面的で長い伸びしろが可能な杉板としました。これらの開花までには、高芽は実生に比べ成長は可なり早いものの、2年近くをを要すると思います。
このように栽培で開花を見る度にその種の詳細を改めて調べていると、情報の矛盾や実態との相違にしばしば直面します。こうした問題を整理するには想定外の時間やコストを費やしていまいます。これを苦痛とするか、矛盾の背景やその起因を探り出す作業も勉強として一興と見做すかは悩ましいところです。
現在(19日)開花中の21種
フィリピンルソン島標高1,200mに生息のBulb. schaibleiは昨年3月末に当サイトにての開花を報告をし、4月には株を2分割して植え替えを行いました。今回その両株に開花が見られます。Bulb. magnumは当サイトでは5-6月が開花期ですが、今回の開花は早咲きとなります。下画像のDen. macrophyllumはフィリピンから種名Den. Setigerum(M.A.Clem. 1999)として入手したデンドロビウムです。先月の歳月記にDen. macrophyllum(A.Rich. 1834 )Javaとして掲載した種とはシノニム(異名同種)の関係にあることから、現在当サイトでは記録先行のDen. macrophyllumに種名を統一しています。現在フィリピン生息株を20株、Java生息株は4株ほど栽培しています。Den. ovipostoriferumの開花は年2-3回ありますが、15株ほどあるそれぞれが時間差をおいて開花しているため、花の見られない月はない状況となっています。
現在開花中のDendrobium busuangenseとCoelogyne rhabdobulbon
Den. busuangenseはフィリピンBusuanga島低地生息のデンドロビウムですが、その同定については幾つかの問題に直面します。IOSPEでは、本種とDen. conanthumとはシノニムの関係として同じ画像(OrchidRootsでは両種は異なる)が掲載されていること、また本種の記録は1920年ですがJ. Cootes著 Philippine Native Orchid Species 2011にはDen. busuangenseが掲載されていません。その一方でDen. conanthumは掲載されています。これは両種をシノニムとし、記録先行の種名としてDen. conanthum(1912年)を採用したと思われます。しかしDen. busuangenseとDen. conanthumはリップ中央弁先端部のくびれと形状がそれぞれ異なります。不可解なことに前記著書の画像はむしろDen. busuangenseに似ています。さらに殆どの花画像でのDen. busuangenseのセパル・ペタルは、淡褐色系ですが当サイトの花色は下画像に見られる黄緑のフォームです。このフォームに類似する種は直近(2021年)の新種Den. dedeksantosoiです。この種の生息地はマルク諸島ですが、下画像種はフィリピンからのDen. busuangense名で2015年入手した株です。そのため現状ではDen. busungenseとして取り扱っていまが種名は要検討となります。
一方、右はボルネオ島標高800m以上に生息のCoel. rhabdobulbonです。本種はBSサイズになると葉サイズが大きく伸張し、葉身と葉柄を含めると60cm以上にもなります。これに30cmほどの細長い円柱状のバブルサイズが加わると株は1m近くになります。Coel. rhabdobulbonの問題は同時開花時の花数の情報に関するものです。これはDen. busuangenseについても同様です。
そこで今回も現在開花中の両種の輪花数について調べました。当サイトでの上画像左のDen. busuangenseは22輪、右のCoel. rhabdobulbonは開花直前の3つの蕾を含め27輪となります。一方、IOSPEではDen. busuangenseは花茎(花序)当たり多くて凡そ50輪、またCoel. rhabdobulbonは10-15輪との記載です。このように当サイトが栽培する両種の実態とIOSPEの情報とは大きく異なります。そこでネットに公開されている他の情報も参照して検証してみました。
まずDen. busuangenseでの最大数とされる50輪はどのような姿になるかですが、基部の花柄位置から先端部までの上左画像の22輪の長さと対比すると、50輪は80cm程になり、これに上画像に見られるように葉元から最初の花柄発生点までの長さを加えると1mを超える極めて長い花茎となります。また
ネット上では多数の花茎を束ねて撮影された煩雑な画像も多く、花茎1本当たりの輪花数を確認することは困難ですが、そうした画像からの目算では20輪を大きく超える画像(花序)は見当たりません。当サイトではこれまで40種程のSpatulata節デンドロビウム(種名は2015年4月の歳月記に記載)を栽培してきましたが、葉元から発生する総状花序形態の花茎に50輪程が同時開花した種は見たことがありません。
50輪とはおそらく1茎当たりでは無く、1株当たりの開花数ではないかとの疑問を感じます。
次にCoel. rhabdobulbonに関するIOSPEの10-15輪の開花数ですが、当サイトでは2024年頃までは12輪ほどでした。しかし今回の開花では27輪となり、この数に近いあるいは超える輪花数の画像が他に見られるかどうかも調べました。ネット検索の限りではiNaturalistサイトが20輪を超える自然木での本種の生息画像があり、IOSPEにおいても「Plant and Flowers in site Borneo(ボルネオ島生息地での株と花)」では蕾を含め20輪ほどの画像が掲載されています。ではなぜ15輪までとしたのかは分かりませんが、人工栽培環境においては15輪程が限度であろうと推定したのかも知れません。一方、
他サイトでは画像の画角内の数は15輪以下で20輪以上の開花数は検索出来ませんでした。以上が検索結果です
こうした問題を取り上げるのは、開花は栽培における一つの成果やゴールであり、花サイズや輪花数はそれまでの栽培が適切で有ったか無かったかを示す一つの重要な指標となります。この視点からネット上に見られる開花情報を調べ、その株の標準的な特性を知り、自身の株との相違や問題点があればその原因を探し出し、栽培環境を向上することも必要です。逆に良い成果が得られたのであれば、花画像だけで無くそれを得た栽培法をネット等に公開することもラン愛好家への有益な情報になると思われます。
現在開花中のDendrobium deleoniiとDendrobium paathii
ミンダナオ島Bukidnon標高1,300m生息のDen. deleoniiと、ボルネオ島Sabah州低地生息のDen. paathiiが現在開花中です。今回は一株当たりの輪花数がそれぞれ21輪と14輪のこれまでの最多レベルの同時開花であることから、14日と15日にそれぞれを撮影しました。Den. deleoniiはチークバスケット、一方Den. paathiiは炭化コルクとヤシ繊維マット重ねへの植え付けとなります。Den. paathiiは花後、杉板に植え替え予定です。Den. deleoniiは2018年発表の新種で且つミンダナオ島生息種であるためか、現在も極めて入手困難なデンドロビウムのようです。
種名不詳のデンドロビウムDendrobium sp aff. cymbulipesの植え替え
Den. Cymbulipesの類似種と思われる種名不詳の株の植え替えを行いました。本種は2017年7月にDen. cinnabarinumのミスラベルで ボルネオ島のサプライヤーから入手したもので、その経緯は同年同月の歳月記にて報告しました。下画像中央は高さ80cmの現在の株の一つで、25本を超える高芽があり今回これらを外し3-4本の高芽を1組として寄せ植えし、右画像に見られる8個のチークバスケットに植付けました。中央の画像は高芽を取り外した後の親株の姿で、まだ4-5本の高芽が残っています。
花形状から本種はデンドロビウムcrumenata節と思われます。そこでIOSPEサイトに掲載のcrumenata節84種を参照し、花形状を中心に比較検証を行いました。しかし本種に酷似あるいは該当する種は見当たりません。。一方でDen. cymbulipes名でのネット検索ではDen. cymbulipes lilac-pink sepalsとされる花の側面画像が1点あり、その形状と色合いが似ていることとその種はボルネオ島サバ州とされ生息域も本種と同じであることから、情報元のMalesian Orchid Jaurnal Vol.10 (2012) 103-122 MountTambuyukonを調べました。しかし記載から得られる情報はDen. cymbulipesの花色の違いと生息域のみでDen. cymbulipesとされることに変わりはありません。当サイトではこれまで2019年11月と2023年2月の歳月記に本種とDen. cymbulipesとの違いを報告しましたが、再度下画像に両種の相違点を取り上げてみました。画像から明らかなようにDen. cymbulipes aff.のリップ中央弁の4列の突起や葉(針形)の形状などは、Den. cymbulipesとは変種の範囲を超える相違があり、両種は別種であると共に本種は未登録のデンドロビウムの可能性が高いと思われます。
ちなみにDen. cymbulipesのマーケット情報についてのAI検索では、当サイトの5年以上前の価格1万円(>15葉)から 2万円(>20葉)が表示されるのみで、他には海外を含めいずれも販売は現在見当たらないようです。ではより希少性の高いDen. cymbulipes sp aff.の販売価格をどうするか、現在未定です。
Bulbophyllum infundibuliformeとBulbophyllum obovatifoliumの植え替え
ニューギニア低地生息のBulb. infundibuliformeとBulb. obovatifolliumの杉無垢材への植え替えを行いました。下左画像の右から4株がBulb. infundibuliformeで、奥の2株はBulb. irianaeです。Bulb. infundibuliformeは画像に見られる4株とは別にチークバスケットに植付けた7株も栽培中です。右画像は全てBulb. obovatifoliumです。株サイズに合わせて支持材サイズは手前4株が40cmx15cm、右端が葉付きバルブ12個の60cmx15cmサイズとなります。
これまで本ページで植え替えを報告してきた全ての種はそれぞれ2株を残し、他は販売対象となります。
現在(4日)開花中の11種
Coel. assamicaはバルブ間(リゾーム)が長いためポット植えは適さず、当サイトでは現在杉板へ取付けて栽培しています。昨年は3輪の開花でしたが今回は10輪の同時開花となりました。一方Coel. longirachisは、花は小型ですが花の終わった花軸の長いジグザグ状の節が画像に見られるように、Coel. usitanaと同様に次々と開花が続き、年中花が見られます。本種は夏期と冬期で花色が変化する特性が有り冬期は赤味が増します。
2024年の猛暑でダメージを受けたBulb. inacootesiaeはかなり回復しており、今年は20株程の内、4割ほどで開花が始まりました。Coel. sp aff. tomentosaはリップ中央弁の先端部の形状がCoel tomentosaとは異なることからsp aff.としていますが現在も種名は不明です。その形状の相違は画像下の青色種名のリンク先で見られます。Den. leporinumはこれで1株での開花です。自然体では1mにもなる疑似バルブ(茎)が広がって全体を撮影することが難しく、茎を寄せての撮影となりました。これでも画角内に入りきれない花が10輪ほどあります。本種は花寿命が長く、こうした風景が1ヶ月以上見られます。
近年になって発見されたバルボフィラム3種の植え替え
下画像は2010年代に種名が決まったBulb. irianae、Bulb. hymenobracteumおよびBulb. isabellinumです。これまでBulb. irianaeおよびBulb. hymenobracteumは炭化コルクとヤシ繊維マット重ね、一方でBulb. isabellinumはブロックバークをそれぞれ支持材としてきました。今回Bulb. hymenobracteumは画像に見られるようにチーク材バスケット、その他は60cm x15cmから40㎝x15cmまでの杉板サイズへの植え替えとなりました。画像下にそれぞれの種名公開者名と年を記載しました。