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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2024年度

2025年  1月  2月  3月 

3月

Draculaの喜怒哀楽の表情

 前項で泣き笑いのDraculaの花模様を取り上げましたが、ふと、人の感情を表現する「喜怒哀楽」に相応する4つの花顔を選んだら面白いのではと遊び心が沸き、下に並べてみました。多少こじつけっぽいところもありますが、他のランでは表現出来ないDraculaならではの花姿です。

喜(joy)
(Dracula venefica red)
怒(anger)
(Dracula severa yellow)
哀(sorrow)
(Dracula janetiae)
楽(happiness)
(Dracula amaliae)

Dendrobium anosmum var. giganteum

 当サイトでは3-4月がDen. anosmumの開花期となります。今回一般種とgigateum種が同じタイミングで開花しているため両者を比較撮影しました。Den. anosmumはその多花性から人気のあるデンドロビウムで、ネットでも多くのマーケット情報が見られます。本種の一般種とgiganteumの現状については2024年3月の当ページにて取り上げました。要点は、マーケットでのgiganteum(ラテン語で巨大を意味する)とされる花サイズの実態が不明で、その変種名に相応しいサイズの具体的な情報が得られないことにありました。IOSPEでは、一般種の花サイズは5-10㎝とされることから、giganteumフォームはそれ以上のサイズであることが理にかない、さらに種名に変種用語「var.」を付帯する以上、その株は一般種とは明確に区別され、遺伝的にもその特性(この場合サイズ)が継承されること、さらに一般種とは異なる地域性をもっていること(一般種と同域内の生息種はvar.ではなくf.)とされ、サイズが成長度合いや環境によって変化(10㎝以下)することはありません。一方でネットには花サイズにメジャーを入れて撮影・公開した画像が見当たりません。基本的にcm単位の花サイズを画像化するには接写撮影となり、メジャーと花はレンズからの同じ距離で撮影することが必須条件で、僅かな奥行方向にズレであっても正確なサイズは得られません。一方がシャープで他方はピンボケであったり、花が手前で、メジャーが後ろにあればある程、花は実体より大きく写ります。
 こうした諸々の背景にあって、当サイトが本種をvar. giganteumとしたのは、入手がフィリピンで一般種と異なる特定地域内からの入荷であること、また2016年から10年近い栽培において株の成長や環境の違いの中にあっても花サイズに変化は無く、サイズは常に継承されていることからです。では、花サイズが一般種とは明らかに異なる大きな株であるものの、var. 定義に必要なサイズ以外の情報が全て揃わない場合の差別化はどうするのかですが、var.を外しDen. anosumum giganteumとすれば、この付帯名は愛称となり、これであってもその株が持つ特徴表現は意図できます。
 こうした状況の中で大きな花を求めたい人は国内外を問わず入手には必ずメジャー入りの画像を提供者に求めるべきです。”巨大”さを特徴とする商品にも拘わらず、その寸法写真が提供できないとすれば、定規一つあれば簡単に撮影できる今にちのスマホ時代に、おかしな話です。逆に提供者がその株の迫力のある花姿とサイズを画像で示せすことが出来れば、販売に極めて有効となります。

 下画像はvar. giganteumサイズと一般サイズとの比較を示すものです。上下段の左画像はいずれもgiganteumの花です。ペタルサイズは下段左画像に示す6.2cmです。上段右の一般種との比較画像からは、一般株がかなり小さく見えますが、この花サイズであっても左右のペタル間の横幅は9.5㎝あり、一般種としての最大サイズに近い大きさです。giganteumは左右のペタル間の幅は13㎝となります。これら全ての画像は13日の撮影です。

Dendrobium anosmum var. giganteum 

現在(13日)開花中の3種

 Bulb. vaginatumは2016年に初入荷したバルボフィラムで、フィリピン固有種であるBulb. surigaenseと似ていますがはペタル及びリップ中央弁の形状が異なります。本種の開花期は当サイトでは2-3月となります。20バルブ程のサイズ株が同時開花するとBulb. medusaeのようにも見えます。Den. amboinenseは春と秋が開花期となります。今回撮影したのは、あまり見ることのない全開した状態に出会ったためです。本種は1日花で早朝の2-3時間しかこのような開花風景は撮影出来ません。Calanthe vestitaの一般種はリップの基部に深紅の斑紋がありますが、そのalbaフォームとされるネット画像には多くで淡い黄味が残っています。当サイトが栽培している albaフォームはリップを含め花被片全てが純白です。撮影はBulb. vaginatumが12日、他は13日です。

Bulbophyllum vaginatum Borneo Dendrobium amboinense Ambon Is. Calanthe vestita alba Mindanao

現在(11日)満開中の3種

 1株あるいは1茎(疑似バルブ)に多数の開花が見られるDen. leporinum、Den. treubiiおよびDen. sp aff. enderitiiを先々月と今月の当ページに取り上げたましたが、いずれも現在これらがほぼ全開に至っていることから、満開の印象もまた異なるのではと再度その風景を10日と11日に撮影しました。

Dendrobium leporinum NG
Dendrobium treubii Moluccas Dendrobium sp aff. endertii Sulawesi

現在(9日)開花中の12種

 Bulb. incisilabrumは現在7株栽培しており、2株を大きなブロックバークに、また5株を炭化コルクに植付けています。炭化コルク植付株はそれぞれ20バルブを越えるサイズとなっているため、近々、60㎝杉板に植替える予定です。本種は画像に見られるように多数の同時開花となると、一花のサイズが5㎝程あることから迫力があります。Coel. usitanaは通年で開花していますが、今回の花はリップ側弁の色が比較的黒いフォームであることから撮影しました。意外なことに、本種は10㎝程の大きな花サイズで、1輪花を数か月に渡って繰り返し咲き続ける個性のあるセロジネにも拘らず、その存在が確認されたのは近年(2001年)で、ミンダナオ島Bukidnonの狭い地域にのみ生息しているため発見が遅れたとされます。本種のリップは赤茶から黒に近い色まで多様で、下画像の青色種名のリンク先にいくつかを掲載しています。そのページにある黒色花は現地においてもまず見ることは出来ない稀な黒さかと思います。 Den. maraiparenseは昨年9月、木製大型バスケットに6株をそれぞれ植替えましたが、今回の開花はその後の初花となります。現在それぞれの株には多数の蕾が発生しています。画像の茎にも花の周辺に4個の蕾が見られます。不思議なことに本種の一般情報はネット上で多数見られますが、マーケット情報は国内外共に見当たりません。Vanda deareiは3か月毎に年4回の開花を続けています。
Draculaは、泣いているDracula vespertilioと笑っているDracula veneficaの花顔に今回偶然出会えたので撮影しました。

Bulbophyllum incisilabrum Sulawesi Bulbophyllum recurvilabre(form3) Leyte Bulb. sp aff. trigonosepalum Mindanao
Coelogyne pandurata Borneo Coelogyne usitana Mindanao Dendrobium rindjaniense Lombok Is.
Dendrobium maraiparense Borneo Paraphalaenopsis labukensis Borneo Vanda dearei Borneo
Dracula diana Xanthina Colombia Dracula vespertilio Ecuador Dracula venefica red Ecuador

杉板植替えの5種

  昨年8月より植替え時の新たな支持材は、デンドロビウムは杉板あるいは木製バスケットに、またバルボフィラムは全て杉板としています。 下画像は今月植替えを行ったDen. platycaulonで、これまでは 12株程を35㎝長の炭化コルクへ植付けてきました。上段左画像は昨年末の本種の開花画像、右は植替えのため今月炭化コルクから取り外した本種のベアールート株で、疑似バルブは50㎝程に成長し、根の多くが空中に垂れた状態でした。
 下段は植替え後の画像です。左が60㎝x15㎝サイズの杉板7枚、右画像奥が45㎝x15㎝の杉板6枚です。画像からは株サイズに対し杉板がかなり大きく見えます。しかし本種の根は、上段右画像に見られるように多数の根と疑似バルブを越える長さに伸長することから、十分な根張り空間と長時間の保湿がより多くの同時開花を得るための要ともなり、広い板面積と共に全面にミズゴケを敷いています。下段の画像は今月6日の撮影となります。

Dendrobium platycauron Luzon

 下画像はBulb. championii、 nasica、sp aff. quadrangulare (sp32)およびsp aff. quadrangulare (sp23)の4種で、これらはBulb. nasicaの杉板30㎝x15㎝サイズを除き、他は全て40㎝x15㎝以上のサイズへの植付けです。Bulb. championiiは葉付き50バルブ程の株を2分割し杉板2枚に、またBulb. nasicaは葉付き100バルブを超える株を12-15バルブに株分けし9枚にそれぞれ植え付けました。当サイトでは株を小分けすることは稀ですが、今回は分岐したバルブ同士が重なり合ったり支持材から浮き上がっていることから分割となりました。

Bulbophyllum championii NG Bulbophyllum nasica NG
Bulbophyllum sp23 (aff. quadrangulare) PNG Bulbophyllum sp32 (sp aff. quadrangulare) NG

 一方、下段のsp aff. quadrangulare (sp23)は昨年末に100バルブ程の株から13-18個の葉付きバルブに株分けし、それぞれを7枚の杉板に植え付けたもので画像はその一部です。sp aff. quadrangulare (sp32)も昨年末に葉付き15バルブ程の分け株を6枚の杉板に植替えをしました。しかし本種については植替え後から間もなく古いバルブから落葉が始まり、1か月半ほどで凡そ半数の葉を失いました。通常、植替え後に生じる落葉はあっても古いバルブの1葉程度です。作落ちの原因は、植替え時の病害防除処理は当然行われるものとして2つ考えられます。一つは植替え適期(栽培環境)の問題と、他は植付け方法です。今回の本種の株は植替え前、多くのバルブで支持材から離れた活着のない根が多くあり、この状態が長期間続いていたことから根の生理機能が新たな植付け(ミズゴケで根全体を覆う)環境に対応できなかったと思われます。植替えの遅れや適期を問わず植替えを行わなければならない程に多数の株を栽培している当サイトでは、作落ちの程度は様々ではあるものの、1-2割の株に発生します。通常こうした植替え直後の作落ち症状は1か月以内に発生し、その後2-3か月の安定期を経て、やがて新芽の発生や動きが見られるようになります。下段右の本種株画像は今月6日の撮影で、葉は植替え時の半数近くになりましたが、現在は一部のバルブに新芽の発生が始まっています。ベアールートで入荷する海外輸入株を含め、当サイトでは植替え後の株には順化栽培期間を必ず設け販売しており、順化期間中に古いバルブの落葉や枯れが生じた場合は、新芽の発生あるいは伸長が見られるまで出荷を控えています。

現在開花中の23種

  現在(3日)開花中の23種を撮影しました。画像下の青色種名のクリックで詳細画像が見られます。

Bulbophyllum incisilabrum Sulawesi Bulbophyllum nitidum PNG Bulbophyllum cercanthum Borneo
Bulbophyllum sp (sp27) Palawan Bulbophyllum whitfordii Palawan Bulbophyllum orthosepalum PNG
Bulbophyllum championii NG Bulbophyllum isabellinum Borneo Coelogyne palawanensis Palawan
Dendrobium sp aff. endertii Sulawesi Dendrobium floresianum flava Flores Is. Dendrobium floresianum Flores Is.
Dendrobium crocatum Thailand Dendrobium carinatum Luzon Dendrobium jyrdii Palawan
Den. jiewhoei (New color form) Borneo Dendrobium jiewhoei Borneo Dendrobium sp aff. discolor PNG
Dendrobium spathilingue Java Dendrobium mutabile Sumatra Dendrobium annae Sumatra
Dendrobium treubii Moluccas Schoenorchis buddleiflora Borneo

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