1月
現在(12日)開花中のDendrobium jiewhoei、Dendrobium spectabile及びCoelogyne pandurata
2008年に記録されたDen. jiewhoeiはペタル外縁形状やセパル・ペタルのベース色が多様で、当サイトでは6種のフォームに分けてそれぞれを栽培しています。栽培総数は現在10株程ですが各フォームを少なくとも1株は栽培データ収集のため所持することが必要なため、販売可能な数は新たな入荷までごく僅かとなります。特にネット情報から判断して稀少なフォームと思われる株の販売は、成長を待っての株分けによる方法となり出荷数は限られます。
Den. spectabileiは今回1株に22輪の同時開花となりました。一方、Coel. pandurataは2024年8月に1m長の杉板に植え替えて以降、高輝度下で1年で2回の開花が見られるようになりました。今回の同時開花数は8輪ですがIOSPEやRHSサイトに掲載の開花画像には13輪以上も見られ、そうした花数の違いはその株固有の遺伝的な特性なのか環境要因によるものか、今後の栽培を通しての花サイズの変化も含め興味のあるところです。
ところで当サイトでのランの撮影にはCanonEOS7Dを10年ほど使用しており新しいカメラに替え時ではと考えています。花姿を撮影し自身のネットサイトに掲載されている方々にとっても、撮影には苦労されることも多いと思います。当サイトの写真撮影では、被写体には可能な限り対象種以外の画像は削除する目的で、黒色のシートを張った場所を用意し、ここに株を移動して撮影していますが、1mを超える大株や、隣接する他株の根や幹が絡み合って栽培場所から撮影場所への移動が容易でなかったり、他株の葉や幹が被写株の画角内に入り込むような場合もしばしばです。このような状況においては背景にある風景等も含めての撮影となるため、こうした画像のいくらかは画像処理ソフトを用いて対象となる被写体のみを残し他は削除します。しかし背景除去処理にも花に細長い突起や微細な曲線がある場合、また花や葉などと背景物との色合いが同系色であったり、さらに撮影時の花などの揺れ、カメラの微細な焦点合わせなどで対象種と背景物との境界がぼやけている場合などでは、背景削除アプリを用いての処理にも限界があり、長時間を要す手作業によるピクセル単位の画像処理が避けられません。
こうした処理で重要なことは、植物の画像処理においては被写体の形状や色を一切変更しないことです。これらを変更することは実体とは異なる現実には存在しない花や株を表示することになります。被写体については輝度やコントラストのトーン調整に限られます。
下画像左はDen. jeiwhoeiの背景除去処理前の画像で、一方右はDen. spectabileで、黒色背景シートのある撮影場所に移動する前の栽培場所での風景です。これら2種をそれぞれ画像処理をした花姿が上画像となります。
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| Dendrobium jiewhoei |
Dendrobium spectabile |
現在(7日)開花中の8種
下画像左は透明感のあるセパル・ペタルをもつBulb. rugosumで、現在1株に11輪が同時開花しています。蕾を含めると14輪となり、当サイトでのこれまでの栽培では最も多い同時開花数となります。右のDen. macrophyllumは先月のルソン島生息株とは異なり、Javaからの株で1株に22輪の同時開花です。
Bulb. nymphopolitanumのネット検索では、IOSPEを含めほとんどが下画像とは全く異なる形状の花が掲載されています。当サイトでの種名はJ. Cootes著 Philippine Native Orchid Species Jan. 2011に基づく同定によるものですが、IOSPEのページには以下のような記載 ”Sometimes cited as a synonym of B trigonosepalum and Bulbophyllum levanae and are all very similar. If they are all the same species then B levanae takes precedence as it was written first”(訳:しばしば本種はB. trigonosepalumやBulb. levanaeに良く似ており、それらとはシノニム(異名同種)の関係とされている。もしこれらすべてが同種とすれば、最も早期記載のB. levanae名が優先される)があり、IOSPEにはBulb. levanaeと思われる花画像が表示されています。
この情報を受けてか、多くのサイトが本種の花画像としてBulb. levanaeあるいはBulb. trigonosepalumを掲載しています。当サイトでは2020年1月の歳月記に各種の部位形状画像を示し比較することで、この"if"とするシノ二ム説は誤りとする 詳細を報告しています。一方でJ. Cootes氏撮影のBulb. nymphopolitanumと当サイトの下画像に類似する種をネット検索しましたが、今のところ見当たりません。度々こうした問題を他種でも取り上げてきましたが、本種名で入手を試みても現在のマーケットにおいては十中八九Bulb. trigonosepalumあるいは levanaeを得ることになると思います。下画像種は2014年現地での入手で、東京ドームらん展にて数株販売もしましたが、こうした背景からみてBulb. nymphopolitanumは稀少性の極めて高いバルボフィラムとも云えます。
右画像のDen. leporinumは花色が従来に見られない濃い赤味色であったことから撮影しました。
Den. peculiareは久々の掲載です。一方、中央のDen. boosiiは画像下の青色種名リンク先のページに見られるようにリップ色が多様で中でも今回の開花株は下画像に見られるような特に赤味の濃い色であることから撮影(7日)しました。
Vanda lamellataは台湾、ボルネオ島、フィリピンではルソン島、ミンドロ島、パラワン、レイテなどに広く分布する広域種です。変種もflava、boxalli、remediosaeなどが知られており、広域種故かこうした種の多くの入手は容易です。その中でcalayan島生息の変種であるVanda lamellata calayana (var. calayana)は現在Vandaの中でも最も稀少性の高い種で、野生栽培株の入手は困難と思われます。
現在(2日)開花中の9種
新年を迎え寒さも一段と深まりつつあります。昨年は多くの属種で植替え期が重なり大変でした。そうした中でセロジネの一部やパフィオペデイラムのプラスチックポット植えを除き、デンドロビウムやバルボフィラムの新たな植付けは、それぞれ木製バスケットや杉板に替わりました。現在はバルボフィラムの半数ほどの植替えが残っており、今後さらに3-4ヶ月ほど掛けて大半を終わらせる予定です。これらが終了すれば今年は本格的に新たなカタログを作成し、30cmから90cmサイズの杉材に植付けた小型から特大サイズの株をそれぞれ販売したいと考えています。
ちなみに本歳月記では青色となっている文章内の名称や画像下の種名は、その対象となるサイト/ページにリンクされており、クリックすることで補足や詳細情報を知ることが出来ます。また画像下の種名欄の地域名は表示画像種の生息地で、その種全ての生息地を示すものではありません。
下画像は2-3日の撮影となります。Bulb. weberiは花茎当たり通常8輪ほどの開花とされますが、12輪が同時開花しており当サイトがこれまでに見た中では最多となります。Bulb. mastersianumは色合いに個性がありredフォームとの付帯名をつけています。このフォーム種は花全体のサイズ(1輪当たりではなく一纏まり)がリンク先の画像に見られるように10cmと、一般サイズ(6.5cm)に比べかなり大きなことも特徴です。
種名由来が”長いセパラム”とされるBulb. longisepalumも現在開花中です。敢えてセパラムの長さを特徴とするバルボフィラムであればマーケットにおいては、それぞれの販売株がどれほどの長さなのかを記載しても良いと思いますが見当たりません。IOSPEでは花サイズは2.5cmx9cmとされます。専門誌では花を含め、種それぞれを構成する部位毎のサイズが詳細に記載されますが、ネットサイトに紹介される花サイズは一般的にその花画像と共に開花した自然体での横幅と縦幅とされます。そうした視点からIOSPEの花サイズを考えると、横幅が2.5cmとは花が開いた自然体でのサイズとしては小さ過ぎます。この値はセパル単体の横幅と思われます。一方、当サイトが現在栽培中の本種の花サイズは画像下の青色種名のリンク先から分かるように、ドーサルセパル単体の幅は3cm、自然体での花の横幅は左右ラテラルセパル間で8cm、縦幅は15cmとなっています。
当サイトでは栽培株が開花する度にそのサイズが一般情報と比較してどれほどの相違があるのかを常に調べています。そこに違いがあれば栽培方法あるいはその種の入手先(生息域)に起因するものかどうかを見極める必要があると考えているからです。同一種であっても花サイズがそれぞれ異なるのは、それらが生息する自然環境による摂理であって、サイズだけでなく形状、色合い、模様また香りなどにも様々な相違があり、それらが絡み合って種それぞれはその個性を作り上げている訳で、原種のそうした個性は優劣ではなく、自然の創造物であるが故にその個性を引き出すのが原種栽培の醍醐味と考えています。