12月
現在(26日)開花中の6種
Bulb. fritillariflorum、Bulb. sp aff. fritillariflorum、Bulb. grandiflorumが現在開花中です。これらの種名由来や関係については2024年1月の本歳月記に記載しています。下画像のBulb. sp aff. fritillariflorumは現在複数が開花しており、その中から緑色の濃い花を選び撮影しました。Dendrobium cuneilabrumの生息地はIOSPEによるとSulawesiとされますが、当サイトの株は入手元からの情報(Sumatra島)に基づいています。
Dendrobium cinnabarinum var. angustitepalum
Den. cinnabarinum v. angustitepalumは現在入手難なデンドロビウムの1種で、本種もネットAI検索ではマーケット情報がないとのことです。当サイトでは、現在下画像の株を含め在庫は2株のみのため販売をしていません。入手が非常に困難な種については成長を待って株分けを行い販売をすることも一つの手段ですが、これには株サイズを大きくするため数年の成長期間と販売可能な株数も限られます。そのためこのところ実生化を図る必要を感じています。一方、自家交配による実生化ではタネが得られる確率が低いため、他家交配が基本で2株以上のストックが必要となります。現地からの入手の目途が立てば販売も可能となりますが、今のところそうした情報は不明です。下画像は中温室にて現在開花中の本種で21日の撮影となります。
直近の開花9種
Bulb. lilacinumとBulb. glebulosumの花画像がそれぞれ6日および12日、他は全て21日以降の撮影です。これらの画像で近年記録された種はCole. usitanaが2001年、Bulb. glebulosumが2008年、Den. bandiiが2020年でそれぞれ新種となります。この中でもBulb. glebulosumとDen. bandiiは入手難で、特にDen. bandiiはAI検索でも希少性が高くマーケットからの入手は困難とされています。Coel. usitanaの側弁黒色フォームは本種の中で1%以下の存在率と思われます。こうした種の販売は現地からの入手が困難であれば、成長を待っての株分けか人工交配による実生株となります。
Dendrobium multiramosum, Dendrobium junceum, Dendrobium carinatum, Dendrobium pseudequitans
前項のDen. multiramosumの開花を機に、同じフィリピン生息の 類似種であるDen. junceum、Den. carinatumおよびDen. pseudequitansを取り上げてみました。これまでの経験からは、Den. multiramosumのフィリピン現地ラン園への注文では花形状が似ていることと生息域を共有していることからか、Den. junceumかDen. carinatum(1805)のミスラベル入荷が多く、これらは花付き株でない限り本種の入手を期待することはできませんでした。フィリピンマーケットでのDen. carinatumは別名Den. robinsonii(1914)ともされます。こうした背景から今回、下画像に種それぞれを識別する方法としてリップ及び疑似バルブ形状の相違点を示しました。Den. multiramosumやDen. pseudequitansはAIネット検索によると現在マーケット情報が見当たらないとのことで入手は極めて困難なようです。なお当サイトでのデンドロビウムページにDen. pseudequitansは未掲載です。
現在(15日)開花中の9種
今年も残り僅かとなりました。振り返って今年は長い猛暑が続き、ランの栽培には苦労された趣味家も多いと思います。当サイトでのこの数ヶ月のランの開花状況を例年と比較すると、1ヶ月ほど早まっている様子が窺えます。また温室内の冬期の環境は4棟の内、3棟がこれまで石油暖房でしたが全てエアコンに替わりました。高温室の3棟のそれぞれの温度計からは、このところの晴天日の昼間の最高値が28℃で夜間の最低値が17℃となっており、昼夜の平均温度はそれぞれほぼ27℃から18℃前後となります。冬期とは言え、高温系の多くのランにとっては成長や開花に適した環境となっています。
植付け材としての杉板と原種との相性
昨年秋から植替え時にはバルボフィラムのほぼ全てに、また下垂タイプの長い花序をもつセロジネやデンドロビウムなどには、新たな植付け材として杉板を利用しています。こうした栽培状況において、今回取り付けから3ヶ月以上経過したそれらの中から40種の成長の様子を撮影しました。これら以外に直近の3-4ヶ月間に植付けた種も現在多数栽培中であるものの、それぞれの種と植付け材との相性を判断するには順化期間に加え数ヶ月間の成長推移への注視が必要で、今回はそうした条件となる種が対象となります。種の数が多いため下記のリンク・アドレスのページに新芽の発生や伸張の様子を示す画像を掲載しました。これらの撮影は今月6日と9日となります。これまでに植付けた全ての種や株については杉板に対しての適応障害は観察されていません。
ところで一般的に猛暑期と寒冷期はランにとって生体機能の低下から施肥は控えるとの栽培法が通念化しています。しかし今回、撮影が12月という冬期にも拘わらず、上記リンク先の画像に見られように多くの種で新芽が発生・伸張をしています。冬期という理由からこの状況下で施肥を止めれば成長は遅れてしまいます。当サイトでは全てのランは温室栽培です。すなわちランの生育にとって必要条件となる環境が、温室内では空調(温度・通風など)によって通年で維持され四季という概念は無く、自然界の生息環境と同様に夜間の高湿度化が図れれば、四季に関わらず成長が続き施肥も必要となっています。
現在(7日)開花中のBulbophyllum inunctum Malaysian form
Bulb. inunctumはマレーシアとフィリピンフォームがあり、マレーシアフォームの花サイズは13-14cm(縦幅)、一方フィリピンフォームはややマレーシアフォームと比較して小型になりますが、いずれも見栄えのあるバルボフィラムです。先月末1株に10輪同時開花のフィリピンフォームを取り上げましたが、J. Cootes氏は著書Philippine Native Orchid Species 2011で、なぜこれほどSpectacularな種がフィリピンで長い間発見されていなかったのか驚きであると述べています。今回は現在開花中のマレーシアフォームで、こちらも1株に10輪が同時開花したことから撮影(6日)しました。
ところで本種についても公示されている種名について不可解な点があります。それはBulbophyllum inunctum名でOrchidRootsを検索すると、そのページに花画像は無く、本種はBulbophyllum membranifoliumの亜種としてBulbophyllum membranifolium subsp. inunctumのリンクアドレスが表示されています。そのリンク先にはBulbophyllum membranifolium subsp. inunctum, (J.J.Sm.) J.J.Verm., P.O'Byrne A.L.Lamb 2015との記載と共に、マレーシア及びフィリピンフォームのBulb. inunctumの花画像が多数掲載されています。 不可解な点とは、視覚的な形状が明らかに異なるBulb. membranifoliumとinunctumがなぜ亜種の関係とされたのかということです。仮に同種であればBulb. membranifoliumの記録はHook. f. 1890とされる一方で、Bulb. inunctumはJ.J. Sm. 1909であることで種名は先行記録優先の慣行からBulb. inunctumはmembranifoliumの亜種であるとの位置づけは正しいと言えますが、両種の実態からは2015年の近年になって同種と見做し亜種とされた同定根拠が分かりません。下画像に示すように上段がBulb. inunctumで下段がBulb. membranifoliumです。セパル・ペタルやリップ形状に個体差あるいは地域差を超えた明らかな相違が見られるにも拘わらず亜種の関係とは云え、これらが同種とは思えません。
Bulbophyllum penduliscapum及びBulbophyllum longissimum
昨年12月、本サイトにて紹介したミンダナオ島生息のBulb. penduliscapumを今年初め2株に株分けし、それぞれを60cm長の杉板に植え替えたところ、10月に入り花芽が発生し先月末から両株で開花が始まりました。画像左がその開花風景です。その右側の株ではこれから開花する花序1本を含め5本が、また左側の株では2本の開花となっています。これほどの花が一斉開花した実態を見るのは初めてで壮観です。本種の栽培で今回気付いたことがあります。IOSPEによると本種の生息域は300m-1,100mとされます。こうした情報から当初、低地生息種として高温環境での栽培としました。しかし今年の7月から始まった猛暑により、温室内の夜間平均温度が30℃前後となり、この環境が1ヶ月近く続いた8月になって本種の葉に変調が見られたため、夜間平均温度が25℃以下となる中温室に移動しました。その結果、葉に生気が戻りました。当サイトが栽培する株はそうした様態から標高500m以上の生息種ではないかと推測します。
右画像のBulb. longissimumは先月も取り上げましたが、これまで当サイトでの自然体での本種の最長サイズは37cmでした。今回計測したところ38cmを超えていたため再度の撮影となりました。栽培環境も分かったことから来期は肥料を十分与え、40cm長を目指したいと思います。
現在(2日)開花中の6種
下画像上段右のBulb. sp16は深紅でよく目立つ花色が特徴ですが花サイズが1.5cm(縦幅)でリップ形状がBulb. weberiやumbellatumなどとは異なっていることから現在も種名は不明のままです。Den. lamellatumは1株にこれまでに無いほどの多数の花が同時開花しています。本種の現在の支持材はバージンコルクです。花後には杉板に植え替える予定です。