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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2021年度

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8月

Paphiopedilumの植替え準備

 10年程前までは多輪花系パフィオペディラムをよく収集していました。現在栽培中の株数を調べたところPaph. rothschildianumlowiiなどが合わせて60株、Paph. sanderianumが40株程あります。Paph. rothschildianumの中にはOrchid Innから入手したAOS(American Orchid Society)入賞花の分け株もあります。上記とは別に2015年以前はクリーンベンチで無菌培養をしており安藤培地などを自作し、左右のペタルスパンがNS(自然体)で30㎝を超えるPaph. rothschildianumの交配・実生化も行っていました。その実生がBS株として前記とは別に現在30株ほどあります。これらはこれまで8年間ほど植替えが無く栽培して来たことから、今年初秋には一斉に株分けと植替えを行う計画で、植込み材などの資材の準備を始めました。植え替え後には総数で150鉢を超えると思います。取り敢えず、葉長が1m程にもなるpaph. gigantifoliumや、ペタル長1m程の Paph. sanderianumなどから50株程を選別し植替えることになります。当サイトではこれまで地生ランには下写真上段左のような植込み材を使用しています。左から焼赤玉土、麦飯石(美濃白川産)、バーク、十和田軽石です。これに加えPH調整炭を加えていましたが、現在の資材不足で入手が出来ないため、今回は炭は使用しません。ゼオライトは鉢当たり一つまみ程の少量を加えます。鉢はスリット入りプラスチック・ロングタイプで、大株には21㎝径を使用します。

 こうした植込み材がBSやFS株にとって最適なものかどうか、特に麦飯石がどれほどの効果を持つのかはよく分かりません。PHの安定化とミネラルの放出効果を期待するものの、多分に気持の問題かも知れません。しかし下写真で焼赤玉土の隣に立ててある段ボールに入ったものが麦飯石ですが、この量で隣のバーク全量に近い価格です。可なりコストパフォーマンスは悪そうです。バークと他の植込み材との比率は6:4としています。いずれの資材も今のところミズゴケのような入手危機状態ではないので、消費に合わせて順次追加していく予定です。

Paphiopedilum用植込み材 Paphiopedilum gigantifolium
Paphiopedilum rothschildianum & lowii Paphiopedilum sanderianum

 ところでミズゴケの入手難問題ですが、EMSが可能になりマレーシアやフィリピンからの入荷が出来たとしても、ミズゴケが無い状態で4-500株の植付けをどうするか対応策が見つかりません。これまではこうした数量の株の植付けには1ヶ月以上を要することから、株の根にミズゴケを、根が隠れる程度に巻き、盆栽用アルミ線で留め、また葉間の通風を得るため適度な間隔を1株毎に空けて吊るす仮植えを植付け本番までの間、行っていました。この方法ならば1株当たり5分で植付けが出来、1ヶ月程は問題なく維持できます。しかしミズゴケ以外に、こうした簡易的な植付けと伴に根の湿度を安定に保つことができる代替え材が見当たりません。よって吊るす代わりにトレーに並べたり、立てたりしてクリプトモスで根を覆うなど、バンダのように葉間があり固い茎を持つ一部の種には対応できますが、出荷で弱った株の葉を重ねて1か月近くも置けば、細菌性の病気のリスクが高くなります。 数が少なければクリプトモスとヤシ繊維マットの組み合わせなどが考えられますが、本番と同じような手間が掛かっては意味がありません。一方、ラン展に出品の場合も問題で、在庫中の株であっても、相当数は商品として事前の植替えが必要です。ミズゴケが使用できないとなれば1週間程の展示期間中の会場の湿度下において、バーク植付材では昼夜のかん水が無い限り、乾燥が進み株は弱体化します。このようにミズゴケ不足は様々な状況で深刻度が増すばかりです。

今月開花の24種

 猛暑が続き、温室の高温室では昼間38℃、夜間はその余熱もあって28℃を下まわらない状態が続いています。特に夜間平均温度が25℃以上続くと、標高800m以下の高温タイプの原種であっても、その多くで花茎が発生しません。花茎を得るには昼間の温度が一時的に35℃程度になっても、夜間の平均温度が23℃以下に、中温タイプでは18℃以下が必要です。最近の原種マーケットでは、同種であっても、従来と比べより高域生息株が増しており、多くの原種で夜間平均温度を下げる必要があります。こうした栽培環境が出来ない場合は花芽どころか株の維持自体が困難になりつつあります。そうした中にあっても今回、暑さにめげず開花している種も僅かながら見られ撮影しました。中温タイプの種も撮影しましたが、こちらは夜間平均温度を20℃以下とした空調環境での栽培です。今回、写真の種名生息地に次いで(H)、M)、(L)の記号がありますが、これは栽培温度が(H)高温、(M)中温、(L)低温タイプであることを示します。栽培温度は夜間平均温度で定義し、通年で高温は23-18℃、中温は20-15℃、低温は15-10℃以内としています。

 下写真でDen. ellipsophyllumはPalawan生息種ですが、リップがオレンジ色と緑色があり、温室では冬期から春期はオレンジ色が、夏季は緑色の花が開花します。このため8月現在の開花中の株は全て緑色となっています。また色は株それぞれの固有色であり、同じ株で開花期によって色が変わる様態は見られません。一方、Phal. bellinaは先月末に杉板に植替えた2株で、現在開花中です。この猛暑の中、蕾を持った開花間近な株を植え替えることは避けるべきですが、杉板での相性を調べることと、植替え待機中の株が手に負えない程多くあり、植え替え最適期に合わせる余裕がありません。幸い元気よく開花していることと、次の蕾が膨らみつつあることから、この猛暑の中、杉板を嫌う様子は無いようです。

 最下段のDendrochilum macranthumですが、これまでmagnumとしていた種名の変更です。10年ほど前にフィリピンラン園にて、大株で多数の白い穂状花序を見て、種名は不明でしたがalbaフォームのデンドロキラムと思い入手し、日本に持ち帰って栽培を始めたところ、花色が白ではなく黄色であることが分かり、環境の変化でこんなに色変化が起こるのかと期待が外れ諦めていました。そこで種名はと、形状および色合い、フィリピン生息種であることなどを基に調べ、Dendrochilum magnumとしました。しかし今年に入り栽培場所が変わり、ほぼ毎日のかん水をしている中、先月末に花茎が発生しました。驚いたのは、長く下垂した多数の花序が1週間以上、白い状態でフィリピンで見たのはまさにこの光景だと。10日間程で黄色く変化し始めたのですが、magnumにはそうした特性は無いようで、それではと再度調べたところフィリピン固有種macranthumに行きつきました。花色が白から薄緑色さらに黄色へと変化します。この変化が撮影できたので2-3日でリンク先ページを修正する予定です。

Bulbophyllum amplebracteatum Sulawesi (H) Bulbophyllum carunculatum Sulawesi (H) Bulbophyllum longisepalum NewGuinea (H)
Bulbophyllum microglossum Borneo (M) Bulbophyllum polyflorum Philippines (M) Bulbophyllum lasioglossum Philippines (M)
Bulbophyllum scaphioglossum NewGuinea (M) Coelogyne kinabaluensis Borneo (M) Coelogyne celebensis Sulawesi (H)
Dendrobium discolor PNG (H) Dendrobium sororium Solomon Is (H) Dendrobium leporinum NewGuinea (H)
Dendrobium anthrene Borneo (H) Dendrobium sp aff. endertii Sulawesi (H-M) Dendrobium polytrichum Luzon (H)
Dendrobium sp aff. flos-wanua Borneo (H) Dendrobium ellipsophyllum green Philippines (H) Dendrobium annae Sumatra (H)
Dendrobium petiolatum NewGuinea (M-L) Dendrobium boosii Mindanao (M) Phalaenopsis bellina Borneo (H)
Phalaenopsis lindenii Luzon (M) Vanda dearei Borneo (H) Dendrochilum macranthum Philippines (H)

ページ制作と近況

 会員サイトに掲載する胡蝶蘭原種のページ制作を6月末から始めていますが、今月中旬には完了する予定です。先月に加え今回サンプルを11種選び下記のそれぞれの種名リンク先に公開しました。青文字をクリックするとページが開きます。

Phalaenopsis lindenii
Phalaenopsis lueddemanniana
Phalaenopsis mariae
Phalaenopsis pantherina
Phalaenopsis philippinensis
Phalaenopsis sanderiana
Phalaenopsis schilleriana
Phalaenopsis speciosa
Phalaenopsis stuartiana
Phalaenopsis tetraspis
Phalaenopsis violacea

 現在公開中の胡蝶蘭原種ページと同じ構成ですが、これまでのページでは特にカルス形状は見にくい画像が多く、全ての種のページで画像の編集、差し替えおよび追加を行っています。新たにこうした編集が出来るのも、2005年からの膨大な枚数の撮影時の高解像度画像をそのまま保存しているためです。胡蝶蘭属は凡そ60種ほどですが、1種当たりそれぞれに多数の変種、個体差や地域差によるフォームがあり可能な限り掲載しています。これらのほぼ全てが、当サイトが収集し日本に持ち帰り撮影した画像です。振り返り、凡そ10年をかけて3ヶ月おきにフィリピンやマレーシアに出かけ、開花時には現地にて数十から数百株ある中から選別し、さらにサプライヤーには同種であっても地域やフォームの異なる株があれば、全て集めるようにと依頼してきたことを思い浮かべ、当方のそうした狂気じみた要求にサプライヤーはよく対応してくれたものと、今回のページ制作で改めて感謝するばかりです。胡蝶蘭原種ページが完了した後は、一部は終了していますが他属種の栽培や話題のリンクページに取り掛かります。

 一方で、2020年から海外渡航がコロナにより困難になり、すでに2年半が経ちます。この結果、当サイトはランの売買を停止しています。コロナが消滅することは無いと思いますが、インフルエンザと同等と見なされ渡航条件が従来並みとなれば再開したいのですが、果たしてその日はいつになるのか。先月東京ドームラン展の出店申し込み案内を頂きました。前回もそうですが、ラン展に参加できるか否かはEMSによる手段であれ、海外からの入荷ができる状況となることが必須であり、これを待つしかありません。今月から再度現地サプライヤーに打診する予定です。

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