栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2019年度

   2020年 1月 

1月

マクロレンズでの撮影

 故障したEOS7D MarkIIが修理から戻り、この機会にとこれまで使用していた60mmマクロレンズよりも微細な映像が撮れる35mmマクロレンズも入手しました。超接写は被写体とカメラをしっかり固定しない画像がボケてしまいますが、花のような開花位置や向きが様々な被写体を、三脚で自由に撮ることは難しく、手振れ補正のある接写レンズが必要と感じていました。ところでミクロな被写体を撮影するレンズであるのだからマクロレンズではなく、なぜミクロレンズと呼ばないのかと疑問でしたが、マクロレンズとはミクロな被写体をマクロ(大きく)にするためのレンズとの意味だそうです。下写真は35mmマクロレンズで現在開花中の花を撮影したものです。今後は目では捉えにくい花の質感や微細形状などポリネータの気分になって花映像が提供できると思います。

Bulb. nasica yellow Scaphosepalum cimex Bulb. sulawesii lip

Dendrobium igneoniveumの開花最盛期

 浜松温室では昨年9月の歳月記で今季最初のDen. igneoniveumの開花を紹介し栽培の要点を解説しました。9月以降、20株程を在庫している株が次々と開花し4ヶ月経った現在、最盛期を迎えようとしています。栽培経験からは湿度が高い環境ではヘゴ板や炭化コルクが素焼き鉢ミスゴケ植よりも成長が安定で、湿度が低い環境ではバスケットが良いと思います。本種は花寿命が1か月以上あることで、複数の株を栽培していると輪花数が増し、かなり華やかな雰囲気ととなります。下写真は19日撮影で、左上には蕾も見えます。3月中旬まで開花が続くと思われ、20株もあれば1年の内半年近く花を見ることができます。

Den. igneoniverum

デンドロビウムの植え替え

 真冬は通常、ランの植え替えは控える期間ですが、8,000株程のランを栽培しているとそのような余裕は無く、やむなく季節に拘わらず年中植え替え作業をせざるを得ません。植え替えは現在7割が炭化コルク付け、残りがポット植えとバスケットとなります。ポットは最近はほぼ全てがスリット入りプラスチック鉢を使用しています。これは素焼き鉢は再利用ができないこと、重量があるため積み重ね梱包が困難なこと、産業用ごみとして陶器はコストが上がることなどで敬遠しています。

 下写真は1週間ほど前に植え替えを行ったデンドロビウムです。左は手前がDen. officinaleで、現在マーケットに見られる株は、ほとんどが漢方薬用として改良された種のメリクロンですが、写真は野生栽培株で2018年入手したものです。現在30株程栽培中です。奥はデンドロビウムではなくRestrepiaです。中央写真はDen. deleoniiDen. annamariaeです。歳月記2019年4月のページ最後に取り上げたデンドロビウムで、いずれも2018年登録のミンダナオ島生息の新種で、植え付けから1年半も経たないうちの植付替えです。植込み材を含め、これまでの栽培環境が適切であったかを根を見て評価するためです。これらは写真のポット植えと炭化コルクの2種類の栽培で、温度は昼間30℃を越えても良いが夜間は20℃を下回るようにするとした環境です。エアコンあるいは山上げによって夏期の夜間温度を低めにできれば、至って丈夫なデンドロビウムです。昨年のサンシャインおよび東京ドームラン展に出品しました。1月現在、数株に蕾が見られます。現地のラン園によると現在入手は困難で、当サイトへ出荷した以降は入手ができないそうです。

 右写真はDen. corallorhizonで、ボルネオ島1,300mの雲霧林生息種です。本種名をネットで参照したところ、当サイトの画像が頻繁に見られ、また国内のマーケットを見ても当サイト以外流通が無いことから、現在希少性が高い可能性があるのではと、これまで中温室の薄暗い片隅に2年以上置いていたものを、さっそく取り出して植え替え、明るい場所にと待遇改善をしたものです。手に負えない程の数を栽培していため、新種、希少性、人気度などの優先順位をつけての植え替えを余儀なくされています。

Den. officinale Den. deleonii & annamariae Den. corallorhizon

フィリピンTaal湖火山噴火

 既にご存知の方も多いと思いますが、フィリピン首都マニラ南60㎞にあるタール火山が12日に噴火しました。実は6年目を迎えるこの歳月記のページの背景写真はそのTaal湖と火山で2010年6月にTaal Vistaホテルから早朝撮影したものす。この湖は高地にあり避暑地と知られ、ラン栽培に適した気候からラン園が多く、火山の20㎞圏内にはフィリピン最大のラン園の一つで、フィリピンラン協会の会長を務めるPurificacion Orchidもあります。また当サイトと関係のあるラン園はCavite地区にも幾つかあり、こちらは火山から15㎞圏内に位置しています。現在被害の大きなBatangusも何度も訪問し知人もいます。

 国際ニュースで噴火を知ったのは翌々日で、さっそくメールしたところ、Purificacion Orchidは北西方向に噴煙や火山灰が流れ、被害を避けることができたようで現在無事との返事をもらいました。会長は現在Alfonso地区で災害復旧支援をしているそうです。一方Cavite地区のラン園からのメールによると、火山灰の被害が大きく、12日から停電状態で、携帯もかかりにくいとのことです。家族は皆、マニラ市に避難し、園主は一部のスタッフとラン園内のクリーニングをしているとのことです。ラン園では屋根のない場所(多くのラン園では遮光ネットで覆うだけの栽培が圧倒的に多い)でのパフィオや胡蝶蘭を含む葉の柔らかなランは、灰で大きなダメージを受け、一方葉の固いVandaやAeridesはなんとか無事であるとのメールを、やっと本日17日にもらいました。

 Taal湖周辺は見渡す限りのパイナップル畑が広がり、またバタンガス地域はバナナ畑が多く、これらは現在火山灰で壊滅状態とのことです。警戒レベル4が続く中ではさらに事態の悪化が懸念され、Cavite地区のラン園では、昨年来からの発注で入荷しているランやネペンテスはマニラ市北部のBulacan地区に移す予定とのことです。何よりも早く噴火が沈静化し、皆無事で一日も早い復旧を願うばかりです。

続バルボフィラムBulb.nymphopolitanum complex

 前々回でBulb.nymphopolitanumの類似種を取り上げました。2017年から今日までミンダナオ島から入荷した中のBulb.nymphopolitanum complexと思われる株形状ではあるものの種名不詳とされる10種程のspが開花する毎に、浜松温室では似て非なる花が咲き続けています。問題はこれらと一致する花画像が、ネット上にはほとんど見られず、登録種なのか新種かの判断が難しく、バルボフィラムに興味のある趣味家向けに再度取り上げてみました。

 下写真はこれまでの2年間での開花により得た6タイプを示したものです。これらが、たまたま1-2株出現した個体であれば兎も角、種名不詳ながらも20-30株毎にsp1, sp2, ..と現地で割り振られて入荷し、開花してそれぞれを確認すると、6タイプがごちゃ混ぜではなく、一応sp毎に花フォームが異なっていると共に、同じsp番号内では同一フォームの花が開花することから、サプライヤーはサプライヤーのみが知る何かを目印にそれぞれを分けていた筈で、おそらくミンダナオ島北部内の生息場所の異なる株毎に纏めて管理し栽培していたと思われます。

 写真で6種を上下一対として、上段に花全体を下段にそのリップ画像を表示しています。それぞれのタイプの視覚上の違いは下表に記載しました。

type/特徴 ラテラルセパル(LS)・ペタル リップ中央弁表皮 既知類似種との相違
type1 ペタルおよびLSに5本のラインが入る。LSは3-3.5㎝で小型 全面滑らか LSにラインの入る該当種は不明
type2 ペタルおよびセパル全体に赤色斑点。LSは4.5-5㎝ 先端部を除き全体に細かな凹凸 全体斑点はmearnsiiおよびrecurvilabreに似るが、前者とはリップ面突起とその範囲に、後者とはLS形状が異なる.
type3 LSはクリーム色3.5㎝で小型 基部寄りに微細な凹凸 該当種無し
type4 LSはクリーム色4.5-5㎝。LS基部に斑点あり 比較的滑らか。微細な凹凸あり trigonosepalum黄色フォームに類似
type5 前々回取り上げた種。LS長3.5-4cm 比較的滑らか。微細な凹凸あり LSサイズを除きタイプ4に類似
type6 赤褐色からオレンジレッド色。LS長3.5-4㎝ 全面滑らか basisetumとはリップ表面形状が異なる
 
 視覚的な比較による判断としては、タイプ1と2が既知種に対してユニークな印象を持ちます。これらを今後どのよう種名(同定)するかは分類学の世界になり、当サイトの範疇ではないため、その分野での今後の研究を待つことになると思います。取り敢えず当サイトでは下記のType1-6との仮称で販売することにします。

type1 type2 type3
type4 type5 type6
左画像:6タイプ前面。左から右に順次タイプ1から6まで。右画像後面:左から右にタイプ6から1。

似て非なるBulbophyllum sp Palawanとミスタグ混在種

 Bulbophyllum Cirrhopetalum節には、フィリピンではBulb. cummingii、マレーシアではBulb. lepidum(Ephippium節ともされる) complexが、同節の代表種として現地マーケットで頻繁に見られ、価格も廉価で入手も容易です。一方で、これらCirrhopetalum節は個体差や変種と思われる多様なフォームがあり、同種なのか他種なのかの同定が視覚的には極めて困難で、それ故に一般種なのか希少種なのかの判断も困難で、販売する上で悩ましい種でもあります。

 当サイトでは3年ほど前からCirrhopetalum節については、主にフィリピンPalawan諸島やミンダナオ島周辺の生息種を中心に集めてきましたが、それら地域から入荷する種のほとんどが現地では種名不詳(sp)種として扱われ、持ち帰った後の栽培を通して得た開花株から種を同定してきました。このため花を確認するまでの期間は通常販売することが出来ず、こうしたsp種は、何が咲いても良いとするバルボフィラムコレクターに限って販売しています。sp種にはこれまで一般種が8割、地域的個体差が見られる種が1割、残り1割が新種(種名不詳)あるいは変種の可能性がある種となっています。しかしこうした割合は流通の稀なPalawan諸島やミンダナオ島ならではであって、ルソン島生息種には、sp名の中に新種や変種が含まれる可能性は1%も無いと思います。その1割の中の未登録と思われる種の中に、さらに似て非なるフォームをもつ極めて稀な種に出会うことがあります。下写真はBulbophyllum spとして入荷した3種で、いずれも一見、花は似ているものの、詳細にセパル、ペタル、リップのフォームを拡大してみると相互に異なる特徴が見られます。

 写真左は2016年、中央は2017年末にBulb. sp としてPalawanから、また右はBulb. dolichoblepharonに混在(すなわちミスラベル)していた種でミンダナオ島スリガオからとされます。下段写真の花とリップ周辺の画像からは、左と中央は同種で中央は左のalbaあるいはflavaタイプと思われます。しかし中央種がalbaとすると、凡そ20株全てがalbaフォームとして入荷するとは考えにくく、一つのクラスター株を株分けしたと考えるのが妥当を思われます。一方、右は画像からは他とは異種との判断ができますが、実体を見る限りは、同種の変種のような印象を受ける程、視覚的な形状は似ています。問題は、これら3種は現時点でそれぞれ未登録の可能性があり、花を得ても種名が分からないことです。こうした様態がバルボフィラムにはしばしば見られます。


Bulbophyllum nitidum aff (近縁種)

 Bulb. nitidumは花形状がユニークで美しいとされるバルボフィラムの一つで、類似する他種には同じCodonosiphon節のBulb. aristilabreBulb. callipes,、Bulb, speciosum等が知られており、いずれもニューギニア生息種です。

 これまで3年間て複数回に分けBulb. nitidumを入手してきましたが、それらには3つの似て非なる花形状が見られ、今回それらの特徴を取り上げてみました。下写真は3フォームをそれぞれ各段に分けて表示しています。いずれも入荷種名はBulb. nitidumです。上段は1月現在開花している種で、1本のラテラルセパル長は7㎝です。2輪開花しており、さらに3つの花芽が伸びています。2段目は右画像に定規で寸法を示しており、ラテラルセパルは8㎝で、一般種のラテラルセパル4-5㎝と比較してかなりの長さとなります。よって1輪当たりの開花期間は10日間ほどですが、開花初期のラテラルセパルが左右水平に開く時点の水平幅の花サイズは16㎝となります。 一方、3段目のタイプはラテラルセパル長は4-5㎝となります。、

 Bulb. nitidumはorchidspecies.com等の情報によればリップは基部側半分は黄色をベースに赤い斑点があり、先端側は白色とされます。このフォームに似た画像は上中段です。しかしリップの先端側は白色ではあるものの基部側の黄色ベースに赤色斑点とされるフォームとは異なり、またorchidspecies.comで11㎝とする花サイズも上中段の花はさらに5-6㎝程大きくなっています。一方、下段の種はリップの基部はクリーム色で赤色斑点があり、先端部に向かうに従って赤色斑点が一面を覆うように全体が濃赤色になっており、こちらはorchidspecies.comやネット画像に多く見られるBulb. nitidumとサイズはほぼ同じですがリップのテキスチャーが異なります。そこでさらに下段の種をBulb, speciosumと比較すると、Bulb. speciosumのリップは基部側半分が黄色、先端部が白色で全体に斑点が有る無しの2つのフォームが見られ、またBulb. aristilabreとはリップの色フォームが異なります。では視点を変え、3段目のリップフォームに似た種を検索すると前記のBulb. callipesとなります。しかしorchidspecies.comによればBulb. callipesの花サイズは2㎝と小型でこちらとも一致しません。

 以上のように、サイズや色フォーム個々では一致するネット画像はあるものの、花全体として一致する画像は見当たりません。さらに現状ではBulb. nitidum、Bulb. aristilabre、Bulb. speciosa等の種名で画像検索をする限り、種名が異なっているにも拘わらず同一画像が入り乱れ曖昧です。果たして下写真のそれぞれの種は、個体差、別種、変種あるいはフォームの違いなのか現時点では不明です。特に2段目の種は、現在のネット上でBulb. nitidumとされる種とはサイズあるいは色フォームがかなり異なっており、その花サイズの大きさからは、かなり迫力があります。販売では、花の確認ができない花無し株で2段と3段目のタイプを同一種として取り扱うことは問題で、当面Bulb. nitidum aff (類似種)としてそれぞれをタイプA、B、Cに分けて対応する予定です。


種名が混乱状態にあるバルボフィラムBulb.nymphopolitanum complex

 Bulb. nymphopolitanum complex (近縁種あるいは似た者同士)とされる種はいずれもフィリピン生息種で、Bulb. basisetumBulb. trigonosepalumと共にBulb. mearnsiiBulb.papulosumBulb. recurvilabreBulb. levanaeなどとなります。現在これらのネット上での種名とその花画像は、支離滅裂で収拾がつかない状態にあります。似た者同士で同定が困難は種はデンドロビウムのCalcarifera節の中にも一部見られますが、これほど混乱しているcomplexは他に知りません。orchidspecies.comですら情報は曖昧です。そこでPhilippine Native Orchid Species Jan. 2011, J. cootes著を基に以下に整理してみました。

 多くのケースで種の同定は花形状全体が明らかに異なる場合は兎も角、近縁種とされる種の間ではLabellum(リップと呼ばれる)形状が同定の判断にしばしば用いられます。これはセパル・ペタルの形状やカラーフォームと比較して、リップは生息地や環境変化に影響を受けにくい種固有の特徴を保持しているとされるからです。下写真はcomplexの中のBulb. basisetum, Bulb. nymphopolitanumBulb. trigonosepalumのセパル・ペタルとリップをそれぞれ比較したものです。

Bulb. basisetum Bulb. nymphopolitanum Bulb. trigonosepalum

 上の画像からは種それぞれが形状的に明らかに異なることが分かり、同定は誰にでも容易にできると思われるかも知れませんが、それほど簡単ではありません。まずorchidspecies.com記載 (以下OSCという)のBulb. nymphopolitanumを検索すると上写真中央のBulb. nymphopolitanumとは全く異なる画像が現れます。どちらが正しいのか?壁に突き当たります。Philippine Native Orchid Species著書 (以下PNOという)引用の画像はこちらとなり、上図の中央と同じです。その違いは、OSCにはリップ中央弁のイボ状凹凸が無いこと、またPNOではラテラルセパルの長さと幅がそれぞれ3.5㎝x1㎝と記載され、その3.5:1の比率に対しOSCに見られる画像の比率は5倍程となっており、またリップの長さを1.5㎝程とすると、リップとラテラルセパルの長さの比率がPNOは2倍程であるのに対してOSC画像は4倍ほどとなっています。すなわちPNOのBulb. nymphopolitanumの花はずんぐりしているのに対し、OSCの花はラテラルセパルが長く伸びて、すんなりしており、どちらかと云えばOSCの画像はBulb. basisetumの花形状に近いものです。ネット画像の大半を占める販売業者サイトの情報はさらに惨憺たる状態で、Bulb. basisetumBulb. recurvilabreBulb. trigonosepalumまでがBulb. nymphopolitanumと命名されている画像が多数あります。おそらくほとんどの業者は種名と花との対応付けにorchidspecies.comを倣ったと思います。

 Bulb. basisetsumは緩やかな(皺状)凹凸がリップ中央弁全体にあり、またBulb. trigonosealumのリップは凹凸が無く、スムーズで他と区別ができます。しかしorchidspecies.comでのBulb. trigonosealumAnother Color formのリンク画像は、そのリップに滑らかさはなくBulb. basisetsumのような皺状の凹凸が見られ別種と思われる画像であり、PNOで云うBulb. trigonosealumとは異なります。

 次にBulb. nymphopolitanumに近い他の形状種はBulb. mearnsiiです。ラテラルセパルはBulb. trigonosealumほど細長くは無く、リップとラテラルセパルの長さの比率が両者はそれぞれ似ています。下写真はBulb. nymphopolitanumBulb. mearnsiiとを比較したものです。Bulb. nymphopolitanumは上写真と同じ種で側面からの撮影です。左のBulb. mearnsiiとは花色が異なるものの形状的には似たところがあります。花色は種の同定に決定的な条件とはなりません。大きな違いはリップの中央弁表面の凹凸とされ、Bulb. mearnsiiでは凹凸が中央弁の中央に寄っているのに対して、Bulb. nymphopolitanumでは全体に拡がっているとされます。またBulb. mearnsiiでは凹凸が棘状ですがBulb. nymphopolitanumではイボ状です。このBulb. mearnsii棘状はイボ状に近い形状のものも稀に見られます。直感的には色とセパル・ペタルのドットフォームで分かりますが、厳密には上記の確認が必要とされます。Bulb. mearnsiiは比較的本物の画像がネットには多いものの、中にはBulb. basisetsumのような画像Bulb. cootesiiBulb. meansiiとする画像もあります。ランの知識のない人がオークションで販売しているのではなく、よく知られたラン園でもこのような状態です。

Bulb. mearnsii Bulb. nymphopolitanum

  下画像はBulb.papulosumBulb. recurvilabreです。前者はドーサルおよびラテラルセパルに斑点があることが特徴とされます。しかしこうした斑点フォームの有無は種の判定の決定要因にはなりません。それを示すのが右のBulb. recurvilabreで、上下で同じ種ですが下段はラテラルセセパルに上段に見られるような目立った斑点がありません。一方、Bulb.papulosumはリップ中央弁全体にイボ状の凹凸がある一方で、Bulb. recurvilabreにはBulb. trigonosepalumほどフラットではないものの皺状の凹凸がリップ表面に見られ、また中央弁には他種には無い2つのくびれがあり、蕊柱に近い部分は大きく膨らんでいます。

Bulb.papulosum Bulb. recurvilabre

 多くの資料には花形状だけでなくバルブ形状、花茎の長さや葉サイズ等の情報もありますが、これらは要素全てをANDした上で種判定の参考にはなっても、環境によって大きな変化が見られ、その一つ一つは決定的な条件にはなりにくいと云えます。例えば下写真の手前2株はBulb. nymphopolitanumで、いずれもセパルペタル共に濃赤色の花が付いています。前の長い葉は31㎝、後ろの葉は15㎝程です。同じFSサイズであってもこれほどに葉長が異なります。一方でPNOでは本種を最大(up to)葉長12㎝としていますが、Bulb. nymphopolitanum complexの中で12㎝を最大長とする種はこれまで見たことがありません。何かの間違いか、たまたま分類サンプル株がそうであったのではと思います。

Bulb. nymphopolitanum

 Bulb. levanaeについては1915年登録とされているものの2011年出版のPNOには記載が無いことから上記いずれかのシノニムとの解釈がされたものと思われます。orchidspecies.comのBulb. levanae画像からは、リップにイボ状の凹凸が無く表面は滑らかでBulb. trigonosepalumのように見えます。さらに相当混乱しているのでは思われるのはそのページのAnother Angle(角度を変えての画像)のリンク先の画像に何故かセパル・ペタルが黄色の花画像が掲載され、こちらのリップ中央弁には凹凸が見えます。上記したようにネット上でのこれら近縁種はまるで纏まりがありません。

 さて本題は以下の種にあります。この種は2017年5月にミンダナオ島から入荷されたもので、同年7月の歳月記にも取り上げましたが、リップ中央弁表面が滑らかであることとBulb. trigonosepalumには黄色フォームがあるとのPNOでの記載から、当サイトの株はラテラルセパルが4㎝と短い(PNOでのBulb. trigonosepalumではラテラルセパル長が6㎝とされる)もののBulb. trigonosepalumの一つのフォームとしてこれまで扱ってきました。しかしミンダナオ島にはBulb. trigonosepalumの生息は現在知られておらず、これまでBulb. trigonosepalumと共にそれぞれ20株程の栽培を通して同一環境で開花期などが異なることやバルブ形状も異なることなることから亜種か別種の可能性も考えられ、今後は匂いの違いなど詳細を調べる予定です。下写真は正月から現在浜松にて開花中の花で、当面Bulb. trigonosepalum aff.(近縁種)としておきます。

 一方、orchidspecies.comのBulb. basisetsumと思われるBulb. nymphopolitanum画像種は、多数の販売業者も同じ画像を掲載していることから容易に入手できると思いますが、このページで取り上げたPNOのBulb. nymphopolitanumすなわち当サイトと同種は、5年前の入荷以来途絶えており、PNOおよび当サイト以外の1-2例を除いてネット上でもほとんど見られず、生息地であるミンドロ島もコメやトウモロコシのプランテーションが進み絶滅のリスクも高いと思われ、現在2株の在庫しかないことから自家交配を行い保存を試みることにしました。なおこのページで取り上げた全ての画像は当サイトで撮影したものです。

Bulb. trigonosepalum aff. Yellow form

新年開化の胡蝶蘭Phal.aenopsis amabilis Borneo

  新しい年を迎え、Phal. amabilisに今年の初花となる1輪が開花しました。隣接する場所に栽培中の100株程のPhal. schillerianaには、本日花芽を数えたところ総数で120本ほどが伸長しており、来月には1,000輪を超える同時開花が見られると思います。

 今年は1月のサンシャインと2月の東京ドームラン展の出店を取りやめました。11月中旬に行った腰部脊柱管狭窄の手術により3ヶ月間の療養が必要なためで、医師からは2月中旬以降は通常活動ができるとのことから5月末の蘭友会サンシャインラン展はすでに申し込みを済ませました。浜松からの発送や温室にての販売は通常通り続けています。この機会にと先月から2015年から2018年までの南米のランの引き取り種の整理と確認、販売のための植え替えを行っています。 さらに本サイトでは5月を目途に、2017年以降に収集したランの追加ページを含めた大幅な改版をする予定です。

 またラン展の当ブースや浜松温室に訪問される方々とはいつも栽培談義をしたり、栽培方法についてご質問を受けることが多く、一方で従来の栽培法や、ウイルス感染を含む病害虫防除対応について、誤った風聞が現状頻繁に見受けられ、これらの問題を具体的に取り上げたり、それぞれのラン属毎に栽培経験豊富なベテランを迎え、実体験を通しての栽培方法やQ&Aページを設けた新たな会員制の栽培専用サイトを立ち上げるべく、IT分野の大学研究者と共に 現在取り組んでいるところです。同時にバイリンガルの可能性についても検討中です。例年と変わらず、今年もまた休む時間の無い年になりそうですが、2020年が皆さまにとって良い年となりますよう願っています。

2020年元日 胡蝶蘭 Phal. amabilis Wild 初花

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