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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2020年度

   2021年 1月  2月  3月  4月  5月  6月 

6月

初めて見るBulbophyllum contortisepalum solid redフォーム

 本日(16日)、中温室においてBulb. contortisepalumが開花しており、その花色を見て驚きました。本種はパプアニューギニア生息種で、長いラテラル・セパルが絡み合った形状が特徴です。マーケットでの一般フォームのラテラル・セパルは黄色ですが、稀にセパルの基部がであったり、緑がかった色なども見られます。しかし赤や緑色のフォームのいずれも、その中央から先端部は白色か薄黄色のツートンカラーとなっています。

 一方、今回開花した株は下写真左と中央の、ラテラルセパル全体が鮮明なソリッドレッドで初めて見るフォームです。ネットでの画像検索ではこうした赤一色のフォームはBulb. contortisepalum種には見当たりません。比較するため右にこれまで赤色フォームとされた花を表示しました。不思議なことは中央写真と右写真の中でいずれも開花前の蕾も写っています。この蕾の段階での色フォームはセパルの基部が、中央ではやや黒味があり、右は赤味が強くなっており、しかし中央から先端部にかけてはいずれも白 - 薄黄色です。ところが左株は、開花時は左および中央のような赤一色となります。またこれまでの赤色タイプに見られる基部の白い斑模様は、左種にはなくソリッドレッドとなっています。果たしてこのフォームは新種か、世界初の開花かは現時点では不明で、調査が必要です。ところで、この株は現在杉皮板に取り付けられており、すなわち2015年以前に入手した株でコケが板全面を覆い、開花も未確認であったことから、前記のBulb. mastersianum同様に捨てられモードの中にいましたが、これを機に花後は手厚く栽培されることになりそうです。現在当サイトでは、Bulb. contortisepalumはラテラルセパル基部が黄、赤、グレー、薄緑色、また形状は似ているものの別種のBulb. falciferumをそれぞれ栽培しており標準的な黄色のBulb. contortisepalumは高温室で、他は高温寄りの中温室にて成長が良く、黄色フォームは800m以下、他は1,000m前後の生息株と推定しています。

Bulb. contortisepalum solid red form Bulb. contortisepalum red

Phalaenopsis sanderiana

 現在、Phal. sanderianaが高温室ではalbaタイプ、中温室では濃いフクシア色(ピンクと赤紫色の中間色)の花がそれぞれ咲いています。albaタイプは一見して、Phal. amabilisaphroditeと何か違うのかと思われるかも知れませんが、葉のカラーフォームやリップの基部にあるカルス形状(Lateral teeth)がユニークで、その違いが分かります。下写真中央のalba株はフィリピンラン協会の前会長V. Goさんから直接入手したものです。以前にも指摘しましたが、本種は主にミンダナオ島に生息しており、現在の状況は分かりませんが、4-5年前にはフィリピンの幾つかの2次業者からalbaフォームの野生株が入手できました。果たして数万に1株出るかどうかのalbaフォームがそれほど出回ることは考えにくく、胡蝶蘭sandeianaのページに記載したようなPhal. amabilis complexの進化の中で、カルス形状に最も近いPhal. aphroditeから分離したもので、Phal. sanderianaとは異なる別種ではないかと思っています。

Phal. sanderiana fuchsia color Phal. sanderiana f. alba Phal. sanderiana callus

現在開花中の2010年代に発見(発表)の新種バルボフィラム2点

 下写真左のBulbophyllum polyflorum(旧名:Cirrhopetalum multiflorum)は2011年、右のBulbophyllum translucidumは2016年発表の、共にフィリピン固有種です。当サイトではいずれも2016年に入荷し、サンシャインや東京ドームラン展に3,000円程で出品してきました。現在はこの価格では販売できないほど前者は入手難、後者は大株になり、それぞれ6株と20株を栽培中です。国際マーケット情報は、ネット上では殆ど見当たりません。

Bulb. polyflorum (Nueva Vizcaya Luzon) Bulb. translucidum (Leyte)

 ところで国内の販売サイトやオークションでは、以前にも増してランに、希少とか超希少とかの言葉が並んでいます。希少とは生息数が少ない、あるいは世界市場での販売実績が理由もなくほとんどないなど実証に基づくべき表現ですが、そうした根拠や情報は示されていません。テレビコマーシャルで俳優や出演者が、例えばサプリメントの効き目をことさら宣伝していながら、スポンサーから”個人の感想で商品の効能や効果を示すものではありません”と画面の片隅に小さな文字を一瞬表示しているのを見ると、誇大広告違反を意識してか効き目は保証しないと、まるで出演者が嘘をついているかのように言われ、つい同情してしまいますが一方、ランの販売では生体故に早く売らねばならず、必死さは理解できないこともないものの、”希少と言うから買ったのに”と、買手から購入額だけでなく、それまでの栽培コストを含む賠償を誇大広告被害として求められたらどうするのか、つい気になってしまいます。希少である根拠が示せなければ、”希少は個人の感想です”と小さな文字をページの片隅に書いた方が無難かも知れません😅。昔、ランの販売ページに”美しすぎる花”との表現もありました。美しさは人それぞれの感性の問題で、ある意味面白い表現と苦笑してしまいましたが、”希少”は感性ではなく、事実か否かですので一言。

Bulbophyllum ocellatumに似た新種あるいは変種?

 昨日(8日)、ラベル名Bulb. ocellatumの中に、これまでに見られない花が咲いていました。こげ茶色したペタルが特徴のBulb. ocellatumは、Aurea州低地生息のフィリピン固有種とされる2011年登録の新種です。この種は成長が盛んで、当サイトではそのほとんどがクラスター株となっており、バルブ数10個を1株として換算すると、百株を超える株数となります。こうした中、5年以上前に植付けた株にBulb. ocellatumと比べ一回り小さいものの、黄色が鮮やかな花が開花していることが分かり撮影しました。Bulb. ocellatum complex (近縁種)は早朝全開し、午後からは閉じる特性があり、これまで何度か開花していたようですが気が付きませんでした。写真上段は今回開花したその花(以下、Bulb. sp aff. ocellatumとします)です。

 中段はBulb. ocellatumで、本種と比較することができます。下段左はそれぞれの花を切り取り、並べたものです。また下段右は、Bulb. sp aff.の株です。花の違いは画像から分かりますが、右写真のバルブ形状では、Bulb. sp aff.は円柱あるいは円錐形である一方、Bulb. ocellatumは四角ばっています。葉形状はサイズの違いはあるもののほぼ同形です。さてこれらの画像から、両者が果たして同一種の個体差、地域差、変種なのか、あるいは別種なのかは現時点では判断が困難です。Bulb. ocellatum自体が新種であることから、類似種がこれからも出現する可能性も考えられます。さらに今回の花フォームが一過性のものかどうかも、下段右写真に見られるようにクラスター株であることから開花機会は多いと思われ、注視する計画です。

Bulb. sp aff. ocellatum
Bulb. ocellatum
Bulb. sp aff. (左)、Bulb. ocellatum(右) Bulb. sp aff. ocellatum

当サイトメールアドレス xxxx@cyberwildorchid.comについて

  本日(3日)気が付いたのですが、xxxx@cyberwildorchid.comのアドレスへのメールの一部が今年1月中旬からメールソフトにて閲覧できていない状態であることに気付きました。今年に入りメール・ネーム・サーバー管理者からのセキュリティー強化のための各種の設定変更通知がしばしばあり、一部の新規設定対応が遅れていたことが原因でした。大変失礼致しました。これまでに頂いたメールは閲覧可能となりましたので、お問い合わせについては、これから対応を致します。ただオーダーに関わるお問い合わせは、当歳月記にてご説明しておりますように、EMSが再開できるまで現在販売を休止しており、再開の目途が立ち次第、本ページにてお知らせ致します。なお、@ranwild.orgのメールはこれまで通り全て拝見しております。よろしくお願い致します。

Bulbophyllum basisetumとアブ

  昨年10月の歳月記にBulb. basisetumを取り上げ、その中で本種はハエやアブが好きそうな匂いを放つことを報告しました。現在高温室にてこのBulb. basisetsumが開花しており、極めて稀なことですが、アブが黄色の花粉魂を背中に付けて、リップ基部の表皮をしゃぶっている光景(下写真右)に遭遇しました。この時期になると晴天日は温室の気温が上昇することから、出入り口ドアーを開けていることが多く、Bulb. echinolabiumpapulosumと比べて、近づかないと分からない程度の匂いではあるものの、人の感知能力を超えているのでしょうか、アブを呼んだと思います。20年以上となるランの栽培で、これまでに一度(2012年10月)、日本ミツバチが花粉魂を付けてDen. albertesiiの間を飛び交っていたのを見て以来2度目となる、10年に1度あるかないかの光景です。なにせ相手がアブなので、ヤラセの出来ない状況下で息をつめ、30㎝程まで近づいてのマクロレンズ接写撮影となりました。Bulb. basisetumはフィリピンMindanao島の生息種ですが、この匂いは虫にとっては万国共通のようで日本のアブも誘われたようです。


マレーシアでのコロナ感染状況

  このところマレーシアでの新規感染者数は先月末で1日当たり9,000人を超え、人口当たりではインドを抜く勢いで急増しています。今月から必要不可欠な行動を除き、社会・経済活動を一斉に禁止するロックダウンが始まりました。1年前の6月の当歳月記には、日本からの渡航は1年近くは無理であろうけれども、秋頃にはEMSが可能になるのではと期待していましたが、さらに1年以上先まで見通しが立たなくなってしまいました。原種販売で生計を立てている現地ラン園は大変でしょうが、コロナが沈静化し再びランの出荷が出来る日まで、この難局をなんとか乗り切ってもらいたいものです。

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