栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。 ARCHIVE

2018年 1月 2月

2月

東京ドームラン展を経て

 東京ドームラン展JGP2018が終了しました。今年は1ブースの出店でしたが多数の原種愛好家の方々にお越し頂き、内覧会から日曜日の3日間で展示出品の7割近くを販売することが出来ました。今回も1月のサンシャインシティAJOSラン展と同様に、少量多品種での出品を行いました。原種のみを扱う本サイトや幾つかの海外ラン園にとっては、この初日から3日間の売り上げが出店の成否を左右します。一方、平日に訪れる中高年やツアー団体の方々は栽培家というより主に観賞が目的で、それぞれ来場者の嗜好が曜日によって異なります。
 
 趣味家を対象とする原種の市場はあまり流行は無いように思われますが、数年前と比べてバルボフィラムやセロジネ愛好家が増えているように感じます。原種も新種や希少種は属に関わらず常に人気が高いことは変わりません。また若い年齢層の増加が顕著で好ましい限りです。この傾向もあってか、1例としてシダ類から現在はジュエルオーキッドに移っているなど数年単位で関心域は変動するようで、特に海外原種ラン園はこうした日本市場の動きや、競合の少ないニッチな市場を如何に捉えるかでブースを訪れる趣味家の数が大きく変わります。今年は台湾からのラン園がかなり少なくなった印象です。観賞用交配/改良種を販売する多数のブースは、その領域の専門ではない本サイトから見ると、いずれも似たり寄ったりの商品のように映り、果たして競合しないのかどうかが不思議です。台湾からのラン園も10年ほど前はドームに出かけるのにわくわく感があって楽しみでした。しかし5年ほど前からは皆同じような品種ばかりと感じるようになりました。こうしたことも出店数の減少に繋がったのかと思います。

 今回本サイトのブースはNT OrchidとMundifloraに挟まれ、本サイトの名称から海外ラン店と同列に思われているフシもありますが、3塁ベンチ側の広い通路に面した良い場所でした。その前にはラン販売ブースならば20店舗以上は入れるであろう広い空間があり、そこではわらび餅、ワイン、郷土料理、乾燥果物などの店が縁日の如く並び、はてこれらの店がランとどんな関係があるのかと眺めていたところ平日の午後にはどのラン園のブースにも増して黒山の人だかりであったのには苦笑いです。

 来年のJGP2019は企画担当会社が変わるそうです。いずれにしても原種愛好家としては、より多くの国々からラン園が参加しやすい環境が提供できるラン展になることを期待しています。

Dendrobium rindjaniense

 現在多くのDen. rindjanienseが蕾をつけています。順化中あるいは直後は3-4輪でしたが、順化後は株あたり10輪以上となっています。栽培は温室内のため開花期がいつかは一般論としては言えませんが、本サイトではこの時期のようです。花を見ると下写真左のように一般にはセパルペタルの先端部は白く、基部は明るい藤色ですが、今回蕾を付けている右写真の1株はかなり濃色で藤色に濃淡の個体差があることが分かりました。写真の株を含め数点JGPに出品予定です。

Den. rindjaniense

Bulbophyllum incislabrum

 1昨年入荷したBulb. incislabrumが開花しています。スラウエシ島生息種で2003年命名された新種です。そのためかorchidspecies.comでの情報は少なく、また国内のマーケット情報も無く、海外ではアメリカの1ラン園で65ドルおよそ7,000円で販売されています。

 2年近い栽培で本種は板付けが良くこれまでは杉皮板での栽培でした。中温と胡蝶蘭用温室の高温の2か所に分けて栽培をし、今回の開花は中温室です。高温でも弱ることはないのですが暑さを嫌うようで夏は風通しの良い軒下に吊るしたほうが良いようです。

 花のサイズは開花状態でのペタルの左右スパンで4.0-4.5㎝、高さもほぼ同じです。中々個性のある形と共に、セパルペタルは黄色をペースにチョコレート色の斑点が一様に散りばめられて光沢があり、またリップ中央弁はorchidspecies.comの画像では白をベースに基部と側面が紫色ですが本サイトでは純白となっています。本種は夕方になるとセパルペタル共に蕊柱とリップを覆い隠すように閉じます。これは生息環境が雲霧林であることを示しているように思います。下画像が今回の開花株です。東京ドームJGPに数株出品します。

Bulbophyllum incislabrum

名称不明のcalcarifera節デンドロビウム

 Den. doloissumbiniiの中に交じって下写真上段の名称不明種が開花しました。見方によって2007-2009年命名のDen. chewiorumであったり、あるいはDen. cymbicallumのようでもあり、はたまたDen. cerinumのようでもありと悩みます。現在開花中のスマトラ島Den. sp、Den. cerinum、本種それぞれの花を比較した画像が下段です。いずれとも異なります。入手経路からするとボルネオ島Sabah生息種であり、また上段右の疑似バルブ画像がDen. cymbicallumに酷似していることから、ではこれで決まりとなるのですが、それでも納得いかないのはorchidspecies.comによればDen. cymbicallumはクールタイプで、しかし1,500m以下?とあり、当浜松の温室では胡蝶蘭と同棲して高温環境であり、この環境で元気に成長しています。このことから低地生息のDen. cymbicallumの可能性大と、取り敢えずしておくことにしました。

 しかしcalcarifera節の多くが開花してから1-2週間もすると黄化してくるのですが本種はほとんど変わることなく淡い緑色で清楚な色合いを保っています。

Den.sp (cymbicallu?)
左:Den. sp Sumatra  中央:Den. cerinum 右:本種  

Bulbophyllum contortisepalum whiteとBulbophyllum makoyanum long Palawan

 写真左はマレーシアにて入手したBulb. contortisepalumです。一般に知られている本種は黄色ですが、赤色があり、さらに今回は白色を持ち帰りました。おそらくこの白色のBulb. contortisepalumは別名(シノニム)のBulb. streptosepalumではないかと思います。

 写真右は11月入手したPalawanからのBulb. spの中に含まれていたBulb. makoyanumで、順化期間がほぼ終了と同時に開花しました。円形に広がるセパルの直径は14㎝とこの種としては極めて大きく、通常順化後初めての花は10㎝程が多いことを考えると今後の開花によってどこまで大きく広がるのか楽しみです。東京ドームプレオーダーリストにはBulb. contortisepalum whiteは入れましたがPalawan産のBulb. makoyanumは入れていません。プレオーダを希望される方はお問い合わせください。

Bulb. contortisepalum white Bulb. makoyanum

Phalaenopsis javanica

 Phal. javanicaのインドネシアからの入荷が極めて困難になってきたようで、マレーシアラン園でも昨年夏ごろからの入荷が途絶えています。おそらく野生株は今後益々難しくなるであろうとのことです。本種はマーケットには実生があり、本サイトでも本種の選別株の自家交配を行っています。今回のマレーシア訪問で実生がたまたま訪問先のラン園にあったころから10株ほど入手してきました。実生株はPhal. violacea近縁種など一部を除いて扱わないのですが野生栽培株が入手難のための今回に限りドームラン展販売用として持ち帰りました。実生ですので野生栽培株の半額以下の2,000円での販売です。基本的に本サイトでは胡蝶蘭の実生は1,500-2,000円としています。これを上回る価格分は炭化コルク付け(取り付けコスト分)か自家交配種(交雑種でないことの保証)のいずれかによるものです。


Phal. javanica 実生株

Macodes sandeiana

 マレーシアの農園内を歩いていたところジュエルオーキッドの一角があり、葉模様が美しい代表的なMacodes sanderianaも並んでいました。百株程が纏まっているとそれなりに見ごたえがあります。これまでサンシャインラン展に2回、希少種と言われたジュエルオーキッドを選んで2-3種販売しました.。アクアプラントとして人気があるようでよく売れました。最近は扱っていませんので素通りしたのですが、価格を聞いたところキャメロンハイランドの道路わきの露店とほぼ同じでした。ネットを見ると国内では3,000-6,000円程で売られているようで、それではと下写真の15株を入手しました。こんな背景から東京ドームプレオーダーリストに入れていません。マレーシアの露天商気分で500円でも良いのですが、マレーシアの道路脇とは違ってドームと言う場所代があり、ラン展では1株1,000円での販売です。


Macodes sanderiana

Bulbophyllum

 今回マレーシアから持ち帰ったバルボフィラムの内の2種で、上段が2011年登録のスラウエシ島生息種のBulb. veldkampiiで、下段がボルネオ島のBulb.spです。下段右はそのsp種の開花画像です。いずれも高温タイプです。Bulb.spの花画像が分かりにくいのですがセパルペタルは黄色に対し、リップは緑色で中央弁に細毛があります。こちらはマレーシアの趣味家から得たものです。

Bulb. veldkampii
Bulb. sp Sabah

Vanda foetida

  入手して3年目にようやく開花に至りました。6㎝程の花で白地に薄い藤色のセパル・ペタルと、サンディ・ブラウンのリップ中央弁に深紅の側弁は存在感があります。比較的明るい場所に移動してから1年程経ったところです。スマトラ島生息種でorchidspecies.comには気温についての情報がありませんが、浜松ではVanda sanderianaなど他の高温タイプと同じ環境で4株を栽培しています。入荷時はいずれも30-40㎝でしたが3年程の成長で1mを超える株もあります。植え込みは大粒のコルクチップとバークで、吊るしではなく鉢植えです。

Vanda foetida

Dendrobium leporinum

 下写真はDen. leporinum です。左(後方に映っている種はDen. strepsiceros alba)および中央の株はニューギニアIrian Jaya、右はインドネシア北マルク州Halmahera島Jailolo地区生息のDen. leporinumです。右の株のように生息地がこれほど詳細に分かっているケースは珍しいことで、地域差を調べるうえで重要な情報です。本種はSpatulata節で1m程の大きさになります。特徴はリップの大きな団扇のような形状と赤紫の網目模様で、花茎当たり6㎝程の花が5-6輪同時開花します。通常花茎は2本発生することから10輪以上となり、かなり見ごたえのある種です。

 下画像から中央のIrian Jayaと右のJailoloとはリップ中央弁形状が前者がより丸みがあり、後者はやや楔型でリップ側弁やホーン(角:ツノ)と言われるペタルの形状に僅かな違いが感じられます。カラーコントラストはJailoloが強い印象です。この違いがそれぞれのロット単位で対比しており、地域差よる可能性があるもののさらに調査が必要です。

 国内マーケットではその美形からかほとんどが10,000円以上ですが、本サイトではIrian Jaya産は5,000円、2年程入荷が途絶えているJailolo産は6,000円としています。指定のない場合はIran Jayaとなります。

Den. leoprinum Irian Jaya Den. leoprinum Jailolo


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