2月
この不可思議なフィリピン生息のBulbophyllum
これまで3回Bulb. williamsiiに端を発するBulb. spを取り上げてきました。今回Bulb. sp. aff. fenixiiの入荷ロットからも類似する種が含まれていることが分かり、振り返って整理してみました。下写真上段は左からBulb. williamsii、中央および右は種名不詳種で、写真中段はそれぞれのバルブです。Bulb. williamsiiは同定できますが、中央sp1はBulb. willamsiiのロットに混在していた種です。一方、2016年はBulb. williamsiiとBulb. woelfliaeとを同時に注文しており、Bulb. woelfliaeとして下写真のsp1が入荷していました。このsp1は明らかにミスラベルであるものの、現地での出荷時のラベリングで、ミンダナオ島のBulb. williamsiiに、ルソン島北部生息とされるBulb. woelfliae名のsp1が混ざったものと考えられます。第一の疑問は、Bulb. woelfliaeではないとするとsp1は何種かです。
次に2017年に、Bulb. elassoglossumの発注でsp2が入荷しました。これもBulb. elassoglossumとは異なるミスラベルでした。ここでそれぞれの花とバルブ形状を比較するとBulb. williamsiiとsp1とはドーサル・ラテラルセパルの長さが後者は1/2で、バルブ間のリゾームの長さもほぼ1/2です。一方、Bulb. williamsiiやsp1とsp2とを比較するとペタルの形状がsp2は細長く、リップ前端が黄色であることと、バルブ形状もリゾーム長も異なり別種であろうと思われます。Bulb. wiiliamsiiのラテラルセパルは4㎝、sp1およびsp2は2㎝です。
さらに今回、2017年入荷のBulb. fenixiiの30株程のロットから写真下段のsp3が開花しました。このBulb. fenixiiのロットではこれまでBulb. sp. aff. fenixiiがほとんどで、現在Bulb. fenixiiは2株確認しているのみです。このロットにはこれまで3割程、花サイズや半分閉じた状態の色合いも似ているBulb. ocellatumが混在していると思いつつ栽培していましたが、今回の植え替えで開花している花をよく見たところ、Bulb. ocellatumではなく、sp3であることが分かり、その画像を26日に撮影しました。このsp3のバルブはsp2と同じような形状でリゾームは短くバルブもBulb. williamsiiやsp1と比較して小型です。ここで第二の疑問がでてきました。このsp3は、sp2と花フォーうは酷似しているのですが、下段右写真に見られるようにサイズが1/2です。たまたま1株がそうであったのではなく、Bulb. fenixiiのロットのsp3は全てこのサイズであり、一方Bulb. elassoglossumとされたロットのsp2は左のサイズです。同一種であって、これほどのサイズの違いがあることは考えにくいものの、両者とも同じルソン島Nueva Vicaya生息種であることから標高差あるいは排他的な生息コロニーによる個体差とも考えられないことはありません。結果としてBulb. woelfliaeからsp1が、Bulb. elassoglossumからsp2が、さらにBulb. fenixiiからはsp3が現れたことになります。不思議なことはsp1-sp3それぞれが異なる種名のミスラベルで入荷した訳ですが、それらが互いに似て非なる特徴をもっていることです。
話は変わりますが、常に新しく、珍しいものを現地に求める限り、こうしたミスラベルが頻繁に起こります。これをその都度サプライヤーを咎めていては現地の人たちは注文を受ける意欲を失くします。痛しかゆしですが、そうした中でも、このような不明種と出会うこともあり、ミスラベルもこれはこれで面白いと思っています。
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Bulb. williamsii |
Bulb. sp1 |
Bulb. sp2 |
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Bulb. sp3 |
Bulb. sp2 (左) Bulb. sp3 (右) |
Bulbophyllum pardalotum
Cootes氏著Philippine Native Orchid Speciesによると、フィリピン・ルソン島中央部標高1,200m生息のBulb. pardalotumは中温タイプで、明るい場所に見られるとされます。一方、orchidspecies.comでは標高1,500m以上の低輝度な場所に生息しクールタイプとされ、ここでも情報が異なります。当サイトでは現在100株以上の本種を栽培しています。入荷当初は1,200mとの情報からほぼ全株を中温室にて栽培していましたが、その後、高温室でも問題ないことが分かり、現在8割は高温室に、2割が中温室の栽培となっています。胡蝶蘭Phalaenopsis節と同じ環境で3年経過しましたが成長に何ら問題はありません。標高1,200mという雲霧林に見られる性質か、開花は午前中で、10時を過ぎると、お辞儀をするような姿勢で閉じます。当サイトでは比較的明るい場所での栽培です。
下写真は左が一般フォーム(25日撮影)で中央がSemi-aureaフォームです。左は高温室にて筒状支持材で栽培しているクラスター株で、当初50バルブ程でしたが3年間で200バルブ以上になっています。写真中央のsemi-aurea種は3年ほど前に100株以上の中から見つかったもので、花色は黄色と云うよりは黄金色でまさにaureaカラーです。この株を2株に株分けし、昨年のサンシャインランや東京ドームらん展に出品したのですが、価格が当サイトでは一般フォームが1,500円に対し、8,000円としたのが高価過ぎたのか購入される方はいませんでした。現在は非買品として株を大きく育てているところです。
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Bulb. pardalotum normal form |
Bulb. pardalotum semi-aurea form |
Bulb. pardalotum cluster |
Flickingeria (Dendrobium) sp 後述(Flickingeria aureilobum)
マレーシア・キャメロンハイランドの露天商で入手したFlickingeriaを、2017年3月の歳月記に種名不詳種として取り上げました。昨年この株を3株に分け栽培していましたが、その株のうち2株が本日(25日)開花しました。1日花で且つ毎年1-2度だけ開花する故の印象か、美景です。その後、種名について調べているものの今だによく分かりません。Malesian Orchid Journal 2013 Vol.11の表紙画像にあるFlickingeria aureilobaと思われる花に似ていますが、orchidspecies.comにはその花がJavaとスマトラ島生息種とされ、キャメロンハイランドすなわちマレー半島の記載はありません。 写真はマレーシア発行のジャーナルなので新たにマレーシアでも生息が確認されたのかも知れませんが。 (後述: 知人より前記ジャーナルのコピーを送って頂き、本種はマレーシアで2009年に新たに生息が確認されたFlickingeria aureilobumであることが分かりました。aureilobumとaureilobaとはシノニム(異名同一種)の関係とされています。確認された生息地はマレー半島北部 Kelantan Stong Forestとのことです。また ジャーナルではリップ中央弁に赤い斑点がありますが、下写真のように斑点の無いフォームもあるとのことです。キャメロンハイランドとKelantan Stong Forestとは180㎞の距離がありますが、その間を繋ぐ山々には本種が生息しているものと考えられます)
下写真は今朝(25日)撮影のFlickingeria spです。香りも良く美景とは言え、わずか一日花で数輪見ているだけでは物足りないので、数百輪の同時開花を見てみたいと今回交配を行いました。2年後にはフラスコ内に20-30苗を植え付けたフラスコ単位て販売する計画で、これだけの数であれば購入される方も、寄せ植えで大株にしその香りと花を楽しむことが出来るのではと思います。なおFlickingeriaは栽培が至って容易な種です。
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Flickingeria (Dendrobium) sp Cameron Highlands |
Phalaenopsis lueddemanniana Mindanao
Phal. lueddemannianaが開花しています。1株に10輪開花は稀なため撮影しました。
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Phalaenopsis lueddemanniana Mindanao |
Bulbophyllum monosepalum (deuterodischorense)
ヒョウ柄模様の花と、霜降り模様の葉をもったBulb. monosepalumが現在、開花中です。2016年の入荷以来初めての開花です。10株程入手しこれまでその半数以上をネットやサンシャインラン展などで販売しました。orchidspecies.com等でニューギニア標高1,300mのクールタイプとの情報から、クール温室にて3年間ほど栽培をしてきましたが成長することも、かと言って枯れることもなく、いわば株としてはじり貧状態が続きました。昨年、栽培環境に問題ありと判断し、夏に植え替えを行うと共に、中温室の中でもやや明るい高温よりの場所に移し、根は常に湿らせた栽培で様子を見ることにしました。すると秋から小さくなった2株に新芽が現れ、現在も成長中で、また残る中サイズの1株からは花芽が今年に入り発生しました。下写真左は1昨日開花した6㎝サイズの花です。どうやら入荷した株はクールタイプではなく中温タイプのようです。
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Bulbophyllum monosepalum (deuterodischorense) |
Dendrobium floresianum
インドネシア・フローレス島生息のDen. floresianumが開花しています。本種は花色が一般フォームから黄緑や緑色のカラーフォームなどがあり、多輪花のため人気のあるデンドロビウムです。ネットからマーケット情報を見ると、10,000円以上が見られますが当サイトでは野生栽培株の一般フォームで2,500円です。下写真は左が一般フォーム、右がflavaフォームでいずれも木製バスケット植えでの栽培です。右画像は本日22日の撮影です。
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Den. floresianum Common form Flores Isd. |
Den. floresianum flava form Flores Isd |
現在開花中のDendrobium Distichophyllae節 Palawan
下写真は現在開花中の、フィリピンPalawan生息種として2018年に入手したDistichophyllae節デンドロビウムです。左はセパル・ペタルおよびリップ中央弁が白色、側弁の一部が淡いオレンジ色です。一方、右はセパル・ペタルは白色でリップ全体がオレンジ色です。側弁が特徴ある形状となっていることから、これらは別種と思われます。似た種としてDen. ellipsophyllumやDen. revolutumが知られていますが、下写真種はそれらと比較して葉形状がやや細長い線形で、葉と葉の間隔が広く、またDen. ellipsophyllumおよびDen. revolutumいずれもPalawan諸島生息とされる情報は見られません。
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Dendrobium Distichophyllae節 Palawan |
現在開花中のDendrobiumとPaphiopedilum
下写真は現在開花中のDen. aurantiflammeumとPaph. sanderianumです。写真左のDen. aurantiflammeumの花は一株での開花です。これから開花する蕾を含めると40輪程の同時開花になります。本種は木製バスケットにミズゴケでの植え付けで3年目を迎えます。2月の開花は早咲きで通常は4-5月が最花期です。また右はPaph. sanderianamで入手してから今年で丁度20年となります。間もなくPaph. gigantifloiumも開花予定です。22日の撮影です。
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Den. aurantiflammeum Borneo |
Paph. sanderianum Borneo |
Bulbophyllum echinochilum
2018年9月の歳月記で取り上げたBulb. echinochilumが開花しており、35mmマクロレンズを今年入手したことから再度花画像を撮影しました。本種は前記ページにも記載しましたが、orchidspecies.comによると100年近く前にフィリピンで記録され、その後は見つからず絶滅したと思われていたそうですが、最近になりインドネシア領スラウエシ島の標高900-1,000mのコケ林で本種が撮影されたとあります。一方、J. Cootes氏著Philippine Native Orchids speciesではルソン島BataanとNueva Vizcayaに生息と記載されています。しかしorchidspecies.comの花画像を見るとリップ形状は似て非なる様態です。下写真は22日撮影のBulb. echinochilumです。 拡大写真で見ると、ラテラルセパル全体に細毛があり、またペタルは小さくその外縁が茶褐色で、蕊柱の先端部にも細毛があります。リップ中央弁と髭が前記orchidspecies.comの画像に見られるBulb. lasioglossumのような形状とは異なります。またバルブ形状も下右写真は円錐形ですが、orchidspecies.comのPlant in situ in Sulawesiに見られるバルブ形状は球体です。おそらくスラエシ生息とされる株はフィリピン生息とは異なる種と思われます。
最近の当温室での交配
下写真は昨年末から先月にかけて交配したDen. tobaense、Vanda roblingiana f. flavaおよびBulb. nymphopolitanumです。Den. tabaenseはNS12㎝同士のSibling Cross(同種間交配)です。デンドロビウムは自家交配の不合和性がみられ、開花サイズが12㎝を超える2株以上の野生株の同時開花を長年待っていましたが昨年末に得られたため交配を行いました。またVanda roblingiana f. flavaはフィリピンラン園より預かった株で希少性が高く、世界初の交配と思います。こちらはself Cross(自家交配)です。さらにBulb. nymphopolitanumはネットで検索するとCootes氏著Philippine Native Orchids speciesに掲載の種とはorchidspecies.comを始め異なる画像Bulb. basisetumがほとんどで、こちらも本物は希少と考えられるため、今回、同種同士のシブリングクロスをしたものです。いずれも第一段階の受粉は行われたようで、写真に見られるようにさく果が形成されつつあり、10月頃にフラスコへのタネ撒きを予定しています。
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Den. tobaense |
Vanda roblingiana f. flava |
Bulb. nymphopolitanum |
開花中のPhalaenopsis節
間もなく胡蝶蘭Phalaenopsis節のPhal. amabilis, aprodite, philippinensis, schilleriana, stuartianaが、やや遅れてPhal. sanderianaの開花期を迎えます。 Phal. amabilis, philippinensisおよびshillerianaは開花が始まったところです。Phal. aproditeとstuartianaは今月末頃からとなります。下写真は現在開花中のPhalaenopsis節のそれぞれで、撮影は16日です。写真2段目はそれぞれのリップ形状です。
しばしば趣味家の方から、ネット等で購入した株が開花したが、はたして原種か交雑種かとの問い合わせを頂きます。結果はこれまで半数以上が交雑種でした。原種か交雑種かの判断には、僅かな色違いや斑点等の模様は個体差の範囲もあり、同定に用いることは困難です。胡蝶蘭原種に関してはリップやカルス形状が種を判定する主な要素となります。例えば左のPhal. amabilisでは中央弁が細長く、先端から基部方向に向かう巻髭、またリップ中央弁の基部は左右に3角突起があり、さらにその中央弁の先端にも小さな突起があります。リップ中央弁形状はPhal. amabilisが長い3角形、Phal. philippinensisは台形、Phal. schillerianaは円形で、こうしたそれぞれの特徴がPhall. amabilis、philippinensis、schillerianaに一つでも入れ替わっている場合、その株は交配種と見做されます。こらら固有の形状も他種に見られることはありません。特にマーケットにおいて胡蝶蘭原種とされる株の多くに交雑種が多いことは、これまでしばしば取り上げてきましたが、こうした背景から当サイトの胡蝶蘭原種のページでは、それぞれの原種のリップやカルス形状画像を掲載しており、花を得たものの疑問のある場合はご参考下さい。
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Phal. amabilis Borneo Sabah |
Phal. philippinesis Philippines Luzon |
Phal. schillieriana Philippines Luzon |
今季初開花のDendrobium deleonii
フィリピンMindanao島Bukidnon標高1,300m生息Den. deleoniiが今週に入り開花しました。形状はDen. sanderae var. majorに近く、リップ側弁がやや小さく、中央弁はやや幅広で水平方向に伸びていることが相違点とされているものの、この程度の形状の違いで別種に分類すべきか疑問で、Den, sanderae を含め、これまでその変種とされるluzonicum、majorおよびparviflorumのそれぞれがルソン島生息種で地域的には独立していることから、当サイトでは分類的にはDen. sanderaeとは他と同様の変種あるいは亜種の関係と考えています。
栽培は中温室のやや高温寄りで、ミズゴケ・クリプトモスミックスにスリット入りプラスチック深鉢と炭化コルク付けの2種類の植え付けをしており、今回開花の株は炭化コルク付けで始まりました。下写真下段左がそれで、右はポット植です。どちらの栽培も昨年開花後に新芽が出て、現在はほぼ古い茎と同じサイズに伸長しています。花は葉が僅かに残る2-3年前の古い茎に付きます。これまで30株程栽培していますが1株も枯れは無く丈夫な種です。
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Den. deleonii Mindanao Bukidnon |
今季初開花のPhalaenopsis schilleriana
Phal. schilleriana2020年の初開花です。
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Phal. schilleriana Philippines |
今週植付けのデンドロビウム
昨年から時間のある限り、植替えや植付けをしています。下写真は今週行った植付けです。写真左のDen. monatumはJava標高1,400-2,000m雲霧林生息域のデンドロビウムです。1昨年同じJava島の標高1,200 - 1,500m生息のDen. nudumと共に入荷したものの生息地や標高が近いことからか、両者が正しく分類されておらず、Den. monatumラベル名の株からDen. nudumが開花し、販売を止めていました。今回開花で確認済みのDen. nudumと比較して、Den. monatumは疑似バルブが細く長いため、これらを選んで植え付けを行ったところです。写真中央はパプアニューギニア生息のDen. subclausumです。本種は高芽が良く発生し且つ成長も早いため、高芽を外し植付けを行ったものです。一方、右はBorneo島生息のDen. paathiiです。この株はセパル・ペタルが一般フォームの白色と異なり薄いピンクです。このピンク色の濃度は環境によって変わるようです。半立ち性で茎が1m以上の長さとなり垂れておりバスケットから炭化コルクに植え替えを行いました。前者2種は中温室、Den. paathiiは高温温室にての栽培です。いずれも国内マーケット情報は当サイト以外ほとんど見られません。
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Den. monatum Java |
Den. subclausum Papua New Guniea |
Den. paathii Borneo |
Dendrobium sp SumatraとCymbicallum Complexの開花と花比較
デンドロビウムCalcarifera節のCymbicallum類似種が現在開花中です。下写真の上から3段は現在開花中の3種を示し、それぞれの花、Spur(距)およびリップを表示したものです。また4段目左は別種の花とSpurを、また中央は現在空白ですが間もなく入荷予定のDen. roseatumを表示するスペースです。右写真も入荷予定の別種で花画像はサプライヤーからです。このDen. sp2は上段Den. sp1 Sumatraのペース色が白色化したようなフォームで生息地は同じSumatra島です。
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Den. Cymbicallum Complex1 Borneo? |
Den. Cymbicallum Complex2 Borneo |
Den. sp1 Sumatra |
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Den. Cymbicallum Complex3 Borneo |
Den. roseatum Cameron Highlands |
Den. sp2 Sumatra |
Aerides leeanaの栽培その後
昨年2月に花の付いた本種の入荷があり、4月にはこれらを炭化コルク付けにした新しい栽培法を本サイトで取り上げました。入荷から1年が経ち、現在の状況は下写真に見られるように凡そ40株のほぼ9割の株で花茎が1株当たり2-4本(右写真)伸びており、また花茎当たり30輪程が同時開花となるため来月末頃には一面クリムゾン・ピンク色になると思います。J. Cootes氏著Philippine Native Orchid Speciesでは、本種は他のAeridesと異なり、かなり低輝度で上手く成長と開花が見られる(grow and flower successfully in quite shaded situations)とされていますが、当サイトでの栽培では下写真に見られるような段階的配置で、温室天井に近く輝度の高い上段にある株の方が、輝度の低い下段の株に比べ成長が活発で、花茎の発生数も多い傾向が見られます。
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Aerides leeana |
Dendrobium rindjanienseの花芽
今月に入り多数のDen. rindjanienseで花芽が出始めており、3月末頃が開花の最盛期になると思われます。高輝度を好み昨年春から夏にかけて発生した新芽は現在も伸長を続けています。花芽は落葉した茎に発生する性質から、新しい茎での開花は発芽から2年後となるようです。本種は、なぜかポット植えは適さず、ヘゴ板、ブロックバークや炭化コルク付けが良い結果となっています。下写真は全て8日の撮影で、上段右の葉のついた茎のほとんどは昨年発生したもので、一部はすでに60㎝を超える(炭化コルクの長さは35㎝)伸長をしています。この写真に見られるように本種は半立ち性です。下段の写真は落葉した古い茎に発生し始めた花芽様態です。
Phalaenopsis philippinensis
Phal. philippinensisの開花が始まりました。本種は葉がPhal. schillerianaやPhal. stuartianaと同じような大理石模様のため、花の無い株形状だけでは同定が困難です。Phal. stuartianaはレイテ島とミンダナオ島、他はLuzon島の生息であることから、生息地が分かれば、Phal. schillerianaとPhal. philippinensisのいずれかとなります。またPhal. philippinensisは1,200mの高地生息種のため、標高を含めた詳細な地域情報があれば、これらも区別できますが、現地ラン園でも標高までは曖昧で、しばしばPhal. philippinensis名の株の中にはPhal. schilleiranaが混在していることがあります。その逆はこれまで経験がありません。昨年入荷した本種のロットにも夏期に1株Phal. schilllerianaが開花しました。現地ではPhal. schillerianaと同時入荷であったため、取り扱い過程で混入したものと思われます。そうした背景から昨年は開花確認まではと、このロットの販売を中止していました。下写真上段が今回開花した花でIsabela地域生息です。
通常本種のセパル・ペタルは全体が白色で、ラテラルセパル基部に赤い斑点が入ります。下写真では白色ベースのセパルペタルの基部に淡いピンク色が乗り、黄色の側弁とも調和して優雅さがあり美景です。下写真の花を見ると、本種をPhilippinensisと国名をつけた理由も分かるような気がします。
往々にしてこうしたピンクが混じる場合、台湾などで作られたPhal. schillerianaとの交雑種ではないかと疑うのですが、リップや側弁形状に、Phal. schillerianaの要素が見られず、純正のPhal. philippinensisであることを確認しました。
下段左はPhal. philippinensisの株それぞれで、全ての株で花茎が伸びており、今月末から来月にかけてが開花最盛期となります。葉のテキスチャーがそれぞれ異なるのは野生栽培株の特徴です。下段写真右の右端の株の葉は大理石模様が隠れた、本種としては極めて稀な紫檀色のソリッドタイプ、一方、写真左の右端の株の葉は濃緑色のソリッドタイプです。葉色の変化はPhal. sanderianaによく見られますが、花色と関わることがあり開花が待たれます。
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Phal. philippinensis |
Dendrobium trichostomum
orchidspecies.comでは栽培温度を冷(cold)、低(cool)、中(warm)、高温(hot)の4つに区分し、それぞれの区分の夜間平均温度を冷温では10-15℃(標高 >2,500m生息域相当)、低温14-18℃(標高 1,800-2,500m)、中温18-24℃(標高 1,000-1,800m)、高温24-30℃(<1,000m)と定義しています。一方、当サイトでは夜間平均温度を低温13-15℃、中温15-20℃、高温18℃の3区分としています。
多くのランはこれらの1つの区分温度内あるいは2つの区分に跨っての温度で栽培可能ですが、3区分全範囲においての、順化と年間を通しての生息(成長)可能な原種はほとんどいません。同一種で生息標高域が異なり、その環境に適応進化した種は僅かに見られるものの、同一株あるいは同一地域に生息する株が、いずれの区分の温度下に置かれても成長を続けられることは異例です。この例外種の一つがDen. trichostomumです。この種は低温(Den. vexillariousやDraculaなどの生息適応区)から高温(Phal. schilleriana、Vanda sanderianaの生息区)いずれの環境であっても、正しいかん水頻度や昼夜の適度な温度差があれば、新芽の発生や開花が見られ、栽培温度に起因するような成長障害や枯れる様態が見られません。いわゆる極めて温度に強い種と云うことになります。orchidspecies.comによると本種の生息域はニューギニア標高500-900mの丘陵林とされ、ニューギニアでのこの標高は高温で低温域ではありません。
当サイトでは本種を2015年スマトラ島からDen. spとして入手しました。これがスマトラ島か、ニューギニア生息種(ニューギニア種もスマトラ島サプライヤーを経由することがある)かは未確認です。入手時は種名不詳であったため、当初は低温室と中温室に置いて栽培をしており、いずれの環境においても成長に差が無く、ここ2年間ほどは本種のマーケット需要が減少したことで大半をバスケットの寄せ植えで高温室にて様態を見てきました。しかしこの環境でも問題は見られず、さらに不思議なのは低温室と高温室のいずれの株も開花期が一致することです。花寿命が1か月以上と長いこともあり、開花lはズレているものの開花期間が重複して、そのように見えるのかも知れませんが年に1-2回の開花を考えると、年間平均栽培温度が大きく異なる環境でのこの一致性はやはり不可解です。ちなみに開花期は主に冬季で、この時期の低・高温室の夜間平均温度差はそれぞれ13℃と18℃です。
ネット検索する限り、マーケットに見られる本種は全て実生(x selfやx sib)のようです。当サイトは全てが野生栽培株です。今回バスケットでの寄せ植えでは販売に適さないこともあり、また本種は半立ち性(新芽は上方に向かって伸長するものの、やがて茎が長くなるに従って垂れてくる性質))でポットの立植えは株が大きくなるとやがて茎を無理やり立たせる支持棒ばかりが目立ち、不自然となるため炭化コルクに植え替えを行いました。低温室の株はこれまでもヘゴ板付けとなっていたのでそのままです。写真上段は現在開花中の花で黄色と橙色が見られます。一見、Den. tiongiiに似た花序ですが、リップ中央弁の外周に細毛があるのが本種の特徴です。下段右は今回植え替えを行った一部を昨日(5日)撮影したものです。
現在開花中の花
下写真は現在(4日)開花中の花です。
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Den. roslii Malaysia |
Den. crocatum Malaysia |
Den. lancifolium New Guinea |
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Den. maraiparense Boneo Sabah |
Den. modestum Philippines |
Den. derryi Borneo |
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Den. schettleri Mindanao |
Den. trichostomum New Guinea |
Den. sp aff. endertii Sulawesi |
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Den. floresianum Flores Isd. |
Schenorchis buddleiflora Borneo |
Pleurothalis truncata Ecuador |
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Bulb. sp |
Bulb. loherianum |
Bulb. harbrotinum Borneo |
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Phal. equestris Mindanao |
Maxillaria paranaensis Rio de Janiero |
Trichoglottis latisepala Philippines |
続Dendrobium igneoniveum
昨年9月末頃から開花が始まり現在までの5ヵ月間近くDen. igneoniveumが咲き続けています。一向に開花期が終わる様子は無く、蕾を付けた茎が今だ多数の株で見られます。下写真はいずれも本日(2日)撮影したもので、1本の花軸に8輪が同時開花している株が2株あり、左写真はその一つです。花軸当たり8輪がこれまでで最も多い輪花数で、平均値は6輪です。ミズゴケを厚く敷いた炭化コルク付けで、濃緑色の葉色から当初低輝度が良いのではと思いましたが、現在は温室内の比較的輝度の高い場所での栽培です。
今期は植え付け後の初の開花期間であり、次期の開花期(今年の10月以降)には多くの株で1株当たり複数の疑似バルブからそれぞれ8輪の開花を期待しています。価格は3,500-4,000円としており引き合いが多いのでそれまで残っていればですが。
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Den. igneoniveum |
Bulbophyllum tenuifolium
Bulb. tenuifoliumはタイ、マレー半島(キャメロンハイランド)、スマトラ島、ボルネオ島など広く分布しています。下写真はフィリピンルソン島Aurora州の生息株です。花サイズがラテラルセパル左右のスパンNS(自然状態)サイズで8mmの小さな花ですが、左右ペタルの先端部に2つの斑点があり美形です。開花は午前中で午後は花を閉じます。orchidspecies.comには花サイズが1.8mmと記載されており、これは誤りです。最近はorchidspecies.comの記載ミスを指摘することが多く、あまり気分の良いものではありません。写真は本日(2日)撮影、株は昨年2月入手したもので初花となります。フィリピン生息種は標高500m以下とされ、高温のフィリピン現地でも開花していたことからも中温から高温タイプと思われます。写真の株はAeridesやVandaを栽培する高温室での栽培です。ネットでの国内マーケット情報は見られません。
Bulbophyllum inacootesiae
フィリピン・ミンダナオ島Bukidnonで収集され、2016年OrchideenJournalに発表されたバルボフィラムBulb. inacootesiaeで現在10株程に開花が始まりました。 当サイトでは先月の歳月記に記載したBulb. rugosum同様に中温室の中でも高温に近い場所で栽培をしています。本種は高輝度を好むようです。根は常に湿っていることが必要で、当サイトでは厚めにミズゴケを敷いた炭化コルクへの植え付けです。1年近い栽培で写真右に見られるのように良く成長しています。乾燥気味な環境ではミズゴケの量を増やすか、へゴ板やバスケット植えが良いと思います。花を見れば大半の人が入手したくなるバルボフィラムの一つですが、マニラ近郊のラン園によるとDen. deleoniiなどを含めミンダナオ島Bukidnon生息種の入荷は昨年来、途絶えているとのことです。