Phalenopsis micholizii

1.生息分布

フィリピン
(ミンダナオ島西部、Camarines Sur、Zamboanga)

2.生息環境

 海抜500m以下。温度19-32C。湿度75-85%。野生種の入手が最も困難な種。現在は人工培養による実生の入手が可能である。


3.形状

3-1 花


1. 花被片
 それぞれの花被片は基部がやや細い星形で無地である。写真のように花被片全体が真白いか、薄黄緑色がそれぞれの花被片の先端に入るものがある。リップの基部は黄色、側弁はオレンジ色。
花径(直径)は通常4cm前後であるが、5.5-6.0cmの大型のもの(写真上段右5.7cm)がある。微香ではあるが西瓜の香りがする。開花は花茎あたり1輪で、3-4本の花茎を着ける。よって同時には多くとも3-4輪程度である。初春および晩秋に開花。温度が夜間18C、昼間25-27Cが続くと花茎が発生する。花名は収集家で最初の発見者W. Micholitz名に由来する。

Flowers

2. リップおよびカルス

 リップ中央弁は中央部から先端に向かって菱形形状で、その面上に繊毛が密生する。リップ基部寄りの繊毛も黄色となる場合がある。カルスは2組構造で、posteriorおよびanteriorともに2分岐した歯状突起をもつ。posteriorカルスは写真右に見られるように非常に小さな突起である。

Lip and Callus

3-2さく果

 さく果は4-5cmで短い。右写真は1か月後の状態。花被片は交配後、黄緑色に変色してゆくがそのまま残る。経験からは胡蝶蘭のなかで最も受粉率が低い種で、自家交配の不和合性が感じられる。

Seed Capsule

3-3 変種および地域変異

 花被片の基部が互いにオーバーラップした丸みのある形状も見られるが、特に変種は知られていない。

3-4 葉

 葉は胡蝶蘭のなかでは中厚で蝋質、茄形(長楕円形もある)、実生株で葉長12-15cm、幅5-6cm。6-8枚程度着ける。野生株ではさらに大きくなると思われる。写真はプラスチック鉢にクリプトモスの植え付けである。経験からは素焼き鉢とミズゴケは成長が芳しくなく、ヘゴチップと半透明プラスチック、またクリプトモスとスリット入りプラスチック鉢が調子が良い。

Leaves

3-4 花茎

 花茎は1cm前後(さく果写真参照)で、この短い花茎が本種の特徴でもある。1株に4茎ほどとなるが1茎あたり1-2輪花ため多花系ではない。

3-5 根

 銀白色で、Phal. violacea同様に太い。光が入らないプラスチック鉢では白く、半島プラスチックでは緑色を帯びる。根は多く長く伸長する。

4.育成

  1. コンポスト

    コンポスト 適応性 管理難度 備考(注意事項)
    コルク、ヘゴ、バスケット
    ミズゴケ 素焼き
    クリプトモス プラスチック スリット入り
    ヘゴチップ 半透明プラスチック

  2. 栽培難易度
     植え込み材の交換時に、それまでの素材と異なるもので植え替えたとき、1-2カ月後に全ての株に張りがなくなり、そのままでは枯れるような症状が現れた経験があり、植え込み材の変更を伴う移植を嫌うようであり注意が必要と思われる。本種ほどではないが同じような難移植性の性質はPhal. maculataPhal. cochlearisにも見られる。

  3. 温度照明
     胡蝶蘭のなかではやや難しい栽培とされるが、植込み材と灌水の関係が原因ではないかと思われる。ミズゴケと素焼き鉢では成長が良くなかった。現在は主にクリプトモスとスリット入りプラスチック鉢を用いている。フラスコ出しから1年近くやや暗い場所で栽培したが成長が緩慢で、Phal. cornu-cerviと同じ比較的高い輝度環境に移し栽培したところ急成長した経験がある。胡蝶蘭の中では高輝度が良いと思われる。一方、猛暑下でのエアコンによる急激な温度変化の繰り返しで葉が落ちたことがあり、周期的な急激な温度変化は避けることが好ましい。

  4. 開花
     夜間18-20Cで昼間の温度が25℃程度が1か月以上続くと花茎が発生する。昼間の温度が28C以上の高温条件では花茎は発生しない。室内あるいは温室での栽培で、この条件が得られるのは晩秋から早春となる。よって開花は一般に初冬あるいは5-6月となる。株の開花期のバラツキは見られない。

  5. 施肥
    特記すべき事項はない。

  6. 病害虫
    病害虫には強い種である。
 

5.特記事項

 野生種は入手難。生息地であるミンダナオ島西部の治安状況で採取が困難と思われる。マニラでも野生種は数人のみが所有とのこと。タイや台湾でフラスコ苗が販売されており、今日では希少種でなくなったが、やや高価である。