Phalaenopsis javanica

1.生息分布

    
インドネシア(Java島南 Cianjurおよび北部)

2.生息環境

 海抜700m-1000m(700m以下の説がある)。温度23-32C。湿度70-80%。すでに最初に発見された生息地では乱獲のため絶滅したと言われる。


3.形状

3-1 花


1. 花被片
 花径は2.5-3.0cmで抱え(前かがみ)咲。花被片の色合いは多様で、ストライプの赤味の強いdark(上段左端), ベースが黄味(上段中央), ストライプの薄れた(上段右)、さらにベースが白でストライプが薄紫(下段中央と右)がある。花はPhal. appendiculataと同じように葉の下で咲く。花茎に2-3輪、花茎は3-4本発生する。 花期は春と秋。香りは上品な良い香りがする。花名はJava島産という意味。

Flowers

2. リップおよびカルス
 リップ中央弁は基部が白色、先に向かって紫色、青紫あるいは紅色で、先端には僅かな繊毛がある。側弁は黄色の斑。カルスは2組でanteriorおよびposteriorともに先端を2分岐した歯状突起をもつ。posteriorカルスがanteriorカルス上にオーバーラップするように大きく突き出しているがこれは他の種にはない特徴である。

Lip and Callus

3-2 さく果

 さく果は6筋の溝をもち、先太りの形状である。花被片部分は枯れ落ちないで緑色を保つ。交配難易度は高くないように思われる。右写真はフラスコ出し6か月後の自家交配の実生苗。

Seed Capsule
Deflask Seedling

3-3 変種および地域変異

1. Phal. javanica f. alba
 花被弁の赤褐色のストライプや斑点が消えたフォーム。

Phal. javanica f. alba

2. Phal. javanica f. flava
 flavaフォームで花被片のベース色全体が黄色。

Phal. javanica f. flava

3-4 葉

 葉は楕円卵形で長さ13‐14cm、幅5‐6cmの幅広である。厚みは胡蝶蘭の中では薄く、湿潤な場所に生息していると思われる。一部の株には葉がアンジュレーション(波打つ)をもつものがある。下写真の上段は実生、下段は野生種。

Leaves

3-5 花茎

 花茎は葉長程度かそれ以下の長さである。3‐4本を同時に発生し、それぞれの茎に2-3輪の花を付ける。花は2週間程の間隔で2-3回、合わせて2-3ヶ月間順次、咲き続ける。開花終了で花茎をカットした方が、翌年の新しい茎の花着きが良くなる。Phal. modesta, Phal. inscriptiosinensis, Phal. appendiculataなど葉の薄い種の共通した特徴として花茎は葉の長さ以上にはならず、葉の下に伸び、花は葉裏で開花する。

Inflorescences

3-6 根

 銀鼠色で根冠は黄緑色から薄茶。花茎3-5項の画像を参照。コンポストは選ばないが、ヘゴ板付けでの根の動きは最も活発である。

4.育成

  1. コンポスト

    コンポスト 適応性 管理難度 備考(注意事項)
    コルク、ヘゴ、バスケット   容易  

  2. 栽培難易度
    容易。半透明プラスチックポットにヘゴチップでもよく成長するが花が葉下で開花するため観賞に適さない。

  3. 温度照明
    高輝度と書かれたネット情報があるが誤りで、低輝度が好ましい。温度範囲は広い。

  4. 開花
    温室では冬季(1月)が開花最盛期となっている。一般的には不定期である。

  5. 施肥
    特記すべき事項はない。

  6. 病害虫
    病害虫には強い種である。

5.特記事項

 flavaやalbaと銘打った株が見られるが、交配が何代にもわたって交配された結果と思われる多様なフォームが多く、固定されていないものが多い(3-2項のalbaフォームは野生種)。また同一株においても赤や黄色の色合いは年によって変化が見られる。胡蝶蘭のなかでは最も良い香りをもつ。但し多くは開花から数日間の晴天日の午前中に限られる。