Dendrobium taurinum (Section Spatulata)生息環境・生態 生息域: フィリピン・ルソン島(Leguna, Zambalesなど)、Negros島、ミンダナオ島(Bukidnonなど)の標高0 - 300m温度: 25 - 31℃ 湿度: 75 - 80% 輝度: 中 - 高輝度 生態: 着生 香り: 無し 開花期: 春 栽培環境 栽培温度範囲: 18 - 34℃栽培湿度: 80%以上(夜間) 輝度: 中 - 高輝度 特性: 本種は新芽が疑似バルブ(茎)根元の1つ上の節から上方に向かって伸長することから、新しいバルブはやがて植込み材から離れていく。この結果、鉢植えでは2年もすると植付け後に発生した新芽の大半の根は空中に晒されることになり、こうした根の先端(根冠)は、特に湿度が低い環境ではやがて枯れ始め、次第に株の成長は止まってしまう。一方、新しいバルブの根を植込み材の中に収めようとすれば、その形状故に古いバルブは植込み材に埋まることになる。この問題を避ける手段は垂直支持材に取り付けることである。垂直支持材の場合の問題は、本種のバルブは成長すると1mを超えることと、根周りが乾燥しやすくなることから、そのサイズに適応した支持材と共に、栽培環境として高湿度(夜間)環境が必要となる。 Spatulata節は太く長い根を多数発生することから大株にするには根張り空間を広くすることが有効であり、Spatulata24種の栽培ではその8割をプラスチック深鉢にクリプトモスミックスの植え付けとしている。しかし本種については前記した疑似バルブ成長の特性からDen. leoprinumなどと共に植付け材は垂直支持材としている。支持材の中ではトリカルネット筒が根周りの湿度維持に最も優れる。下写真上段左は、本種の新しい疑似バルブ(茎)が、それぞれ前の茎の根元1節上の位置から立ち上がり伸長していることを示した画像。中央は本種の2年間の栽培による炭化コルクで、根を覆っていたミズゴケを洗い流した根の活着様態。新しい茎の根の多くは空中に伸びている。右は左写真の株を炭化コルクから取り外し、枯れた古い根を取り除き、根周りを洗浄した画像。下段左はその株をトリカルネット筒に取り付ける前の位置決め。この後、ミズゴケで根を覆い、園芸用1mm径アルミ線を巻き固定する。中央及び右は本種3株の取付完了写真。トリカルネット筒は50㎝。写真の株はフィリピンNegros島生息株である。
管理 難易度: J. .Cootes Philippine Native Orchid Species、2011によれば、本種の栽培は極めて難しく、野生株の栽培は控え、育てるのであればタネから育成した実生株とすべきと記載されている。これまで30株程の本種野生株の栽培経験からは、本種は移植に弱く細菌性腐敗病に罹り易い。これを防ぐには移植や植替え時に抗細菌薬、例えばナレート、バリダシンあるいはスターナなどを規定希釈で散布し、1 - 2週間後にも2回目の散布を行うことが有効である。この処理によりこれまで株が枯れた経験はない。その後の栽培は他のSpatulata節と比較し、弱いと云った印象はない。こうしたことから栽培初心者にとっては順化処理の完了した株を入手することが好ましい。植付け
病害虫防除 移植や植え替え時の細菌性腐敗病に対する防除処理が必要。病害虫防除はこちらの情報を参照。 関連サイト
特記事項 前記J. Cootes著書には本種はフィリピン固有種とされているが、幾つかのサイトには本種がインドネシア領マルク諸島にも生息するとされている。マルク諸島生息種については未確認である。 |
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