11月
続 Paphiopedilum sanderianum 前回1m近い長さのペタルを持つPaph. sanderianumを取り上げましたが、その後の伸長を含め再度、現在の状況を説明します。下写真上段左が現在(28日)の様子です。1本の花茎に3輪が開花しています。最初の開花は今月10日で、畳まれたような左右のペタルは4日後に互いにカールしながらほぼ垂直に垂り、14日に撮影した花が前回の画像で、ペタルの長さは85㎝でした。その後、凡そ一週間後には93㎝になり、27日には96㎝に、2番目に開花した花は88㎝、3番目が84㎝で現在に至っています。最初の開花から17日間でペタルの伸長は落着いた様子です。この株は6年以上前にプラスチックポットに植付けたもので、直近の3-4年間に肥料を与えた記憶がありません。来春の株分け・植替え後には肥料を与えることで、次回はペタル1m越えも難しくないと思います。ペタルが1mにもなるとかなり見栄えがし、適切にかん水を行えば最後の花が枯れるまでに1か月近い長寿命開花種でもあり、またペタル1m超えの大株も栽培していることから、機会があればタイミングを合わせてラン展に参考出品したいところです。本株も下写真に見られるように大株で、前回4株と記載しましたが、現在開花中の株を除き5株からなることが分かりました。下写真下段はそれらを角度を変え撮影した画像です。番号1と4はすでにBS株となっており,、2と3は中サイズ、5はNBS株です。これまでの観察からペタルの長さは株固有の特性であることから、それぞれの分け株もその個性を引継ぐと思います。
初開花のBulbophyllum sp 2018年マレーシアPutrajaya花展でBulb.spとして入手したパプアニューギニア生息とされるバルボフィラムが、栽培開始から3年を経て、ようやく開花しました。始めて見る花で種名は不明です。ネットで調べたところ該当種は2018年3月のOrchid Forum に "Bulbophyllum sp. Papua"として花画像がある以外、他には見当たりません。入手から3年が経過しており、すでに登録済みかも知れません。開花までに3年を要したのは、中温室において2年間栽培を続けたものの開花がなく、昨年末に高温室の比較的輝度の高い場所への移動と最近の植替えによるものです。この栽培環境の変更は、2018年Putrajayaで入手したパプアニューギニアからの種名不詳種として今年4月の歳月記で取り上げたケースと同じで、花色やサイズは異なるもののリップ形状は似ており、いずれもPolymeres節Bulb. quadrangulareの近縁種と思います。本種の花サイズは5 - 6㎝で、早朝に開花し昼前には花を閉じることから、雲霧林生息種と推定しています。本種の詳細は改版したトップページバルボフィラム・メニューにsp32として追加しました。
現在開花中のバルボフィラム3種 現在開花中の、一株から複数の花茎が出ているバルボフィラム3種を撮影しました。バルボフィラムサムネールからリンクされる詳細情報ページにも左右の下画像を更新しました。
あまり登場しない現在開花中のデンドロビウム3種 いずれも久々の登場です。写真左のDen. flos_wanuaはボルネオKalimantan、また中央のDen. tomanienseはSabah州生息でそれぞれ2011年と2010年に発表された新種です。特にDen. tomanienseは、ネット検索では当サイトの画像がトップに出る程、ネット上では画像および情報が無く、本種に花形状が似たDen. squarrosumと共に、さらに調べが必要かも知れません。これらについては歳月記2018年12月のページのトップで取り上げています。
現在(21日)開花中のセロジネと南米種 Coel. palawanensisは今年7月の植え替えから初の開花となります。Coel. exalataは中温タイプで、セパルペタル全てが緑色のフォームが多いのですが、下写真に見られるようなドーサルセパルとペタルがやや茶色を帯びたタイプもあります。また右写真のCoel. dayanaは、1年半前に株分けした新株をBSサイズになるまでと、取り敢えずクリプトモスとミズゴケミックスで植付けたプラスチックポットをベンチの上に置き栽培していたため、20輪程の花がベンチの上でクシャクシャの状態で開花していることが今週分かり、ポットをバスケットに乗せて吊り下げたものです。花軸の中央から先端部が撚れているのはそのせいです。開花後にはバスケットに植替える予定です。下段は全て南米Ecuadorの生息種です。Anguloa eburneaは標高2,000mクラスのクールタイプ種で8㎝を超える大きな白い花と、葉も50㎝程と大きく、高山植物としてはかなり見応えがあります。匂いは強く、orchidspecies.comではバニラの香りとのことですが、良い香りではあるものの甘さは感じません。Stanhopea annulataは2輪咲きの中 - 高温タイプ種です。当サイトでは花は倒立して咲いています。
Bulbophyllum inunctum 10株程のBulb. inunctumが最花期を迎えています。本種はフィリピンとマレーシアタイプがありこれらが同時に開花しています。花サイズが7-8㎝と大きく、多数が開花するとカラフルで迫力があります。バルボフィラムとしては少数派となりますが匂いはありません。多くの昆虫が認識できるとされる黄色の花は、エネルギーが必要な匂いでポリネータ(花粉媒介昆虫)を呼び寄せる必要がないのか、匂いが無かったり微香が多いような気がします。
続 Bulbophyllum medusae 現在開花中のBulb. medusaeを前項で取り上げましたが、開花した花の長さと花軸(茎)当たりの輪花数がネットで見る情報と比較して特徴があり、再度度取り上げてみました。下写真左は開花中の本種で、写真に収まらない花を含めると17本の花軸があり、写真中央では花は20㎝程の長さとなっています。また右写真からは花軸当たりの輪花(花柄)数がかなり多い様子が分かります。この株は5年前にマレーシア・プトラジャヤ花展で入手した大きなヘゴブロックに植付けられていたクラスター株でした。マレーシアラン園では、植物検疫が厳しい米国やヨーロッパ等への輸出についてはベアールートでの出荷梱包が原則であり、植込み材や支持材は全て取外すのが慣例です。しかし日本は土類はダメですが、ヘゴやミズゴケなどの植付け材は問題がなく、当サイトは、特にクラスター株については、植付け材はそのままにして梱包するよう園主に要請しています。これは長年成長し活着してきた大株を無傷で支持材から取外すことは作業者にとって容易ではなく、出荷段階で通常1株当たり5-10バルブ程に切断され、小さい株になるのを避けるためです。この子株になった株を集め1株に束ねた株を現地では、クラスター株ではなくクランプ株と云います。これでは小株を多数購入したことと変わりません。何よりも大株である価値が損なわれます。しかしこの時は、当方の要望が園主から作業スタッフに伝わっていなかったようで、気が付いた時にはすでに大小さまざまなサイズに切り取られていました。止む無くこれらを持ち帰りましたが、その中でも最もバルブ数の多い株を2年程浜松にて栽培した後、1mのヘゴ板に植え替えた株が今回の開花株です。 しかし花サイズが大きく、多輪花の特徴を持つ本種は大株であることで、その迫力のある豪華さと美しさが引立つと考え、これらクランプ株を2株(写真の株を含めると3株)に、寄せ植え仕立てにすることにしました。元々は1株のクラスターであったことを考えれば元の姿に戻りつつあることになります。
後記: 上記に見られる写真の状態が13日より始まり、やがて萎れ始めたのが22日で花寿命は10日となりました。本種の花寿命は短いとの説がありますが、短命と聞くと1日花あるいは精々3日花を想像してしまいますが、この10日間を短期間とすると、多くのランは短命開花種になってしまいます。こうした情報は、おそらく本種のような密集した細長い花故に、捩れを避けるため散水を控えることで株が乾燥気味となり、花が短命となることが背景にあるのではないかと思います。花に直接散水が出来ないこうした種は花を避け、しかし開花中もいつも通りの頻度で株の根元に水を与えるなどの工夫が必要です。 Bulbophyllum改版ページ 本サイトトップページからアクセスするBulbophyllumのページ画像を更新しました。現時点では取り敢えず242種についての改版・追加とし、全種合計で1,800枚程の写真の内、数枚を除いて全て当サイトが栽培を通して得た画像としました。そのためサプライヤーから提供された花写真はあるものの、開花が未確認の種(凡そ15種)は開花確認まで掲載をペンディングとしました。これらと現在栽培中の未開花種名不詳種を含めた50種程のバルボフィラムは花写真が得られ次第、順次追加する予定です。今回の改版ページでは1種当たりの写真は平均7枚となっています。おそらく今後1-2年間で平均10枚/種になると思います。それは単に該当種の花や株画像だけでなく、栽培者としてこれまでの経験から、改版ページの一部の種ではすでに行っていますが、類似種があって同定が難しい種については類似種それぞれの特徴点の比較画像が重要と思い、これらを加えることにしたためです。また今回のそれぞれの種のページにある”リンク 栽培や生態について”は、これまで10年近く歳月記に記載してきた該当する種に関する話題等のページにそれぞれ順次リンクする予定です。この結果一般公開情報としては、栽培者でなければ撮影困難な視点からの画像や、前記した同定のための比較画像などを纏めた、世界に例のない原種情報発信サイトにしたいと考えています。一方、実体験に基づく栽培を中心とした詳細情報また情報交換等は会員制の一般非公開のページとして現在準備中です。 Bulbophyllumの次はAerides/Vandaを更新予定です。その後、セロジネ、デンドロビウム、胡蝶蘭、その他と続きます。種としてはデンドロビウムが310種で最も多くなっています。なにせ画像枚数や、それぞれの種の情報収集量が膨大なためページの立ち上げに時間がかかっていますが、こうした情報モデルが原種愛好家にお役に立てば幸いです。 現在開花中の3種 現在開花中の3種を本日(14日)撮影しました。Paph. sanderianumはペタルの長さが特徴で、今回開花の下写真の株のペタル長は85㎝(後述:20日には93㎝)でした。ペタル1m超えも1株栽培しています。毎年東京ドーム蘭展に出店している米国OrchidInnの5年ほど前のカタログに、1m長の本種の価格が日本円で150万円であったことには驚きましたが、現在の価格は不明です。一般種では通常50-60㎝までです。現在栽培している1m超えの株では3株が、また下写真の株には4株の成長芽があり、これらはいずれも、すでにBSに近いサイズになっていることから来年春には株分けを予定しています。下写真のペタル85㎝長の株を含めPaph. sanderianumには3年以上肥料を与えていないことから、小まめに施肥を続ければ85㎝株も1mを超えると思います。写真中央のVanda luzonicaは大型木製バスケットを縦に2個つないで深いバスケットにしてクリプトモスで植付けており、現在主茎は2m近くまで伸長、2つの成長芽も付けています。こちらは今月中に株分けする予定です。右のBulb.medusaeは1m長のヘゴ板に取り付けたクラスター株でセパル・ペタルの基部に斑点の無い総白色のアルバタイプです。斑点のあるタイプを探したもののコロナ前のマレーシアのマーケットでは何故か見つかりませんでした。
Bulbophyllum longissimum タイ、マレー半島、ボルネオ島の低地に生息するBulb. longissimumが現在(4日)開花中です。orchidspecies.comによると花サイズは’to about 11" 【37.5cm】’とあります。はて11インチは27.94㎝ (1インチ=2.54㎝として)であり、逆に37.5㎝は14.7インチでこの記載は換算ミスではと。と云うのも今回、浜松温室で開花した花を見て、ラテラルセパルのあまりの長さに驚き、メジャーで測ったところ37㎝ほどあり、ではorchidspecies.comでの花サイズ情報は如何にとページアクセスしたところ37.5㎝とあり、なるほどほぼ同じサイズかと一時は納得したものの、1インチは2.5㎝の筈ではなかったか、ではこの換算表記は?と気付いた訳です。to about 11"を和訳すれば’およそ11インチまで’となり、今回の花は’to about’からさらに10㎝も長く、希少株とも思われます。下写真は今回開花した株と花で3-4日の撮影です。この株は杉皮板に5年以上、施肥もなく放置され、4ヶ月ほど前に炭化コルク+ヤシ繊維マット支持材に植替えたばかりです。これまでの当サイトで栽培中の本種の花サイズは25-30㎝前後で、37㎝は初めての長さとなります。
Bulbophyllum recurvilabreに見る成長 今年4月に、ブロックバークに植替えたBulb. recurvilabreのその後を7月の歳月記で紹介しました。それからさらに3か月が経ち、再び株の成長具合を撮影しました。下写真の上段左と中央は植替えた株とは別株ですが現在開花中のBulb. recurvilabreです。一本の花軸に5輪の開花は珍しいことから撮影しました。上段写真右は4月植替え直後の株の様子です。下段左は植替えから3か月間経過後の新芽を示したものです。これら新芽にはまだバルブが形成されておらず、芽の伸長過程にあります。写真中央は昨日3日の撮影で、番号を付けた新芽1-4はバルブが形成されています。一方、番号5は数ミリの発芽直後の芽でしたが、こちらは枯れました。その代わりに隣接するバルブから新たな芽(new)が発生しています。右写真は3と4番目の基部が中央写真では見にくいため、角度を換えての撮影です。このペースで成長すれば、植替えから1年となる来年4月頃には5つの新バルブも充実し、それらに新たな芽が発生すると思われます。
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