4月
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Bulb. sp Lanao Mindanao |
Nepenthes truncata捕虫嚢
先月、開花中の花33種の中でNepenthes truncataの画像を掲載しました。メジャーを入れてなかったので再度、開花中の別花を下写真左に示します。Nepenthes truncataの捕虫嚢は45㎝程になるそうです。5年間ほど肥料を与えていなかったので今年からは液肥を与え、現在から10㎝プラスの45㎝サイズを目指そうと思います。株は現在1.2mで葉サイズは20㎝x32㎝程です。ところで昨年9月、下写真右のblack truncataが見つかったがどうかと、フィリピンのラン園からメールをもらいました。正しい種名はNepenthes robcantleyiの黒色フォームとのことです。近年、野生種の輸出にはフィリピン農業省が厳しくなっており、CITES認可(Nepenthes属は現在CITES AppendexIIでフィリピンからの輸出の場合、DENR発行のCITES書類が必要)が得られれば購入するとラン園に伝えました。しかしCITESの取得は現在無理だそうで入手を控えました。1か月後に、そのタネであれば発送可能とのメールをもらいましたが、そこで冗談半分に、私を含め知人は残りの人生に余裕のある人は少なく、タネから捕虫嚢30㎝以上のtruncata並に育てるまでの歳月を考えると、さすがにタネからはと断りました。いずれにしてもコロナが終息する頃にはCITES認可が得られるようになると思われ、それまで待つしかありません。しかし噂ですが2-3ヶ国ですでに、この黒色フォームが販売されているそうで、どのようにして輸出認可が下りたのか不思議です。Nepenthes truncata | Nepenthes robcantleyi |
パプアニューギニア生息の種名不詳バルボフィラム
2018年マレーシアPutrajaya花博で、パプアニューギニア生息のBulb. spとして入手した、Polymeres節と思われる種名不詳種が開花しました。下写真がその花で撮影は25日です。花形状はBulb. stomiiと似ていますが、色とリップ形状が異なり、またBulb. quadrangulareとは、orchidspecies.comによると花サイズは2㎝とあり、今回浜松で開花した花は写真が示すように縦・横幅が凡そ5㎝ x 6cmの大型で、サイズが異なります。一方、花は午前中に開花し、午後にはセパルが閉じることから、昨年12月の歳月記で取り上げたインドネシアからのBulb. spと似ているものの、こちらともリップ形状は大きく異なります。ネットで調査中ですが、今のところ該当種が見つからず、種名は不明です。入手時はパプアニューギニアとのことで低温室で栽培、その1年後には中温室に移動しましたが成長が見られず、昨年秋に高温室の比較的輝度の高い場所に移動しての開花となりました。入手時は3-4バルブ程の小さなサイズが3株で、これを纏めて1枚の炭化コルクに取り付けており、高温室に移動後に株それぞれで2-3バルブ増えたため、花後には株分けして植替えを行う予定です。Bulb. sp Papua New Guinea |
胡蝶蘭5種
本日(25日)早朝に、胡蝶蘭原種5種を撮影しました。胡蝶蘭原種はコロナが落着けば最初に全種をコレクションする計画ですが、昨日のニュースによると、静岡では16歳以上のワクチン接種終了の目途が来年2月頃とのことで、さてマレーシアやフィリピンはどうかと。マレーシアは来年内にはと期待する一方で、フィリピンに至っては生活環境や現在のフィリピン変異ウイルスを考えると目途が立たず、今後2年近くは渡航が困難と思われます。EMSの再開もマレーシア、フィリピン、インドネシア共に年内の再開は難しい気がしています。Phal. phillipinensis | Phal. mariae | |
Phal. cornin-giana | Phal. lueddemanniana | Phal. amabilis Java |
最近の植替え
3-4月は植替え作業が忙しく、同時に多様な植え付け方法を試みています。下左写真は左から2株がBulb. anceps、中央がPhal. hieroglyphica、右2株がPhal. inscriptiosinensisです。 左のBulb. ancepsは、通常1個のバルブサイズは3-4㎝ですが、7.5㎝となる変種株です。またPhal. hieroglyphicaは通常、無臭か微香ですが、1m程離れた位置からも分かる良い香りを漂わせる希少株で、両者は特別に50㎝トリカルネット筒に取り付けています。またPhal. inscriptiosinensisはクリプトモスミックスで根を包み、さらにこれを50㎝のヤシ繊維マットで包んだものです。いずれも伸びしろを、株サイズの数倍としていますが、これは大株仕立てにする目論見からです。一方、右写真は炭化コルクに同サイズのヤシ繊維マットを置き、その上にミズゴケを敷いた、全て種名不詳の高温タイプのセロジネで、種数としては5種相当を植付けています。年内の開花を期待しての植替えです。Bulb. anceps, Phal. hieroglyphica, Phal. inscriptiosinensis | Coel. sp 5種 |
Bulbophyllum vinaceum
ボルネオ島生息の本種はorchidspecies.comに見られるような花色が濃い赤紫色から、赤褐色まで個体差があります。今回かなり濃赤褐色の花が開花したことと、この株の半分程がコルクからはみ出して(左写真)いるため植替えを行いました。植替えは大株になることを目論み、支持材は大きな伸びしろ面積と、長時間の保湿力を高めるため60㎝長の炭化コルクに同サイズのヤシ繊維マットを置き、その上をミズゴケで覆っています。Bulb. vinaceum (植え替え前の株と花) | 60㎝ x 12㎝炭化コルク・ヤシ繊維マット植付け |
(続)Bulbophyllum tollenoniferum
前項で本種名の株にBulb. macranthumがミスラベルで開花したことを報告しました。本日早朝、入荷から2年目でやっと種名通りの花が開花しました。下写真は23日早朝撮影の本種です。柑橘系の甘い香りがします。再度前回開花したBulb. macranthumと株形状を比べましたが、ボルネオ島のBulb. macranthumとNew Guineaとの違いは、葉形状から容易に分かりますが、同じNew Guinea生息種同士では種別は難しく、どうやらBulb. macranthumが紛れ込んだようです。10株程ある中の多くのバルブが炭化コルクからはみ出しており、近々植え替えが必要となっています。Bulb. tollenoniferum |
Bulbophyllum anceps
昨年10月の歳月記に、炭化コルクからトリカルネット筒に植え替えしたBulb. ancepsを取り上げました。それから半年近くが経ち、今月に入り開花が始まりました。ボルネオ島低地に生息する本種は、扁平のバルブを支持材に密着させ、常に先頭から2-3バブルのみに葉を残して古い葉を落としながら伸長していきます。写真左が今回開花の画像です。花は2㎝程と小型ですが、中央写真のようにラテラルセパルがドットとライン及び上記リンク先に見られる両模様をミックスした3つのフォームがあり、花茎当たり3-4輪、大株になると一株には3-4本の花茎を付けるため、華やかになります。花は無臭です。開花にはバルブサイズが3㎝以上、5バルブ程が必要で、先頭バルブから3バルブ程後ろのバルブに花茎がしばしば発生します。高温タイプで栽培は容易です。Bulb. anceps Borneo |
標高2,000m級に生息するProsthechea pamplonense
Coolタイプよりさらに低温のColdタイプであるベネズエラおよびエクアドル標高2000m級の高山に生息する本種は、その低温管理から敬遠されるのかマーケット情報はほとんど見られません。ドラキュラ属のコールドタイプと同じような栽培環境で、且つ株(背丈)はかなり大きくなり、また花は地味ともなれば興味を持たれないのは無理のないことかも知れません。ここで取り上げたのは、1か月以上続く開花期間中のその香りです。2m程離れた位置からも思わず近づきたくなるほどの良い香りで、これまでカトレアを含め様々な花の香りを体験してきましたが、トップクラスの個性のある、おそらく2,000m級高山でこの香りに包まれれば、登山の疲労も忘れるのではと思う程です。コロナが終息し、開花のタイミングが合えばラン展に出品したい原種です。Psh. pamplonense |
葉の幅広なCleisocentron spの開花
2016年と2017年にボルネオ島生息の葉幅の広いCleisocentronを入手し、種名不詳種として栽培・販売をしてきましたが、生息標高情報が無いことからClctn, gokusingiiと同じ中温室にて当初は素焼き鉢にミズゴケ、1昨年から炭化コルクで栽培を続けてきました。入手から4年経過し今週やっと初花が得られました。現在10株程を栽培していますが、ようやく本種の栽培法が分かるようになり、1昨年あたりから成長が見られるようになっています。Clctn. abasiiも10株ほど栽培しており、こちらも現在成長が活発で年内の開花を期待しているところです。Clctn. sp wide leaf | ||
Clctn. gokusingii | ||
Clctn. merrillianum |
Clctn. sp wide leaf | Clctn. gokusingii | Clctn. merrillianum | Clctn. abasii |
植替え期
3月から4月は多くのランが開花し、また新芽や新根の発生も盛んで植替えの適期となります。当サイトでは栽培する属種が多く、全てのランを適期に合わせて植替える余裕がなく、年中植替えを行っているものの、それでもこの時期は植替え作業に一層追われます。そうした中で最近は植付け方法の新しい試みを盛んに進めています。その背景にあるのは当サイトでの栽培種の中心が、人工的に改良された交配種ではなく原種であることから、花のみの観賞だけでなく、属種の生態(自然体の姿)にも興味があるからです。栽培を初めた頃は定石通り、素焼き鉢にミズゴケの組み合わせでした。しかし、ラン生息地でのラン園や趣味家宅を頻繁に訪問することで認識を新たにしたのは、彼らの栽培ではベンチ(鉢を置くテーブル)上で栽培されているランは地生ランとフラスコ苗あるいは台湾等から輸入された交配種だけで、着生ラン原種は例外が無い程、吊り下げられた取付材、バスケットあるいは庭木などに植付けられている光景でした。彼らに聞くと、原種は花、花軸、葉、茎、根など全ての調和が美しいとのことで、国内で見られるような、地生、着生に関わらず、殆どのランは素焼き鉢にミズゴケか、プラスチック鉢にバークでの植込みで、株が大きくなると支持棒を何本も鉢に立てて株を直立させた姿、これは限られた栽培スペース上の制約から止むを得ないことでもありますが、とは違っていました。花のみの色合いや形を楽しむのか、花の開花した自然体の株姿を楽しむのかと、少々哲学的ですが考えさせられ、それ以来、当サイトでも着生ランの栽培は吊り下げ栽培が中心となりました。これが12年ほど前のことです。現在(14日)開花中の花
写真左のBulb. kubahenseは14日早朝の撮影です。ヘゴ板に取り付けた株で写真は1つの花茎に25輪程の開花となっています。中央は現在が最花期のDen. rindjanienseです。右は開花期が間もなく終るPhal. schillerianaです。開花後には20株ある半数近くをトリカルネット筒に植え替える予定です。Bulb. kubahense Sarawak Borneo | Den. rindjaniense Lombok島 | Phal. schilleriana Real Quezon Luzon |
現在(9日)開花中の花
この時期は多数の種が開花していますが、8種を選び撮影しました。Phal. philippinensis Nueva Vizcaya Luzon | Den. deleonii Bukidnon Mindanao | |
Den. crocatum Peninsula Malaysia | Den. maraiparense Sabah Borneo | Den. aurantiflammeum Borneo |
Dendrochilum coccineum Surigao Mindanao | Bulb. callichroma Irian Jaya New Guinea | Bulb. inacootesii Bukidnon Mindanao |
Bulbophyllum macranthumとtollenoniferum
2019年春、パプアニューギニア生息のBulb. tollenoniferumをインドネシアからマレーシア経由で入手し、これを50㎝長の炭化コルクに取り付けた画像を2019年5月に紹介しました。高温タイプとされるこの株は成長が活発で、2年で20㎝以上あった取付材の伸びしろ分を超える程になり、今月に入りやっと1株に初めての蕾が付き、昨日(8日)早朝開花がありました。しかし種名とは異なるBulb. macranthumが開花し、ミスラベルでした。マレーシアラン園はインドネシアのサプライヤーからの入荷時のラベルのまま、当方に販売したことになります。なぜ最初のサプライヤーはBulb. tollenoniferumとmacranthumを間違えたのか、この両種をネットで調べてみることにしました。結果、幾つか共通点があり、生息地が同じパプアニューギニアであること、両者は同じSestochilus節であり、花は倒立して開花し、サイズも5㎝とほぼ同じであること、リゾームの太く長い形状が似ていることなどが上げられます。よく見ると、同節故か花形状も似ています。しかし花色はBulb. tollenoniferumはゴールド一色である一方、Bulb. macranthumはカラフルで全く異なります。ミス原因の可能性としては、株が似ていたためか、今回開花の株も前記のBulb. venulosumのケースと同様に、たまたま本物の株の中に混ざってしまったものか、あるいは可能性は少ないものの、Bulb. macranthumのaureaフォームを見て、ロットごとBulb. tollenoniferumと思ったか、いずれにしても他株の開花待ちとなります。下写真は今回開花のBulb. macranthumで、花は自然体の倒立のままで8日の撮影です。Bulb. macranthum |
Bulb. macranthum Papua New Guinea | Bulb. macranthum Borneo |
現在開花中のDendrobium calicopisとBulbophyllum venulosum
Den. calicopisはこれまで秋でしたが、今年は春にも開花となりました。本種はトリカルネットに植え替えしてから5ヶ月程経過します。この時期故か、フクシア(赤紫)色が秋の開花に比べてやや濃い印象です。一方、中央と右写真は当サイトで初めて開花するBulb. venulosumです。ボルネオ島Sabah州低地生息種で、2008年登録の比較的新しいバルボフィラムです。2017年10月にBulb. venulosum名で数株入荷し、翌年1株が開花したところBulb. annandaleiであったことから販売を中止していました。ところが本日(5日)水撒きをしていたところ、その株の中の花に目が留まり、Bulb. venulosumであることが分かりました。花は小型ですが下写真に見られるようにリップが赤く、セパル・ペタルの表裏に鮮明なラインが入る個性のあるフォームです。新種のためか、国内でのマーケット情報は見当たりません。Den. calicopis | Bulb. venulosum |
植付けのその後と現在の試み
新しい素材によるPhal. lueddemannianaとPhal. bellinaの仮植えについて今年1月の本ページでその中間結果を報告しました。それから3ヶ月経過したこともあり、その後の状況を取り上げます。上段写真はその様態変化で、それぞれ左が1月、右が本日(4日)の状態を撮影したものです。Phal. lueddemanninaはクリプトモスミックスに不織布を筒状に巻いたもので、1月の映像は取り付け後の新芽が出ている様子です。3ヶ月経過した現在、新芽は別株と見間違える程、伸長しています。見た目に不織布の白色はダメですが、このまま栽培した方がもむしろ良いと思われる程です。一方、Phal. bellinaは不織布で炭化コルク表面を覆い、その上に根を直接置き、ミズゴケで根周りを覆ったもので、1月の映像では根が2㎝ほどミズゴケから抜け出し不織布に密着して伸長していますが、さらに現在は1本が11㎝長となっており、また別の根は布に活着しつつ後ろに回り込んでおり、布を嫌う様子は見られません。Phal. lueddemanniana 1月16日 | Phal. lueddemanniana 4月4日 | Phal. bellina 1月16日 | Phal. bellina 4月4日 |
不織布挿み | ヤシ繊維マット挿み | 不織布短冊 Vanda javierae |
ランの中で最も良い香りをもつ種の一つがバルボフィラム属に?
これまで当サイトでは、近づきがたい臭い匂いを発するバルボフィラムを2-3種取り上げてきましたが、バルボフィラム属の名誉挽回のためそれとは正反対に、ラン属の中でも特出してよい香りをもつバルボフィラムを紹介します。それが浜松温室にて現在開花中のBulb. hamatipesです。orchidspecies.comによると”strongly fragrant, musky scented flowers”(強い香気でムスクの香りを放つ花)とのことです。ムスクの香りとは?とネットで調べたところ、じゃ香とのことで、有名な香水 ’シャネルの5番’ の原料です。シャネルの5番と云えば60代以上の方はご存知と思いますがマリリンモンローを思い出します。Bulb. hamatipes |
Bulbophyllum incisilabrum (II)
前月本ページ取り上げたBulb. incisilabrumの別株が開花したので再度取り上げました。ブロックバーク取り付けで2年目となります。丁度10輪が同時開花しています。下写真右に見られるように花サイズは縦横巾共に5cmと、バルボフィラム属の1輪当たりのサイズとしては大きく、黄色をベースに赤褐色の斑点のある、よく目立つ種であるにも拘らず、なぜ2003年近くまで発見されなかったのかが不思議です。生息域がスラウエシ島標高1,200mとは云え、多くのランが生息する範囲内であり、おそらくは昨年6月の本ページで取り上げた、1997年発見のパフイオペディラムPaph. gigantifloliumのように、これまで人の余り踏み入ることの無かった奥深い密林に生息しているのではと思われます。微香ですがよい香りがします。ちなみにPaph. gigantifloliumは渓谷、本種はコケ林の生息とされます。中温タイプですが、高温に近い環境に置いており栽培は容易です。コロナ明けには本種も販売を再開する予定です。Bulb. incisilabrum |