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栽培、海外ラン園視察などに関する月々の出来事を掲載します。内容は随時校正することがあるため毎回の更新を願います。  2020年度

   2021年 1月  2月  3月  4月  5月  6月 

4月

Bulbophyllum sp Lanao Mindanao

 ミンダナオ島中西部Lanao州生息のBulb. spが開花しました。2019年2月にDen. deleoniiなどと共に入手した種名不詳のバルボフィラムです。栽培状況からは中温室での成長が良いことから、標高1,000 - 1.200mクラスの生息種と思われます。下写真にその花と株を示します。花フォームからは、フィリピンSamar島生息で2015年登録のBulb. boosiiに似ていますが、Bulb. boosiiは本種に比べ、リゾーム(バルブ間隔)が短く、また葉形状は広楕円で異なります。新種の可能性があるものの、すでに発表されているかも知れません。ネット検索では今の所、該当種が見当たりません。

 入手時、Bulb. sp Lanao-type1とLanao-type2とされる2種を得ました。今回開花したのはtype1で、type2は開花待ちです。ちなみに、ミンダナオ島Lanao州は現在、海外渡航レベル3(渡航中止勧告)対象地域だそうで、多くの新種が生息する隣のBukidnon州と共に一度は訪問したいのですが、両州とも危険地域のため行けません。外国人にとってミンダナオ島での安全な場所はダバオ市くらいでしょうか。それでも10年程前に、ダバオ市のワリンワリン(Vanda sanderiana)祭に出かけたときは、市内とその周辺地域のラン園へはフィリピンの知人の勧めの現地警察官2名が同伴しての訪問でした。滞在はダバオ市のApo山を望むマルコポーロ・ホテルでしたが、ホテル入り口には自動小銃を持った守衛が常駐していました。

Bulb. sp Lanao Mindanao

Nepenthes truncata捕虫嚢 

 先月、開花中の花33種の中でNepenthes truncataの画像を掲載しました。メジャーを入れてなかったので再度、開花中の別花を下写真左に示します。Nepenthes truncataの捕虫嚢は45㎝程になるそうです。5年間ほど肥料を与えていなかったので今年からは液肥を与え、現在から10㎝プラスの45㎝サイズを目指そうと思います。株は現在1.2mで葉サイズは20㎝x32㎝程です。ところで昨年9月、下写真右のblack truncataが見つかったがどうかと、フィリピンのラン園からメールをもらいました。正しい種名はNepenthes robcantleyiの黒色フォームとのことです。近年、野生種の輸出にはフィリピン農業省が厳しくなっており、CITES認可(Nepenthes属は現在CITES AppendexIIでフィリピンからの輸出の場合、DENR発行のCITES書類が必要)が得られれば購入するとラン園に伝えました。しかしCITESの取得は現在無理だそうで入手を控えました。1か月後に、そのタネであれば発送可能とのメールをもらいましたが、そこで冗談半分に、私を含め知人は残りの人生に余裕のある人は少なく、タネから捕虫嚢30㎝以上のtruncata並に育てるまでの歳月を考えると、さすがにタネからはと断りました。いずれにしてもコロナが終息する頃にはCITES認可が得られるようになると思われ、それまで待つしかありません。しかし噂ですが2-3ヶ国ですでに、この黒色フォームが販売されているそうで、どのようにして輸出認可が下りたのか不思議です。

Nepenthes truncata Nepenthes robcantleyi

パプアニューギニア生息の種名不詳バルボフィラム

 2018年マレーシアPutrajaya花博で、パプアニューギニア生息のBulb. spとして入手した、Polymeres節と思われる種名不詳種が開花しました。下写真がその花で撮影は25日です。花形状はBulb. stomiiと似ていますが、色とリップ形状が異なり、またBulb. quadrangulareとは、orchidspecies.comによると花サイズは2㎝とあり、今回浜松で開花した花は写真が示すように縦・横幅が凡そ5㎝ x 6cmの大型で、サイズが異なります。一方、花は午前中に開花し、午後にはセパルが閉じることから、昨年12月の歳月記で取り上げたインドネシアからのBulb. spと似ているものの、こちらともリップ形状は大きく異なります。ネットで調査中ですが、今のところ該当種が見つからず、種名は不明です。入手時はパプアニューギニアとのことで低温室で栽培、その1年後には中温室に移動しましたが成長が見られず、昨年秋に高温室の比較的輝度の高い場所に移動しての開花となりました。入手時は3-4バルブ程の小さなサイズが3株で、これを纏めて1枚の炭化コルクに取り付けており、高温室に移動後に株それぞれで2-3バルブ増えたため、花後には株分けして植替えを行う予定です。

Bulb. sp Papua New Guinea

胡蝶蘭5種

 本日(25日)早朝に、胡蝶蘭原種5種を撮影しました。胡蝶蘭原種はコロナが落着けば最初に全種をコレクションする計画ですが、昨日のニュースによると、静岡では16歳以上のワクチン接種終了の目途が来年2月頃とのことで、さてマレーシアやフィリピンはどうかと。マレーシアは来年内にはと期待する一方で、フィリピンに至っては生活環境や現在のフィリピン変異ウイルスを考えると目途が立たず、今後2年近くは渡航が困難と思われます。EMSの再開もマレーシア、フィリピン、インドネシア共に年内の再開は難しい気がしています。

Phal. phillipinensis Phal. mariae
Phal. cornin-giana Phal. lueddemanniana Phal. amabilis Java

最近の植替え

 3-4月は植替え作業が忙しく、同時に多様な植え付け方法を試みています。下左写真は左から2株がBulb. anceps、中央がPhal. hieroglyphica、右2株がPhal. inscriptiosinensisです。 左のBulb. ancepsは、通常1個のバルブサイズは3-4㎝ですが、7.5㎝となる変種株です。またPhal. hieroglyphicaは通常、無臭か微香ですが、1m程離れた位置からも分かる良い香りを漂わせる希少株で、両者は特別に50㎝トリカルネット筒に取り付けています。またPhal. inscriptiosinensisはクリプトモスミックスで根を包み、さらにこれを50㎝のヤシ繊維マットで包んだものです。いずれも伸びしろを、株サイズの数倍としていますが、これは大株仕立てにする目論見からです。一方、右写真は炭化コルクに同サイズのヤシ繊維マットを置き、その上にミズゴケを敷いた、全て種名不詳の高温タイプのセロジネで、種数としては5種相当を植付けています。年内の開花を期待しての植替えです。

Bulb. anceps, Phal. hieroglyphica, Phal. inscriptiosinensis Coel. sp 5種

Bulbophyllum vinaceum

 ボルネオ島生息の本種はorchidspecies.comに見られるような花色が濃い赤紫色から、赤褐色まで個体差があります。今回かなり濃赤褐色の花が開花したことと、この株の半分程がコルクからはみ出して(左写真)いるため植替えを行いました。植替えは大株になることを目論み、支持材は大きな伸びしろ面積と、長時間の保湿力を高めるため60㎝長の炭化コルクに同サイズのヤシ繊維マットを置き、その上をミズゴケで覆っています。

Bulb. vinaceum (植え替え前の株と花) 60㎝ x 12㎝炭化コルク・ヤシ繊維マット植付け

(続)Bulbophyllum tollenoniferum

 前項で本種名の株にBulb. macranthumがミスラベルで開花したことを報告しました。本日早朝、入荷から2年目でやっと種名通りの花が開花しました。下写真は23日早朝撮影の本種です。柑橘系の甘い香りがします。再度前回開花したBulb. macranthumと株形状を比べましたが、ボルネオ島のBulb. macranthumとNew Guineaとの違いは、葉形状から容易に分かりますが、同じNew Guinea生息種同士では種別は難しく、どうやらBulb. macranthumが紛れ込んだようです。10株程ある中の多くのバルブが炭化コルクからはみ出しており、近々植え替えが必要となっています。

Bulb. tollenoniferum

Bulbophyllum anceps

 昨年10月の歳月記に、炭化コルクからトリカルネット筒に植え替えしたBulb. ancepsを取り上げました。それから半年近くが経ち、今月に入り開花が始まりました。ボルネオ島低地に生息する本種は、扁平のバルブを支持材に密着させ、常に先頭から2-3バブルのみに葉を残して古い葉を落としながら伸長していきます。写真左が今回開花の画像です。花は2㎝程と小型ですが、中央写真のようにラテラルセパルがドットとライン及び上記リンク先に見られる両模様をミックスした3つのフォームがあり、花茎当たり3-4輪、大株になると一株には3-4本の花茎を付けるため、華やかになります。花は無臭です。開花にはバルブサイズが3㎝以上、5バルブ程が必要で、先頭バルブから3バルブ程後ろのバルブに花茎がしばしば発生します。高温タイプで栽培は容易です。

Bulb. anceps Borneo

標高2,000m級に生息するProsthechea pamplonense

 Coolタイプよりさらに低温のColdタイプであるベネズエラおよびエクアドル標高2000m級の高山に生息する本種は、その低温管理から敬遠されるのかマーケット情報はほとんど見られません。ドラキュラ属のコールドタイプと同じような栽培環境で、且つ株(背丈)はかなり大きくなり、また花は地味ともなれば興味を持たれないのは無理のないことかも知れません。ここで取り上げたのは、1か月以上続く開花期間中のその香りです。2m程離れた位置からも思わず近づきたくなるほどの良い香りで、これまでカトレアを含め様々な花の香りを体験してきましたが、トップクラスの個性のある、おそらく2,000m級高山でこの香りに包まれれば、登山の疲労も忘れるのではと思う程です。コロナが終息し、開花のタイミングが合えばラン展に出品したい原種です。

 現在本種を2株栽培しています。これは上記の香りを予め知っての購入ではなく、エクアドルMundifloraからのサンシャインか東京ドームラン展いずれかでの引き取り株です。今回、これまでのプラスチック鉢にクリプトモスミックスからトリカルネット筒に植替えを行いました。下写真はPsh. pamplonense(PshはProsthecheaの公式略名)です。中央の花はリップ先端部の襞が反っており分かり難いのですが台形の形状です。右は50cm長のトリカルネット筒に取付けた株で、周りのメタルリングに植え付けられた株は全てDraculaです。

Psh. pamplonense

葉の幅広なCleisocentron spの開花

 2016年と2017年にボルネオ島生息の葉幅の広いCleisocentronを入手し、種名不詳種として栽培・販売をしてきましたが、生息標高情報が無いことからClctn, gokusingiiと同じ中温室にて当初は素焼き鉢にミズゴケ、1昨年から炭化コルクで栽培を続けてきました。入手から4年経過し今週やっと初花が得られました。現在10株程を栽培していますが、ようやく本種の栽培法が分かるようになり、1昨年あたりから成長が見られるようになっています。Clctn. abasiiも10株ほど栽培しており、こちらも現在成長が活発で年内の開花を期待しているところです。

 下写真上段が葉幅の広いタイプの初花の写真で昨日(16日)の撮影です。初花のためか花数は少ないですが、花形状はClctn. gokusingiimerrillianumと外観上の明確な違いは見られず、やや青味が強い感じを受けます。参考として同じような視点からの、Clctn. gokusingiimerrillianumの写真も掲載しました。葉以外の他種との違いは、花軸の長さがややそれら(5mm - 8mm)に比較して長い(2cm)ことで、葉幅はClctn. abasiiとほぼ同じです。最下段の葉画像も全て16日撮影で、それぞれを比較したものです。写真からお分かりのようにClctn. merrillianumの一部(トリカルネット筒)を除いて、現在全種を炭化コルク植えにしています。この属種の成長を見ていると、どうも植付け方にポイントがあるように思われます。

Clctn. sp wide leaf
Clctn. gokusingii
Clctn. merrillianum
Clctn. sp wide leaf Clctn. gokusingii Clctn. merrillianum Clctn. abasii

植替え期

 3月から4月は多くのランが開花し、また新芽や新根の発生も盛んで植替えの適期となります。当サイトでは栽培する属種が多く、全てのランを適期に合わせて植替える余裕がなく、年中植替えを行っているものの、それでもこの時期は植替え作業に一層追われます。そうした中で最近は植付け方法の新しい試みを盛んに進めています。その背景にあるのは当サイトでの栽培種の中心が、人工的に改良された交配種ではなく原種であることから、花のみの観賞だけでなく、属種の生態(自然体の姿)にも興味があるからです。栽培を初めた頃は定石通り、素焼き鉢にミズゴケの組み合わせでした。しかし、ラン生息地でのラン園や趣味家宅を頻繁に訪問することで認識を新たにしたのは、彼らの栽培ではベンチ(鉢を置くテーブル)上で栽培されているランは地生ランとフラスコ苗あるいは台湾等から輸入された交配種だけで、着生ラン原種は例外が無い程、吊り下げられた取付材、バスケットあるいは庭木などに植付けられている光景でした。彼らに聞くと、原種は花、花軸、葉、茎、根など全ての調和が美しいとのことで、国内で見られるような、地生、着生に関わらず、殆どのランは素焼き鉢にミズゴケか、プラスチック鉢にバークでの植込みで、株が大きくなると支持棒を何本も鉢に立てて株を直立させた姿、これは限られた栽培スペース上の制約から止むを得ないことでもありますが、とは違っていました。花のみの色合いや形を楽しむのか、花の開花した自然体の株姿を楽しむのかと、少々哲学的ですが考えさせられ、それ以来、当サイトでも着生ランの栽培は吊り下げ栽培が中心となりました。これが12年ほど前のことです。

 ここで大きな問題が起こりました。国内でのそうした吊り下げ栽培では多くのランが上手く育たないのです。上手くいくのは精々胡蝶蘭ではAphyllae節位です。温度は生息範囲内にあるにも拘らずなぜと悩みましたが、原因は湿度不足でした。現地と国内では通年で湿度が大きく異なります。雨期に現地に出かければ空港ビルを出た途端、息苦しいほどの暑さと湿度、また乾季であっても標高が500mを超えれば夕刻からの湿度は80%を超える状況を考えれば、国内での板付け栽培で少々ミズゴケの量を増やしても、ランの育成は難しく、ではかん水頻度を上げれば良いのではとも考えましたが、根本的な問題はかん水頻度だけでもなく、環境湿度が低いことから株周りの乾湿の変化(変移)が大きく、これが成長を妨げる大きな要因であることも次第に分かってきました。多くのランにとって最適な環境の一例として、夕刻に散水した葉上の水滴の一部が明け方まで残っていることです。しかし大気の高湿度化は、株数が増え栽培スペースが大きくなれば並大抵なことではありません。やがてその管理負担から10年ほど前によく口にした言葉が、果たしてランを栽培しているのか、させられているのか、です。そこで浜松に移住した際に温室を立てるにあたっては、地面に水盤を置いたり、散水し地面に落ちた水が暫く留まるよう、ベンチの下に人工芝のマットを敷くことにしました。この結果、夕方の散水で夜間湿度を80%以上に保つことができ、多数の属種の栽培が出来るようになりました。

 こうした手間は、特に多品種で、様々なランを栽培しようとすることで起こる問題で、湿度に強いランも無いことはありません。しかし多くの趣味家にとっても出来る限り多様な種を栽培したい気持は同じと思います。当サイトは栽培と共に、販売も行ってきましたが、他ラン園との大きな違いの一つは、その植込み材を含め出荷形態が炭化コルク、プラスチック鉢、バスケットなど種で異なるのに対し、ネット通販を見る限り他ラン園は、種に関わらずそのほとんどが素焼き鉢にミズゴケ植えです。素焼き鉢にミズゴケは、千差万別な趣味家の栽培環境を考えれば無難な組み合わせで、ラン植付けの最大公約数的手段です。一方、当サイトでは多くが、それぞれの種に応じた植込みでの引き渡しです。成長するに従って、葉や茎が下垂する種、長いリゾームをもつバルボフィラムや上方に伸長を続けるデンドロビウムの一部に素焼き鉢ミズゴケではやがて成長が止まり頻繁な植え替えが必要です。反面、当サイトでの例えば炭化コルク付けは夜間湿度が通年で80%以上確保できなくては栽培は困難です。湿度確保が難しい場合はコルクのような植込みは出荷時の仮植えと考え、早期にヘゴ板やバスケットへの植え替えを勧めています。最も好ましいのは趣味家の栽培環境を予め伺い、それに応じた植付けで出荷することですが、このようなシステムを構築するには時間が必要です。

 こうした様々な背景から、当面の問題軽減の一つとして比較的湿度の低い環境においても、植込みの気相率を維持しつつも乾湿の変化が緩やかとなる素材や取付方法を見つけようと昨年夏から多数の実証実験を始めました。実験素材(在庫する種の多さと数)には事欠かないため出来ることです。国内でのそれなりの栽培環境に対応する、といっても譬えて言えば、熱帯魚を金魚と一緒に飼うことは出来ないように、温度は生息範囲内での管理が前提であることは変わりません。しかし温度が管理できたとしても、酸素不足で息苦しく水面で口をパクパクさせないためのエアレーションも必要なように、ランも同じで生存・成長に必要な条件は一つではありません。こうした環境条件の中で、栽培の負担が多少でも軽減出来ればと試行錯誤を続けている訳です。前項の’植付けのその後と現在の試み’で報告したような手法などもその一つです。 これら実験の結果が得られるのは年単位となりますが、近年多様な生息域種の出荷が増えれば増える程、それらを一律的な植付け法で対応することは難しく、こうした試みも販売する側には必要との考えで取り組んでいます。

現在(14日)開花中の花

 写真左のBulb. kubahenseは14日早朝の撮影です。ヘゴ板に取り付けた株で写真は1つの花茎に25輪程の開花となっています。中央は現在が最花期のDen. rindjanienseです。右は開花期が間もなく終るPhal. schillerianaです。開花後には20株ある半数近くをトリカルネット筒に植え替える予定です。

Bulb. kubahense Sarawak Borneo Den. rindjaniense Lombok島 Phal. schilleriana Real Quezon Luzon

現在(9日)開花中の花

 この時期は多数の種が開花していますが、8種を選び撮影しました。

Phal. philippinensis Nueva Vizcaya Luzon Den. deleonii Bukidnon Mindanao
Den. crocatum Peninsula Malaysia Den. maraiparense Sabah Borneo Den. aurantiflammeum Borneo
Dendrochilum sp Surigao Mindanao Bulb. callichroma Irian Jaya New Guinea Bulb. inacootesii Bukidnon Mindanao

Bulbophyllum macranthumtollenoniferum

 2019年春、パプアニューギニア生息のBulb. tollenoniferumをインドネシアからマレーシア経由で入手し、これを50㎝長の炭化コルクに取り付けた画像を2019年5月に紹介しました。高温タイプとされるこの株は成長が活発で、2年で20㎝以上あった取付材の伸びしろ分を超える程になり、今月に入りやっと1株に初めての蕾が付き、昨日(8日)早朝開花がありました。しかし種名とは異なるBulb. macranthumが開花し、ミスラベルでした。マレーシアラン園はインドネシアのサプライヤーからの入荷時のラベルのまま、当方に販売したことになります。なぜ最初のサプライヤーはBulb. tollenoniferummacranthumを間違えたのか、この両種をネットで調べてみることにしました。結果、幾つか共通点があり、生息地が同じパプアニューギニアであること、両者は同じSestochilus節であり、花は倒立して開花し、サイズも5㎝とほぼ同じであること、リゾームの太く長い形状が似ていることなどが上げられます。よく見ると、同節故か花形状も似ています。しかし花色はBulb. tollenoniferumはゴールド一色である一方、Bulb. macranthumはカラフルで全く異なります。ミス原因の可能性としては、株が似ていたためか、今回開花の株も前記のBulb. venulosumのケースと同様に、たまたま本物の株の中に混ざってしまったものか、あるいは可能性は少ないものの、Bulb. macranthumのaureaフォームを見て、ロットごとBulb. tollenoniferumと思ったか、いずれにしても他株の開花待ちとなります。下写真は今回開花のBulb. macranthumで、花は自然体の倒立のままで8日の撮影です。

Bulb. macranthum

 Bulb. macranthumの調べで、一つ分かったのは、本種の葉形状の多様性です。今回開花の葉は下写真の左からの3枚ですが、この株の葉は広線形から長楕円形で、葉長は30㎝を超えるものがあります。一方、 現在当サイトではボルネオ島生息のBulb. macranthumを栽培し花は確認済みですが、この株の葉は右写真の楕円形で10㎝ほどです。この違いはパプアニューギニアと、ボルネオ島の地域差なのか、それにしても、まるで葉は種の同定には参考にならないかのような違いです。しかし写真に見られるようにパプアニューギニア生息株はすでにコルクからはみ出した株もあり植替えが必要で、現在こうした株が10株以上あるため60㎝を超える取付材とするには扱いが難しく、株分けとなります。

Bulb. macranthum Papua New Guinea Bulb. macranthum Borneo

現在開花中のDendrobium calicopisBulbophyllum venulosum

 Den. calicopisはこれまで秋でしたが、今年は春にも開花となりました。本種はトリカルネットに植え替えしてから5ヶ月程経過します。この時期故か、フクシア(赤紫)色が秋の開花に比べてやや濃い印象です。一方、中央と右写真は当サイトで初めて開花するBulb. venulosumです。ボルネオ島Sabah州低地生息種で、2008年登録の比較的新しいバルボフィラムです。2017年10月にBulb. venulosum名で数株入荷し、翌年1株が開花したところBulb. annandaleiであったことから販売を中止していました。ところが本日(5日)水撒きをしていたところ、その株の中の花に目が留まり、Bulb. venulosumであることが分かりました。花は小型ですが下写真に見られるようにリップが赤く、セパル・ペタルの表裏に鮮明なラインが入る個性のあるフォームです。新種のためか、国内でのマーケット情報は見当たりません。

Den. calicopis Bulb. venulosum

植付けのその後と現在の試み

 新しい素材によるPhal. lueddemannianaPhal. bellinaの仮植えについて今年1月の本ページでその中間結果を報告しました。それから3ヶ月経過したこともあり、その後の状況を取り上げます。上段写真はその様態変化で、それぞれ左が1月、右が本日(4日)の状態を撮影したものです。Phal. lueddemanninaはクリプトモスミックスに不織布を筒状に巻いたもので、1月の映像は取り付け後の新芽が出ている様子です。3ヶ月経過した現在、新芽は別株と見間違える程、伸長しています。見た目に不織布の白色はダメですが、このまま栽培した方がもむしろ良いと思われる程です。一方、Phal. bellinaは不織布で炭化コルク表面を覆い、その上に根を直接置き、ミズゴケで根周りを覆ったもので、1月の映像では根が2㎝ほどミズゴケから抜け出し不織布に密着して伸長していますが、さらに現在は1本が11㎝長となっており、また別の根は布に活着しつつ後ろに回り込んでおり、布を嫌う様子は見られません。

Phal. lueddemanniana 1月16日 Phal. lueddemanniana 4月4日 Phal. bellina 1月16日 Phal. bellina 4月4日

 現在も様々な植付け方法を実験しており、下はそうした試みの例です。左は炭化コルクの取付面に3mm厚 (商品公称値2mm)の不織布を、また中央は不織布の代わりにヤシ繊維マットを炭化コルクのサイズに合わせて切断し、それぞれミズゴケで覆ったものです。これらの上に株を置き、根周りをミズゴケで覆い取付けます。一方、右はかなり手の込んだ植付けで、大型木製バスケットにはVanda javieraeを僅かなクリプトモスミックスで3-4本寄せ植えし、バスケット底から短冊状に切断した2-3㎝巾 x 50㎝長の不織布をバスケット当たり16本垂らしたものです。これは殆どのランにとって湿度の低い国内環境で、高い気相率(空気に触れる割合)が要求される特にVandaの長く下垂した根周りの乾燥を防ぐ(湿度を高める)ための実験です。こうしたそれぞれの試みは根周りの過剰な保水を避ける一方で、如何に’しっとり感’を長く維持できるかを調べるためです。様々な植え付け方法の結果を得るには1年以上の実態観察が必要で、早計にその良否を結論付けることは避けるべきと考えます。実験結果は現在準備中の会員制の栽培サイトに詳細を報告する予定です。

不織布挿み ヤシ繊維マット挿み 不織布短冊 Vanda javierae

ランの中で最も良い香りをもつ種の一つがバルボフィラム属に?

 これまで当サイトでは、近づきがたい臭い匂いを発するバルボフィラムを2-3種取り上げてきましたが、バルボフィラム属の名誉挽回のためそれとは正反対に、ラン属の中でも特出してよい香りをもつバルボフィラムを紹介します。それが浜松温室にて現在開花中のBulb. hamatipesです。orchidspecies.comによると”strongly fragrant, musky scented flowers”(強い香気でムスクの香りを放つ花)とのことです。ムスクの香りとは?とネットで調べたところ、じゃ香とのことで、有名な香水 ’シャネルの5番’ の原料です。シャネルの5番と云えば60代以上の方はご存知と思いますがマリリンモンローを思い出します。

 Bulb. hamatipesはJava島生息とされるものの標高は不明です。本サイトでは2016年キャメロンハイランドで、Bulb. cornutum fm. albaとして入手したものの本種のミスラベルでした。花は2016年および2019年6月の当ページに画像を掲載しています。しかしその時点では花撮影のみで香りは確認していませんでした。今回orchidspecies.comの上記コメントを読み、早速香りを確認したところ、その甘い香りに驚きました。現在マーケット情報は国内には見られませんがネットには花画像が多数あり、入手難な種ではないと思います。コロナ明けに50株ほど発注し、温室の一角を’シャネルの5番’の香りにと、目論んでいるところです。現在栽培は中温で、下写真は全て3日の撮影です。

Bulb. hamatipes

Bulbophyllum incisilabrum (II)

 前月本ページ取り上げたBulb. incisilabrumの別株が開花したので再度取り上げました。ブロックバーク取り付けで2年目となります。丁度10輪が同時開花しています。下写真右に見られるように花サイズは縦横巾共に5cmと、バルボフィラム属の1輪当たりのサイズとしては大きく、黄色をベースに赤褐色の斑点のある、よく目立つ種であるにも拘らず、なぜ2003年近くまで発見されなかったのかが不思議です。生息域がスラウエシ島標高1,200mとは云え、多くのランが生息する範囲内であり、おそらくは昨年6月の本ページで取り上げた、1997年発見のパフイオペディラムPaph. gigantifloliumのように、これまで人の余り踏み入ることの無かった奥深い密林に生息しているのではと思われます。微香ですがよい香りがします。ちなみにPaph. gigantifloliumは渓谷、本種はコケ林の生息とされます。中温タイプですが、高温に近い環境に置いており栽培は容易です。コロナ明けには本種も販売を再開する予定です。

Bulb. incisilabrum

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