3月再び南米の奇怪な花形状Scaphosepalum属 ランの花を見ていると、なぜこのような形なのかとしばしば考えさせられます。人工交配によって作出された植物ではなく、数万年の時をかけ自然の生物多様性のなかで進化し生まれた様態は、その全てが自身にユニークに関わる環境を含めた相手があって、それらに適応した無駄の無い姿である筈です。そう考えると、想像の世界となりますが謎解きのようで興味が尽きません。前回南米のランScaphosepalum triceratopsを取り上げました。今回また別の品種Scaphosepalum cimex leurが開花しました。筆者から見ればどうしても虫に思えてしまいます。しかしこの花の形が擬態と書かれた情報は見当たりません。アフリカバッファローのツノとか、コブラが威嚇する時の姿に似ると書かれていますが、この花が牛やヘビと関係があるとは思えません。趣味家にとってはこの姿を気味が悪い、あるいは面白いとする二手に分かれるようにも思います。現在Scaphosepalum属は中南米を中心に45種ほど確認されており、その内32種がエクアドルに生息とのことです。昨年のMundifloraのプレオーダーリストには10種名前がありました。その内、4種を現在所有しています。今年はリスト全種だけでなく入手可能なモンキーオーキッドをMundifloraなどにプレオーダーし、80種近く入荷しましたが、来年は本属を45種全てプレオーダしてみようと考えています。ゲテモノ好きな趣味家にとってはこの属のコレクションは一興と思います。本サイトでの1品種当たりの平均価格を2,500円として、1属ほぼ全種を集めても10万円程で、且つ2.5 - 3.0号素焼き鉢にミズゴケ植付で良いのでそれほどスペースも取りません。またエクアドルに70%以上生息しており入手しやすいことを考えると、1属全種のコレクションを目標にしても可能性があるかも知れません。
Dendrobium florensianum 本種はフローレス島生息のデンドロビウムで、浜松では2月から4月頃が開花期となっています。特徴はセパル・ペタルのベース色に緑、黄緑、黄土色があり、それぞれに細いラインが入ります。このラインの色も変化があります。1月に入荷した株をバスケットに寄せ植えしていた中にFlavaタイプのような色合いの株が1株出現したため、下写真に取り上げて見ました。最も一般的なフォームは上段左です。上段右はリップ中央弁がピンク色となり希少なフォームです。orchidspecies.comの情報ではベースが濃い緑色の画像が掲載されていますが、これまでそのような濃度のフォームの実物は見たことがありません。下段左はベース色がやや緑色がかっていると共にリップ中央弁形状が通常は長方形に対して楕円状であることに特徴があります。今回、開花した株は下段右で、上段左の株の中に1株混在していました。Flavaタイプと行っても良いほど全体が均一な黄緑色で、下画像のようにやや逆光で見ると薄く筋が見えますが茶褐色のラインがありません。中央弁は白色です。これまで現地で100株以上の花を見ていますが、このFlavaフォームは始めてです。
これまでフォームに関わりなく一般サイズ株で2,000円で販売してきましたが、フォームに明確な希少性があれば、そのフォームに応じた価格を予定しています。こうした希少株の価格はお問い合わせください。 Dendrobium mutabile Den. mutabileは30㎝から1m程の長さになる疑似バルブに5-10輪程の花序を2-3個所につけ1か月近く開花します。今月バスケットに寄せ植えした、色違いの白と薄いピンク色の本種が同時に開花したので写真を撮りました。
Dendrobium parcum 聞きなれない種名ですが、ちっぽけな、あるいはたいしたことのないと形容されるミャンマー、タイ、ベトナムに生息する高温タイプのデンドロビウムです。花が小さいのであれば小さな(tinyとかsmallとか)デンドロと呼ばれても良いと思うのですが、なぜよりによってつまらない(Insignificant)デンドロという不名誉な俗名が付いてしまったのか気の毒です。株は30-40㎝程の高さで、花は4-5輪が1本の主茎から分岐した枝の先端に付けて、これらが株全体に疎らに開花します。この不運なデンドロが下写真です。花のサイズは1㎝で、花形状は個性があります。1㎝以下の花はデンドロビウムの中にはいくらでもいます。違いは5㎝ほどの花が咲いてもおかしくない、それなりの疑似バルブの長さや太さに反して、花が小さいからそうした俗名で呼ばれるようになったと思われます。反対にバルブが細く弱々しいにも関わらす、花が大きいと’立派’と言われるDen. papilioもいます。市場にはほとんど流通していないようで、価格が分かりません。本種は昨年6月のマレーシアPurtrajaya花祭りに出店していた現地ラン園よりspとして入手しました。
Cyrtopodium punctatum 南米に広く分布する大型のランが開花しました。下写真が26日撮影の本種で、生息最南域アルゼンチン産です。直接太陽光を当てても良いとのことで昨年は一応木の下ですが木葉の合間を抜けて直接太陽光が当たる場所に7月から9月末まで置きました。植え付けは、太くずんぐりとしたバルブで大きいのですがスリット入りプラスチック鉢にクリプトモスです。株の背丈は1m程で、輪花数は多すぎて数えていません。花色は下写真右に見られるように2フォーム(色)が混在しています。
南米のミニ花 南米のランは5月連休前までには価格付きのカタログを掲載する予定で、現在準備中です。カタログに掲載する花の写真は2年間の栽培で撮影したものもかなりありますが、全ての品種についての花の掲載は困難で、Mundifloraから画像のコピーの承諾を得ていますので可能な限り花画像のあるカタログを目指しています。南米のランは東南アジアの花と比べ異国的で、特に小型の花は花としての美しさよりも、その造形美に驚きます。下写真は現在浜松温室で開花中の小型の花をいくつか取り上げて見ました。室内でワーディアンケース栽培している趣味家には好まれそうな花たちです。カタログ制作中に分かった大問題は、Mundifloraのミスラベルはごく僅かですが、Magaliさんの兄のEquaflor-Aの株、特に小型種の半数近くがミスラベルで、この割合は通常管理ではあり得ない多さであり、恐らく税関か発送段階でラベルが入れ違ったのではと思われます。猫の手も借りたいこの時期に、全く迷惑千万です。50種程あるのですが、花を確認しない限りEquaflor-Aのランは販売ができません。 Mundifloraが東京ドームで扱うランは、凡そ半数が中温から高温、半数がクール系です。最近ネットを見ていて気が付いたことがあります。例えば下写真の先頭にあるLepanthes gargantuaは、実際の花を見ると栽培したくなるほどエクゾチックで美しい花ですが、標高2,600m - 3,400m(ちなみに乗鞍岳3,026m、槍ヶ岳3,180m、富士山3,776m)に生息のクールどころかコールドタイプで、通年で8℃から20℃の栽培温度としなければなりません。強力な冷房無くては日本の夏に溶けてしまいます。人気のランと、ネットには書かれていますが、日本の夏の栽培温度を20℃以下にしなければならない環境と知っての人気なのか、はてと考えてしまいました。
Dendrobium laxiflorum 黄色の花を50輪程同時開花させるスパチュラータ節のDen. sylvanumが1月頃から咲き続け3月中旬頃になりその花期が終わると、代わって同節のDen. laxiflorumやDen. lineale blueの開花が始まります。スパチュラータ節は回転しながら上方に伸びるホーン(ツノ)と呼ばれるペタルが特徴です。その中でもっともツノが美しいのはDen. laxiflorumで、捩じれが密で数が多く、花全体のバランスからはこのツノがよく引立ちます。前回の植え替えから3年近く経過したため新たに植え替えを始めました。本種は現在30株ほどあります。スパチュラータは現地での栽培では炭を植え込み材にしており、国内への入荷後の順化栽培ではその炭を半分ほど残し、半分をクリプトモスで植えつけ、その後の植え替えはスリット入りプラスチック鉢にクリプトモス100%としています。下写真左はDen. laxiflorumで今月22日の撮影です。右は植え替え途中のDen. laxiflorumで20株ほどです。最も長い株で2mです。このDen. laxiflorumは9年前にインドネシアスラバヤのSimanis Orchidsから会津若松の知人が購入し、2003年に譲り受けたもので元親株が野生株なのか実生なのか分かりません。実生だとすると交配からBSまでに4-5年は掛かるため、15年以上前にデンドロビウム・スパチュラータの実生生産が試みられていたとは考え難く、野生株からの株分けと思います。この株はベアールートで入荷したため、当初からクリプトモスにプラスチック鉢あるいはミズゴケ100%と素焼き鉢での植え込みでした。下写真右は入荷から8年を経過した栽培増殖株で全てが国内で新たに成長したバルブや葉です。ここ3年間はクリプトモスがほとんどです。 下写真右からスバチュラータ節はクリプトモス100%とスリット入りプラスチック鉢でよく成長することが分かります。これは同じデンドロビウムであっても、Formosae節がミズゴケ+クリプトモス混合と素焼き鉢の組み合わせが良いのとは異なります。この違いは植え込み材そのものの成分等に依存したものではなく、他属を含め同じように(同量の)水やりをした温室環境での、根周りの乾湿状態が適しているものと思われます。スパチュラータでは、ミズゴケ100%と素焼き鉢、またバークと軽石ミックスとプラスチック鉢も試みましたが最も根張りが良くないのはバークミックスで新しい根は少なくほとんど成長は止まったままで、やがて小さな株になっていきます。ミズゴケは根張りは良いのですが、植え替えに手間がかかり過ぎます。 一方、クリプトモス100%と素焼き鉢の組み合わせも根張りが弱く好ましい結果が得られません。プラスチック鉢との組み合わせの違いは乾湿の差となります。クリプトモスはミズゴケと比べ気相が大きくて乾燥が早く、それに輪をかけて素焼き鉢と組み合わせると乾燥が一層進みます。クリプトモス100%と素焼き鉢の組み合わせはスパチュラータにとっては水分不足となるようです。一方、プラスチック鉢はスリット入り(深鉢)ですが、蒸散は底面のスリットと上面のみのためロングタイプ(http://www.garden-bank.com/SHOP/3162/t01/list3.html)を使用すると、謂わば鉢の表面は乾燥した状態で、鉢中央部から底面にかけては、次のかん水まで適度に湿った状態となります。。結果として本サイトの温室環境ではこれが良いようです。
Dendrobium anosmum superbum/giganteumについて 昨年8月にフィリピンにてDen. anosmumのクラスター株とDen. anosmum superbumを入手しました。今月に入りいずれも開花し、3月中旬の浜松では最花期を過ぎたところです。どうやらDen. anosmumは最初にDen. anosmum semi-alba (huttonii)、3-4週間程遅れてalba (dearei)、さらに3週間程後に一般種の順で開花するようです。一般種とsuperbumとの違いは、フィリピンでの解釈からは花のサイズが後者は大きくなくてはならないのですが、ネットで検索する限りほとんどで何㎝以上がsuperbumあるいはgiganteumで、何センチ以下が一般種なのかを記載した情報が見当たりません。ある米国のラン園のネットでは、superbumと称した株の花サイズを7.5㎝から8㎝と言い、また別のサイトではgiganteumを12㎝から15㎝クロス(よってペタル1枚の長さは5㎝以上)などとしています。 J. Cootes氏の著書'Philippine Native Orchid Species'ではDen. anosmum一般種でのセパル、ペタル共に一枚の長さは3.5㎝までと定義されています。よって水平方向に伸びたペタルの左右スパンで考えると7cmプラス花芯部を1㎝幅として8㎝程となります。こうした見方をすればsuperbumやgiganteumとしては12㎝から15㎝とするサイズはおおむね適切な値と考えることが出来ます。そこで趣味家の方がDen. anosmum superbumやgiganteumを買われる場合は、ペタルの長さが最低でも5㎝なくては一般種の個体差の範囲と考えた方が良いと思われます。一方、こうした大輪花でも同時開花数によっては花のサイズが変化する様態が見られます。これは初花や順化後の株で、十分な力が無い状態で多輪花となる場合は一般種に近いサイズとなることがあるようです。元気な株ではそうした変化はないと思われます。 さて、そこで本題ですが、2年前からマレーシアで入手したsemi-albaやalbaタイプの、高芽が多く付いたかなり大きなクラスター株を昨年から5,000円から8,000円程で販売してきたのですが、たまたまsuperbumのサイズ問題で、現在開花しているalbaを見ていてフィリピンからのsuperbumとサイズがあまり変わらないことに気付き、一枚ペタルを外して測定したところ6㎝の長さがあり、花芯を含めるとペタル端間のスパンが何と13㎝になり驚きました。semi-albaやalbaのgiganteumタイプはこれまで聞いたことがないので、ではこの株を世界初のDen. anosmum alba giganteumと呼んでもよいのか。少なくとも本サイトの温室でのalbaとsemi-albaは同じような大きさであることから、これまでに販売した5株程のクラスターを含め、これらをgiganteumクラスターと称して良いのかと、であればこれまでの価格は安価すぎるので、このサイズのalbaやsemi-albaに希少性があるのかどうかが分かるまでマレーシア産Den. anosmumの販売はしばらくペンディングです。下写真上段は浜松温室でのsemi-albaとalbaで、下段はalbaのペタル1枚の長さを示し、6㎝ほどです。
Coelogyne clemensii 3年ほど前に入手したボルネオ島Mt.Kinabaluの高山種で知られるCoel. clemensiiが開花しました。標高800mから2,400mの生息であることから中温タイプ(栽培温度15‐30℃)として2年程栽培していたのですが開花が無く、Den. vexillariusなどニューギニア高地種と同じコールド(栽培温度8‐20℃)からクール環境(栽培温度14‐25℃)に移してからの開花です。最初やや薬臭く感じますがチョコレートのような香りです。
Phalaenosis pantherina 本種は胡蝶蘭の中では比較的流通の少ない原種である一方で、Phal. cochlearisやPhal. speciosaと並んで、本種名の雑種が多く売られている代表的原種でもあります。近縁種としては同じボルネオ島生息種のPhal. lamelligeraやPhal. borneensisが知られています。下写真の下段右に示すように、リップ中央弁の形状が細く長く伸び、先端は大きな鳥の羽を広げたような形状が特徴です。一方、雑種では中央弁が短く、また先端が錨のような形状がしばしば見られます。近年では本種の野生株は入手が難しく高価な原種の一つです。下写真は現在本サイトが所有する5つのフォームです。上段右は今月開花した通常サイズの1.5倍体、下段左はドットが黒褐色、中央はalbaとも呼ばれているようですがflavaフォーム、右はリップ形状(側弁は削除)を示します。本種は胡蝶蘭原種の中ではポット植えが可能な数少ない種で、半透明プラスチックポットにヘゴチップが最も成長が良いようです。
南米のラン 5月連休前までには南米のランのカタログを公開するため、植え付け、種分け(栽培温度等)、1昨年からの株の植え替えと整理などで、ドームラン展以来忙殺されています。凡そ400種のラン原種リストとなりそうで、取り扱い品種としてはバルボフィラムやデンドロビウムを超える数です。南米のランは東南アジアのランとは一味違った風貌があり、特に小型の花の中には奇怪な形状がしばしば見られます。下写真はScaphosepalum triceratopsの花で、現在浜松で開花中ですが、見る角度によってはアブラムシのような擬態に見えてしまい、一体ポリネーター(花粉媒介者)はこの姿の何を認識して飛来するのか首を傾げてしまいます。
Bulbophyllum kubahense Sarawak 現在、浜松温室でBulb. kubahense Sarawakが開花中です。輪花数が23輪と多く、この株は葉が大きいことから葉のサイズと輪花数は多少関係するのかも知れません。こちらは杉皮板ではなく、円筒形にトリカルネットを丸めてミズゴケを巻き、その上にアルミ線で株を固定しています。円筒内部はクリプトモスで埋めています。今年は多くの株で開花が見られそうです。季節外れの開花Phal. gigantea Sabah 7月から8月が開花最盛期のPhal. giganteaですが、3月の季節外れに開花しました。東京ドームラン展にも丁度1株Phal. gigantea Sabahが開花していたため、頂芽が半分欠けていたため非売品としてブースの展示用として持ち込みました。会期後半になり購入希望者がおられ、頂芽に問題があることから安価で販売しました。Sabah産Phal. giganteaの野生種の入手は現在困難で生息地マレーシアの原種専門ラン園でも5年程前から入荷が激減し、これまで3年以上入荷が無いそうです。写真は3日前に全開した葉長40㎝のSabah野生株で昨年8月に続く開花です。無傷でセパルペタルのベース色がやや黄色味のあるクリーム色。斑点は濃赤色です。本サイトとしては50,000円で販売予定です。
モンキーオーキッドDracula 猿面ドラキュラを80種程入手したことは前記しましたが、その後の調べでこれまで所有していた種と合わせ、90種近くとなり、株数では180株以上であることが分かりました。2,500円から3,000円を中心に5月から販売を開始予定です。中にはalbaやaureaなどの変種があり、25,000円程の希少種も含まれます。中温から高温タイプのドラキュラも5-6種あります。下写真は現在浜松温室で開花中のDracula amaliaeです。
ニューギニアからのDendrobium? 昨年8月に高温障害による瀕死の状態で入荷したニューギニア高地からのデンドロビウムやバルボフィラムが何とか生き延びて新芽や花を咲かせています。ドームラン展にDen. vexillariusを10株持って行ったのですが、全て売り切れてしまいました。同じオレンジ、赤、黄色でもクールタイプのランの花の色の鮮やかさは格別です。温暖タイプとは違った透明感のある色彩を持っていることが分かります。しかし購入された方、多くが若い趣味家のようでしたが、コールドからクールタイプは8-25℃の栽培温度であることをご承知の上でしょうか心配です。この時期、クールタイプのラン用温室は外気温並みに寒く、いつもクシャミをしながら水撒きをしています。そうした株の中で、垂れ下がった複数の細い紐のような疑似バルブ?からなるデンドロビウムと思われる株が開花しました。写真下です。バルブが太く見えますが楊枝のような細さです。花の長さは1.5㎝程で、右写真は花を下から撮影したものです。Den. alaticauliumあるいはDen. caliculimentumのようなタイプですが、こちらも種名を調べているところです。
カンボジアからのDendrobium sp 今年1月にマレーシアに行った際、入手したカンボジアからのDendrobium spが開花しました。一見Dendrobium christyanumと思われたのですが、ペタルの形状が異なり本種は幅広で円形です。ではDen. formosumかと言えば、リップの形状が異なり、また本種は疑似バルブが細く、Formosa節のような黒い細毛がありません。はてそれでは何かと、調査中です。花は大きく、ラテラルセパル左右端間のスパン幅は5.2㎝です。 |
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2月南米ランの植え付けと販売準備 ラン展が終わると共に、600株を超える南米ランの植え付けが始まり、終了するまでに1週間ほどかかりました。ほとんどはプラスチックスリット鉢に100%クリプトモスですが、小型株は素焼きにミズゴケです。使用したクリプトモスは500リットルの膨大な量になりました。なぜ南米にはないであろう杉皮かとの声が聞こえてきそうですが、日本のアツモリソウ(礼文やカマナシなど寒冷地や高山生息種)の栽培経験からです。植え付け後にはネット情報を参照しながら低温、中温、高温タイプの仕分けをおこなっており、現在も継続中です。昨年のアルゼンチンの1,000株を超えるランも販売を保留していましたが、今回のエクアドルのランが加わることでかなりの品種と量となり、このままの状態を続ける訳にも行かず、2ヶ月(5月連休前)を目途に一斉に販売を開始することとしました。下の写真は今回入荷した南米ランのそれぞれです。上段左は中温から高温タイプで、上段中央はクールタイプ、右は全てDraculaで170株程あります。問題はこれら全ての数以上に昨年のアルゼンチンのランが別途あることです。3年間で集めた南米のランを一まとめにすると15mx5.5mの温室一棟分の栽培空間となります。 そこで価格を調べているのですが、国内の市場価格は複雑で、南米のランは北米向け価格と日本向け価格は全く異なり、日本向けはさらにプレオーダー価格と東京ドーム価格があり、ドーム価格は、ラン展出店、搬送、滞在などかなりの経費が掛かることと、これらすべての経費を、ラン展に持ち込める限られた品種と個数全体に上乗せせざるを得ないことから、北米向けの3倍ほどになっています。これを高いと見るか、やむを得ないと見るかは難しいところですが、採算をとるためには、それが実態なのでしょう。 さて本サイトですが、ランをプレオーダーする場合も、引き取る場合も、今年からは北米向け価格相当を上限としており、この仕入れにどれだけの経費を上乗せするかが課題となります。基本的に経費の最も大きな要因は、栽培経費ですが、その中で特にクール系では光熱費と歩留まりが多くを占め、販売可能なレベルとしての歩留まり率は70%以下と見なくてはなりません。この結果、平均してドームラン展での価格の2/3から半額を予定します。最も多い価格帯としては2,500円前後になります。販売対象の品種は4月中旬までに本サイトで公表します。エクアドルランは2ヶ月の順化期間がありますが、アルゼンチンはすでに1年経過しており、こちらは国内環境に既に馴れてほとんどで開花経験もあり順化は不要です。 Dendrobium aurantiflammeum 昨年11月に本サイトから購入された東京の会員の方から、Den. aurantiflammeumの開花写真を頂きました。購入時の植え込みのままとのことですのでバスケットにミズゴケ植え付けとなります。本種は入手が極めて困難であるため、本サイトでは東京ドームでの15株ほどの販売を最後に、現在は実生を得るまで販売を控えております。
昨年12月入手のDendrobium sp Sumatra 歳月記12月に紹介したマレーシアにて入手したsp3点の一つDen. sp Sumatraが開花しました。園主からの写真はセパル・ペタルが青味の強い紫色でしたが、浜松温室にて開花した花は赤味の強い紫色でした。右写真の側面からの写真を見ると青味があり、個体差か環境によってはセパル・ペタルがより青くなる花が出るのかも知れません。ネット画像からは今のところ該当する種は見当たりません。ラン展最終日の買は、得か損か? 例年、内覧会に続く土日の3日間と共に、ラン展の最終日は多くの趣味家が、特に海外ラン園の値引きを期待して来場します。3割程から半額あるいはそれ以下の値引きの可能性が1日の間にあるからです。これが首尾良くいけば、売れ残りとは言え、待ったかいがあったと思うところです。しかしです。業者サイドから見ますと、出品のために設置準備(内覧会前々日)の10日以上前から、それまで栽培されていた鉢から株を取り出しラベリングや包装、また段ボール箱への梱包、さらにラン展内覧会の開始から最終日まで、JGP2016では8日間、ドームの低温・低湿度の過酷な環境下に株は置かれます。合わせると20日間以上に渡って異常な状態が続き、2月という気候もあり、最終日まで残った株を持ち帰り、植え付けるには温度・湿度の制御ができる温室と豊富な順化経験がないと、高い確率で順化に失敗して枯れるか、作落ちが起こります。これを避けるため海外からのラン園は根をミズゴケで覆い、さらに乾燥を防ぐため透明のセロハン用紙で包装します。このような対策を行っても、最終日頃には生きた根は2-3割しか無く、多くの根は茶色くなっているか、白い根であっても抑えるとふわっとした中身のない状態がしばしばです。 果たして筆者ならばどうするかですが、順化経験を10年以上持っていますが、定価であっても入手したいランであれば内覧会か遅くとも日曜までに買い求めます。誰かに買われてしまうのを恐れてではなく、品質の問題からです。例えば今回プレオーダーした南米のドラキュラは月曜日には温室に持ち帰り植え付けを開始し、水曜日には植え付けを終了させています。買いたいランがあればプレオーダーが必須で、受理したら直ちに持ち帰り植え付けることが必要です。 もう一つの問題は、特に海外からの業者にとって、売れ残り品の株数がボストンバックに入る程度であれば兎も角、全て持ち帰るのは大変です。帰国前に全てを売り払いたいと思うのは当然です。このため通常、日本の業者に最終日の引き取りを依頼します。 一方、売れ残り品を引き取る日本の業者側にとっては、最終日の半額以下のディスカウントによって目ぼしいランばかりが来場者に買われ、人気のないランだけが売れ残ったとすれば、引き取るメリットはありません。こうなるといつ海外業者は日本の業者に引き取りを依頼しなければならないかが問題となります。当然ディスカウント開始の前、遅くとも最終日の午前中となります。引き取ることが決まれば、引き取ったすべてのランはアンタッチャブルで、来場者が求めても上記の理由から買うことはできません。 これらは海外業者から日本の業者に引き取りを依頼した場合です。一方、海外業者の売れ残りの不安の弱みに付け込んで、引き取る代わりに、この価格でどうかと持ちかける業者もいると聞きます。これをハゲタカ買いと言うそうです。 2,000円近い入場料を払って、来たものの、閉会までにすでに業者に買われていることは理不尽と思うかもしれませんが、最終日のディスカウントを目標に来場する趣味家もそれはそれなりにハゲタカ買いの一員と言われるのも一理あります。最終日はこのように、善悪は兎も角、海外業者、国内業者、趣味家の三つどもえの修羅場です。 こうした中、これまで大幅な割引は午後から終了までと言われてきましたが、どうも今年の状況を見ていると、最終日の朝にはすでに引き取り手は決まっているようです。ある海外のラン園ブースに最終日の昼頃に伺ったところ、すでにグループ株別に日本の買い手が決まっているので売り物はごく一部しかないとのことでした。日本の業者が一枚上手でした。それならば引き取りが決まったランは壁やテーブルから外し梱包しておくべきであるところを、そのまま展示(陳列?)しているのは海外業者も来場者に対して無神経と言わざるを得ません。良かれ悪しかれ、海外の業者にとって、例え5,000円値札の株を1,000円以下にしてでも、一括して業者が引き取ってくれる方が、午後を待って一般来場者に半額の2,500円に値引きして販売することよりもはるかにリスクは少ないことを意味します。こうした実情を見ると、最終日のディカウントによるメリットは最早趣味家にとっては実質無くなりつつあると考えることができます。 言い換えれば、来場者にとって最終日にディスカウントして得られる株は、業者の扱いたくない品質か品種の株が大半となりつつあります。謂わば趣味家にとってこれまでのような、掘り出し物を格安で入手できるかもしれないと期待する程のメリットは無さそうで、前記の長期間の悪環境による株の弱体化も含めて考えると結局、内覧会を含む初日3日間が趣味家にとっての戦場と言ったところでしょうか。 Phalaenopsis pantherina ラン展が終わり、浜松の温室に戻り10日間ほど空けた株を見ていたところ、Phal. pantherianaが開花しており、その花の大きさに驚き写真を撮りました。通常の1.5倍強あり、これまで胡蝶蘭原種収集で初めての大きさです。写真で左上が通常Phal. pantherinaとほぼ同サイズのPhal. lamelligera、左下がPhal. cornu-cervi dark redです。右のPhal. pantherinaとの違いがよく分かるかと思います。花のサイズは横スパン6.5㎝x縦スパン7㎝です。同一ロットで他に15株程あるため現在の南米の植え付けが終了しましたら、価格等を決め販売する予定です。JGP2016開催 12日金曜日の内覧会から火曜日までの5日間、本サイトブースには多数の趣味家の方々にご来場頂き、有難うございました。ほぼ出品数の7割程を販売することが出来ました。この歳月記を書いている現在は火曜日で、関心の高い原種はほぼ完売状態となり、その補てんのため浜松に戻っているところです。メールにて多くの引き合いを現在頂いておりますが、国内外共に出張の際に使用する携帯やPCには、セキュリティー上からメールや個人情報を含むサーバーへのアカウントを設けておりません。このため東京ドームラン展終了まで、ご返信等はしばらくお待ちください。JGP2016内覧会チケット ラン展に於いて1品のみのもの、あるいは希少種を入手するためには、初日では遅すぎ前日の金曜日17時30分から21時までの内覧会での入手が決め手との声をよく聞きます。内覧会の入場者数は制限されており、内覧会チケットは出店者からが主な入手先となります。本サイトの会員登録された方で、本人用として内覧会のチケットを希望される方がいましたら若干枚ですが現在ありますので今週中にメールを下さい。1枚で2名が入場できます。少数枚のためご希望に添えないことがあります。JGP2016向けBulbophyllum kubahense 下画像は東京ドームラン展JGP2016向けのBulb. kubahenseです。SarawakおよびKalimantan産です。本種は葉当たりの価格が設定される程、高価な種ですが本サイトではJGP2016用として特別に3葉2,500円から販売を行います。1葉換算で830円程です。通常この価格ですと当然採算割れとなりますが、この価格が可能となったのは、多くの葉が本サイト温室にて新たに発生、成長したものであるからです。話題のバルボフィラムであり、栽培してみたいのだがどうも価格が、という方は会場にお越しください。出品株は順化済み(国内栽培で新根と新葉が発生した株)で、全ての株に新芽が付いています。3葉はこの新芽を含む葉数となります。よって従来価格の1/5程度となります。4枚葉以上は従来通りの価格となります。また10枚葉近くの株は通常入手できませんので、かなり高価になります。SarawakおよびKalimantan産をそれぞれ15-20株ほど出品します。BtoB販売は行いません。
Bulbophyllum sp 2種 マレーシアから入手したBulbophyllum spを2種紹介します。左は葉サイズの割にリゾームが長く、葉は披針形で細く、Sabah生息種とのことです。右はBulb. sp lasianthum-like yellowとのことです。 これらはいずれもリゾームが長く伸びるためポット植えは困難で、本サイトでは杉皮板に取り付けています。左のsp株はJGP2016に2株程出品しますが、数が少ないので内覧会で売り切れてしまうと思います。右のバルボフィラムは葉が大きいため持ち帰ることが難しく1株のみ受注のための参考出品とします。一方、葉長50㎝を超えるSabah産Bulb. lasianthum red-spotも入荷しましたがこちらは別途取り上げます。下画像の花写真は園主からの携帯画像です。上段は浜松温室での撮影です。Dendrobium miyasakii Den. miyasakiiが開花しました。昨年の東京ドームラン展でPurificacion Orchidの売れ残った本種が2株あり、浜松にて保管していましたが3,000円としたところ温室訪問される方にすぐに売れてしまいました。そこで纏めて20株ほど昨年8月フィリピンにて入手しました。開花した株はその株です。夏の入荷でしたがその時点ですでに、すべての株は落葉しており茎(疑似バルブ)のみで、その後の栽培においても葉や新芽が発生することなく、かと言って赤味のあるバルブが枯れることもない状態のまま今月まで続いていました。本種は標高600m辺りの石灰岩に堆積した腐葉土に生息する地生あるいは岩性種であり、素焼き鉢とミズゴケ・クリプトモスミックスで葉も新芽も発生しないところを見ると不適合と思い、春になればバーク、炭および軽石のミックスで植え替える予定でしたが取り敢えず花だけは先に咲いてしまいました。下画像左がその花で、右は葉のない疑似バルブです。ネット検索画像と比較して、ほとんどの画像ではリップ中央弁全体がダークピンクなのに対して、本株では2/3が白で、先端部がダークピンクのフォームは余りなく、結構綺麗な花であることが分かりました。 Dendrobium sp 2種 これまで紹介していなかったデンドロビウムspとされる2種を下記に示します。これらはスマトラ島生息種で花の画像はいずれもサプライヤーから送られたと言う園主の携帯からです。花の形からCalcarifera節ではないかとネットで画像検索したのですが該当する花が今のところ見つかりません。左は疑似バルブの径から比較的大きなサイズの花のように見えます。写真下段はそれぞれの全体画像です。いずれも似た種はあるのですが今一つ合致せず、花が開花すれば詳細が得られるので同定はそれからと考えています。(後記:会員より花画像下の種名の可能性ありとの情報を頂きました)
花未確認のsp種はサプライヤーからの画像があっても信頼性は低く、基本的にこれまで温室訪問者の希望する場合のみ販売していますが、会員からもsp株販売の希望が多く、今回はデンドロビウム、バルボフィラムの一部を JGP2016に出品予定です。上記sp種については花確認前ですので2,500円を予定しています。種名が確定し、国内初入荷となれば価格は変更されます。 Dendrobium. cinnabarinum 昨年の秋から本種で開花が見られるようになりました。それまでの2年間は花を見ることが出来ませんでした。その違いはやや気温が低い場所に置いたこと以外思いつきません。昨年10月の入荷品はバスケットに寄せ植えしたものの、それまでの株は素焼き鉢にミズゴケです。デンドロはFormosa節を中心に、素焼き鉢とミズゴケ+クリプトモスミックスに替えてから、気難しいDen. tobaenseなど順調に育つようになりましたが、本種はミズゴケ単体で全く問題なく、2年前の株はほとんどが新しい茎に入れ替わりました。こちらも前記のAppendicula同様にミズゴケを乾燥させることはしません。すなわちコケ林生息種のための共通した栽培法です。現在栽培している株は2つのフォームがあるようで、下写真はそのフォームを示したものです。上段は花サイズが下段に比べて一回り小さいのですが赤が強く、下段は大きな花ですが柿色と赤の中間色となっています。右の縦長の画像は左下段の株で茎は1mを越えます。花の大きさが感じ取れるかと思います。本種はJGP2016に40-50㎝長のBS株を20株ほど出品しますが、どの株がどちらのフォームかは選別しておらず分かりません。 マレーシアのNTOrchidのプレオーダカタログにはオレンジカラー・ビッグフラワーと、レッドカラー・スモールフラワーの2タイプがリストにあり、本サイトでの開花株と同じ種分けで、マレーシアでの入手ルートは同じようです。それぞれが7,000円と6,000円になっています。こうなると本サイトと競合してしまいます。NTOrchidは、遠くマレーシアから高いコストをかけて参加しているので、競合しないように価格を合わせたいのですが、1年以上前から本サイトのDen. cinnabarinumは3,000 - 3,500円として販売をしており、この価格を変える訳にもいきません。余裕のある人は、NTOrchidは筆者のことをよくご存知ですので、価格交渉で少しでも安価にしてもらい、なるべくNTOrchidから購入されては如何でしょうか。 |
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1月Appendicula malindangensis Appendiculata malindangensisの開花時期が来ました。昨年のJGP2015では20株程出品しましたが全て完売となりました。今年のJGP2016にもブルーと紫色の2つのフォームを出品予定です。これまでの1年間バスケット+ミズゴケか、素焼き鉢+ミズゴケで寄せ植え栽培していたものを1株から2株単位に分ける作業に入っています。久々の登場です。1年間の栽培を通して多くが新しい茎になっており、開花も始まっています。この株は中温タイプで、日本の夏の暑さを越すことはできますが、高温栽培ですと開花が難しく秋から冬季の期間は夜間18℃以下15℃程の気温下に置く必要があります。この夜間温度において、昼夜の温度差が10℃近くなると開花が始まります。よく観察していると、紫色の株は夏でも開花することがあり、一方、青色の株は夏の開花が見られず冬に入ってからです。本種は低地から高地まで生息分布していると聞いており、これは推測ですが、低地が紫、高地が青の主な生息域となっているように感じます。明るさはいずれも低 - 中輝度が良いようで、多くの吊るされたランの下の薄暗い場所でも新芽が良く発生しています。根の細い本種のような品種は、根に乾湿の変化を与えることは好ましくなく、ミズゴケは常に湿った状態にしています。今年の株は1年間国内栽培したもので環境に順応しており、一般サイズは昨年と同じ1,500円での販売です。
Bulbophylum ramosii (flavescens) 昨年9月の今月の開花株で掲載しましたBulb. ramosiiが現在開花中です。マレーシア、ボルネオ島、フィリピン、スマトラなど広範囲に生息しており、多くのSyonymsがあるようです。余り聞きなれないバルボのためネットで調べたところ、国内で1ラン園が8,400円からとの販売情報がありました。このランは昨年夏にコレクター宅を訪れた際、1株10リンギッド(300円)で2株入手したものです。人気があるようであれば次回訪問時に10株程仕入れてこようと思います。
マレーシアからの入荷Bulbophyllum このところのマレーシア訪問で得たバルボフィラムにはspが4種類あり、一つは形状がBulb. inunctumに似ているもののセパルペタルが黄色ベースでリップが赤い(Bulb. inunctumは黄色)種と、下写真上段左のトレーに置かれた3種類のspです。これらは全てボルネオ島Sabahからのものです。中央トレーの株はCirrhopetalumで、右がその花です。花画像は園主からでフォーカスが合っていませんが、白いセパルに青いリップのCirrhopetalumは今のところ該当種が見当たりません。下段は左がBulb. beccariiです。12月に3点ほど入手しましたが、写真は葉長55㎝の新入荷株でJGP2016での販売予定品です。中央および右は杉皮板に取り付けたBulb. elongatumと、その花です。12月の入荷品の販売用在庫が無くなりましたので追加入荷しました。今回のBulb. elongatumは葉長が50㎝以上(前回は35㎝-40㎝)で、一般の花フォームは、黄色のベースに赤 - 茶褐色の斑点ですが、本株は前回同様にダークピンクに赤色の斑点で、花全体が赤色となるSabah生息種です。
赤いドーサルセパルとリップのBulb. sp (Bulb. uniflorumあるいはBulb. virescens ?) 昨年12月に本歳月記に掲載したスラウェシ島からのBulbophyllum spは、すでに多数の趣味家が買われています。ところが最近、これまで取引のなかった海外のディーラーからの売り込みがあり、その説明に日本ではまだ販売されていない新種と紹介されていたため、すでに入手していると返答をしたところ、それはボルネオ島Sabah産の違うものの筈で、これがスラウェシ産の本物であると写真添付の返信がありました。その写真を見たところ12月に記載したインドネシアサプライヤーからの写真そのもので、何とこのサプライヤーはそれぞれの国のラン園に昨年8月、既に販売していたにもかかわらず、いまだに世界初出荷の如き売り込みをしているようで、それを受けてディーラーが日本にはまだ入荷していないと思ったのかも知れません。ひょっとすると、この言葉を信じて、日本のラン園が国内初の入荷種として下写真の株をBulbophyllum virescens redとして販売するかも知れません。ボルネオ島SabahのBulb. virescens redは現在の市場で10,000円以上しますので、スラウェシ産ですと、20,000円を遥かに超える可能性があります。本サイトでは1,500円/葉で、1株2葉タイプから5葉タイプまで昨年から販売しています。複数のラン園が販売し始めれば価格競争で安くなり趣味家にとっては良いことと思います。JGP2016に10株程を出品予定です。植え付前のCoelogyne 下写真はそれぞれ植え付け前のセロジネで、全て浜松温室での撮影です。写真の中で国内市場での価格がネットで検索できるのは1ラン園のCoel. multifloraのみで株サイズで価格が変わるようで4,000円からとなっていました。その他はほとんど売買が無いか、かなり取扱いは少ないようです。Coel. celebensisの筆者撮影の花の写真を最下段に示しています。同一ロット内にも拘らずリップが黒褐色から柿色まで開花していました。Coel. speciosa subsp. incarnata Gravendは前項で取りあげました。Coel. sp 1の最下段右の花写真はサプライヤーからのものです。始めて扱うセロジネだそうです。Coel dayanaは50バルブ程のクラスター株で2株あります。ボルネオ島、タイ、スマトラ島、マレー半島生息種ですが、こちらはマレー半島産です。セロジネのクラスター株は半年以上入手を求め、やっと実現しました。数百輪の同時開花を期待しています。Coel. sp 3はマレー半島Genting Highlandの標高1,000m以上の生息種とのことで、クアラルンプールの趣味家からの入手です。この趣味家とはマレーシア訪問で毎回会っており、生業はエンジニアですが、趣味のランについてはおそろしくよく知っており、葉の色で生息場所が分かるそうです。この株は中温タイプでクアラルンプールは高温過ぎて開花が難しく、花は黄色で新種か変種ではないかとのことでした。Coel. kalianaは白いセパルペタルに黄色のリップでマレー半島標高1,600m以上生息の中温タイプとされています。これも国内での販売情報がありません。写真上部の疑似バルブが球状のものが本種で、同じ写真内の中央と下部はそれぞれがまた違うsp種のようです。(後記:会員の方からの種名についての情報を画像に追加しました)
昨年来、セロジネをしばしば入荷していますが、国内では半数近くが市場での扱いがないか、spが多く原種コレクションとしては興味ある属の一つで、特に中 - 低温系はほぼ未開拓の市場のようです。 マレーシア訪問 22日から25日までマレーシアを訪問していました。主な目的はJGP2016出店用としてのスラウェシ島生息種を中心にスマトラ、ラオス等のセロジネや、ボルネオ島のバルボフィラムの新種(sp?)の入手です。また中サイズで5-6,000円で販売可能なPhal. giganteaも入手しました。今回入手したランの中で不思議なのは、Coelogyne speciosaは一般的な品種で市場価格も2-3,000円程で安価ですが、スマトラ島中部にCoel. speciosa subsp. incarnata Gravendと1999年に発表された下写真の亜種が生息しています。この亜種は写真が示すように驚くほど迫力あり、またCoel. xyrekesやusitanaような大きな花をつけます。なぜかこれほど個性のあるランでありながら、希少種なのか国内に未だ入っていないようです。海外でも販売情報がありません。そのような理由で今回の訪問で30株程あったので全て買い占めました。価格は現在検討中です。JGP2016に出品しますので価格はそれまで非公開予定です。下の画像のCopyrightが不明であるため出典元のサイトを記載しました。
Coelogyne usitana Coel. usitanaは2001年に登場した新種で、フィリピンMinadanao島Bukidonon標高800m周辺に生息します。大きな花をつけるため人気が高く、現在市場では4,000円から5,000円程で販売されています。本サイトでは野生栽培株で3,000円としています。このセロジネはリップ側弁の色が柿色から黒に近い茶褐色まで個体差としての色の変化があり、特に黒い色は数十株に一つ出るかどうかです。現在35株程を2年間栽培している中で、これまでに1株出現しましたが、今回もかなり黒褐色の花が咲きましたので写真を撮りました。左右の花の撮影は同日同時刻(21日15時)です。左が一般的なリップ側弁の色で右が黒褐色フォームとなります。本サイトでは胡蝶蘭、バルボフィラム、デンドロビウムなどalba、flava、coeruleaのような変種を除いて、フォームの個体差を選別して販売しておらず、温室を訪問された方の特権のようなもので偶然稀なフォームが開花していても一般フォームと同一価格で販売しています。しかし今回は、写真の株をJGP2016に出品する予定で例外的に選別株として現在の市場並みの価格に設定する予定です。1株しかありませんので、内覧会で売れてしまうと思いますが。Bulbophyllum sp? 2年前にCirrhopetalum xxxとしてフィリピンから入荷した株が下写真に示す花をつけました。昨年も開花しましたがその時は明らかに付いていたラベル名と異なり、Bulb. sibuyanenseか、Bulb. loherianumかと思い、それ以上気に留めなかったのですが、今年よく見るとそれらとは何か異なるようで、まず花数がJ. Cootes氏のPhilippine Native Orchid Speciesでは10輪以下、Orchidspecies.comでは13輪までとされている一方、写真は17輪ほどで、花茎は25㎝、ラテラルセパル(白い花びら)の長さは2.5㎝、葉長は17㎝ x 3.2㎝と、これらも前記のそれぞれの種に比べて2-3割大きく、種名は不明のままです。同一ロットが10株ほどあるためそれ以外の株でも同じような花が咲くのかどうか注視しているところです。アルバタイプのようなフォームであるため花の大きさからもよく目立っています。Dendrobium aurantiflammeum 下写真は現在浜松温室にて開花中のDen.aurantiflammeumです。 現在最も入手難のデンドロビウムの一つです。4年間ほど入手を希望してやっと昨年纏まって入手できました。マレーシアラン園主の話では次の入荷は全く分からないとのことです。こうした状況から現在20株ほどを所有しているのですが、交配をしタネを得るまでしばらく販売をペンディングしました。ところが、最近入手したNT OrchidのJGP2016プレオーダリストを見ていたところDen. aurantiflammeumが価格5,000円として販売されています。本サイトと同じ価格であることから本サイトを参考にしたようで、入手したルートも同じ現地サプライヤーと思います。いずれにしてもDen. aurantiflammeumを求めている趣味家は、国内外共に入手が困難である一方で、この価格であればJGP2016でのNT Orchidからの入手はまたとない機会と思います。展示会場でのランの購入は、本サイトでしばしば述べているように根をよく見て購入することです。特に夏と冬は根を動かしてはいけないとされるランの2月の冬季植え付けは、生きた白い根がそれなりにあることが大切です。販売では、それまで栽培していたポットや支持材から外し出荷の準備を開始してから購入者の手に渡り、新らしい植え込み材での植え付けが終了するまでには通常、10日間以上を要します。この間、根が乾燥しないように僅かなミズゴケを巻いただけの状態で梱包し、それまでとは異なる温度や湿度の急激な変化や移動を経ることで必然的に株は弱ります。多くの失敗はこのような株を、春や秋の通常の植え替えと同じ感覚で行うことです。最も好ましいのは販売者が、それまで栽培していた状態のまま販売するか、展示会に合わせ3ヶ月ほど前に新しいポットや支持体に移植して株が安定してから販売し、購入者が植え替えを行いたい場合はしばらくはそのままで栽培し、暖かくなってからにするのが良いのですが、これはなかなか困難です。よってこうした状態ではない株の植付け後は、春までの2ヶ月間、安定した温度と夜間の高湿度が大切となります。
Dendrobium corallorhizonから2フォーム? 昨年取り上げたボルネオ島キナバル山とその周辺標高1,300m - 1,600mに生息のデンドロビウムDen. corallorhizonとされる同一ロット株から、2つのフォームが現れました。下写真で上段左は右と比べてやや小型で、全体に淡いピンク色を帯びています。花柄の色が左は薄紫、右はクリーム色です。下段は両者を並べて撮影したもので、こうしてみると別種のようにも見えます。葉や茎の形状は同じです。同一ロットのため地域差とは考えにくく、このような淡いピンクの違いをもつ種にDen. mutabileが知られていることから同じように個体差なのかどうか調べているところです。
緑色ペースのPhalaenopsis amboinensis 稀にPhal. amboinensisにはセパルペタルのベース色が緑味のあるフォームが現れることがあります。こうした緑色はPhal. amboinensis yellowタイプの開花直後に時折みられることがありますが、この色が枯れるまで続くタイプは過去15年近くで2-3株です。この色がはたして実生に継承するするかどうか自家交配で試す予定です。ニューギニア高地BulbophyllumとDendrobium 昨年8月にニューギニアからマレーシア経由で高地生息のバルボフィラムとデンドロビウムを手配したのですが8割以上が、マレーシア到着時点ですでに高温障害により死滅し、残った僅かな株を浜松に持ち帰りました。それらもほとんどが落葉し瀕死の状態でしたが、凡そ半年で辛うじて生き残った株が現在新しい芽を出したり、花をつけ始めています。下写真はその一部で花はDen. vexillariusです。Den. curthbertsoniiも初花を付けたものが現れ始めました。しかし販売可能になるにはさらに半年は必要と思われます。葉や根に大きなダメージを受けた段階からの300株程の栽培をおこなっているため、皮肉なことに低温系デンドロやバルボフィラムの栽培ノウハウは蓄積されます。また昨年10月には2回目の搬送を試みました。この2回目は1回目よりもさらに酷く、同様に高温障害で全滅となっていました。こうした2回の失敗から高地生息種は入手するまでの搬送が全てであって、日中35℃にもなる中でのインドネシアやマレーシアの現在の搬送インフラの実体と、クール系ランの取扱いノウハウのない人たちからの入手は無理と知りました。 しかしこうなると、何としても今後安定的に入手できるルートを開拓することにビジネスとしての醍醐味を感じない訳にはいきません。今年は3回目の挑戦です。2度あることは3度あるとか、3度目の正直とか言いますが、同じ間違いを再度繰り返すことはできません。高温障害の最大の問題であるインドネシアからマレーシアに至る搬送に関して、これまでの運送手順やディーラーたちに頼ることは止めました。高山系生花であろうとなかろうと日時を守るという義務感がさらさらなく1-2週間は遅れて当たり前の世界です。こうした人たちをアンノン族ならぬCan-Can族と呼んでいます。日程に問題があれば、それを言ってもらえれば対策もあるのですが、なんでもI can, I canと口約束する一方で守れたためしがない。2週間後の納品日約束などあって無きが如く、到着予定の僅か1日前にI canと言いながら3日遅れる、ひどいのは午前中着の筈と、当日の数時間前に弁解しながら夜遅くなる。また10月の2回目の搬送ではマレーシアラン園のスタッフは、箱に1か月近く詰め込んだままでなければ、これほどひどいダメージは起こり得ないとも言っていました。 さすがにこうした状況を3度繰り返すことはできません。3回目はインドネシアからフィリピンルートに変更し、搬送は全てハンドキャリー・リレーです。すなわち運送会社や現地Can-Can族を使用せず、荷が山下ろしされたとの電話で直ちにインドネシア、シンガポール、フィリピンと直接、こちらから人を派遣しリレーで、4日以内で現地からランとドキュメントを揃え入荷するという荒業です。まるで鮮魚などの生鮮食品並の扱いです。果たしてどうなるか、新しいルートと手順が上手くいけば、今年は多くの高地系デンドロやバルボフィラムが入手可能となるのですが。 Dendrobium phillipsiiとDendrobium paathii Den. phillipsiiはミンダナオ島標高800m近くに生息するフィリピン固有種であり、Calcarifera節です。一方、Den. paathiiはボルネオ島300m - 600mに生息するボルネオ島固有種で、こちらも同じくCalcarifera節です。この2種は浜松温室ではほぼ同時に開花期を迎えます。視覚的にこの両者を区別するのは難しく、色や大きさは同じで、2つを並べて見てリップ中央弁の奥がDen. phillipsiiは淡黄色であるのに対してDen. paathiiはややオレンヂ色のため中央弁に走る3本の黄色のラインがハッキリしている程度しか違いがありません。葉や疑似バルブも同形です。またDen. phillipsiiは匂いがある一方、Den. paathiiは無臭とされますが?です。地域差か亜種程度の差ではないかと思うのですが別種です。現在本サイトではDen. phillipsiiを一般市場の1/3程の2,000円、Den. paathiiは現在国内での取扱情報がなく、本サイトでは3,000円としています。
Bulbophyllum harbrotinum再画像 前記の本種画像は開花前の状態でしたので、開花後の画像を再度掲載します。赤味が増したように思われます。
Bulbophyllum scotinochitoniとBulbophyllum mirum比較 この2種は葉も花もサイズの違い程度で、酷似しています。しかしorchidspecies.comで検索しますと、Bulb. scotnochitonはCirrhopetalum節で、Bulb. mirumはPlumata節となっており異なります。不思議なのはBulb. scotinochitonは花が一つなのになぜ多輪花のCirrhopetalum節なのか理解できません。花形状が似ているCirrhopetalum節のBulb. weberiを見て何か勘違いをしてCirrhopetalum節としてしまったのではないかと疑っています。この時期、両者は同時に開花していますので、2種の画像を比較してみました。
Phalaenopsis equestris Polillo 生息地が分る株の入手はなかなか難しいのですが、写真のPhal. equestrisはマニラから東に位置する太平洋側のPolillo島からです。購入する株は野生であれ実生であれ、生息地がどこかを説明できることが原種を販売する上での必要条件であると、フィリピンやマレーシアの現地ラン園には常に伝えており、ラン園では7-8年前は全く生息地には無頓着でしたが、最近は本サイトが購入するランはサプライヤーに必ず聞くようになりました。Polillo島は聞きなれない島ですが、最近はこの島生息種が時折見られ、高芽が次々と出るPhal. lueddemannianaが入っていることは本ページで取り上げました。Phal. hieroglyphicaでも知られた島のようで、次はこの島の生息株であることを指定してPhal. hieroglyphicaを入手しようかと考えています。やがてPhal. hieroglyphicaのクラスターが作れるかもしれません。本種ですが、花茎が青軸(緑色)と赤軸(黒に近い赤褐色)が混在しており、青軸はLuzon島、赤軸はミンダナオ、サマール、レイテ島で見られることから、どうもこの島はサマールやレイテ島と何か関係があるのではと思っていましたが、フィリピンの方の話では更新世期(1万年以上前)はこれらの島は陸続きであったのではとの話でした。写真の花軸は青・赤軸の中間色で、緑褐色です。セパルペタルおよびリップのフォームはサマールやレイテ島産に酷似し、海を隔ててはいるものの、すぐ近くのLuzon島のフォームと異なることは面白い形態です。本種も高芽が頻繁に出るかどうか楽しみです。
本種の価格はレイテ産と同じで、野生栽培株のヘゴ板つけとなり3,000円を予定しています。一般のPhal. equestrisの改良実生種は本サイトでは現在1,000円から1,500円程です。 Dendrobium mindanaense フィリピンマングローブ林に生息するAporum節のデンドロビウムです。名前がミンダナオとなっていますのでミンダナオ島固有種かと感じますが、フィリピン全土に分布しているそうです。国内での取引はネットからは検索できません。株サイズによりますが1,500円から2,000円としました。
Coelogyne monilirachis 昨年10月の歳月記で紹介したボルネオ島キナバル山生息種とされるCoelogyne monilirachisが現在開花中です。生息域が1,000m - 2,700mとされており、中温タイプで、浜松温室でも中温で栽培しています。10株程で開花中ですが、現在の温室の気温は日中25℃夜間は13℃程となっており、すべての株はバスケットにミズゴケとクリプトモスミックスで植え付けています。本種は属名をNecklace-like Rachis Coelogyneと、花軸がビーズ玉が繋がったような形状で、ネックレスのような花軸をもつセロジネと言われているそうです。花はCoel kinabaluensisと比べて、柔らかなサーモン色一色と言ったところでしょうか。ネット上では現在はつくば植物園と京都府立植物園での展示情報があるのみです。植物園展示レベルの希少種なのかどうかは不明です。国内市場でのこれまで価格はネットからは検索できず本サイトでは3,000円で販売です。JGP2016に5株ほど出品します。BtoBはしません。 今月本ページで取り上げたDendrobium spの追加画像 前回Den. ellipsophyllumでもなさそうで、はて種名は何か?としていたボルネオ島からのsp株の画像を再度掲載します。前回の写真ではリップ中央弁がフラットでしたが、日にちが経過するとDen. uniflorumのように両端が下向きに反ってきました。中々色合いの良い花で、花持ちが良く3週間目に入ります。市場でほとんど見られない現在開花中のBulbophyllum 下写真はボルネオ島生息のBulbophyllum harbrotinumです。新種とされorchidspecies.comにも今のところ記載がありません。よって国内市場での価格も分かりません。現在は低 - 中温タイプとして杉皮板に取り付けて栽培しています。Bulb. jacobsoniiに似た花形状ですが、Bulb. jacobsoniiが一般的に4輪花に対して本種は10輪の花を付けます。
下写真上段左のBulb. brevibrachiatumは一見、Bulb. makoyanumに似ていますが、4㎝程の長さの花を12輪付けます。写真はフィリピン生息株です。Bulb. makoyanumは5㎝以上で、長く伸びたセパルには赤い小さな斑点があるのに対して、本種は淡い黄色(creamy yellow)一色です。スラウェシ島にも似た種が見られるそうです。 上段右は8年ほど前にマレーシアにて入手したもの。下段左はBulb. scotinochitonで、北スマトラ島に生息。2005年登録の新種で栽培およびマーケット情報がほとんどなく、2014年度に国内で20,000円程で販売されたことがあるようです。本サイトでは3,000円(3 - 4葉)です。下段右はマラッカ諸島生息種のBulb. amplebracteatumです。こちらも10年ほど前にマレーシアから入手した株です。ネット上では現在国内価格が検索できません。 海外ラン園の価格ですが、NTOrchidのJGP2016プレオーダーリストを見ますとBulb. harbrotinum 5,000円、Bulb. brevibrachiatum 3,000円、Bulb. amplebracteatum 5,000円となっています。Bulb. scotinochitonは取扱いがありません。
胡蝶蘭の進化と問題点 一部講演で取り上げた胡蝶蘭原種の分類、進化に関する問題について整理してみました。こちらをご覧ください。現在編集中ですが、終わりましたら(あと1ヶ月ほどを予定)胡蝶蘭のページに掲載します。全日本蘭協会主催のサンシャインシティ・ラン展講演資料 10日に池袋サンシャインシティ文化会館で用いました特別講演のスライド資料を本サイトに掲載しましたので、ご興味のある方はこちらをご覧ください。ファイルはパワーポイント形式42Mbになっていますのでダウンロードに時間がかかる場合があります。Phalaenopsis cochlearisとPhalaenopsis doweryensisについて 2年程前にマレーシアラン園にて、胡蝶蘭の中で、もっとも野生株の入手が困難とされるPhal. cochlearisの15㎝葉長程の株と、同時にNBS実生苗を入手しました。このなかでBSとなった実生株は昨年の東京ドームラン展で販売し、昨年3月の歳月記にて、同一ロットの株が開花したことを報告し花の画像を掲載しました。その後も、マレーシア訪問の度にPhal. cochlearisの野生栽培株を求めていますが、この2年全く入荷が無いそうです。一方、これまでの栽培経験から、Phal. cochlearisは高温タイプではなく中温が良いとの結論に至り、Phal. bellinaやPhal. violacea等の高温タイプと同居することを避け、5℃程度低温の場所に移動して栽培を始め、凡そ1年半が経ちます。中温環境にてそれぞれがBS株となり1年以上経ちましたが、改めて野生と実生株との差が現在現れており、一つは野生と実生の違いそのものと思われるものの、それ以外の要因としては野生株には根張り空間を広くすることで、取り付け時にその株サイズに対して異常なほど大きな杉皮板にしたことです。写真が現在の株サイズで、左は実生、中央と右は野生栽培株です。取り付け材は中央と右は左の実生用と比較して4倍程の面積となっています。
左の実生株は現在2回目の花芽が上に向かって伸びています。また上部に小さな高芽のある中央の野生株は昨年の開花で自家交配し左下にタネが付いています。間もなく取り撒きとなります。近年、国内で某ラン園から流通したPhal. cochlearis実生がハイブリッドであったことが知られていますが、写真のタネは正真正銘の野生株からとなります。一方、右の野生株は長い花芽を左上方に伸ばしており、写真からはみ出し写ってはいませんが先端に多くの蕾を付けています。同じBS株であってもこれだけのサイズ差がでることに驚きです。こうしたサイズの違いは花茎と輪花数に現れます。 一方、Phal. doweryensisについては1昨年夏季の高温障害で多くを失い、昨年はこの経験から、それまでの高温タイプのPhal. giganteaとの同居を避け、前記Phal. cochlearis同様に中温環境に移動しました。この結果、葉が落葉することが全くなくなり、古い葉もゆったりではあるものの成長を続け、現在は下写真のように、Phal. giganteaに引けを取らない大きな葉(長さ47㎝、幅17㎝)となり、開花も年2回となりました。これほど大きな株はこれまで現地ラン園でもほとんど見かけません。本種の栽培は最も困難と思われてきた原因は高温環境に置かれていたことで、この種は高温には適さないことがよくわかりました。写真中央と右の株の頂芽部分には現在夜間温度14℃、昼間23度の温室環境でありながら新芽が発生し成長しています。25株程ある中でこれまでの1年半で1株も病気が発生していません。適温下の栽培であればPhal. bellinaやPhal. giganteaよりも病害虫には強いのではないかと現在は考えています。
PNG高地Bulbophyllum 昨年8月に入手したニューギニアからの高地デンドロビウムやバルボフィラムの中で、パフアニューギニア標高1,600m - 2,500m生息のBulb. patellaが開花しました。ニューギニア高山系はマレーシア経由の入手ですが、これまで2回、インドネシアからマレーシアまでの搬送過程における高温障害で大半がダメージを受け、入手ルートを新たに開拓しており、現在は2つのルートを検討中です。今年はかなりのニューギニア産デンドロビウムやバルボフィラムが集まると思います。最近は毎週のように写真が送られてくるのですが見たこともない種が大半で、マーケット性があるのかどうかが問題です。左と中央は現在温室で開花中のBulb. patellaで、右は直近に送られてきたバルボフィラムと思われる画像で興味があれば確保するとの知らせです。まるでイカのような怪しげな花形状です。
本サイト会員に登録されている方へのお知らせ 本サイトでは現在、凡そ150名の趣味家の方々が会員登録をされています。2月13日から19日に開かれる東京ドーム世界ラン展JGP2016への入場を予定され、また2015年度までに本サイト(旧胡蝶蘭の原種サイトを含む)の会員登録をされている方にJGP2016の無料招待券を、ご親族同伴の場合は本人を含め2枚まで進呈いたします。ご希望の方は1月末までに本サイトのspeices@...のアドレスにメール願います。招待券は郵送にてお送りします。全日本蘭協会主催のサンシャインシティ世界ラン展特別講演 今月10日(日曜)の14:00- 15:00にサンシャインシティ文化会館2階にて、胡蝶蘭原種について本サイトが特別講演を行うことになりました。各原種フォームや栽培法、またマレーシアやフィリピン生息地での栽培情報をパワーポイントを用いて解説する予定です。15年間の胡蝶蘭原種の収集と栽培経験に基づいた内容となります。年末のフィリピン訪問 12月28日の年の瀬にフィリピンを訪問しました。成田を18時30分に発ち、マニラに着いたのが夜の23時でした。ところがこれまで見たことがないほど入国審査が混み、国外出稼ぎの人たちの帰省ラッシュとぶつかってしまいました。空港から出られたのが24時少し前で、いつものように待合エリアからドライバーを探したのですが見当たりません。ドラバーについては前回訪問で懲りましたので、ラン園主を通して今回依頼したドライバーは、1年前まで2年間程利用していた気心の知れた人に戻しました。その点では安心です。道路を隔てた出迎えエリアに出て探しても良いのですが、一旦ゲートを出てしまって見つからない場合はエアーポートタクシーチのケット売場のある待合エリアに再び戻ることができないため車が呼べません。こんな深夜では危険極まりない事態になりかねないため、ゲートを出て探す訳には行きません。これまでの10回程の利用で一度も遅れたことのないドライバーであり、入国審査で時間がかかり、時間を間違えたと思い引き返したのか、出迎え日を園主が間違えて伝えたのか、おそらく寝ているであろう園主にいつものように携帯電話し、どうなっているのか確認を頼みました。ところが ドライバーはまだ空港に向かっている途中であるとの返事で、新しい携帯番号を送るのでドライバーと連絡を取ってもらいたいとのメールがきました。
そこで直ちに電話しましたが、とにかく大勢の帰省ラッシュでうるさくて話しが聞こえず、こちらの居場所を知らせるのですが、どうも分ったのか分からないのかハッキリしません。丁度首にIDカードをぶら下げた空港待合エリアの人込みを整理する人が横にいたので、ドライバーと話し中の携帯を渡し、電話で私の今居る場所をドライバーに説明してもらいたいと頼みました。現地語でドライバーと何やら話した後、この整理人が車の一時停止できる場所を知らせたのでそこで待つようにと待合エリアの一角まで20mほどの場所ですが、案内してくれました。結構親切に対応してくれるものだと感心しました。ところがもう用は済んだと思っていたところ、何やらニコニコしながら話しかけてきます。よく聞くと、クリスマスプレゼントと言っているようです。すぐに分かりました。世話をした分のチップの要求です。また、あなたは中国それとも日本からかと聞くので、日本と答えたところ、日本語で1,000円、1000円と繰り返しです。電話で待合場所をドライバーに伝えるのを頼んだだけで1,000円?一体どうなるか不安なところをドライバーと連絡を取ってもらった安心感からすれば1,000円位ならば良いかとフィリピン慣れしていない人ならば思うかもしれません。しかしフィリピンの物価価値で換算すれば1万円程の要求です。この手合いには慣れているので、私はクリスチャンでないのでクリスマスを祝うこともないし、すでにクリスマスは過ぎていると答え、20ペソ紙幣を2枚、計40ペソをあげました。80円です。つまらなさそうに受け取りましたので肩を叩いてThank youと言っておきました。 20分程でドライバーが空港待合エリアに着きました。40分かかる所を3時間かかったとのことです。マニラ市内の交通事情は良く知っている筈のドライバーですが今回は想定外のようです。1日当たり20億ペソ、年間で1兆ペソの経済損失となっているこの町の交通渋滞はどうしようもありません。一方で、もし入国審査が通常の時間で終わっていたら1時間半以上、夜中の12時にドライバーを待たなければならなかったことになります。これでは深夜にマニラ空港着の出迎えを依頼するのは危険すぎて、エアポートタクシーかホテルタクシーを利用すべきであることを認識しました。ホテルに着いたのは1時過ぎでした。夕方6時以降着の出迎え依頼は次回から止めることにし、直接空港からタクシーでホテルに向かい、ホテルを起点にドライバーの送迎を頼むことにします。 ところでこのドライバーですが、40年程前の若いころは歌手を目指し様々な国を巡業していたそうです。日本には3回、東北、横浜、沖縄などを訪れたそうで、沖縄には長期間滞在したとのことです。たいそう日本びいきでフランスやアメリカでの巡業者に対する扱いは酷かった、それに比べて日本は皆、親切にしてくれたと言います。さらに話はフィリピンでは大きな会社のオーナーは業績に関わらず何億ペソと年俸を得ているのに社員には1か月のクリスマスボーナスがあれば良い方、一方、日本の社長は何億という報酬を求めることをしないし社員にはボーナスを3ヶ月も出す、こんなフェアーで良い国は何処にもないと意気が上がります。マニラ市からバタンガスを走る高速道路SLEXは日本のJICAの支援で完成した道路だが、フィリピンのどの道路よりも走りやすいし安定しているとのこと。またメトロマニラへの外国人旅行者は韓国に次いで日本人が2番目に多いがどの国の旅行者よりも礼儀正しい。さらに話に熱が入り、私が童貞を失くしたのは山形の女性であった、と、そこまで言うころには全て片言の日本語となり、英語を話そうとしません。 困ったことはこのドライバーが片言日本語モードに入ってしまうことです。私はJALから訪問先の空港が見えると、毎回、さて今から日本語を忘れて英語に切り替えるぞ、と気合を入れます。日本語と英語をチャンポンに話すことは無理です。いわゆるThinking in Englishができなくなり、まず話したいことを日本語で考え、その上で英語に訳して話をせざるを得なくなります。これでは現地の人とのスムーズな会話になりません。相手が言ったことに応える、あるいは言いたいことがある場合、日本語で考える前に英語で取り敢えず声を出す、英語で声を出してしまったのだからその続きは英語で考えるしかなく、日本語で考える余裕を自分に与えない、こうするとBroken Englishであろうとなかろうと話は進みます。ところがこのドライバーは英語が話せるにも拘らず、親切心なのか、日本が懐かしいのか、Thinking in Japaneseを必死で心がけようとします。私とは全く逆の気持ちになっている訳です。彼にとって車の中は彼の世界であり、そこに日本人がいれば、その世界は懐かしい日本そのものなのでしょう。そうすると、ひどい日本語ではあるものの日本語しか話さなくなってしまいます。苦労して日本語で話しているのに英語で話してくれとは、彼の努力を侮辱したようで言えません。この日本語を聞くことは英語を聞くことよりもかなり疲れます。 マレーシアでは地元の人が行くレストランしか行きませんが、フィリピンではHaborViewのような外国人の多い、時として日本人もいるレストランに出かけます。今回もこのドライバーと一緒に行きましたが、たまたま近くの席に日本人が2-3人おり、我々の方を何度も振り向き奇妙な顔をしていました。フィリピン人が片言の日本語を話し、日本人が片言の英語を話している。これをなぜ互いに譲らず、食事しているのか一体この2人は何者なのかと思ったに違いありません。このレストランでは給仕は若い男女が半々です。特に女性給仕は客が日本人と分かると気をつかって片言の日本語で機嫌を伺います。それに英語で応えるのはいかにも無愛想で、気の毒なので相手に合わせて日本語で応えざるを得ません。こうなってくると頭の中は混乱し、結局気が付けば、こちらもひどい片言の日本語で返答している始末です。 フィリピン出張ではマレーシアと異なり、食事のトラブルはありません。酸味の聞いたスープ以外はほとんど口に合います。さて次回の海外訪問は果たして何が待っているのか、です。 Bulbophyllum stormiiとBulbophyllum williamsii Bulb. stormiiはスマトラ、ボルネオ島、マレー半島、一方、Bulb. williamsiiはフィリピンミンダナオ島の、いずれも標高1,000m以上の生息種です。両者は共に黄色をベースとし、セパルにストライプが入るフォームでほぼサイズも同じです。特に後者は現地によれば焼畑などにより絶滅状態で今日入手が困難とのことです。またいずれも市場での売買は余りないようで価格等の情報は見当たりません。前者は昨年夏、後者は今回のフィリピン訪問で入手し、開花しましたので取り上げてみました。
Dendrobium wulaiense Dendrobium spatulata節で、現地仕入れ値が最も高価であったパプアニューギニア生息のDen. wulaienseが開花しました。本種を1昨年12月にマレーシアから10株を持ち帰る際、重量を軽くするためそれまで現地で植え付けられていた木炭を全て取り除き梱包しました。このため根の大半は短くカットされた状態となり、これをスリット入りプラスチック鉢にバークミックスで植え付けしたのですが冬季の低温もあり1か月程で細菌性病気で全滅してしまいました。これを教訓に2回目の4月の入荷では木炭を付けたまま持ち帰り、浜松ではクリプトモスで覆う植え付けに変え無事順化も終わりました。1回目に持ち帰った10種類程の他のSpatulataも同様に木炭を取り除いた状態でしたが、何の問題もありませんでした。このことから特にDen. wulaienseはDen. taurinumやDen. sutiknoiと同じように移植を嫌う種であることが分かりました。下写真が開花した花です。セパルペタルは純白で、リップの縁とストライプが濃いブルーのコントラストは上品な印象です。ネットや出版物(Spatulata Orchids Papua New Guinea, Orchid society of Papua New Guinea Inc,)などを見ると、リップの縁にブルーがない(特に白地のセパル・ペタル)フォームが多く、下写真は一つの変種(フォーム)ではないかと思います。ブルーの縁取りがあることで白とブルーが映えます。
Dendrobium sp ボルネオ島からのDendrobium spとされる株が開花しました。ラテラルセパル間のスパンは2.4㎝です。花の類似性から、Distichophyllaeを調べましたが、生息地も異なりますがDen. ellipsophyllumでもなく、蕊柱にラインが入る種は今のところ該当種が無く、調査中です。10株程仕入れ、開花前でしたが2-3株を温室訪問の方がspとして買われていきました。
Phalaenopsis schillerianaクラスター/寄せ植え 30日にフィリピンから戻り、Phal. schillerianaの植え込みが終わりました。写真がそれらで、2枚貼りの杉皮板にミズゴケで根を押さえた取り付けとなっています。杉板の長さは3尺と2尺です。寄せ植えを構成するそれぞれの株は、元々大きなクラスターから小さな株に分割されたもので、可能な限りそれぞれの葉面に光が当たるようにレイアウトをしました。支持体から根を切断して子株に分割されてから今日までには1か月近くが経過しており葉に張りが無く、これから張りが戻り、新根や頂芽の伸長が見られるようになるまでの1-2ヶ月間が順化栽培となります。こうした大株は数百輪の花を同時に開花するため展示用として注目されると思います。2016年度歳月記 2016年歳月記を始めます。2015年度分は本ページのトップ右にあるブルー色のARCHIVEをクリックすることで開示します。 |
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