植え込み材と鉢

 ランにとって植え込み材(コンポスト)は根から水および栄養分を得るための媒材(medium)であると共に株を固定する大切な役割をもっています。多くの胡蝶蘭原種は高湿度の環境で、樹幹などを支持体としてその表皮に根を張り、根の半面は支持体に、半面は直接空気と接して生息しています。一方、人工栽培においては、熱帯雨林や熱帯モンスーン地帯の環境と同じような夜間の高湿度を得ることは難しく、国内においては生息域と比較して相当乾燥した環境下に置かれることになります。よって胡蝶蘭を健全に育てるには、この生息域に近い環境を如何につくりだすかが栽培の中心課題となります。

 葉や根の乾燥を避けるためには保湿力のある植込み材が必要です。水分が必要であれば単純に水耕栽培のように根を水に浸けるか、スポンジのような吸水能力の高い材料が思いつきます。しかし一方で、成長した胡蝶蘭は根の大部分が空気に直接触れ酸素を必要する気根植物です。このため多くの着生ランにとっては根が常に水に浸り吸収ができない状態が続けば、根はやがて腐敗し株は枯れていきます。葉や根を取り巻く空中湿度を如何に長く安定に保つか、その保湿性と、広い気相(根が空気に触れる空間)をもつコンポストが植え込み材の条件であり、また根に直接触れるコンポストはその成分特性も栽培の良否を決定します。

 難しい問題は、湿度は材料の選択だけで決定できるものではなく、昼夜の温度変化、通風、かん水頻度、鉢材に大きく左右されます。さらにこうした変動要素に加えて、原種それぞれに異なる生息環境に合った機能的なコンポストを選択しなければなりません。胡蝶蘭原種のためのコンポストはミズゴケ、バーク、ヘゴ、クリプトモス(杉皮)、コルク、ロックウール、木炭、パーライト、バーミキュライト、セラミックス、木製バスケット、またヤシガラ材があり、さらにこれらコンポストを組み合わせたミックスタイプがあります。原種栽培のコンポストの共通要件を整理すると下記となります。
  1. 吸放湿特性に優れる
  2. 強アルカリあるいは強酸性でない
  3. 十分な気相(空気が通る空間)が確保できる
  4. 経年変化(形状やPHの変化)が少なく長寿命
  5. カビやダニ類の発生が少ない
  6. 植え替え安さと低コスト
   胡蝶蘭は着生(気根)植物であり、根の多くが大気に露出し直接空気に触れています。吸水した水分は主に葉や根に保持されます。50種以上の胡蝶蘭原種の葉は、葉肉の厚いもの(Phal. gigantea, bellina, cornu-ceribi, amabilisなど)と薄いもの(Phal. inscriptionensis, javanica, fimbriataなど)など様々です。葉肉の厚い種はしばしば乾燥のあるオープンフォレストや高木に着生し、葉肉の薄い種は一日の大半が湿度の高い川や沼周辺に生息しています。また高山性の原種では葉は小さく、冬季には一部あるいは全部が落葉する半落葉性で休眠をします。このように、それぞれの原種はそれぞれ生息環境が異なります。50種以上に一種類のみ(例えばミズゴケと素焼き鉢)のコンポストを使用し栽培することは可能ですが、その場合はかん水頻度を品種ごとに調整しなければならないことになります。一方、かん水をほぼ一律(頻度と量)にして多くの種類を栽培できるようにするためには、それぞれの品種に適合した複数のコンポストを選ぶ必要があります。どちらを優先するかは栽培者の栽培環境に依ります。

 株数が多い場合には、実践的な手法として可能な限りコンポストを品種ごとに適したものとし、その上でかん水は全て同じ割合、間隔で行うのが手間がかかりません。それでも栽培が難しい品種に対しては同じような特性の原種をグループに分け、グループ毎にかん水方法を変えることになります。また輝度、湿度、温度、通風など置き場所を変えながらの栽培も必要な場合があります。可能な限り同一のコンポストで、かん水頻度も同時に可能で、低コストまた植え替えが容易であることが望ましく、これら全てを満足する決定的なコンポストは未だ見つかってはいません。

 一方、鉢はコンポストと共にその組み合わせが重要となります。大きく分けて素焼き鉢とプラスチック鉢およびそのサイズです。素焼き鉢以外の陶器製の化粧鉢は、展示用で栽培には不向きです。素焼き鉢とプラスチック鉢は前者が通気性があって鉢内部の水分を鉢璧からも蒸散させます。この通気性は気根植物にとって重要で、過剰な水分を放出し、安定した保湿性を得るための重要な特性となります。一方プラスチック鉢は鉢内部の水分の蒸散が鉢底と上面からのみとなり、素焼き鉢に対して乾燥しにくい特性をもちます。よって保水力の少ない反面、気相の多いコンポストに適します。このため、乾燥しがちな部屋では素焼き鉢で保湿性の高いコンポストが、また湿度が確保できる部屋ではプラスチック鉢で気相の高いコンポストがそれぞれ適することになります。

コンポストの一般条件

 着生(気根)植物を栽培する場合の、コンポストの入った鉢内の環境を気相(隙間)、液相(水分)、個相(材料)とに分け、それぞれの特性評価が行われています。ミズゴケは最も液相が多く、気相や個相の占める割合は低く、市販本にあるようにやや硬め(株元をつまみ上げても鉢が落ちない程度)に植えつければ液相はかん水時80%以上となり、気相は10%にもなりません。これに対してバークやヤシガラチップはそれぞれの比がおよそ4:4:2となり、また植え込みの固さにはあまり影響を受けません。ヘゴチップはさらに気相が増え、液相が減少します。この結果、大きな気相が好ましいことが条件であるがことを考えると、胡蝶蘭にとってミズゴケは不利なコンポストとなります。しかし現実に日本ではミズゴケが洋蘭に最も多く利用されています。これは前記したように日本の環境湿度が大きく関係し、梅雨期の一時期を除いて(熱帯地方に比べ)湿度の低い日本国内では保水力の高いミズゴケはかん水頻度を減らす(手間のかからない)ことができる、栽培の利便性に優れているからです。よって十分な湿度が提供できる温室、ワーディアンケース、あるいはビニールコート付きスチールラック内においてのミズゴケ利用は、過かん水に気をつけなければなりません。根をしばしば黒く腐敗させてしまう人にはミズゴケは不適で、乾燥の早い他のコンポスト(ヘゴチップ、バークなど)を混ぜたミックスコンポストが有効となります。

  胡蝶蘭原種とコンポストの適応性に関しては、「原種58種のそれぞれの生息域、特徴、栽培法」のページに種ごとに記載しています。コンポストの選択とかん水との一般的な特性は、水を与えたら、すぐに鉢底から水が流れ落ちる気相の広いコンポストであること。鉢に大量の水を一気に流したとき水が鉢上(ウオータ・スペース)から溢れるようでは不適。コンポスト内は水浸し状態が長く続くものではなく、しっとり感(指で触れても水分が付かない)を長く保持できるものが好ましいとされます。いずれにしても単一のコンポストで全ての環境に対応することは困難で、通常はミックスコンポストとし、混ぜ合わせる材料の割合でコンポスト内の湿度や変化を調整し対応します。

 表1-1にコンポストとその特性を示しています。

表1 コンポストの特性
コンポスト
適用原種
保水力
気相
寿命
適応鉢
コスト
使い易さ
備考
ミズゴケ 3Aレベル
全て
素焼き鉢
青ゴケの発生
バーク(発酵バーク)
立ち性
プラスチック
発酵バーク以外は短寿命
コルク
下垂性
×
×
植え替え時に根を切断
ヘゴ板
下垂性
×
植え替え時に根を切断
ヘゴチップ
全て
プラスチック
サイズの種類が少ない
バスケット+ミズゴケ
全て
 
クリプトモス
全て
全て
3種類のサイズがあり
杉皮板
下垂性
 
ヤシガラマット
下垂性
 

 表1-2にミックスコンポストについて取り上げます。ミックスコンポストは表1-1のそれぞれのコンポストの長所を生かした組み合わせとなります。
ミックスコンポスト
保水力
気相
寿命
適応鉢
コスト
使い易さ
備考
ミズゴケ+クリプトモス
素焼き鉢
一般室内、温室向き
ミズゴケ+ヘゴチップ
素焼き鉢
保水力は両者の比率による
バーク+十和田軽石+炭
プラスチック
同上

コルク

 湿度が夜間80%以上に保持できる環境(温室、ワーディアンケース、ミニ温室など)が得られれば、自然界では葉が下垂する多くの胡蝶蘭原種には、コルクやヘゴ板が頂芽に水を溜めないことから最も生育上安全なコンポストとなります。コルクは最近は取り扱う店が少なくなってきましたが、洋蘭店やオンラインショップで購入できます。一方、人が快適に過ごすことが出来る室内の湿度は60%以下であり、この環境下でコルクやヘゴ板に植付けするには乾燥しすぎるため不適です。温室であってもコルクは保水力がほとんどないため、ほぼ毎日のかん水と、季節に関わりなく気孔を開き呼吸をしなければならない葉のために、夜間の高湿度は必須となります。

  コルクでの植え付けは、まず株をコルク上に置き根を広げます。この上をミズゴケで覆い、糸やビニタイで抑えます。よって広げた根の一部はむき出しのままとなることがあります。逆さにしてもぶらぶらしないようにできれば完了です。コルクに取り付ける際、コルク表面にミズゴケを敷いてから、あるいは根をミズゴケで包み、それから取り付けるのは、生育に問題はありませんが根のコルクへの活着が若干遅れます。活着を早めるには根をコルクにじかに置き、その上にミズゴケを被せるという手法で取り付けます。直接コルクの上に株を置くことから、主茎全体がピッタリとコルクに密着し、葉元もコルクとの隙間がないような場合には、根元をミズゴケで巻いて主茎が浮いた、あるいはやや傾いた(10度程度)状態で取り付けます。

  コルクや後述のヘゴ板が多くの胡蝶蘭に適しているのは自然の様態に近いことです。コルクは、保水する材料が根を覆う僅かなミズゴケだけであり、かん水時の濡れた状態と、ほぼ1日で乾燥する状態の乾湿のメリハリがはっきりしていることと、この結果、苔、カビが発生しにくく、また毎回水を垂れ流すため、肥料の濃縮化や塩障害も発生しません。ダニなど害虫も洗い流され易い(根とコルク面の接触部の隙間に住み着くことがある)ことから発生が少なく、また夜間の湿度、温度さえ確保できれば、バスケットなどに比べてゆっくりではあるものの順調に育ちコルクの大きさに比例して根が伸長し大きく成長していきます。コルクの大きさは一般的に、成長したサイズの3倍程度の大きさの面積があれば良いと思われます。

 特に輸入直後の相当ダメージの大きな株は、コルク、ヘゴ、バスケット以外のコンポストへの移植以外は困難です(植え付けのページを参照)。輸入直後の株の葉や根は出荷洗浄から梱包、検疫等の過程で目に見えない傷も多く発生しており、ミズゴケと素焼き鉢に株を立てた状態で植えつけると、かん水で葉元に水が溜まり病気になる可能性が高くなるためです。そのため、しばらくは吊るした状態で栽培し、葉や根が動き始めてから所定のコンポストに移植した方が安全です。

  コルクの問題点としては、ほとんどの肥料は流れてしまうため、成長が緩慢になることや、栄養不足で花付きが悪くなることがあります。これを避けるには施肥回数を増す、あるいはお茶パックや市販の肥料ケースなどに置肥を入れて上部に吊るし、かん水の度にパックに水をかける方法があります。一方、液肥の場合、濃度を高くすると緑色の苔がやがてコルク表面を覆いますので、これを避けるには規定希釈の1/5程度の濃度で回数を増やす必要があります。

  Parishianae亜属にとっては根に葉緑素があり、根に光が当たることが必要とされます。よって鉢の中に根が隠れてしまわないコルクあるいはヘゴ板(あるいは棒)付けが必要となります。鉢の場合、光を通す透明あるいは半透明のプラスチック鉢であれば問題ありません。

 大株となるPhal. gigantea, Phal. schilleriana, Phal. sanderianaなどの葉あるいは花茎が下垂する品種もまたコルク、ヘゴ付け(あるいは大きなバスケット付けなど)が成長と共に必要になります。 これら葉が下垂する品種をポットに植えつけた場合は、一定の大きさまでは成長するものの、葉が大きくなると葉の先端がベンチに接するようになりやがてその部分が擦れて傷つき、病気となる可能性が高まります。写真1-1にコルク着けを示します。

Fig. 1-1 コルク着け


コルク材

Phal. amabilis

Phal. doweryensis

Phal. wilsonii
   コルクは表面にコケが付くことを除いて、経年劣化がほとんど無いことから、あらかじめ大きなサイズを用いて他のコンポストのように1-2年の交換を避けることもできます。しかしそれであっても、同一コルク上での栽培期間は凡そ4年までです。これはコルク自身の問題ではなく、胡蝶蘭が単茎性のため徐々に茎が伸張し、やがて根元がコルク面から伸び出して離れていきます(写真1-2)。このため新しい根は、一部がコルク面に活着するだけで、根元に近い部分は空中に浮かんだ形となり、水分や栄養が不足がちとなってしまいます。また2-3年もすると、古い根やコルク表面に緑色の苔が生えることを避けることは困難です。これは肥料の濃度や、かん水頻度に影響されますが、なかなか避けることはできません。この結果、3年目位からまず根から、次に葉へと株が徐々に痩せ始めて行きます。このような状況から、4年程で株をコルクから剥がし、古く黒くなった根と花茎部分を切除して新しいコルクに取付けます。このタイミングが遅れると、新しく植えつけた場合、枯れることはないにしても作落ちが生じ元のサイズに戻るまでは数年かかります。
 植え替えで活着した根を剥がす際、かなり根を切断することになります。このため株は大きく傷つきます。このことがその後の成長に影響を与えます。このため植え替え時は原則、成長が開始される初春から初夏、および早秋に限られます。根がダメージを受けることで植え替え後に下葉(古い葉)の一部が落葉しますが、やがて新しい葉が発生しますので、古い葉の落葉は問題はありません。この場合、しばしばその年は花茎(開花)が見られないことがあります。

Fig.1-2 コルク植え付けから5年経過状態
 
 一方、自然界の胡蝶蘭は人工栽培に比較して数倍大きく成長します。この自然と人工栽培との違いの一つは根張りの空間の違いがあります。限られたコルクやヘゴ板ではいずれ新しく根を張ることのできる空間は少なくなり、水分や栄養摂取の割合が減少します。限られた物理的な面積空間を拡大するには立体とする以外なく、前記とは異なる方法ですが、コルクを芯として、これに株を取り付けた後、コルク全体が隠れる程の大量のミズゴケやヘゴチップで覆うことが考えられます。大株となるPhal. giganteaPhal. bellina等においては2013年以降、この取付方法で好結果を得ています。根はコルクに活着する部分とミズゴケやヘゴチップの層の中で伸長するため取り外しが容易でダメージも少なくなります。

  2014年以降本サイトではコスト対効果の問題からコルクは使用していません。

ミズゴケ

 日本では、ミズゴケと素焼き鉢の組み合わせが着生蘭栽培の基本とされます。初心者、ベテランを含め最も利用頻度が高いと思われます。ミズゴケは比較的乾燥した環境にあっても、素焼き鉢と組み合わせることで、根に対して適度な湿度と通気性を長く保つことができるためです。室内は通常湿度が低く(高くても60%)乾燥が進むため、水分保持能力の高いミズゴケは室内栽培には必須な植込み材となります。

  かん水することで素焼き鉢の表面の色は濃いレンガ色になり、2日程で薄くなっていきます。かん水時の色が変化なく2日程続くようでは水分過多です。かん水量はおおよそ3日目で元の白っぽい色に戻る程度とします。水分過多が続くと鉢全体が苔に覆われるだけでなく、中心部の根が腐敗します。

  ミズゴケはAAからAAAAまでの品質があり、Aの数が多い方が通気性や保水性に優れ、繊維も長くなります。触れると柔らかくフワッと感じます。趣味家にとっては一般的に3Aあるいは4Aを使用するのではないかと思います。本サイトの栽培ではニュージーランド産を常時使用しています。一般園芸店では3Aまでで4Aはあまり販売されていないと思われます(購入希望者はナーセリのページ参照)。 ミズゴケの耐用年数は、かん水や置肥の量に大きく影響されるものの、3年も経つと繊維質が粗くなり、2年程で保水力の低下、繰り返される施肥や根からの排泄成分による酸化が進みます。特に置き肥を定期的に行っている場合は2年を限度として、施肥3年目には交換したほうが成長が目に見えてよくなります。

 フラスコから出した胡蝶蘭原種の小苗はミズゴケと半透明プラスチック鉢を使用しています。但しプラスチック鉢は6㎝直径の小さなポットです。注意しなければならないのはフラスコから出したばかりの苗を、ミズゴケでこれ以上のサイズに植えつけないことです。これは水分過多となり、細菌性の病気(葉が水浸性の様態となる)の危険性が増すためです。フラスコ出しから1年間程はこの小さいプラスチック鉢とミズゴケで多くの胡蝶蘭原種は常に濡れた状態であっても良く成長します。言い換えれば僅かの乾燥であっても小苗は致命的となることがあり、これを避ける必要があります。2年目にはそれぞれに適したコンポストや鉢に植え替えが必要です。

  バスケットのコンポストにはミズゴケを使用します。本サイトの温室栽培では、ミズゴケ単体と素焼き鉢の組み合わせは全体の1割程度にすぎません。主な理由は、素焼き鉢表面に付着しやすい苔やカビが不快であることと、立ち性である交配品種と異なり、多くの胡蝶蘭原種の葉は下垂するため、主茎が垂直に植えつけられるポット植えは基本的に適していないことなどがあげられます。

  鉢に着く苔やカビが直接、蘭の成長に被害を及ぼした明確なトラブルの経験ありませんが、カトレアなどと異なり、特に室内栽培期間が長い胡蝶蘭への照度は弱く、緑色の苔ならばまだしも、ヌルっとした白や茶色あるいは黒い不衛生なカビが鉢表面に発生することもしばしばあります。通常の施肥をしていて鉢表面に白い粉(カビ)や膜が発生するようであれば過かん水です。鉢に着いたカビを2,3か月毎に洗い流したり、水で薄めたピューラクス(次亜塩素酸)で拭くのは、鉢数が少なければ苦にはなりませんが、10鉢を超え始めれば洗浄時における(例えば鉢を洗うスポンジや水しぶき等に対する)ウイルス感染対策も考えなくてはならず、相当な注意と労力が必要となります。

 ミズゴケ・素焼き鉢の組み合わせは、根や葉が健全な株に限ります。輸入直後のダメージの大きい株には使用できません。2つの理由があり、1つは茎が垂直になるように植え付けられることで頂芽や葉の付け根の部分に水が溜まり、傷口があると病気にかかり易いこと、2つ目は健全な根がない状態でミズゴケを使用した場合のように、かん水時に水浸し状態となれば、その僅かな根を腐らせる危険が高いことにあります。対応策として素焼き鉢を斜めに吊るす方法があります。この場合かん水で十分に水分が鉢全体に及ぶのか角度が重要となります。また通風を行う場合、葉が揺れると素焼きの縁と擦れて傷つき病気が発生することがあります。

 ミズゴケの特性をよく理解していれば、植え付けやすさ、かん水の頻度など多くの点で利点があります。適切なかん水であれば、ミズゴケと素焼き鉢は優れた根張りが得られます。しかしミズゴケの単体利用は、特に原種にとっては、やむ無く湿度の低い室内栽培で用いるコンポストか、その特性変化要素が大きいため(ミズゴケの品質、植え込みの密度・固さ、鉢の種類・サイズ、経年変化でかん水量を変化させなければならない)、むしろかん水のタイミングを熟知したベテランが利用すべきものではないかと思われます。

  ミズゴケは単体利用ではなくヘゴチップ、クリプトモスあるいは炭化コルクチップなどとのミックスタイプが有効です。これはそれぞれの素材の混ぜ合わせ比率で保水力が調整できるためです。温室では少な目に、一般室内栽培の湿度60%以下の部屋では大目にします。

Fig. 4-1 ミズゴケ+クリプトモス・素焼き鉢植え付け(右:Phal. deliciosa 左:Phal. equestris f. appari)

バスケット

 胡蝶蘭の支持体として最も成長が良いのは木製のバスケットです。バスケットはコンポストと言うよりは鉢類とした方が適切かもしれません。これは1cm角程のチーク材を4−5段交互に組んだものです。底にミズゴケをまず薄く敷き、次に株の根元にミズゴケを丸めてここに根を広げ、さらにミズゴケで根を覆ってから、バスケットに押しつけるように置きます。空いた空間(特に四隅)にミズゴケを足し押し込めて適度な固さ(ミズゴケや株を90度傾けても落ちない程度)にします。バスケットはコルクと同様に高湿度が確保できる環境向きです。これまで小型品種を除き、希少で高価な株はバスケット植えを最優先に行っています。言い換えればそれだけ順化への失敗がありません。

  バスケットではミズゴケが6面全方向に露出した状態となり、このため素焼き鉢のような通気性に関する鉢の経年変化や、ミズゴケの経年変化による根への影響が少なくまた、かん水は3-4日おき(夜間湿度が80%以上確保可能な場合)で良い点などで優れています。相当硬く植えつけても多くの根は、はみ出してゆくことから充分な気相が確保されます。また肥料も保持されるためコルクに比べて早い成長が期待できます。気をつける点は、鉢に比べれば少ないものの、繰り返される乾湿で肥料の濃縮化による塩害が起こる可能性があり、時折、大量の水を通す必要があります。またミズゴケ表面には緑色の苔が発生します。

  バスケットでは、Vanda栽培のように面を水平にして吊るす方法と、バスケットの1隅を紐で縛り、斜め(あるいは90度)に吊るす方法があります。前者では、株は僅かなミズゴケでも安定しますが、後者はやや固めにミズゴケを詰めるか、ビニタイで留めないと安定しません。多くの胡蝶蘭原種は斜め吊りが適しています。特に入荷直後や下垂する葉では斜め吊りが必要です。5−6ヶ月経過すると、根がバスケットの隙間から這い出し、一部は角材に密着し、一部は垂れ下がります。1年後の植え替え時に、はみ出た根をまとめ、再度同一バスケットに新しいミズゴケと共に収めるか、根をそのままにミズゴケだけを入れ替えるか、あるいは大きくなりずぎた株はヘゴチップ・プラスチック鉢(立ち性の種)やコルク(下垂葉の種)に植え替えます。水平にバスケットを吊るして栽培可能な胡蝶蘭原種にはPhal. cornu-cervi系があります。写真5-1にはPhal. cornu-cerviのCluster株を示します。


Fig. 5-1 Phal. cornu-cervi Cluster

  市販品のバスケットには3種類程のサイズしかないため、株の大きさに合わせ、本サイトでは工作用チーク材を用いて自作しています。バスケットを斜め吊りとし、茎を下向きに取り付ければ茎の中心に水が溜ることはなく、傷ついた輸入直後の株には安全です。かん水は、3-4か月間は乾き気味(指先で触れた場合、濡れているのではなく、しっとり感がある程度)に管理すれば順調に生育します。チーク材との葉の擦れによるダメージは素焼き鉢とは異なり見られません。

  バスケットも過度なかん水を行うと、緑色のコケにミズゴケ表面が覆われます。1年程度経過した段階で根は余程多くの根がはみ出していなければ、そのままにピンセットなどでミズゴケだけを摘まみだし新しいミズゴケに入れ替えて問題はありません。根をそのままにミズゴケだけを入れ替える場合、3年もすると、主茎が長くなり株が飛び出すような形となります(写真4-5)。こうなるとコルクやヘゴ板同様にやがて成長が止まるため、この場合は根を整理して植え替え直すことが必要になります。
Fig. 5-2 チーク材バスケット(5年間使用後の再利用待ち)

Fig. 5-3 バスケット斜め吊り 左写真:Phal. bellina alba 右写真:Phal. violacea mentawai

Fig.. 5-4 左写真:Phal. violacea 右写真:1年経過し根がはみ出した状態:Phal. equestris

Fig.. 5-5 Phal. tetraspis 左:植え付け後5年経過した状態  右:左の株を根を整理後に洗浄した同じバスケットに植え替え 

 Fig.5-5(左)では主茎が張り出しているだけでなく、2/3程度の根はすでに枯れており、この状態をさらに続けると株は急速に弱まり,この後1-2年で枯れることになります。春をまって植え替えが必須となります。右は左写真の株を約1週間後に根を整理し、バスケットを洗浄した後、植え替えたものです。 

 バスケットの材料であるチーク材が2014年現在、輸出規定品となり、この結果バスケットはより高価になりました。自作であれば、杉あるいは和風風呂で用いられる水に強いヒバ材に代えて製作することができると思われます。
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ヘゴ板/棒

 ヘゴ板は木生シダ類の根が絡まった茎を材料としたものです。下垂系の胡蝶蘭原種にとって最も利用価値の高いコンポストでしたが、乱獲のため絶滅危惧種となって輸出入が制限され、2013年からは新規の入手は極めて困難となり、現在はインドネシア政府認可の割当て制度の下、輸入している状況です。よって本サイトでは新規の植え込み材としては2013年夏季からは利用が減っています。多くの海外ナーセリでもマザープラント用として圧倒的に利用されてきましたが、マレーシア、フィリピン共に余り見かけなくなっています。

  ヘゴ板の取り付けは、コルク付けと同様に根をヘゴ板の上に広げて置き、その一部にミズゴケを覆って、糸やビニタイで縛り付けます。コルクと同じようなかん水管理となりますが、コルクよりは保水力があり、かん水の頻度はコルクに比べやや少なくなります。ヘゴ板の問題点は成長すると根がヘゴチップの間に入り込み、2-3年経過した状態のものを取り剥がすことは、かなりの根を切らなければできません。よってParishianae亜属などの小型種を除けば、あらかじめ成長を見込んだ大きさのコルクやヘゴ板が必要となります。ヘゴ板/棒はコルク同様に肥料の多くが流れ落ちるため、コルクよりは保持できるものの成長はポット植えと比べれば緩やかとなります。これを改善するためには多くのミズゴケをヘゴ板を覆い尽くすほどに取り付けることです。

Fig. 6-1 ヘゴ板/棒植え付け 左:Phal. gigantea 右:Phal. javanica

 ヘゴ板/棒もコルクと同様に耐用年数があり、コルクよりも1年程度早く、3年程で交換する必要があります。コルク以上に根がファイバーの中に食い込んでしまうので、取り剥がす際の根のダメージはコルクより大きく、交換年は作落ちが生じることがしばしばあります。

  海外のナーセリでしばしば見られるヘゴ板を用いた大型株の栽培として写真6-2のようにヘゴ板とヘゴチップ(あるいはブラックモス)を合わせて使用する方法があります。特にPhal. amabilis系(aphrodite, schilleriana, sanderiana, stuartiana)およびPhal. lueddemanniana系に適用されています。水分の適度な保持と、根張りのための大きな体積を得る手段として道理にかなった構造です。取り付けはヘゴ板に根を乗せそこにヘゴチップを適量被せ、寒冷紗で覆って糸でとめます。この場合、根の一部は寒冷紗の目を抜けて伸長します。数年後、株を取り外す場合は寒冷紗から根を切らねばならず根の一部をカットすることになります。これを避けるには、寒冷紗を使用せず直接ヘゴ板とチップとを黒い糸や極細のアルミ線等で何重にも巻けばこの問題を避けることができます。

Fig. 6-2 海外ラン農園でのヘゴ板とヘゴチップ植え 左:Phal. stuartiana 右:Phal. lueddemanniana

 Fig. 6-3はヘゴ板に多量のミズゴケを取付けたもので、右写真はほぼヘゴ板全体(裏面を含め)をミズゴケで覆い、アルミ線で巻いています。根張りの空間を増やすと共に、ヘゴ板全体が湿っている状態を長く保つための処理です。 右Phal. giganteaは葉長45cmです。


Phal. gigantea Sabah #1

Phal. gigantea Sabah #2

 ヘゴ板の問題点は前記同様に耐用年数が過ぎる頃、あるいは根が大きく張り出した場合は、植え替えが避けられません。販売を目的とする栽培の場合はベアールートが要求されることがあるため、適さないかも知れません。

 ヘゴ棒や板は植え付け前に水に浸し、水分を含ませるのとアクだしの両方を同時に行います。ヘゴチップも同じですが、水に一晩浸けておくと水が茶褐色に代わります。アク出しの有無が株の成長にどの程度影響を与えるかは不明です。しかし乾燥した状態の植え付けは水をはじき保水力が低下するため、数時間は水に浸けて水分を十分に吸ってから取り付けることが肝要です。

ヘゴチップ(ファイバー)

  ヘゴチップはヘゴの棒状根を砕いてファイバー状にしたもので、着生蘭の主要なコンポストの一つとして用いられてきました。ミズゴケに比べて長寿命(2年以上使用可能)であることと、根を切ることなく植え替えが可能であること等が理由です。素材そのものの経年変化はあると思われますが、ファイバーの形状が変化することはないため、気相はそのまま保たれます。温室などの比較的高湿度が保てる環境ではコストパフォーマンスに最も優れたコンポストと言えます。一方、一般室内ではプラスチックポットと組み合わせても乾燥が早く適しません。残念なことにこのコンポストもヘゴ板同様に絶滅の危惧から輸出量が制限され、現在、いつでも入手ができる状況ではなくなり、且つ高価になり、普及品ではなくなりました。

 ヘゴチップ単体はプラスチックと素焼き鉢いずれも使用できますが、素焼き鉢では乾燥が進みすぎる場合があります。単体であれば5号程度の大きなプラスチック鉢でも問題ありません。写真6-1にヘゴチップ単体とスリット入りプラスチック鉢の組み合わせを示します。いずれも葉長は40㎝スパン(左右の葉の端から端までの距離)の大株ですが、鉢も18㎝径の大きな鉢です。株を写真のサイズ程度に成長させるには、この程度の大きさの鉢に、写真の半分ほどの株サイズの段階から使用することで2年ほどで可能となります。もしヘゴチップではなく、これがミズゴケであれば鉢が大き過ぎ根腐れが生じ枯れるのは必定となります。

Fig. 7-1 ヘゴチップ植え込み

 日本の晩春から晩夏までの室内外の湿度は、梅雨期の一時期を除いて低く、プラスチック鉢を用いてもヘゴチップ単体は乾燥が早く進みます。よって温室やワーディアンケースでの栽培に適しており、一般室内での栽培においてヘゴチップ単体は最適なコンポストとは言えません。一般室内ではミズゴケとのミックスが必要となります。

ヘゴチップとミズゴケのミックスコンポスト

 立ち性や下垂性の原種に関わらず2012年度時点で筆者が現在最も多く使用していたのがヘゴチップとミズゴケのミックスコンポストと素焼き鉢、および前記ヘゴチップ単体とプラスチック鉢の組み合わせです。ヘゴチップ単体と素焼き鉢の組み合わせは温室環境であっても乾燥気味となり、一方、ミズゴケ単体と素焼き鉢では湿度過多になりがちという場合、このヘゴチップとミズゴケのミックスに素焼鉢が良い相性となります。

  立ち性の原種は問題ありませんが、下垂型の葉をもつ多くの原種に対してはこれを斜め吊りとします。但し素焼き鉢のエッジに葉が擦れる場合、接触面が病気となることがありますので強い風を当てることは避けます。ミズゴケとヘゴチップの割合を調整することで湿度環境に合わせることができます。通常の植え付けでは、空気層を得るために鉢に底石を使用しますが、着生ランの素焼き鉢への植え付けでは底石を敷くことは行わず同じコンポストで埋め込みます。しかしヘゴチップとミズゴケのミックスコンポストの場合、底にヘゴチップを敷き、その上に植えつけることが良いかもしれません。

 写真Aはフラスコから出してヘゴチップ単体とプラスチック鉢で2年間栽培していたP. sumatranaの植え替えを示したものです。写真A-(1)はプラスチックから取り出した根の状態です。根が枯れているものがあり、これをA-(2)に示すように鋏で生きている箇所まで戻って切り取り(ます。

A-(1)

A-(2)

 A-(3)が根を整理する前、A-(4)は整理した後の状態です。黒や黄色く変色した根は緑色となっている場所まで戻って切り取ります。付け根部分から全て枯れている根は根元から切り取ります。この後、切断した根に対してダコニール等の薬品に規定希釈で1分ほど浸します。

A-(3)

A-(4)

 A-(4)に示すように根を整理した後、植え込みに入ります。まず適度の大きさにヘゴチップを丸めて株の根元に当て、その外側に根を広げ、さらにヘゴチップで根を覆います(A-(5))。すなわち株の中心部はすべてヘゴチップとなります。次にミズゴケでヘゴチップ周辺全体を包みます(A-(6))。

A-(5)

A-(6)

 素焼き鉢の底に適度にヘゴチップ単体を置きます(A-(7))。これに前記A-(6)の株を植え込みます(A-(8))。

A-(7)

A-(8)

 A-(8)の状態からA-(9)に示すウオータースペースができるまでヘゴチップとミズゴケを指先でバリバリとヘゴチップの折れる音がしますが根には構わず、強く鉢に押し込みます。A-(7)の底に敷くヘゴチップや根にまるめたヘゴチップあるいはミズゴケの量が多いと、指先で押しても収まり切れないことがあり、反面、少なすぎても株が鉢の中へ入り過ぎるため、それぞれの量加減が必要です。ミズゴケを巻いた状態のものを鉢に軽く収めたとき、写真A-(8)の状態程度に盛り上がった量が丁度良いと言えます。その後、表面にヘゴチップを置いて(これは無くても良い)完了です(A-(10))。

A-(9)

A-(10)

 写真A-(10)ではヘゴチップを表面に敷いていますが、一般室内栽培であれば乾燥が早いのでミズゴケを置くことも有効です。。本サイトではミズゴケに緑苔が着くのを避けるためヘゴチップを置いています。ヘゴチップとミズゴケの割合は置かれる場所の湿度に依存します。以上から、根の中心部はヘゴチップで占めるようにし、ミズゴケは素焼き鉢に接する部分に沿って層になっている状態となります。この結果、株の中心部の気相が増し、過かん水で根が常に水浸し状態となることを避けることができ、根腐れ対策となります。以上のように本サイトではヘゴチップとミズゴケを一緒に混ぜ合わせたものではなく、鉢の中では層に分けて使用しています。

 ランを販売しようとすれば、コルクやヘゴ板ではどうしても取り外しの際に根を痛めてしまいます。この結果、購入した側では順化処理が必要になり、初心者にとっては難しくなります。販売を目的としない趣味家としての温室栽培においては、成長性の視点からコルク、ヘゴ板あるいはバスケットが優れていることには変わりません。よってこの組み合わせは1-2年で傷を付けずにコンポストを交換する、あるいは販売する場合に有効となります。下垂系の種に対しては、A-(10)の状態の鉢を針金を通すか、専用吊り金具で斜めに吊ります。

  2010年以降本サイトではマザープラント以外の着生ランの大半をこの組み合わせで植えつけるようになりました。その理由は前記したように植え替えや取り出し時に根が傷まない為です。またコストはコルク、ヘゴ板、ミズゴケ単体に比べて安いこともありました。しかしヘゴ材の輸出規定により入手が不定期となり、2013年夏以降は使用することを止めました。

バークミックス

  バークはツガや松の樹皮をチップ(小片)化したもので、海外(主にアメリカやヨーロッパ)の植え付け解説では、ミズゴケよりもバークが胡蝶蘭の主なコンポストとして取り上げられています。バークには多様な品質があり、素材のままでは1年程度で交換する必要があります。一方、数年堆積し発酵させた商品もあり、これらは腐敗したり、形が崩れることがほとんどないため大きな気相を長期間安定して得ることができます。保水性能もあり乾湿のメリハリが良く、コルクと同じような特性となります。

  一方、より気相を多く得ながら保水性も同時に高めるためにはバーク単体よりも軽石や炭を所定の比率で混ぜ合わせ、それぞれ鉢やランの性質に合わせたミックスコンポるとすることが有効です。

 ミックスコンポストは基本的にプラスチック鉢用とも言えます。バーク単体使用も可能ですが、胡蝶蘭には乾燥し易いため、本サイトでは軽石としては最も吸水率が高い(70%)、また保湿力のある十和田ケイセキを加え、さらにPH調整済みの炭を加えたミックスコンポストとしています。


バーク(写真はネオソフロン)

十和田ケイセキ(中サイズ)

それぞれ水に1晩浸けた後に混ぜ合わせた状態。バークは吸水すると黒く変色する(写真はバーク:軽石:炭 = 2:1:1混合比)
Fig. 10-1 クルミ殻と十和田ケイセキのミックスコンポスト

 下写真最上段は比較的順化の難しいPhal. cochlearis(左)。右はPhal. pulchra野生種、2段目右は入荷2週間後のDendrobium群、左はAppendicula malindangensis、3段目左はランの中でも最も根張りが難しいPaph. sanderianum、また右はPaph. rothchildianum、最下段左はVanda Luzonica、右はそのバスケット内の拡大写真をそれぞれ示します。2014年7月現在、新入荷の立性あるいはポット植えで順化可能なランの、8割以上をネオソフロン、軽石および炭のミックスコンポストに切り替えています。


Phal. cochlearis

Phal. pulchra

Den. igneoniveum and capra

Den. piranha

Paph. sanderianum

Paph. rothchildianum

Vanda luzonica 3バスケット

Vanda luzonica (close-up around roots)
Fig. 10-2 バークミックスコンポストの使用例

  軽石に関し、一般に園芸で利用されている日向、蝦夷砂などではなく、十和田ケイセキを使用したのは吸水率、保湿性、成分、PH、各サイズの多さ等、ラン栽培に最適であるためです。そのままで使用できますが、本サイトでは植え込み時の栄養補助として、規定希釈あるいは規定の2倍までの濃度の活性(活力)剤を加えた水に1晩浸けた後、バークと混ぜ合わせます。混合比はバーク:軽石:PH調整済=3:1:1あるいは2:1:1としています。PH調整のない炭はPHが高すぎて危険なため使用しません。また窒素、リン酸、カリ類は根の傷んだ植え込み時には与えません。バークにではなく軽石に活性剤を吸着させる理由は、バークが有機材であり、これに肥料(特に窒素)や活性剤を吸着させることはバークの劣化を早める可能性があるからです。この処理により植え込み時からしばらくの間、かん水毎に軽石からアミノ酸、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、ビタミンなどが根への放出が期待できます。

 標準的にはバーク、軽石および炭とのミックスコンポストはプラスチック鉢が保湿性の点で優れています。一方温室やビニールラックなど高湿度が保てる環境では素焼き鉢も利用できると思われます。またヘゴチップは株に対して大きなプラスチック鉢の利用によって特に根張りの活発なPhal. cornu-cerviなどを大株に成長させることができることを指摘しました。この際に利用するプラスチック大鉢は写真7-1上段に示すスリット入りです。バークミックスの場合も同様に大株にするには、株に比較して数倍大きなスリット型プラスチックが使用できます。この場合気相を大きくするためバークおよび軽石は大サイズとします。

クリプトモス(杉皮)

 杉皮は日本固有のコンポストと思いますが、胡蝶蘭とクリプトモスの組み合わせが話題になることがほとんどありません。営利栽培において、2012年頃まではサイズが大きなものしかなく、小さな株は使用できなかったと考えられます。しかし現在は3つのサイズがあり、この問題は解決されました。クリプトモスは管理が容易で優れた成長が得られます。杉の防虫効果もあるようで、ミズゴケや有機材を含むミックスコンポストにみられるような微生物が発生しません。コストが低い点も大きなメリットです。温室、ワーディアンケースの環境、あるいはミズゴケとのミックスでは一般室内にも利用できます。

  本サイトではクルミ殻の新規利用で、クリプトモスの使用頻度が少なくなったものの主にPhal. maculataPhal. micholitzii、また根張りが盛んで大株になるPhal. cornu-cervi系の胡蝶蘭に使用しています。胡蝶蘭以外ではセロジネの80%以上がクリプトモスです。クリプトモスは特性のバラツキが少ないため管理はミズゴケよりも画一的にできます。非常に乾きやすいため、鉢はプラスチック(スリット入り)鉢が使用でき、夏は毎日、冬は週に2‐3度、その他の季節はその中間のかん水となります。地生蘭であるパフィオと比較すれば1/3程度のかん水頻度となります。クリプトモスはいったん乾いてしまうと、製品にもよりますが、水分の吸収が低下します。

  クリプトモスを一晩水に漬けておくとヘゴチップ同様に水は茶色に変色します。本サイトではあく抜きをするため1晩水に漬け、水替えを行った後、根の傷んだ株にはしばしば病害の予防を兼ねて規定希釈のタチガレンエースとバリダシンなどの薬品と共に更に数時間漬けこみ、その後コンポストとして使用しています。こうすれば植え付けや植え替えの際の、根の洗浄だけで薬剤散布も必要なくなります。杉のあくが胡蝶蘭の根に悪影響を与えるかどうかという点については問題点は見当たりません。経験でL. ancepsには適さないことが分かっています。

  クリプトモスはミズゴケに比べて低コストであり、立ち性の大株用(茎が垂直に成長しても問題のない種)としては、有効なコンポストと思われます。ミズゴケ同様に2年毎の交換は必要となります。本サイトでは経験から2年以上の交換は長すぎ2年以内が良いと考えています。

  BSサイズには気相を広く取る必要から比較的粗い(大サイズ)杉皮が適しています。クリプトモスは液肥専用コンポストと考え、置き肥はあまり適しません。また4-5号以上のプラスチック鉢を使用する場合、スリット鉢が成長(根張り)を良くします。素焼き鉢とクリプトモスも優れた組み合わせと思われます。この場合、乾燥が一層進むので夏ならば毎日、冬で2-3日置きに与えます。ただし、ミズゴケよりは発生頻度が少ないものの、鉢表面の苔の付着は避けられません。

  写真11-1にはクリプトモス・プラスチック鉢の植え付けを示します。中央と右写真はそれぞれ栽培が比較的難しいとされるPhal. maculataPhal. micholitziiです。順調に育って新葉や花茎を出しています。Phal. micholiziiはフラスコ出し2年経過した株で花茎が4本ほど着いています。
Fig.11-1 クリプトモスとプラスチック鉢植え付け 左:Phal. cornu-cervi 中央:Phal. maculata 右:Phal. micholitzii

  素焼き鉢とミズゴケで、水を与えすぎて根を腐らせてしまう人はクリプトモスを中心部に、鉢壁側にミズゴケを使用します。すなわち、株下にクリプトモスを丸めてその上に根を広げて置き、根を覆うように薄くミズゴケを巻きつけ鉢に入れます。量の比率はまず50%配合から試みるのが良いと思われます。このミズゴケとクリプトモスの組み合わせは、根が広がり3号では小さすぎ4.5-5.0号では大きすぎ、また素焼鉢は使用したくない場合にも有効です。

杉皮板

 杉皮板は垣根や門屋根に利用される杉の皮を剥いだもので60㎝x30㎝ほどの長方形の板で販売されています。表面は杉皮が重なり合って、その隙間に水分を保持する働きがあり、また断面を見ると高密度な繊維の塊となっており、保水力があることが分かります。クリプトモスは胡蝶蘭全種で不適合な事象がなく、よって杉皮板であっても問題はないと思われます。根張りはコルク以上に活着する傾向が見られます。下垂系の胡蝶蘭やデンドロビウムには上記範囲内の取り付け材として低コストであり入手も容易です。 杉皮はランの支持材として使用耐年数が短いとの意見がありますが、本サイトでは中国産杉皮板を使用しています。日本の杉皮板はキメは細かいのですが市販されている商品は薄く、弱い力が加わっただけで割れてしまいます。また保水性が中国産に比べて高いのかカビが生えやすい印象です。

 これまでPhal. schillerianaPhal. lindeniiPhal. parishiiPhal. willsoniiなど下垂系の大型から小型種まで、杉皮板に取り付けており、炭化コルクに比較して保水性が若干高く、杉皮板の方が成長が良いように思われます。

 杉皮板の問題は皮自体が薄いため、かん水の繰り返しでやがて円弧状に反ることです。これを軽減するには杉皮を2枚使用し、それぞれの板の裏側どうしを合わせ、2枚重ねとします。すなわち反り方向が互いに相反するように重ね合わせ、反りを抑えます。よって出来上がった2枚重ねの板の表裏は共に杉皮の表面となります。株の取り付け方法はコルクやヘゴ板と同様で、より大きな株に育てるには、根張り空間を広くとることが必要で、根とその周辺の板表面を多くのミズゴケで覆います。表面の乾燥度合は色で判断できます。


Phal. lindenii

Phal. doweryensis(順化中)

Phal. malipoensis

Den. anosmum
Fig. 12-1 杉皮板使用例

ヤシガラマット

 ヤシガラマットはヤシ殻の繊維をマット状に織り込んだもので、小さなサイズから1mx10mのロールマットまで販売されています。ヘゴチップの輸出規制で少なくなった現在、海外ラン園では、ヤシガラ繊維の耐久性、PH、 カビを発生させない等の利点から多くのランに広く利用されています。2012年まで本サイトでは、胡蝶蘭の根をミズゴケあるいはクリプトモスで包み、それをヤシガラマットを巻いて吊り下げる栽培を下垂系原種に利用していましたが、現在はクラスター状の大株や一部の胡蝶蘭以外の原種にのみ利用しています。

 十分なかん水によって良く成長しますが、根が繊維内に入り、これを植え替えする際に株数が多くなると、繊維から根を取り外すのが面倒となることが、利用頻度が少なくなった理由です。一方、大きな株になると、それをさらに成長させるためには根張り空間を広くしなければならず、支持材としてのヘゴ板、コルク、バスケットのサイズには限界があり、また重量やコストの面でも問題があります。このため任意のサイズに切り取り利用することができるマットを大株に利用することにしました。

 使用方法は樹脂網トリカルネットにヤシガラマットを固定し、その上にミズゴケを適度な厚みに敷いて、株を取り付けます。1枚のマットは薄いため2枚重ねにしても良いのですが保水力を得るためにはミズゴケの量で調整した方が効果的と思われます。写真13-1上段はマットを平面状に広げて取り付けたPhal. schilleriana(左)と、円筒形にして取り付けたBulb. medusae(右)を、下段は1mx2mのマットに取り付けたPhal. lueddemannianaをそれぞれ示します。
Fig. 13-1 ヤシガラマット使用例

フラスコ苗用コンポスト

 最近は種類は少ないものの原種がフラスコ苗として入手できます。フラスコに植え付けたままの輸入は運送上の振動で培地が崩れる恐れがあるため困難で、主に蘭展や蘭専門店での購入となります。フラスコ苗で注意しなければならないのは取り出すタイミングです。10-20本程度の苗が入った500mlフラスコでは培地の有効期間は5-6か月である一方、入手時点ですでに3-4か月経過しているため1-2カ月以内に取り出すことが必要です。これを半年以上取り出さないと、細長くひ弱な苗になるか、根だけが長く伸びた苗となり、取り出し後の育成が遅れます。パフィオでは購入時のサイズ以上(僅かに伸長する程度)にはできません。無菌培養経験者であれば、新しい培地に植え換える手段があります。しかし根が長くなったものでは難しく、また培地液を追加する方法もありますが、1-2か月以内の植え替えが無難です。時折東京ドーム蘭展で1cm程度の小さなフラスコ苗を販売している海外からの出展者を見かけますが、これらの購入は自ら無菌培養を手がけている人以外避けるべきと考えます。フラスコの中で成長させるには培地を新しくする必要があります。

 またフラスコ苗からの育成には少なくともワーディアンケースか、ビニールシートで夜間覆ことができるホームラック等の栽培環境が必要です。夜間の湿度を80%程度に確保できないと、小苗の成長は困難となります。海外では湿度を高めるため、ガラス水槽に浅く水を入れてその上に台を設けて鉢を置いたり、寒冷期には熱帯魚用サーモスタットでその水を暖房する一石二鳥の栽培写真を良く見かけます。少数であればこの方法も有効です。

  フラスコ苗の取り出しは原則春(3-5月)が良く、晩秋や冬季の成長が止まる時期は避けるべきと考えます。冬に購入した場合は、温室やワーディアンケースがない場合は、前記(培地の有効期間)と矛盾しますが、その時期までフラスコのまま温度が昼夜25C前後の場所(1日で10C以上の気温の変化のある場所はカビの侵入の恐れがあり不可)に保管し、春になってから苗を取り出した方が無難です。

  胡蝶蘭のフラスコ苗の植え付けは、まず苗を殺菌剤に3-4分浸した後に、2-2.5号の半透明プラスチックにミズゴケあるいは3号ほどのプラスチック鉢にヘゴチップを1/3程に裁断したもので植えつけます。殺菌はタチガレンエースとバリダシン(あるいはロブラールとストレプトマイシン系でも可能)の規定希釈の混合液を使用します。ミズゴケと穴あきプラスチックも考えられますが、問題点はポットを40個入りトレーに並べると、周辺部と中心部とでは乾燥度合が異なり灌水が難しい問題があります。鉢間のスペースが取れればこの問題は解消します。またミズゴケ植えで、1年間程度は成長に問題なく、1年を経過すると徐々に成長が止まることがしばしば見受けられます。小さな苗や鉢の場合、大量の灌水が難しく、フラスコ内で見られる根から出すフェノール成分あるいは施肥の繰り返しによる酸化が原因と思われます。

 ヘゴチップの場合、市販の商品は長すぎるため前述のように、これを短く切って使用します。ヘゴチップは誰が灌水しようとも保水量のバラツキが少ないことと、気相がかなり大きく取れるため、大量の灌水が可能で塩類の蓄積をある程度抑えられること、またミズゴケは1年間であるのに対して、これらは2年間交換の必要がないことが特徴です。一方で気相が大きいため、ミズゴケに比較してほぼ毎日のかん水と、比較的夜間の湿度の高い環境に適しています。

Fig. 14-1 フラスコ苗植え(ヘゴチップと半透明プラスチック鉢)

 フラスコ苗をヘゴチップと半透明プラスチック鉢に植えつけて1年-2年経過後の成長を図14-2に示します。ほとんどの苗で順調に育ち、1.5年以上経過すると互いに葉が覆い重なり、植え替えが必要となります。作落ちはほとんど見られません。
Fig. 14-2 ヘゴチップとプラスチック鉢
種名
フラスコ出し直後
1年後
1.5年後
Phal. equestris Taiwan blue
Phal. violacea Norton
Phal. sanderiana
Phal. bellina Ponkan
Phal. cornu-cervi red
 
ヘゴチップに対して東南アジアラン園ではフラスコ苗の多くが2-2.5号の半透明プラスチックにミズゴケを使用しており、フラスコ出しから1年間はこの組み合わせで良く成長しています。プラスチック鉢に100%ミズゴケであるため、過かん水の心配をしがちですが、常にミズゴケが濡れていても小苗には問題がないようです。

鉢の種類とサイズ

 鉢の種類はコンポストで決まります。フラスコ出しから1年ほどの苗を除き、ミズゴケでは素焼き鉢やバスケット、ヘゴチップ単体では一般プラスチック鉢となります。鉢のサイズも大切な選択で、これもコンポストに左右されます。ミズゴケ単体の場合は株に比べて大きな鉢にすることはできません。大きな鉢に植えれば間違いなく中心部は水浸し状態が長期間続き根腐れとなります。往々にして、根を窮屈な空間に閉じ込めないで、ゆったりと広げて植えつけた方が大株になるのではと考えますが、コルク付けとは違いかん水後の中心部は水の蒸散が遅れ、その間、根が空気と接することができなく水分過剰に陥る可能性が高くなります。よって、胡蝶蘭をミズゴケ単体に植えるのであれば、葉の広がりと比べてかなりこじんまりとしたサイズの鉢が好ましことになります。パフィオで使用する深鉢も、パークやヘゴチップでは問題がありませんが、ミズゴケでは気相が少ないため適しません。

 大株にするには長い多数の根の成長が不可欠であり、長い根には大きな鉢あるいは支持体が必要となります。しかし大きな鉢では根腐れの危険性が高まります。そこで発泡スチロールに根を絡め、ミズゴケをその上に被せてから鉢に埋め込むことで大きな鉢であっても実質ミズゴケの量を減らす方法が考えられます。この構造は空気の層が増えた訳ではないので、あまり薦められません。このため本サイトでは前記した中心部にヘゴチップを置き、その周辺にミズゴケを巻き中心部に水分が長く留まることを避け、株の大きさの割には比較的大きな鉢を使用しています。さらにミズゴケとヘゴチップの割合を変えて湿度を調整します。空中湿度が高い環境下であれば、ヘゴチップ単体とプラスチック鉢でも可能です。コンポストがヘゴチップだけの場合、根が発達するとヘゴが軽いため盛り上がってしまい、この組み合わせは、斜め吊りする下垂タイプの種には不安定で使用できませんので現在は、立ち性の種のみにヘゴチップと大型のプラスチック鉢を用いています。斜め吊りをするのであれば、ミズゴケとヘゴチップのミックスと素焼き鉢を使用します。

 また鉢には白、黒、モスグリーン、茶色などがあります。間接光であっても照度が高いと黒いプラスチック鉢では表面温度がかなり上がります。冬季には良いかも知れませんが、通年では反射率の高い白が適しています。



補足:
胡蝶蘭の栽培が蘭の中で最も難かしいとされるのは、夜間に高い湿度が要求されるからです。多くの蘭が太い茎(バルブ)に水分を貯蔵し、乾燥に耐える能力を持っているのに対し、胡蝶蘭の主茎は保水機能がありません。葉の比較的厚い種も含まれますが、カトレアやデンドロビウムほどの水分を保持はできません。胡蝶蘭はその多くが、日中湿度70%、夜間は90%以上となる自然環境の中で、主に木を支持母体として着生しており、人が快適に感じる相対湿度60%以下の環境とは大きく異なります。このため熱帯モンスーン林や高山に生息するAphyllae亜属は乾燥期や低温時には半落葉種として、葉からの水分の蒸散を防ぐため、その期間は葉を落とし休眠します。

 蘭原種を健康に育てるには、それぞれの生息場所に似た環境(温度、湿度、輝度、通風)を、如何に人工的につくり出すかが課題となります。単純に水分を求めるのであれば、根を水の中に浸ければ良いのですが、気根植物である胡蝶蘭は根が葉と同様に直接空気と接しているか、あるいは根にも光を当てなければなりません。このため葉や根に対しては水滴に覆われる状態ではなく、それらを取り囲む空中湿度が高いことが必要です。しかし湿度は温度と比べて人工的に制御することが極めて困難です。この結果、鉢数が増えれば温室や、ワーディアンケースあるいはビニールシート等で囲ったホームラックなどが必要になります。

 一方、手軽にリビング等の一般室内で栽培を楽しむことも望まれます。鉢数が少なければ(あるいは手間がかけられれば)難しくはありません。高湿度が要求されるのは夜間です。胡蝶蘭は夜に葉の気孔を開いて呼吸(CO2の取り込み)をします。この際、気孔から水分が蒸散するのを抑えるため高い空中湿度が必要とされる訳です。乾燥していると蒸散を避けるため気孔を開くことができません。この結果、光合成ができず成長が阻害され、やがて株全体が弱まって行きます。よって夜間のみ、80%以上の湿度となる場所に移動するか株全体をビニール等で覆えばよいことになります。栽培者にとって様々な設定可能な環境事情があると思いますが、根や葉の周りの空中湿度が可能な限り高く長く保持できれば温室栽培でも一般室内栽培、いずれであっても栽培に最も重要な課題は解決されたと言えます。次の問題は植え込み材です。

 日本では四季があり空中湿度は季節に応じて大きく変化します。また多くの胡蝶蘭はおよそ3-4年で苗からBS(Blooming Size = 開花サイズ)となり、この間に1-2回は鉢のサイズを換えることになります。植え込み材(コンポスト)を一つ選んだとしても、鉢の大きさが変われば、中のコンポストの量が変わり、その結果、保水特性は大きく変化することになります。